「大輔え、なんでオレ達隠れてるんだよ」
「しーっ、静かにしろってば」
「太一のことが心配なんだろ?大輔。なんでこんな木陰から見てるんだよ」
「べ、別に心配なんかしてねえよ。太一さんは俺が心配なんかしなくたって大丈夫だろ、小学校5年生なんだから」
「じゃあなんで見に来てるんだよー、変なの」
「見に来てるわけじゃねーよ、お、俺はただ、その、話し合いはどうなってんのかなって気になっただけで」
「じゃあさっさと聞きに行けばいいんじゃない?大輔」
「だーもー、うっせえ。ブイモンは黙ってろよ」
口を塞がれてしまったブイモンは、むーむーと抗議のまなざしを向けるが大輔は聞く耳持たずで、ずっとこっそり木陰から様子を伺っている状態だ。こちらの姿がバレないように大輔とブイモンは、茂みの中にしゃがみ込み、そーっと目だけだして、もくもくと白い湯気が立ち上っている場所を見つめている。
もっと近づいたほうがいいかなあ、と大輔はつぶやいた。すこし距離があるせいかあの場所にいるはずの上級生組姿がイマイチ確認できず、なにを話し合っているのかよく分からない。シルエットすら確認できないことに舌打ちした大輔は、ブイモンにちょっとだけ距離を近づけようといった。
本当に素直じゃないんだから、とブイモンはこっそり大輔の背中を見つめながら笑った。置いて行かれないようについていきながら、パートナーを見上げる。太一のことが嫌いだ、と公言しておきながら、大輔はずっと太一と今日一日喧嘩以外の会話をしていないことが相当ショックな様子で、心あらずなことが多い。
ブイモンは気付いていた。大輔がとっている行動は、そっくりそのまま姉であるジュンと仲直りできないと口にしたときの大輔とよく似ている。本当に嫌いになったんなら、太一の真似をして付けている額のゴーグルなんてさっさと外して、どこかに捨ててしまえばいいのに、大輔は今のところそんなこと思いつきもしない様子で、相変わらずPHSやデジヴァイスと同じようにずっとつけっぱなしなしなままだ。
それを指摘してもいいけれど、そうしたときにきっと大輔は一瞬だけでも傷ついた顔をすることがブイモンには分かっているから、あえて言わないままだ。ブイモンの1番は大輔だ。
その大輔にパートナーデジモンとして必要とされているのだ、とはっきりと宣言してもらえたブイモンは、すっかり心に余裕ができており、以前のように少しでも大輔が他の人間やデジモンと仲良くなっていくのが嫌で嫌でたまらず、ハラハラ見たり、嫉妬にかられながら邪魔したりという行動は無くなっている。ちょっとだけ一歩離れたところから行動することにもガマンできるようになっていた。
もちろん、大輔のパートナーデジモンであるという地位が揺らぐような緊急事態になったら、何がなんでも邪魔する、何だってするという方針は変わらないけれど。ほんの少しだけ周りを見ることができるようになったブイモンは、自分以外に向けられる大輔の表情とか、行動とか、考えとか、言葉とか、いろんなモノを間近で見られるということも結構楽しいかもしれないとも思い始めている。それも含めて全部大輔なのだ。何で気づかなかったんだろう。
大輔はブイモンが一緒にいることを当たり前のように思っているし、ちょっとだけ自分が考えていることをブイモンだけにはこぼしたりしてくれるようになったのだ。満足な毎日がここにある。本来ならさっさと大輔の背中に回りこんで、ぐいぐいと背中を押すべきなのは分かっている。
慌てる大輔の様子が眼に浮かぶようで笑ってしまうが、抵抗なんて聞く耳持たずで大輔をさっさとあの湯気の向こう側に特攻させて、太一と仲直りさせたほうがいいのは知っているが、ブイモンの1番は大輔であって、太一でもアグモンでもないのだ。むしろライバルだ。
なんでわざわざライバルに協力しなくちゃいけないのか分からない。本人に言わせればきっと丈の言葉があったから、というに決まっているが、そんな事しなくたって大輔はきっと自分からそういうコトをするだろう。
なんにも心配なんていらないのだ。だからブイモンは大輔のあとを追いかける。これ、かくれんぼみたいで結構楽しい。太一達に見つからないように、こっそりこっそり行動するのは結構おもしろい。パートナーには内緒でブイモンはこの状況を楽しんでいた。
