(完結)おれとぼくらのあどべんちゃー   作:アズマケイ

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第24話

静寂が満ちている果てしなく凍りついた世界で、本宮大輔は一人ぼっちで立っていた。なんか、知ってるぞ、ここ。なんか、一回来たことある気がする。どこだっけ?ただぼんやりとこの世界に見覚えがある大輔は、どこで見たのか、聞いたのか、体験したのか、なんとか思い出そうとするけれども、まるでもやがかかったように記憶の彼方に忘れ去ってしまった風景を思い出すことはできなかった。

 

 

ふわりふわりと舞い降りてきたのは、真っ白な光に包まれた、今にも消えてしまいそうな明かりだった。暖かさすら感じさせる穏やかな光に魅せられて、音もなく漂い降りてくるその明かりに見入っていた大輔は、その明かりが照らす光でほんの少しだけ世界が広がったと気づく。

 

その明かりが大輔が立っている場所のほんの少し先に落ちて、あたりの真っ暗な空間を照らしてくれるが、まるで雪のようにその明かりはすぐに溶けてしまう。名残り惜しくてしゃがもうとした大輔は、さっき見失ってしまった明かりがひとつ、ふたつと増えていき、世界を瞬く間だけ照らし、やがては消えていく事に気づく。

 

思わず顔を上げた大輔の目の前には、見渡すかぎり真っ白な明かりがたくさん、ふわりふわりと舞っている光景が広がっていた。

 

 

音を立ててはいけない気がして、思わず感嘆の息をもらすのをぐぐっとこらえて、じいっと大輔は溢れていく光を見つめていた。それでも興味津々の奮い立つ好奇心を抑えることはできなくなって、うずうずしていた大輔は、思い切ってその光に手を伸ばす。

 

まるで大輔の手のひらから逃れるように、その明かりはひらりと逃げていく。じれったくなって大輔は一歩一歩と歩き出し、やがてかけ出すように明かりを追いかけて真っ直ぐ真っ直ぐかけ出していた。

 

 

そして気づく。まるで吹雪のような明かりは、ひとつも大輔に触れることなく、ただゆっくりと上から下へと落ちていることに。大輔は無意識のうちにこの凍てついた暗闇の世界は冬なのだと思っていたし、この明かりは雪なのだと判断していたが、どうやら違うようだ。

 

雪ならば大輔はきっと雪だらけになって、あまりの冷たさと溶けてしまった雪による湿り気によって、ますますこの寒い世界を実感するハメになると言うのに、今の今まで気づかなかったということは、もしかしてこの明かりは雪じゃないのか。

 

 

追いかけていた明かりが真っ暗闇に溶けてしまい、すっかり見失ってしまう。それでも諦めきれずに思い切って手を伸ばした大輔の手に、たまたま降りてきていた明かりがやってくる。

 

逃げないようにと両手で捕まえた大輔は、思いの外重さがあることに驚いてしまう。想像していたような柔らかい感覚でも、すぐに溶けてしまう泡のような感覚でもなく、はっきりと質量を感じる。

 

 

しかも溶けることなくはっきりと大輔の手の中に残っているそれは、煌々とした明かりを隙間から放ち続けていた。おそるおそる右手の蓋を開けてみた大輔の目に飛び込んできたのは、ちっちゃくちっちゃく粉砕された跡がある、薄くて四角くて白いプラスチックの破片みたいなやつだった。

 

それが真っ白な光を放っているのである。なんだこれ、と思わず口にした大輔は、この幻想的な光景を形作っているのが、このプラスチックのゴミみたいなやつだと知って、ちょっと幻滅してしまった。わくわくしていた気持ちがどこへやら、すっかり興ざめしてしまう。なんだよ、つまんねえ、とぼやきながらちょっとだけ力を入れて触ってみる。

 

 

すると、ちょっとしか力を入れていないにもかかわらず、そのプラスチックの塊はあっという間に原型を失い、サラサラとした砂のような粉末状態になってしまう。そして、今なお発光を続ける謎の物体は、大輔の手からこぼれ落ちて、後ろから吹いてきた冷たい風に押し流されてしまう。

 

あ、と声を上げたときには遅かった。びゅうびゅうびゅう、という冷たい風の声が世界に広がっていく。あまりに風が強くて反射的に顔に手を当てた大輔は、暫くとじていたまぶたを開く。

