(完結)おれとぼくらのあどべんちゃー   作:アズマケイ

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第4話

じとりと汗をかいてしまうような、湿気を帯びた緩やかな風が熱帯雨林を潜り抜ける。天まで届きそうな位高い木々から葉っぱを落として、気を失っていた大輔を起こした。

 

ふかふかな落ち葉のベットならばさぞかし目覚めがよかったのだろうが、残念ながらちがう。僅かな陽だまりに群生する苔のような背丈の低い草木は、質の悪い人工芝のようなざらざら、でこぼこ、トゲトゲである。

 

 

なんか痛い、痛い、なんだこれ。目をこすりながら体を起こした大輔は、きょろきょろとあたりを見渡した。チクチクとする地面から逃げるように立ち上がる。どれくらい寝ていたんだろうか、体はすっかり葉っぱや土埃で汚れてしまっている。

 

これではまたお母さんに、こんなに汚してって小言を言われながら怒られるに違いない。あーあ、なんてちょっとだけ憂鬱になりながら、大輔は服の汚れを払ってみた。

 

 

身体にくっつき虫のように張り付いている葉っぱを払いのけた大輔は、あれ?と下を見る。雑草にしてはあまりにも蛍光色な緑色が見えた気がしたのだ。思わず拾い上げてみると、これまた不自然なくらい表面に凹凸があり、先端はイラストの葉っぱのようにギザギザしている。

 

どこかで見たことがあると思ったら、お母さんがいつも作ってくれるお弁当の中に入っているやつだ。おかずとおかずの間を間仕切りしてくれる葉っぱである。とっても大きいサイズだが間違いない。大輔の足元に払いのけられたのは、どれもプラスチックの葉っぱだった。

 

 

え、え、え、と予想外の出来事に、ようやく自分の置かれている状況が分かり始めた大輔は、思わずあたりを見渡した。砂利交じりの地面は、その一つ一つに小さな穴が開いており、ビーズが敷き詰められている。一度プラスチック特有の光沢を認識したら、大輔は問答無用で今いる所が違和感だらけだと気付いてしまう。

 

樹に生い茂っている葉っぱは、よく見れば本物の葉っぱは一枚もなく、プラスチックの葉っぱがびっしりと張り付けられているのである。熱帯雨林のように蔦や苔が生い茂る木々もプラスチック特有のでこぼこが目についてしまう。それなのに、熱帯雨林のような湿度と温度からくる体感は、間違いなくジャングルの中である。

 

 

「ここ………どこだよ……」

 

 

小さくかすれている声が大輔はますます不安にさせる。次第に大輔はここに至るまでの直前の出来事について思い出してきた。

 

朽ちた木の匂いがこもる祠からみた、季節外れの吹雪が真夏の緑を白銀が塗り潰した世界。透き通った巨大なカーテンが、はるか上空で裾を翻し、舞い踊る神秘的な光景。星が光っていると大輔に教えてくれたのは、たしか太一だったはずだ。きらりと光った瞬きは、一つ二つと増えていき、オーロラを縫うように増えていった。

 

大輔が瞬きするたびに星は増えていった。閃きは輝きとなり、次第に大きな塊となる。何か飛んでくると叫んだのは誰だっただろう。星が降ってくる!と大輔が気付いた時には、危ないから伏せろって言う太一の声が響いてきて、大輔は慌ててしゃがみこんだのだ。

 

 

怖かった。ばーん、と雪の柱が2メートルほど立ち上り、女の子の悲鳴が恐怖をあおった。衝撃の物凄さは思い出すだけでちょっと怖くなるほどのものを大輔に植え付けている。空からの落下物はいくつもあり、そのたびに大輔は必死で目を閉じていた。

 

おそるおそる顔を上げた大輔は、大丈夫?って声を掛けてくれた空にほっとして、はいって頷いた。緊張の糸が途切れそうになってしがみつきそうになったのだが、その先に金髪の男の子を庇った太一の友人が大丈夫かって心配そうに覗き込んでいるのが見えたのだ。

 

 

大輔ははっとした。現実に帰った。空はジュンではない。お姉ちゃんではない。だから、大輔が怖くてその場にしゃがみ込んだ時も、真っ先にその不安を払しょくするように歩み寄ってはくれなかった。

 

迷惑を掛けちゃだめだから、大輔は必死で泣きわめいている自分を叩きつけ、まだ若干の顔色の悪さが残っている空を気遣うために、笑って見せたのだ。

 

アクシデントを面白がっている様子の太一やカウガールの女の子をみて我慢した。好奇心に駆られて光の珠が飛来したところに飛んで行こうとしている光子郎をみつけた太一に、行こうぜ、と手招きをされて大輔は頷いて、それで、それで、それで?