ブイモンは無邪気な子どものような性質を持っている。ブイモンのいう1番とは、どこまでも遊ぶこと、食べること、寝ることと同じくらい大好きという意味である。でも一つのことに集中すると一直線で、周りのことに気が回らなくなってしまうという悪い癖は、どうやらパートナーと同様らしい。
「大輔にブイモンじゃないか。そんなところでなにやってるんだ?」
2つの間抜けな声が上がった。
「なんだよ、人をバケモノみたいな反応して。どうしたんだ?」
「かくれんぼでもやってるの?」
ヤマトとガブモンがそこにいた。てっきり湯気の向こう側にいるとばかり思っていた大輔とブイモンの驚きは尋常なものではなかった。しかし、復活して状況を把握したあとの1人と1匹の反応は全く違った。
え、いや、その、とワタワタしながら動揺を体現している両手が訳の分からないジェスチャーをしている大輔の横で、違うよー、とブイモンはあっさりと白状して首を振った。
おいブイモン!、というまさかの裏切りに抗議の声が上がるが、どこ吹く風でブイモンは、ね、大輔と返した。まさかのパートナーからの追撃である。あー、うー、えーっと、と必死で頭を回転させながら言い訳を考えている大輔は、本当に隠し事や嘘を付くのが下手であるとこの場にいた全員に印象づけるのは言うまでもなかった。
ブイモンと大輔の会話を見ていたヤマトとガブモンは、顔を見合わせる。だいたいのことを把握したらしく、口元がほころんだ。げ、と大輔はあからさまに嫌そうな顔をする。ヤマトは自分だけが分かっていることをわざわざ得意げな顔をして誇示し、思わせぶりな言葉を重ねて、わからないという顔をする大輔に、まあ頑張れとニコニコしながら肩を叩くという印象が植えつけられている。
それを大輔はかっこつけ、とかクール、とか呼称している。きっと本人の耳に伝われば最後、また鉄拳が降りるのは分かっているのでわざわざ本人の前でうっかり口にするほど大輔は馬鹿ではなかった。
ヤマトからすれば、トラウマや悩みを抱えて奮闘する大人びた小学校二年生が、時折垣間見せるとてつもなく幼稚で微笑ましいギャップが楽しくて仕方ないだけである。
もちろんヤマトもガブモンも、大輔が太一に謝りたいが、どうしても踏ん切りがつかなくてグズグズしているのだと理解している。ここでするべきことも理解している。逃げ腰の大輔を捕まえて、ヤマトはしゃがみこんだ。目線を合わせて話せるのはヤマトのいいところである。だがガブモンは気付いていた。
ヤマトがみんなの行動を決める上で大切な、これからの進路という重大な決定事項を、まだ決められていないこと。そして、太一の意見とぶつかったまま平行線を辿り、仲介に入った丈とも3つどもえの争いとなってしまったこと。
挙句の果てに空からいい加減にしろと叱られた上、パートナーデジモンたちに落ち着けと説教された挙句、会議ごと強制終了させられてしまい、頭を冷やしてこいという無言の圧力に屈して、事実上追い出されたのだというあまりにも情けない事実を、全力で棚に上げる方針なのだと理解して、ちょっとだけジト目でヤマトのことを見つめていた。
冷ややかなパートナーデジモンの眼差しにめげることなく、全力で気づかないふりをすることにしたヤマトは、わざとらしく声を上げて笑った。もちろんそんなこと知るはずもない大輔とブイモンは顔を見合わせた。
みんなと一緒でない限り、絶対に大笑いしたりするような人ではないと知っている分、今この状況は事情を知らない大輔たちには恐怖でしかない。どうしよう、この人全然感情がこもっていない顔で笑ってるよ。怖い、すっげー怖い。やっぱり苦手だこの人。またヤマトの知らないところで大輔の苦手意識が大幅に上昇していた。
「太一ならあそこにいるぞ」
「……俺まだ何もいってないんすけど」
「空は洞窟の方を見てくるっていってたし、あそこにいるのは太一とアグモンだけだ。心配しないでいってこいよ」
「…………はい」
やっぱりこの人には隠し事をするのは不可能なのだと改めて感じた大輔は、観念した様子でがっくりと肩を落としたので気づかない。じゃあなんでヤマト達はここにいるのだという至極もっともな疑問を大輔たちが気づく余地も挟む隙すら与えず、ヤマトはたたみかける。
こっそりブイモンに話そうとしているガブモンの青い毛皮をそれとなく踏んづけながら、引っかかってべたんとこけたガブモンからの恨めしげな視線などどこ吹く風、ヤマトは行って来いと後押しする。