 

 

「すげえ」

 

 

それはさながら蛍の大群生だった。強い強い風に煽られて、上から下に行くしかなかった明かりがたくさんぶわっと舞い上がるのだ。真っ暗な世界で、その明かりしか存在しないというこの状況下に置いて、まるで生きているように明かりが下から上に、そして風に流されるままに縦横無尽に飛び交っているのである。

 

 

大輔はすっかり口をとじることも忘れて、呼吸の仕方すら忘れてしまったまま、空を見上げる。降り注ぐ明かりが世界に満ちる。その時、大輔はしゃん、しゃん、しゃん、という鈴の音色を聞いた。お、と大輔は聞き耳をたてる。冬、雪、鈴、と来れば大輔が連想するのは、たくさんのトナカイにそりを引かせて、世界中に子供たちにプレゼントを配る真っ赤な服のおじさんである。

 

真っ赤な服と真っ赤な帽子をかぶっていて、真っ白なひげを蓄えた、陽気で小太りのおじさんである。毎年冬になると、ずっと遠くの寒い国にサンタさん宛に手紙を送ると、その子供宛にメリークリスマスと英語で手紙を書いてくれるらしい、とクラスメイトの友達が実際に貰ったことを知っている大輔は、サンタクロースという老人の存在を固く信じていた。

 

 

世界にはたくさんの子どもがいるから、一日で全員のプレゼントを届けるのは無理だから、両親がその手伝いをしているだけであって、クリスマス近くになると両親がやたらと自分が今欲しい物を聞きたがっているのは、サンタクロースの手伝いをしているのだ、と信じている。

 

今は8月である。あわてんぼうのサンタクロースという合唱コンクールの曲を知っている大輔は、もしかして、もしかするのか、マジで?!と割とテンション高めであたりを見渡していた。

 

 

しかし、その姿は見受けられない。ほーほーほーとかいう笑い声も聞こえてこない。良く考えてみれば、トナカイの首に付けているベルの音にしては、あまりにも小さいし、一つ分しか聞こえなかった気がするから、違うのかもしれない。

 

勝手に勘違いして、勝手に落胆した大輔はちょっといらっとしてあたりを見渡した。しゃん、しゃん、しゃん、とまた鈴の音がした。まるで幼児向けの音がなるスリッパのように、ゆっくり人が歩く足音ような一定のリズムで、その清らかな音は響いている。

 

 

これだけ風の悲鳴とも聞き間違えたのだ、と勘違いしてしまいそうなほど、木枯らしが吹き荒れているこの世界で、不自然なまでに鈴の音が響きわたっている違和感がそこにある。聞き漏らさないように集中しながら、大輔はその音の方角を探った。

 

いやにはっきりと響いている音がある。その音を頼りに再び歩み始めた大輔の足元を照らすように、見渡すかぎり明かりの雪が広がっていた。

 

 

『きて』

 

 

たった2音の言葉だったけれども、大輔はその意味をはっきりと理解することが出来たし、聞き取ることが出来た。なんか、どっかで聞いたことがあるような気がするなあ、どこだっけ?

 

ふたたびもたげてきたデジャビュ的な感覚にもどかしさを噛み締めながら、大輔はまっすぐに進んでいく。小さな鈴を転がしたような、凛とした音である。女の子の声だった。でも知らない声だった。

 

 

空でもミミでもジュンでもなく、大輔の知っている女の子、もしくは女の人の声ではない。でも何故か大輔はその声の主を知っている気がするのだ。違和感だけが芽生えていく。なんか気持ち悪いなあ、と思いながら、その中途半端な感覚を少しでも早く解決したくて大輔は急いで先に進んでいった。

 

 

『こっちにきて』

 

 

こっちってどっちだよ、と思わずつぶやいたが、声の主は答えない。

 

 

『わたしのところに、きて』

 

 

誰だよ、と問いかけた言葉は闇に溶けていく。ふと気づくと、あれだけたくさんあった明かりがひとつもなくなり、ふたたび世界は闇に落ちていた。それでも声の方向ははっきりとしているから、もう先に進むしかないだろう、もうどこから来たなんてわからないんだし、と大輔は決意してまっすぐに進んでいった。そしてそしてそして。

 

 

「けっ、大輔っ、おっきてよーっ!大輔えええっ!!」

 