 

 

「太一さーん!空さーん!誰かーっ!いたら返事してくれよっ!!」

 

 

思わず大輔は叫んでいた。柔らかい光を放っていたなにかが宙に浮遊してきた時のことを思い出してしまったのだ。綿帽子のような光の塊は、7つしかなかった。それぞれが7人の子供たちの手の中に飛び込んだ。

 

何だろうな、大輔っててっきり大輔の前にも表れたのだろうと勘違いしてつぶやいた太一に、大輔は何も答えることは出来なかった。もともと太一は思ったことを意味もなく独り言のようにつぶやく癖があるので、大輔が何か返事をしたとしても気にしないとはいえ、その時の疎外感は半端なものではなかった。

 

 

太一の手の中には、ポケベルのような液晶画面のついた、ずいぶんとごついデジタル時計が握られていて。その表面には光の粒子が霧のように輝いていて、特徴的なリズムを刻み始めたのである。それは目覚ましのアラームのようでもあり、警告の真っ赤なサイレンにも似ていた。

 

がんがんと耳に響くその音は、その時の大輔にはどこか後者のように聞こえた。その瞬間、突風にあおられたようにカーテンが揺れ始めたのだ。そのとき、大輔はなんとなく思った。呼んでるって思った。太一たちを誰かが呼んでいる。オーロラの向こう側に待っている誰かがいる。

 

 

そして、少なくてもその機械が降ってこなかった自分は、その中には入っていない。置いていかれる、そう思ったのに。オーロラが激しく揺らめき、天空から剥がされて降り注いで来た時、光の濁流は洪水へと変貌を遂げ、7人の子供たちと大輔ごと呑み込んで、空が一瞬爆発したように輝いたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、気がついたとき、大輔はテレビの中でしか見たことがない、ジャングルの密林の中にひとり倒れていたのだ。そばにいたはずの太一も空も、他の子どもたちの姿も見当たらず、さっきから必死に大声を上げて助けを求めているのだが、返事はなし。代わりに聞いたこともないような猛獣らしき声が聞こえてきて、恐怖のあまり立ちすくんでしまったほどである。

 

 

どうしよう、と大輔は思った。

 

 

迷子になったらその場からなにがあっても動くなと、大型ショッピングモールに家族連れで買い物にいくたびに、ジュンから聞かされていたためか、体に染み付いていた。闇雲に動き回られるとすれ違いになったり、時間が掛かったりして二度手間で迷惑をかけるだけだから、と何度となく叱咤されてきたのだ。

 

泣きべそかいて母親にすがった幼少期、もうこのころから既に姉は冷たい目で自分を見ていた気がする。

 

 

お客様サービスセンターで両親を待ちわびる子供は、誰もが無事でよかったと笑顔で頭を撫でもらったり、手をつないで帰っていたのに、姉にそういう事をされた記憶はない。

 

探せど探せど、姉からの愛情を感じ取れるような思い出が、皆無だという事実が重くのしかかる。そのことに気付いてから何年経っただろうか、大輔は姉に弟として愛されることを半ば諦めていたのかもしれなかった。

 

だから、なおさら、無意識のうちに姉として、兄として、重ねてみていた太一と空がいないという現実は、大輔にとって凄まじいダメージを与えていた。ましてや、無意識のうちに置いていかれることを自覚していた状態で、共に連れ去られてしまったという現実は、ますます大輔を混乱させていた。

 

 

泣きそうになるのを我慢して、必死に呼びつづける大輔の声が響くことなく密林の中に溶けていく。どうしよう、どうしよう、とパニック状態になりつつあった大輔。

 

首にかけられていたPHSに気付いてあわてて母親に連絡しようと操作するが、圏外という表示が無常にも記されただけだった。途方にくれる大輔は、無意識のうちにPHSを両手で握り締め、祈るような思いで待っていた。

 

 

