(完結)おれとぼくらのあどべんちゃー   作:アズマケイ

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第66話

「みんなひものになっちゃったー」

 

 

だから、食い物から離れろ、この食いしん坊!大輔とタケルの心は一つになる。わーん、と泣きだしてしまう相棒を泣きやませながら、とりあえず大輔達は、頑張って頑張ってやっとこさ辿り着いた、展望台までやってきた。

 

灼熱地獄のサバンナのど真ん中である。太一、丈、光子郎、ヤマトは、みんなコカトリモンによって、ロープでぐるぐる巻きにされて、なんと天日干しにされていた。大変である。脱水症状を起こし始めている。このままでは、ホントに死んじゃうかもしれない。

 

 

だから、ホントに緊迫したシーンなんだから、ひもの、ひもの、連呼すんのやめてくれ!切実な大輔の声に、でもーとぐずるトコモンである。タケルと一緒だ、こいつどこまでも子供だ!大輔はこっそりそう思った。タケルは大輔のリュックからトコモンを取り出す。

 

ふえ、どうしたの?と顔をあげたトコモンに、タケルは言った。

 

 

「トコモン、お兄ちゃん達助けよう。トコモンの泡なら、このアミ、とかせるよね?」

 

 

なにせ、コロモン達がどんなに頑張っても壊せなかった、あの頑丈な鉄格子の牢屋から自力で脱出しやがったのである、このトコモンの進化前のポヨモンは。逃げ出してしまったガジモン達が鍵を持って行ってしまったせいで、途方に暮れていたのだが、いらない徒労だった。あの時の衝撃は、可哀想で可哀想でたまらなかった、泣いていたタケルの涙をひっこめた。

 

 

やっぱり、一回生き返ったら、強くなるって言うのは本当らしい、と大輔の話を聞いて改めて思うタケルである。記憶が継承されるのがランダムであるというリスクがある以上、何が何でも絶対に、二度とエンジェモンが死なないように、僕が頑張らなくっちゃ。

 

決意を新たにしながら、よろしくね、とトコモンに言う。うん、と頷いたトコモンは、一生懸命、超強化された酸の泡で、選ばれし子供達を救出した。どうやって?決まっているだろう、下はプールである。ざっぱーんという豪快な水しぶきが上がった。

 

 

「ば、ばか、何やってんだよ、太一さん達、縛られてんだぞ!」

 

「「あ」」

 

 

あわてて彼らは、階段を駆け降りることになる。そして、タケルとトコモンはみんなに叱られ、止められなかった大輔は怒られた。

 

でも頑張ってくれてありがとう、とびしょ濡れになってしまった彼らから褒められたので、最年少組は顔を見合わせて笑うことになる。ちなみに、コカトリモンは、空を飛ぶことが出来ないという欠点を空に見抜かれ、バードラモンによって空中戦を展開されて、足が止まる。

 

そこにすかさず、大きな大きなサボテンとなったトゲモンの眼つぶし攻撃からのアッパー、そして火によって丸焼きにされた挙句に、船の煙突にホールインワン、することになる。

 

 

もちろん、直行したのは脱衣場である。バスタオル姿の空とミミの姿は、梯子から降りようとしていた大輔とタケルの記憶から即座に抹消された。アングル的にピヨモンとパルモンすら気付かなかったのが救いである。トコモンは言ったら絶交だって恐ろしいことを言われたから、こくこくと無い首がもげるくらい頷いたので、事実は闇に葬られた。ミミ達がコカトリモンをやっつけてくれたおかげか、パートナーデジモン達は漬物石から何とか生還を果たした。

 

この船は危険である。そう思った彼らは、大暴れしてヌメモン達をぶっ潰すついでに、火事場泥棒上等、ありったけの食料を持って、子供達と合流することになる。いざ逃げようとしたら、突然動き始めた豪華客船が襲いかかってきたから、さあ大変。必死で逃げまくっていた選ばれし子供達とデジモン達の前に現れたのは、巨大なサボテンである。それに押し返される形で、豪華客船とコカトリモン達はそのまま空のお星さまになってしまった。

 

 