「うわあっ?!」

 

 

大輔の腹の上に乗っかって、アンダーシャツをガシッと掴んで必死で揺さぶっているブイモンがそこにいた。がっくがっくがっくと揺さぶられた大輔は、たまらず悲鳴をあげる。

 

何すんだよ!と叫んだ大輔は、その声に反応して、よかったーっと腕の中に顔を埋めるブイモンの豹変ぶりにすっかり怒りが失せてしまう。ぱちぱち、と目を瞬かせあたりを見渡してみるが、昨日就寝した広い広い部屋があり、大輔とブイモンは大きなベットに寝ている。

 

 

もうすっかり朝になっているらしく、暖かな太陽の光が四角いひだまりを形作っており、白くて薄いカーテンがゆらゆらと穏やかな風に煽られてゆれていた。

 

おもちゃの街の城の中にいるということを思い出した大輔は、ブイモンとすっかり夜更かしして、とうとう眠気に耐えられず途中で記憶が無くなっていることに気づく。いつのまにやら話疲れて眠ってしまったようだった。寝坊したにしては他のメンバーたちが待ちかねている気配はないし、もんざえモンがいる様子もない。

 

 

なんだかやたらと怯えているブイモンがずーっと大輔に抱きついているものだから、大輔は訳がわからないままブイモンをみる。大輔が起きたのがそんなに嬉しいのか、ごしごしと乱暴に涙を拭ったブイモンは、にっこりとわらったのだった。

 

 

「よかった、よかった、よかったー!大輔起きた!おはよう、大輔!」

 

「お、おはよう?どうしたんだよ、ブイモン」

 

 

まるで雪山登山の最中に遭難してしまった仲間が眠いと言い始めたから、寝たら死ぬぞ、と必死でたたき起こした隊長のような反応だ。イマイチ状況が飲み込めず首を傾げる大輔に、ブイモンは安堵の溜め息をこぼした後、そろそろと大輔から降りて横に座った。

 

なんか怖い夢でも見たのだろうか。主にもんざえモン関連のトラウマ映像なら今でも大輔の心のなかに深刻な傷を植えつけているため、心当たりはいくらでもあったのだが、それにしてもブイモンの反応は本気で怯えと恐怖にゆがんでいたのを思い出した大輔は、相当怖い夢でも見たのだろう、と考える。

 

 

大輔も前も見た気がする、という違和感をずっと拭いきれていなかったのだが、目が覚めて頭が動き出すと同時にようやく理解する。そういやオレ、昨日も似たような変な夢見た気がする。気がするんじゃなくて、きっとほとんど同じ夢、いや、夢の続きを見たのだ。

 

すとん、とずっともやもやしていたものがようやく理解できた大輔は、小さく息を吐いた。なんで今日はやけにはっきりと見た夢のことを覚えているのかはわからないが、相当強烈で意味不明な夢だった。そう結論づける。全部全部、もんざえモンが悪いのだ、と大輔は早々に夢を見てしまた原因を自分なりに結論づけた。

 

 

多分、もう覚えてないけど怖かったテレビ番組のことをうっかり思い出してしまったのだろう。夏休みの怖い話とか、ホラー映画とか、怖い怖いと分かっていてもついつい見てしまう大輔は、その日の夜になると風呂場にある鏡や洗面所の鏡を直視することができなくなり、部屋に引っ込む時もやたらと背後が気になってしょうがなくなる。

 

そして決まって、時計の音やクーラーの音といったいつもならば気にもとめないような音がすっかり気になってしまい、ぎんぎんに冴えてしまった頭がいろいろ空想してしまうのを必死で堪えて、タオルケットに丸まって震えながら眠るのだ。

 

でもそういう時に限って、ベッドの下に斧を持った大男がいるとか、目を開けたら真っ赤な服をきた女が立っているとか、アリもしない気配を感じ取ってしまい、ビクビクするハメになる。

 

 

夢のなかに逃げこんでも、全く同じような夢を見てしまい、目が覚めてもはっきりと覚えていることなどよくある。そして目が覚めた時間帯が、うっかり丑三つ時だったりしたが最後、泣きながら両親の部屋に逃げ込むハメになるのである。

 