いつも待っていれば必ず誰かが声をかけてくれたのだ。淡い思い出が、彼の性分である無鉄砲を抑えこみ、直感で進んでいくという無謀な行動を抑制していた。彼がその自由奔放な行動を発揮することができるのは、心に余裕が有るときだけである。

 

まだ幼い彼が突然置かれた環境を楽しむことができるような楽天さは持ち得ていなかった。その判断はかねがね正解といえる。

 

 

現在彼がいるのはファイル島のトロピカルジャングルと呼ばれる密林地帯だ。中心部に位置する亜熱帯をはずれ、海岸や大河域に多いマングローブ域に大輔はいる。現在彼が見つめている先の山道は崖が待ち構えていた。

 

しかし、待っていれば誰かが助けに来てくれる、という淡い期待は、この日を境に木っ端微塵に粉砕することになる。

 

 

がさり、と音がした。

 

 

ほっと安堵して大輔が振り返ると、巨大な影が落ちる。大輔は一瞬呼吸の仕方を忘れてしまった。なぜなら、彼の何倍も大きな大きな巨体が彼を見下ろしていたからである。真っ黒な体をした大男が、4枚の赤黒く染められた血のような羽を揺らし、しっぽをゆらし、ゆうゆうとこちらに近づいてきたからである。

 

表情が読みとれない銀色の仮面からは、鋭いツノが二本頭上に突き出している。その鈍色の仮面に歪んでうつる、今にも泣きそうな子どもが自分であると気付いた大輔は、あわててかけ出した。大男は無言のまま、凄まじいプレッシャーを帯びながら迫ってくる。なんなんだよ、あいつ!と大輔は訳がわからないまま絶叫した。

 

 

走って走って走って、追い立てられるように走っても、低学年の体力と持続力ではどうしてもすぐにバテてしまう。時折後ろを振り返りながら一直線に逃げていた大輔は、突然広がった視界に戦慄を覚えた。

 

ころころと蹴飛ばした石が奈落の底へと誘わんとして、口を開けて待っている断崖絶壁。退路はない。振り向けば、正体不明の怪物がその鋭利な爪と腕にあるブレードを豪快に振り上げているところだった。

 

 

無我夢中で助けを求めて叫んだ大輔の目前に、理不尽にも容赦なく暴力が襲いかかる。飛び降りるかどうか必死で考えた大輔は、その豪腕で体ごとたたきつぶされて殺されるくらいなら飛び降りてやる、と即決して、決死のダイブをはかった。

 

これがひとつのきっかけであったかもしれない。少なくともこの日から、大輔は自分から動かないと誰も助けてくれないのだと、強烈に思い込むようになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無防備に投げ出された小さな体を受け止める何かが、横からサイバードラモンのもとを飛び去った。空振りした豪腕から振り下ろされた爪が、さっきまで大輔がいた断崖絶壁をえぐりとり、奈落の底へと轟音をたてて落としてしまう。そして目前で獲物をかっさらった、新たな敵を無機質な視線で見つめるのだった。

 

 

「おい、おーい、大丈夫か?起きろ、やばいんだから!」

 

 

たしたし、と軽く叩かれ、記憶が彼方に飛んでいた大輔が目を覚ますと、ものすごい風圧が大輔を襲う。ここは?と小さくつぶやいた大輔に、風圧から守るように少年は壁になりながら笑った。危なかったなあって言われて、くしゃくしゃに頭を撫でられて、じわりと涙腺がゆるむ。

 

助かったのだという事実が強烈に大輔の中で必死に押し殺していたものをずるずると押し上げていく。ぽろぽろと前から後ろから零れ落ちていく水玉に少年は驚いた顔をする。少年の顔に気付いた大輔は、反射的に頭に着けていたゴーグルをかけて表情を隠してしまった。便利だなソレ、と太一くらいの謎の少年が苦笑いする。

 

 

ほら、捕まれよ、と手を差し伸べられ、わけがわからないまま、真っ青な何かに捕まった大輔は、自分が何かの動物の上に乗っており、それが大きな羽を羽ばたかせていることにきづく。大きな尻尾とまるで恐竜のような姿。

 

ゲームで出てくるドラゴンを彷彿とさせるそれ。驚きのあまり手を離しそうになり、暴れると落ちるってば!と少年に指摘され、慌てて少年の体にしがみついた大輔は訳がわからず少年に疑問をぶつける。若干鼻声なのは目をつむってくれるらしかった。

 

 

「え?え?ここどこ?こいつなに?!えええっ?!」

 