まるでコントのような不可解なヤマト達の行動に疑問を覚えながらも、大輔が頷いたのでそっちを優先することにしたブイモンは、全力でごまかしきれたと汗を拭うヤマトを目撃しながら、その場をあとにした。あとで聞けばいいや。
「太一さん」
「よう、どうしたんだよ、大輔。今は喧嘩するような気分じゃないからどっかいけよな」
拾いあげられたこぶしサイズの石が、ぼちゃんと音を立てて温泉の中に吸い込まれていく。広がっていった波紋は、ぐつぐつに立っている水面にあっという間に飲み込まれて、見えなくなってしまった。
「いやっすよ、俺も喧嘩する気分じゃないんで」
あー言えばこう言う。今まで冗談交じりの喧嘩をしたことはあった太一だが、本格的な喧嘩になるとなかなか手強い相手だと知った。てくてくてく、と太一のもとに歩いて行く大輔に、なんでこんな時にくるんだよ、と愚痴をこぼした太一は、はあとため息を付いた。
厄介ごとは次から次とやってくる、と太一は頭をかいた。大輔との喧嘩、ヤマトとの喧嘩、丈との喧嘩、そして空やデジモン達の言葉、図星ばかり指摘されてしまっては、いくら元気印の太一だってうまくいかないことばかりの現状、落ち込みたくなる時だってある。
気を効かせてくれたのか、さっきから姿が見えないアグモンに感謝しつつ、なんだよーとみんなに対する愚痴を温泉に向かって投げつけていたこの状況で、よりによって1番会いたくない奴が来てしまったのだ。最悪である。なんでみんな俺についてきてくれないんだろう、俺だって頑張ってんのに。努力に見合う成果が得られない現状は、相当なストレスなようだった。
空回りしているという自覚はあった。ただ勢いとテンションに任せてごまかしていただけで。そうでなければ、ヤマトにそれを残酷なまでに明確に指摘されたときに、カッとなってしまうことなんてありえないのだ。分かってるけど、どうしたらいいのか分からない。頭がぐちゃぐちゃしているときに、大輔が来てしまったのだ。言葉だって辛辣になる。
見るからに落ち込んでいる太一の姿に、自分が知っている自意識過剰なまでにポジティブな姿が全く見出すことはできない。
泣いたり怒ったりするのは当たり前だ、何をいっているのだ、と太一本人から言われたときは、少なからず幻滅していたが、心臓にナイフを刺されたような気がしたことを大輔は思い出す。今回はその比ではないけれども、太一に初めて相談したとき感じたもやもやが、今心のなかで渦巻いていると大輔は気づいて戸惑っている。
言葉の意味も理解していたつもりではあるが、大輔の心のなかでは到底納得出来るものでないのは言うまでもない。目を背けたくなるようなとんでもないショックを覚えながらも、大輔はもうここに来るときに覚悟は決めてきたので、怯むわけにもいかずそのまま隣にやってきた。
たった一言ごめんなさい、というだけにもかかわらず、なぜここまで躊躇と抵抗、葛藤の連続を体験しなければここまで来ることすらできなかったのか、イマイチ大輔本人は理解しきれていない。ここまで本格的な、ねじれに捻れた喧嘩は初体験だが、太一と大輔は軽口程度の言い合いならいつでもやっていたから、お互いに戸惑っている部分はある。
それにしたって、いつもなら大輔からにしろ太一からにしろ、ごめんなさいとさっさと謝って仲直りすればいいだけだと分かっているのにだ。なんでここまで言葉が重いのか大輔はわからないが、もう太一と喧嘩をするのは嫌だと思った気持ちは本物だ。だったらその為に行動すればいいことを大輔は知っていた。それは大輔からすれば相当な苦痛を伴う一歩である。
理想と現実の違いをまざまざと見せつけられる光景がある中で、最初の大げんかを目撃したときのように逃げるという選択肢もあったのに、あえてそれをすることはなく行動できているのは、紛れもない一歩前進であると言えた。こうして大輔は少しずつではあるが、ジュンお姉ちゃんとの仲直りに向けた経験を積んでいく、紛れもない成長を進めていた。
「空だろ」
「え?」
「俺達がここにいるって教えたの」
「違うっすよ。丈さんとヤマトさんです」
「あいつらー、嫌がらせかよ」
「嫌がらせってなんすか、それ。俺はただ太一さんがしんぱ」
「え?」