こういう時、姉のもとに助けを求めると、おもしろがった姉がいろいろとこわいことが今まさに怒っているのだ、というアリもしないことを捏造しては、大輔を泣かせると知っているからとてもではないがドアを叩くことはできなかった。

 

 

大輔助けて、と金縛りにかかったフリをして、さんざん怖がらせてきたジュンの悪行など嫌というほど大輔は覚えている。忘れたい夢ほど全然忘れさせていくれないのだ。きっと今日見た夢も似たようなものなのだろう、と大輔は思った。

 

 

「大輔、またうなされてたけど、なんか怖い夢でもみた?」

 

「あー、うん、なんか変な夢みた。前は覚えてなかったけど、多分昨日みた夢の続きみたいなやつ?」

 

「どんなの?」

 

「え?えーっと、なんか真っ暗な場所にいてさ、こんなちっせえ欠片みたいなやつが光ってるんだ。雪とか蛍かと思って捕まえてみたけど、すぐ崩れちまったからわかんねーや。それがなんかいっぱいあって、すっげー綺麗だったのは覚えてる。すっげー寒かったけど」

 

「誰もいなかったのか?」

 

「んー、誰がいるとか全然分かんなかったなあ、だってホントに真っ暗だったんだぜ?ブイモンも太一さんたちもだーれの声も聞こえなかったから、多分俺だけ、かなあ。でも風が強かったからなあ」

 

「そっか。変な夢だなあ」

 

「そーだろ?しかも、なんか鈴の音とか女の子の声とかするし」

 

「女の子?大輔の知ってる子?」

 

「ぜーんぜん、しらねえや。聞いたことない子の声だった。すっげーちっさかったから、初めは風の音かと思ったんだけど、なんか違うんだよ。こっちに来てとか、私のところに来て、とか、変なことばっかいうんだ。誰だよ、とか、こっちってどっちだよ、とか聞いても教えてくれないんだ。今思うとすっげーこわいなあ」

 

「大輔、その子のところにいこうとした?」

 

「そりゃー、見渡すかぎり真っ暗な世界に一人ぼっちだったら、こわいし、寂しいし、一人ぼっちは嫌だろ?誰か他にいるんじゃないかって思ったら、もうそれだけしか考えてなかったなあ」

 

 

それに、と今思い出したように大輔は言った。

 

 

「なんか、あの女の子、泣いてた気がするんだよなあ。かわいそうになってさ」

 

 

男の子である大輔だって怖かったのだ。もし女の子があの場所にいたら、大輔よりもずっとずっとこわい思いをするに違いないだろう。もしかしたら、泣いていたのかもしれない。その場にうずくまってどうしようもなくて、誰かの助けを待っていたのかもしれない。だから大輔に、こっちに来て欲しいと必死で呼んでいたのかもしれない。

 

 

真っ暗で寒くて凍えそうな世界で、びゅうびゅう風に吹かれながら、ずっと一人ぼっちで立っているなんて、今思い出すだけでも身の毛がよだつ様なおそろしい状況である。そう思うと、大輔は途中で夢から覚めてしまったことを後悔した。今日見た夢では正体不明の明かりがあまりにも幻想的で、すっかり忘れてしまっていたけれども、朧気ながらも思い出した昨日の夢の中では、大輔は間違いなくずっとずっと怖い思いをしていたはずなのだ。

 

 

せめて女の子のところにいってから、一人ぼっちじゃないんだということを教えてあげてから目が覚めればよかったのに、と思うものの、覚めてしまったものはどうしようもない。そのことを口にした途端、ブイモンが硬直した。そして首がもげるのではないか、というくらいぶんぶん首を振って、ブイモンは大輔に叫んだ。

 

 

「ダメダメ、駄目だって、大輔!行っちゃ駄目!」

 

 

顔面蒼白である。もともとブイモンは青色の体をしているが、顔の部分は白いため、それを通り越して気分悪そうな顔をしている。全身真っ青である。なんか変な表現になってしまうが、事実なのだからしょうが無い。

 

 

「なんでだよ?」

 

「その夢の中で、なんか怖い思いしなかった?」

 

「え?全然。それだけだけど」

 

「大輔気づいてないだけだろ、それえーっ!オレびっくりしたんだから!」

 

「だーかーら、何があったんだよ、ブイモン」

 

「…………てた」

 

「へ?」

 

「どっかに連れてかれそうだったんだよ、大輔!」

 