「だから暴れるなよ、落ちるってば!あーもう、賢くらいの癖に落ち着きない奴だなあ。俺は遼。秋山遼。アンタは?」

 

「お、おれ?オレは大輔。本宮大輔」

 

「そっか、大輔。オレがさっき、崖から落ちたアンタを助けたんだ。な?エアロブイドラモン」

 

「そうだよ、大輔。崖から飛び降りるなんて危ないじゃないか!なんでオレ連れてないんだよ、はぐれたの?」

 

「うわっ?しゃべった?!」

 

「何いってんだよ、大輔。オレだよ?進化の姿違うけど、覚えてないの?!」

 

「はあっ?オレのこと知ってんのかよ、お前!」

 

「あれ?おかしいな。人違いじゃないのか?」

 

「違うって!オレが大輔のこと見間違う訳ないじゃないか!

オレだよ、大輔!パートナーのブイモンだよ!覚えてないの?ホントに?」

 

「ぶ、ブイモンだか、なんだか知らないけど、オレアンタたちのこと知らないって。なんなんだよ、ここ!オーロラに巻き込まれて気づいたらここにいたんだけどっ」

 

「………おい、エアロブイドラモン、どーいうことだよ。ゲンナイさんが言ってた時間軸じゃないじゃないか!」

 

「お、オレに言われても知らないよ!オレはただゲンナイさんが言うとおり、この先にあるアジトをぶっ潰せっていわれただけで……!」

 

「くっそ、こんなところにまで時間の歪が起きてんのかよ!入るゲート、やっぱとなりの奴であってたんだ。間違えた!」

 

「なにわけ分かんないこと、話してんだよ、あんたら!」

 

「詳しいことはあとで。まずは、サイバードラモンをなんとか正気にしなきゃ」

 

「黒い歯車で操られてるんだよ、遼!」

 

「ったくもー、強い奴の気配がするって勝手に飛び込んどいて、なに操られてんだよ、バカ!早く目覚ませよ!」

 

 

 

とりあえず、サイバードラモンと呼ばれたバケモノは、本来遼の仲間らしい。遼がエアロブイドラモンに指示している方向を凝視すると、確かに後ろの背中に黒い歯車みたいなものが突き刺さって見えた。

 

好戦的らしいあのバケモノが飛び出していって、もともと来る予定ではなかったところに来てしまったらしいが、大輔はそのおかげで命拾いしたわけで、そのゲンナイとか言う人に大輔は密かに感謝した。

 

 

どうやって壊すのか遼は困っている。サイバードラモンがこっちに気付いて、一気に急上昇したのだ。逃れるように大きく旋回する図体にしがみつきながら、大輔は、勇ましく仲間を救おうと頑張る遼の姿を間近で見たのである。それはそれは、強烈なインパクトを持っていた。なにか止めるものがあれば、とつぶやいて必死に考え込んでいる。

 

 

エアロブイドラモンが言うには、サイバードラモンは容赦なく襲いかかってくる猪突猛進型だから、背中を向けることは絶対にありえない上に、エアロブイドラモンのスピードでは撹乱は無理らしい。

 

だからといって逃げるのは仲間を見捨てるからできないと必死で打開策を考えている遼。なにもできない自分を歯がゆく思いながら、大輔はふと有ることを思いついてリュックの中を探った。

 

 

「なあ、これ、使えないかな?」

 

「おおっ!サンキュー、大輔!これならなんとか行けるかも!よっしゃ、行くぞエアロブイドラモン!あの脳筋の目を覚まさせてやんないと!」

 

「OK,遼。さっすが、大輔。オレのパートナーだけあるよな!」

 

「だからお前誰だよ」

 

 

さっぱりついていけない大輔は、とりあえず目の前の驚異に集中することにした。チャンスは一度だけ。緊張のあまり震える手を必死で堪えながら、大輔はエアロブイドラモンの頭の上までよじ登ると、追いかけてくるサイバードラモンをみた。

 

遼が後ろから白いデジタル時計のようなものを取り出して、構えている。なんかのどっきりメカなのだろうか。遼が後ろから3,2,1,とカウントしてくれる。せーの!で大輔は使い捨てカメラのフラッシュをサイバードラモンにかざした。

 

 

「よっしゃ、今がチャンス!」

 

 