ちなみに、豪華客船につながっていた黒いケーブルを見た丈は、あれ?と首をかしげた。千切れて、爆発してしまって、もう確認のしようがないけれども、いつだったかコロッセオでも似たようなケーブルがあって、転んでしまったのを思い出す。でも、サボテンの花からあらわれた紋章が、ミミのタグにおさまったので、すぐにそれは忘れてしまった。黄緑色のやわらかい色をしたタグである。二重の丸があって、それを涙みたいな形をした模様が囲っている。ほしくなかったのになあ、とミミが小さくつぶやいている。

 

 

でも、すぐに、ぐーってお腹が鳴ってしまい、赤面、はっとしたらみんな笑っていたので、もーいやあ、と頬を膨らませて拗ねてしまった。そして、そういえば、腹ペコだと気付くのだ。そして食堂で食べた子供達を除いて、パートナーデジモン達が持ってきた食料をみんながわけっこして食べることになるのだった。アグモンは食べたけど、太一だって自分の分は半分以上アグモンにあげたから食べてない。なんでオレだけ飯抜きなんだよ!と怒っても、誰も相手にしてくれない。

 

 

大輔!と切実に呼んでくる先輩が可哀想になって、大輔はリュックを降ろして、お菓子を出そうとしたのだが、何故だか満点の笑みの空と、不自然なまでに不機嫌なブイモンによって止められてしまう。結局、みんながご飯を食べた後で、太一はようやくご飯にあり付くことが出来たのだった。げに恐ろしきは食い物の恨みである。この日から、何があっても食べ物は不可侵という不文律が生まれた。

 

 

「なあ、ブイモン、ちょっと話があるんだけど」

 

 

空に事情を説明した大輔は、きっちりと許可を得てから、ブイモンを連れて、一緒に少し離れた所に行くことになる。見送るタケルとトコモンに頷いて、大輔はむかった。どーしたの?大輔、とキョトンとしたブイモンに、大輔は勇気を出して聞いてみた。

 

 

「なあ、ブイモン。なんであの時、『オレのこと守ってくれるか』なんて言ったんだよ」

 

 

ブイモンはショックを受けたような顔をした。ブイモン?と首を傾げた大輔に、ぺたん、とブイモンはへたり込んでしまったのである。

 

 

 

 

 

 

きっと大輔ならわかってくれるってブイモンは高望みしすぎたのである。ファイル島で本宮大輔という少年と出会って、サーバ大陸に上陸してからも続く旅路は、この世界においてもう1か月に到達しようとしており、ブイモンが勘違いするのも無理はない。

 

いろんなことがあった。だから、大輔とブイモンの絆は誰よりも強固で頑丈だ。それは誰の目にも明らかなくらい、確実なものだったから、安心してしまったのだ。それが時に悲しいくらい一方的なものになってしまうことをブイモンは知っていたはずなのだが、大輔と以心伝心出来る運命共同体に近付くたびに嬉しくて、すっかり忘れていたのだ。

 

 

はっきりといいたいことをいわないと本宮大輔という少年は分かってくれないという事実を。大輔は、まだ小学校2年生である。そのことをさっきの一言で思い出したブイモンは、一気に高揚していた気分がどん底まで沈んだのだ。理由はいろいろある。

 

ブイモンががんばらなくっちゃ、大輔の一番になれないという、一から全部関係を構築していかなくてはいけない、という非常にめんどくさくて、難しくて、つかれてしまう環境に現在進行形で置かれていること。

 

なぜなら大輔とブイモンの心の中には、年月を経るにつれて大好きのヒエラルキーの中でも確実に殿堂入りという別格に昇格していくであろう、なっちゃんという少女デジモンがいる。生まれて初めて、大輔に対して、大好きだって言い放って消えていった、愛される天才らしい最期を遂げた最悪なまでにずるい、大好きな大好きななっちゃんがいる。

 

ブイモンにとっても大輔にとっても同じである。呑気に身構えていたら、パートナーデジモンだからって安心しきっていたら、大輔の一番は確実になっちゃんにとられてしまう。そんな悪夢に時々ブイモンうなされるのだ。そんなこと、我慢できるわけないだろう。本宮大輔のパートナーデジモンは、ブイモンただ一匹だけであるはずなのだから。

 

 