喧嘩中の後輩からの思わぬ言葉に、もう一投準備していた石ころが太一の手元から転がり落ちる。その石ころが温泉に落ちて、ぼちゃんという小さな音を立てた。両者の間に沈黙が落ちる。心配?と言い返した太一は、ぽかんとして瞬きを何度か繰り返していた。勢い余ってとんでもないことを口走ってしまったことに気付いた大輔は、あ、いや、その、違います!と慌てて否定する。
「俺が心配なんかしなくっても、太一さんが大丈夫なのはわかってますけど、その、えと、なんていうか」
「ぷっ、くくく、あははははっ、なんだよそれ、一緒だろ!俺のこと心配してきたのかよ、大輔!変なやつだなー、俺達今喧嘩してる途中だろ!」
「んなっ、なんで笑うんすか、太一さん!」
「普通喧嘩してる奴が心配でわざわざ来ましたなんて言う奴いねえよ!しかも本人の前で!だめだ、死ぬ、笑い死ぬって、やべえ、マジで止まんな、あははははっ!」
「いててててっ、叩かないでくださいよっ太一さん!」
突然腹を抱えて笑い始めてしまった太一は、息をするのも辛いのかヒイヒイ言い始めてしまう。涙目でばんばんと背中を叩かれてしまい、大輔は思わず咳き込んだ。なんだよ、もう、と予想外過ぎる反応をされてしまい、いたたまれなくなってしまった大輔は、すっかりすねてしまった。
しかし、いつの間にかいつもの調子を取り戻したらしい太一は、ニヤニヤとしながら大輔を見下ろしてきた。これはヤマトやガブモンから向けられた視線と同じものであると嫌というほど悟った大輔は、何とか逃げようとするが無理である。
この時の太一は大輔をからかったり、ちょっかいを掛けたりするためなら、何だってするようなとんでもない悪者顔をする。しまった、と思ったときには遅かった。へー、そっか、ふーん、と太一は冷や汗を浮かべる大輔に笑いかけた。
「俺のことが心配で来てくれたんだろ、大輔」
「だから、違うっていって……」
「じゃあ落ち込んでる俺を笑いに来たのかよ、ひでえなあ」
「そ、そんな事いってないっすよ!」
「じゃあ何だよ、ヤマトたちからの嫌がらせか?お前らぐるかよ」
「だから違うって!」
「じゃあ何だよ」
「うぐぐぐぐ」
こうなってしまったが最後、散々からかいたおしてくるのだ、このサッカー部のキャプテンは。大輔は不本意ながらサッカー部のチームメイトやクラスメイト達からいじられ役として見られている気配があり。基本的に怒らせても謝れば必ず許してくれること、そのことを何時までも引きずらずにさっぱり水に流してくれるというあっさりとしていて優しいところをみんな知っているためか。こうしてからかわれることも多いのだ。
サッカー部の中でも太一はある意味その筆頭でもあり、大輔はこういう所だけは嫌だったりするのだが、ようやく本調子に戻ってくれたらしい太一を見てしまうと何も言えなくなってしまう。
「そうっすよ、太一さんが心配でここまで来たんすよ!」
なかばやけになって叫べば、太一はまた声を上あげて、それはそれは楽しそうに笑った。今まで悩んでいたことが嫌になってしまうくらい、あっさりと太一と大輔は仲直りしていたことに気付いた。
「ありがとな、大輔」
「え?」
「えってなんだよ、えって。しっつれいだな、俺だってありがとうくらい言えるさ」
「あ、は、はい。その、ごめんなさい」
「あー俺もごめんな、秘密にしてくれって言われたのに。お前が頼りにしてくれるなんて、あまりにも珍しかったもんだから、ついついヤマトや空にも自慢したくなっちまってさ」
「なんでそこで空さん達が出てくるんすか」
「さーなー」
「えー、教えてくださいよ!」
「やなこった。ぜってー教えねえ!」
べー、と舌を出す太一に、イラッとした大輔は言い返そうとしたが避けられてしまう。やがて追いかけっこにしては、ずいぶんとお互い全力疾走しているマラソンが始まってしまうが、双方いつものことなので気にも留めていなかった。二人を仲直りさせるために頑張った影の功労者達は、茂みに隠れてにこにこと笑っていた。そんな穏やかな昼下がりをぶち壊す一声が飛び込んでくることになるなど、このときは誰も予想することはできなかったのだった。
「太一、太一、大変よ!丈先輩とゴマモンがいないの!」