「…………はああっ?!え?なんだよそれ、え?いつ?」

 

「大輔が寝ちゃったあとで、オレトイレ行きたくなったから、ちょっとだけ部屋から出たんだ。帰って来たら、あ、あ、あのへんが、なんか穴あいてた」

 

「あなあ?!」

 

 

言われるがままブイモンの指差す先を見た大輔は、なんのへんてつもない絵画が飾ってある真っ白な壁を見る。丁度大輔の真後ろである。思わず大輔はその場からそれとなく移動した。よくよく見れば、いくら寝相が行儀よいと言えない大輔やブイモンでも、ここまであからさまにそちらの方向に向かって、都合よくマクラやシーツ、毛布なんかを引っ張ったように蹴落とすことは不可能だろう。

 

 

ありありとブイモンの証言を裏付けるような情景が完全に残っているではないか。さすがに力持ちのブイモンでも、わざわざ大輔を怖がらせるためにここまで用意周到な準備をしているとは考えづらいし、大輔と仲直りしたばかりのブイモンが、また大輔とケンカするようなことを思いつくとは考えづらい。他の子供達がまだ眠っているだろうことは、時計で確認したから判明済みだ。

 

 

もんざえモン曰く大輔たちしか夜更かししている子供たちやデジモン達はいないようだし、早寝している子供たちやデジモン達がいないのも知っている。早起きなんて無理だろう。

 

さすがに寝起きどっきりで4時より前に仕込みをするとは考えられない。ひやりとしたものが込み上げてくるのが分かった。大輔は思わずブイモンの腕にしがみついた。どうやら知らず知らずのうちに、ホラー映画も真っ青な怪奇現象の犠牲者になりかけていたようである。

 

 

「こう、なんか、ぐにゃーってなってるトンネルがあったんだ。大輔、ずーっと寝てるまんまだし、そのまま吸い込まれそうになってたよ。オレがあわてて大輔ひぱって、なんとか起こそうとしても全然起きないんだ。もうすげーこわかった!」

 

「なんだよ、それええ。嘘だろお」

 

「嘘じゃないってば!オレ何回も何回も大輔って呼んだのに、全然気づかなかったんだろ?もう駄目かと思ったんだ。そしたら、大輔のもってたデジヴァイスが光って、そのトンネル、あっという間になくなっちゃったんだ」

 

「デジヴァイス?」

 

「うん、デジヴァイス。進化するときとおんなじ光が追っ払ってくれたんだよ」

 

「そ、そっか。そうなんだ。持っててよかった」

 

「大輔、きっとその夢のなかの女の子が大輔をどっかに連れてこうとしたんだよ。大輔優しいから、ほっとけなかったんだと思うけど、気をつけたほうがいいよ?それでもほっとけなかったら、オレ呼んでくれよな。オレも行くから。一人でどっか行っちゃやだぞ、大輔」

 

「おう、分かった。気をつける。そのかわり、オレが呼んだらぜーったいに来いよなブイモン」

 

「あったりまえだろ!オレ達運命共同体なんだから、ずっと一緒じゃなきゃ駄目なんだ!」

 

 

えへへ、と笑ったブイモンに、大輔は安心したように釣られて笑ったのだった。とりあえず、このことを太一達に知らせなければいけない、と大輔とブイモンは居ても立ってもいられず、太一の部屋に直行することになる。

 

だが、昨晩遅くに何度もトイレの同行に叩き起された太一とアグモンはすっかり寝不足となっており、夢と現実の区別がつかないまま、本当にあったのだと驚いて怖がっているだけだと解釈されてしまい、スルーされてしまう。

 

 

まだ4時である。子供たちもデジモン達も活動を早めるのは、あまりにも早すぎた。でも、もう一度同じ部屋に行くことがすっかり怖くなってしまった大輔とブイモンは、すっかり目が醒めている。夜更かししたため睡眠時間は極端に少ないが、変なテンションになっているのは否定出来ない。それが信ぴょう性をますます落としこんでしまっていた。

 

 

結局、朝早くに廊下を歩いている一人と一匹を発見したもんざえモンにより保護された大輔達は、電気をつけっぱなしのまま同じ部屋に寝させてもらう事になる。そして、すっかり寝坊してしまい、みんなに迷惑を掛けることになってしまうのだが、それは6時間後の話である。

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