だから、ずーっとずーっと、頑張ってきたブイモンである。うっかり太一の紋章を見て、一番大切なものをとられてしまうという、200年前の忘れかけていた最悪の記憶を思い出してしまったから、なおさら拍車がかかる。非常に機嫌が悪かった。

 

非常に居心地が悪かった。これ以上ないくらい、不満とか、いらいらとか、そう言うのがたまっていた。心の中では思っていても、絶対に口に出して言わないはずのことを、うっかり太一に暴露してしまうくらいに、ブイモンは結構無理をして頑張っていた。それでも大輔の一番になりたくって、ずーっと自分の気持ちを我慢して、頑張り続けていた。

 

本来ならそういうこと、この上ないほどの苦痛であるにも関わらず。大輔がブイモンのことを見てくれるためには、まずはジュンお姉ちゃんのことを解決しなくっちゃいけないのだ。そのためには、みんなに大輔のことを知ってもらわなくっちゃいけない、だからブイモンは大輔のために頑張らなくちゃいけない。

 

 

なんで?おかしいだろ。そんなことしたら、大輔がみんなを頼るようになっちゃうじゃないか。みんなが大輔の一番になっちゃう確率が上がっちゃうじゃないか。でもそうしないと大輔は自分のことばっかりに一生懸命で、ぜーんぜん、ブイモンのことを見てくれない、今の現状がずーと続くことになる。

 

それもいやだ。そっちのほうがいやだ。だからオレは頑張ってるんだ。ずーっとずっと頑張り続けてきたんだ。なんでオレがこんなことしないといけないんだよ、みーんな、そんなことしなくってもいいのに!そんなジレンマを抱えながら、ブイモンは頑張っていた。

 

 

そしたら、大輔が言うのである。なんで、あんなこと、言ったんだよって。ブイモンが大輔のために言ったのに、ぜーんぜん大輔は、これっぽっちも、ブイモンの気持ちを分かってくれていなかったのである。意図を把握してくれて、いなかったのである。

 

ブイモンはただ、大輔の一番になりたくって、ホントはしたくないことをやって、ホントはやりたくないことをやって、悲鳴を上げるパートナーデジモンの本能を我慢しながら、戦いながら、ただひたすら大輔のためだからって頑張り続けていたのに、全然分かってくれていなかったのである。あんまりだ。ひどい。酷過ぎるよ、大輔。

 

 

1ミリくらいは伝わっているかなー、オレの気持ち、と褒めてもらえない努力を続ける、気付いてもらえない裏方の寂しさを慰めるために健気過ぎる期待をしていたブイモンは、もうプッツンと何かが吹っ飛ぶのを感じた。そして、知ることになる。

 

ああそっか、思い出したぞ。なんで、オレがここまで大輔のことが大好きなのか。なんでここまで1番になりたいと思うのか。そっか、大輔、分かったよ。これが「怒る」ってことなんだね。怒らなきゃいけない時って、こういうときなんだね。分かったよ。

 

 

ブイモンは大輔を見上げた。鬼気迫る様子のブイモンに、ぎょっとした大輔が、どーした?と思わず気押されながら聞いてくるのを確認して、ブイモンはただ静かに、大輔に言ったのである。いつものブイモンじゃなくて、怖くなって、逃げようと及び腰の大輔が逃げないように腕を掴んで、真っ赤な燃え上がる激情は、怯えているパートナーをまっすぐに見上げた。

 

 

「大輔、オレ、よーくわかった。もうわかったよ、大輔。大輔がすっげー分からずやだってこと、よーく分かった。ぜんっぜんオレの気持ち、分かってくれてないんだって分かった」

 

「な、なんだよ?」

 

「大輔え、オレもう怒ったぞ」

 

「え?」

 

「大輔、覚悟してよ。オレ、もう我慢すんのやめる。オレ、もう引かないよ。大輔が分かるまで、分かってくれるまで、何度だって言ってやる。オレさ、なんで大輔のパートナーデジモンになったのか、分かった気がする。オレ、言ったよね?大輔の1番になるためなら、何だってするって。もうなりふり構ってらんないから、言うよ。よーく聞いてよ、大輔。ずっと言えなかったことがあるんだ。ずっと聞かれなかったから黙ってたことがあるんだ」