血相変えて飛んできたのは空とピヨモン、アグモン、そしてブイモンだった。突然の情報に驚いて太一と大輔は慌てて空たちのもとに駆け寄ると、ぜいぜいと息を吐きながら空が状況を教えてくれた。洞窟の前に、ムゲンマウンテンに登ってくる、夕方までに帰ってくるから待っていてくれ、と刻まれたメッセージが見つかり、そこには城戸丈と書かれていたらしい。
光子郎達も荷物を取りに来ている丈を見たのだが、丈はいつもの通りな様子だったし、出て行こうと準備しながら、太一とヤマトの意見により折衷案として上級生がムゲンマウンテンに登り、帰ってくるまでみんな待っているということを聞かされた。
てっきりそれが話し合いで決まったものだとすっかり勘違いしていたため、引き止めるのは誰ひとりとしていなかったのである。まさかその上級生が丈のみだと誰が予想できるだろうか。メッセージだって普通に考えれば、上級生組を代表して丈が書いたと考えてしまう。
太一は丈の優柔不断な態度をみてイライラすることがあったので、喧嘩になってしまったが、その折衷案をきいたとき、太一やヤマトの意見にどちらも賛同しないで話しあおうと主張していた理由をようやく理解する。なんだよ、丈のやつ、しっかり考えてんじゃんか、なんでいってくれなかったんだよ。そしたら俺だって。
すっかり頼りないイメージがついていた印象がガラリと変わる。見直した。やるじゃん、丈のやつ。どうやら丈の考えを見抜いていたらしいゴマモンは、一人でムゲンマウンテンに行こうとしているパートナーと一緒に行くことを選んだらしい。
丈とゴマモンは正反対の性質であるため、よく言い合いをしているのを目にしていた子供たちやデジモン達は驚いた。なんだかんだで丈のことを1番理解していたのは、パートナーデジモンであるゴマモンだったということだ。
ムゲンマウンテンにはたくさんの凶暴で強いデジモンがいるのだ。ゴマモンはまだ進化できない。丈とゴマモンが危ないということを把握した太一達の行動は早かった。ヤマトは一緒にムゲンマウンテンに行きたい気持ちをグッとこらえて、下級生組を守るため洞窟で待っていることを選んだ。
ピヨモンから進化したバードラモンにのって、太一達と空が丈達を助けに行くということが決定する。そして、助けだせ次第、大丈夫そうだということが確認できたら、そのまま太一達は先に上る。空はバードラモンと一緒にヤマト達に様子を知らせて、安全だとわかったらみんなでムゲンマウンテンに上ることになった。
「どうしましょう、太一さん。丈さんがイライラしてるって分かってたのに、なんで話し合いしてる途中なのに突然来たのかオカシイって全然気づけなかった!ゴマモンと丈さんになんかあったらどうしよう!」
「落ち着けよ、大輔。大輔は悪くないだろ?」
「だって、多分丈さんがメッセージ書いたの俺達が行った後なんすよ!もっと早く空さん達に知らせてたら!」
「光子郎たちだって全然気付いてなかったんだ。俺なんて丈がイライラしてるなんて全然知らなかったんだ。そんなこと言うなよ。無理すんな。大輔は大輔のまんまでいいんだよ。丈がついた嘘を見ぬいて、俺達に知らせるなんてできっこないだろ?そんなことできたら大輔じゃないってみんな知ってんだから。ここは俺達に任せて待ってろよ。待ってんのも大輔にしかできないことだぞ!つか俺のことも心配しろよ!」
「はいはい、仲直りしたのは分かったから、早く行くわよ太一」
「が、がんばってください!」
進化の光りに包まれた火の鳥が大きな翼をひろげて、湯気を一気に吹き飛ばし、岩だらけの高い高い山へと登っていく。その様子を小さくなるまで見守っていた大輔は、空に言われたとおり洞窟でヤマト達と合流することにした。待っていることも大輔達にしかできないことだと言われても、どこか歯がゆい大輔は何度もムゲンマウンテンを振り返った。
「大丈夫だよ、大輔。太一達が負けるわけないだろ?」
「分かってるよ」
「だったら早くいこーぜ!みんな待ってるんだからさ」
「分かったよ」
「あーあ、やっぱり太一が羨ましいや」
「はあ?」
「太一はずるいよ。だって太一はオレが大輔に会うずっと前から知り合いなんだ。オレが知らない大輔をいっぱい知ってるんだ。それってずるい。勝てっこないじゃんか。太一なら大丈夫なんだって一番良く知ってるのは大輔だろー、大輔、絶対オレのことそこまで頼りにしてくれっこないんだ」
「ブイモンお前」
「でもいいんだ。絶対いつかオレが大輔の1番になるって決めたんだ。大輔、見ててよ、オレ頑張るから」