一瞬まばゆい光に反射的に振り払う動作をしたサイバードラモンの隙をついて、大きく旋回したエアロブイドラモンはその口から豪快にビームを発射した。

 

 

「Vウイングブレード!!」

 

 

放たれた光線が黒い歯車に直撃する。その衝撃により、豪快に吹っ飛ばされたサイバードラモンが岩壁に縫い付けられた。

 

 

「だ、大丈夫なのか?味方なのに!」

 

「大丈夫だって、あの戦闘狂。ほっといてもピンピンしてるから」

 

「だな」

 

「ありがとうな、大輔。お前のおかげで助かったよ」

 

 

くしゃくしゃ、と頭をかきなでられて、大輔は照れくさくなって、そんな事はないと首を振った。弟という立場でずっと生きてきた大輔にとって、人から頼りにされて感謝され、そして褒められるという体験は数えるほどしかない。屈託ない笑みを向けられ、ありがとう、と口にしてくれた遼は、大輔にとって凄まじい衝撃を与えたも同然だった。

 

人から頼りにされるということは、こんなに心が暖かくなるものなのか、くすぐったくなるものなのか、と初めて知った感覚に戸惑いを隠せない。生まれて初めて、対等に認めてもらえた気がして、大輔は気分が昂揚するのが分かった。

 

 

太一が下級生のサッカー部員に対して「頼れるお兄ちゃん」であろうとする理由が少しだけ分かったきがした。この体験は、大輔の中に強く刻み込まれ、太一と同様に少しでも人から頼りにされる人間になりたい、という大輔の初めて抱いた希望をはっきりと自覚させるきっかけとなる。いまはまだ、その時ではないけれども。思い出したように、大輔はつぶやいた。

 

 

「ところで、ふたりとも、だれ?なんでおれしってんの?」

 

 

エアロブイドラモンと遼は、どこか気まずそうに目を逸らした。微妙な沈黙の中、先程紐なしバンジーを決行した崖へと再びエアロブイドラモンは、大輔を下ろしてくれた。ようやくお待ちかねの質問タイムである、筈なのだが。遼とエアロブイドラモンはさっきの潔さはどこへやら何やら焦っている様子である。さすがの挙動不審に大輔はジト目で睨みつけた。

 

 

「なあ、ここってどこ?渓流谷の近く?」

 

「いや、違うよ。えーっと、その、あえて言うなら、異世界、かな?」

 

「えっ?!異世界?どういう事だよ」

 

「うーん………なんていうか、どこまでいっていいのやら、ええっと、その」

 

「どうかした?」

 

「………驚かないで聞いてくれよ、大輔。実は俺たち、未来から来たんだ」

 

「えー」

 

「信じてくれないの、大輔?!」

 

「だから、なんでお前はオレのコト知ってるんだよ」

 

「そりゃ、オレと大輔は運命共同体だからだよ。パートナーなんだから」

 

「だから、そのパートナーってなんだよ」

 

「だーもー、エアロブイドラモンは黙っててくれよ、ややこしい。俺達はとある事情で未来から来て、こうして敵と戦ってるんだ。大輔たちを助けるために」

 

「助けるため?」

 

「信じてくれとは言わないけど、本当なら俺たち大晦日に会う予定なんだ」

 

「大晦日?………意外とすっごい近くの未来だなあ」

 

「まあ、そういうわけで、未来から来たから、いろいろ喋っちゃうと未来が変わっちゃうっていうか、俺達と大輔が出会った時点でいろいろやばいかもしれないけど、これ以上の変化はこわいから黙っててくれ」

 

「えー」

 

「頼むよ、このとおり!」

 

 

太一ほどの年上の人間に頭を下げられることに慣れているはずもない大輔は、なんだか申し訳なくなってきて分かったと頷いた。あからさまにほっとした様子で遼は胸をなで下ろす。

 

 

「その様子だと、まだブイモンとは会ってないみたいだな。これから会う仲間なんだ、大切にしてやってくれよ」

 

「そっちのオレにもよろしくね、大輔」

 

「なんか意味分かんないけど、分かった」

 

「ここにいれば助けはくるから、安心してよ」

 

「未来予知?」

 

「まあね」

 

 

わかったと頷いた大輔に、じゃあ半年後に会おうな、と意味不明な言葉をのこして秋山遼とエアロブイドラモン、そしてサイバードラモンは空の彼方に消えてしまったのだった。

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