 

「え?なんだよ、それ」

 

「オレのこと」

 

「ブイモンのこと?」

 

「ううん、オレ達のこと、かな。もう、みんな、いなくなっちゃったと思うけど」

 

「いなくなっちゃった?どういうことだよ?」

 

 

出来ることなら、最後まで言いたくなかったことである。最終手段としてとって置きたかったことである。出来ることなら、ブイモンがちゃんと大輔と一緒に育てていきたかった一番という存在である。

 

でも、ブイモンの途方も無い大輔に対する一途なまでの思いすら、踏みにじってしまったパートナーに対する怒りは、もう、ブイモンでもどうにもならなくなっていた。だから言う。直接言わないと、ぜーんぜん気付きもしてくれないと分かってしまったから言う。全部全部大輔のせいなんだからね、とブイモンは今にも泣きそうな顔をしたまま、笑った。

 

 

「オレ、この世界に、デジタルワールドに一人ぼっちなんだよ、大輔」

 

 

その言葉に、大輔は凍り付いた。え?なんで?デジモンは同族でも暮らすって、言ってただろ、と言われる。ああ、やっぱり勘違いしてたんだ、とブイモンは理解する。大輔はきっとブイモンがブイモンが沢山いるどっかに住んでいて、大輔達がやってきたから。

 

あの森に来たんだって勘違いしていたのだ。まずはそこから教えてあげなくちゃいけないのか、と溜息である。どういうことか説明しろって大輔はいう。何にも知らない大輔は、ブイモンに言った。言質はとった。もう、戻れない。ブイモンは、覚悟してよ、と言った。

 

 

「分からず屋の大輔に教えてあげる。ぶつけてあげる。そんなに言うなら、ちゃんと受け止めてくれよ、受け止めてよ、オレの大好きがどういう意味かって。大輔がオレにどんだけ酷いことしてきたのか、教えてあげるよ」

 

 

この瞬間に、これからの本宮大輔とブイモンの関係性は決定された。このときのブイモンのことを思い出すたびに、大輔は思うのである。俺、もしかして、とんでもない奴がパートナーデジモンなのかもしれないって。気付いた時には、もう遅すぎたけれども。なーに言ってんだよ、大輔、今さらだろ、とどこまでも打算的なパートナーはいつだって隣で笑っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間だって人間はどういう奴なんだって聞かれてもすぐには答えることが出来ない。それはデジモン達も一緒である。選ばれし子供たちのパートナーデジモン達は、デジタルワールドってどういう世界かって意識したことも無ければ、知りもしないことが沢山あるし。

 

 

知らなくったって生きていけることが沢山あるから、選ばれし子供達に言っていないことが、それはもう山のようにあるのである。例えば、デジモンには、属性と呼ばれるものが存在するっていうこととか。

 

すべてのデジモン達は、特殊なデジモンを除いて、「ワクチン種」、「データ種」、「ウィルス種」に分類され、それぞれは“じゃんけん”のような相互関係を構築している。同一の種族であるデジモンでも、属性が変わる事で見た目にも影響がでるデジモンも存在する。

 

例えば、色が変わったり、性格が変わったりする。幼年期のデジモンは、基本的には属性は無いと考えられているが、データ種であることが多い。簡単に分類分けすると、こうなる。

 

 

「ワクチン種」は、ウィルスからの攻撃を防ぐ役割を持ち、本能的にウィルスに攻撃しかける。全体的に正義感の強いデジモンが多い。ウイルス種に強くって、データ種に弱い。アグモンとか、ピヨモンとか、ゴマモンとかが当たる。

 

 

「データ種」は、ワクチンを取り込みウィルスから身を守る。全体的に穏やかな性格のデジモンが多い。ワクチン種に強くって、ウイルス種に弱い。ガブモンとか、パルモンがこちらにあたる。

 

 

「ウイルス種」は、データを破壊する目的に作成されたデータから生まれたデジモン達である。全体的に凶暴なデジモン達が多い。データ種に強くって、ワクチン種に弱い。

 

 

大輔たちのよく知ってる真っ黒なエクスブイモンもこの所属だ。でも、一部のデジモンには以上のいずれの属性にも当てはまらないものが存在する。それが「フリー種」である。

 

 

一般的には「古代種」の末裔達が持つ属性であり、いかなる属性間による有利・不利は存在しない。「古代種」の末裔じゃないけど、「フリー種」に他にも属するデジモン達はいっぱいいるが、ここでは関係ないので割愛する。

 

さっき言った「ワクチン種」「ウイルス種」「データ種」は、現在デジタルワールドで多数派を占めている、進化することができる現代種と呼ばれるデジモン達である。

今の選ばれし子供達のパートナーの中での「古代種」の末裔であり、「フリー種」は、ブイモンとパタモンが当たる。

 

 

ちなみに、パタモンは気付いてすらいないけれども、エンジェモンは遥か昔のデジタルワールドの危機で降臨したって伝説があるくらいだから、全然不思議じゃないのである。そういう個体がいるってこと自体は。ただ、それがタケルのパートナーデジモンであるって言うのは、運命としか言いようがないが。

 

もちろん、そんな属性のことなんてわからないブイモンは、パタモンも同じ古代種だって知らないから、みんなのなかにひとまとめにしてしまう。ブイモンからすれば、チビモンだった時に、ひとりだけ、あの森でみんなと一緒に合流したのだ。でもみんなはみんな一緒に森にやってきたのである。

 

間違うのも無理はない。ブイモンは大輔に教えてあげる。古代種が歩んできた数奇な運命を。何回だって、何十回だって、教えてあげるのだ。いつまでたっても、ブイモンの大好きと大輔の大好きがつり合いが取れない理由は、きっとここにあるから。

 

 

 

今のデジタルワールドの時間の流れは、とっても早い。なんせ現実世界の1分がデジタルワールドの1日である。でも、ブイモンが「古代種」として生きていくはずだった古代のデジタルワールドは、デジタルワールドが誕生した時代である。

 

だから、もっともっと現実世界から見て、デジタルワールドの時間の流れは早かった。それはもう、現実世界での1年がデジタルワールドでは数千年、数万年にも及んでしまうくらい早かった。

 

ブイモン達がいっぱいいた「古代デジタルワールド期」とはそのデジタルワールドが誕生した初期の世界の事を指し、その頃に栄えていたデジモン達の事を「古代種」と呼ぶ。現在のデジタルワールドはほとんど9割を現代種が占めており、わずかに古代種のデータを強く受け継いだ“末裔”が生きているだけである。これがブイモン達なのだ。

 

 

しかし、現代種の中にも古代種の遺伝子データが残っているものがおり“末裔”と同等の力を秘めているデジモンもいる。ちなみにこれがパタモンである。エンジェモンがある意味。

 

切り札的な立場に置かれていたのは、光とか善の勢力に身を置いていて、暗黒の力に対してこれ以上ないほどの切り札であり、聖なる力を扱える以外にも、ここに理由があったのかもしれない。これについても、ブイモンはまだ現実世界に言ったことが無いので大輔には説明できないことである。

 

 

とりあえず、ずーっと昔にブイモン達はいっぱいいたんだけど、純粋な古代種はみんな死んじゃったんだってことだけ、説明した。それだけでも十分すぎるインパクトである。純粋な古代種はほろんでいったが、実はそれには他にも理由がある。純粋な古代種デジモンは、現代種に比べ潜在能力こそ上回るが、感情の起伏も激しい。

 

 

“オーバーライト(データの書き換え)”が現代種に比べ荒々しいという、致命的な弱点があった。データが知能を持って実体化して生きているのがデジモンである。データの書き換えが激しいということは、それだけ心臓ともいうべきデジコアを消費するということだ。そのため寿命が極度に短い。

 

 

オーバーライトを酷使するということは、デジコアをすり減らすことである、データチップを撒き散らして行くことと同じである。

 

当然進化への道も途方も無くなる。成長期、成熟期以上に進化できないデジモンも数多く存在した。古代種の完全体、究極体デジモンが幻の存在、伝説級にまでいわれるのはそのためである。

 

だからこそ、古代種は進化という選択肢を勝ち得た現代種に淘汰されていったわけで、進化の可能性に適応できた一部だけが生き残って、それがブイモンなのである。だってそれは、デジタマに戻れる個体自体が少なくなってくることと同義だ。みんな、きえちゃう。そこまで聞いて、大輔に思い当るのは、大好きだって言ってくれた少女デジモンである。

 

 

「それって、なっちゃんじゃねーか。なっちゃんはデジタマになれたけど、あんとき、たしか消えちゃう前にっていってたし」

 

「そうだよ。オレ達はね、デジタマになれなかったら、消えちゃったみたいにして、みんな死んじゃったんだ。何にも残んないよ。だから知ってたんだよ、データチップって何のことか分かんなかったけど、消えちゃうってことだけはオレ、覚えてたみたい」

 

「そっか・・・・・・・そうなんだ」

 

「あのとき、オレがどんだけ、どんだけうらやましかったか知らないだろ、大輔。大輔、なっちゃんに言ってただろ?『俺にとって大事な存在だよ!勝手にきめんなよ!居場所なんて勝手に作っちまえばいいんだよ!』って。『俺がいてやるから!』って。『ずっと一緒にいてやるから!』ってえっ!『俺達の世界に来ればいいだろ?』ってえええ!わかってる。あのとき、オレもなっちゃんのこと、助けたいってホントに思ってたから、わかるよ、大輔の気持ち。でも、でもさ、大輔オレにそこまで真剣に言ってくれたことないだろっ!なあ、なんでだよ、オレ、ずーっと一番になりたくって頑張ってるのに!オレのこと見てくれって、オレ、何度も何度も言ってるのにさ!大輔知ってるのにさあ!運命共同体だっていってるのにさ、大輔、全然、ちっとも、オレにそういうこと、ほっとんど言ってくれないじゃないか!」

 

 

思わず大輔は息を呑む。ブイモンがとんでもなく大輔のことが大好きだってことは知ってたけど、知ってただけだと思い知らされた。

 

彼女との邂逅がどれだけブイモンの地位を揺り動かすことになったのか、それはもう計り知れないものである。でも、ブイモンからとんでもないことを聞かされた大輔にとっては、それどころではない。たまったもんじゃない。

 

 

「なんだよ、それえ……・。ってことは、ブイモンってすっごく寿命が短いってこと!?完全体になったら、死んじゃうってことかよ!?」

 

「だから、最後まで聞いてよ、オレの話」

 

「わ、わりい、ごめん」

 

 

信じられない、と顔に思いっきり書いてある大輔に、記憶がようやく戻ってきたブイモンは、ファイル島の守護デジモン達によっていかにブイモンが守られてきたのか、教えてあげるのだ。ブイモンがコロモン達と合流する前に暮らしていたダイノ古代境の先にあるエリアには、時間の流れが早かったり、ゆっくりだったりするエリアがあって、ゆっくりなエリアでブイモンは生きていた。

 

ただでさえ寿命が短い古代種である。いきなり現代種と同じ時間軸で生活させては、普通に考えてすぐに寿命が尽きてしまう。だから外のエリアに出たいといくらブイモンがお願いしても、ダイノ古代境を守る守護デジモン達は許してくれなかったのだ。ゆっくりと時間が流れるエリアにいれば、大輔と出会うまでの時間をぎゅっと短縮することができる。

 

 

暗黒の勢力に居場所を特定されることを恐れて、デジメンタルと離れ離れになってしまった古代種を匿う苦肉の策だ。ちなみに、短すぎる寿命を補うために不可欠だったのが「デジメンタル」である。

 

いろんなことを思い出したブイモンにとって、かつて何ごとにも代えがたいような、そんな命より大事なものだったと断言できた。だって、デジメンタルは自身の力を使わずにデジメンタルに秘められたエネルギーを使って進化するため、デジモンの体に負担が掛かりにくい。

 

いわば生命維持装置としての役割も果たしていたわけだからそれが無い今のブイモンは普通に考えれば極めて危険な状態といえる。そんな状況を強いなければいけないほどに、この世界は確実に追い詰められているのだ。もちろんそんなことまで分からないブイモンは、あくまでも自分の立場で言うのだ。

 

 

「やっぱり、オレは大輔のパートナーデジモンだから、普通のブイモンとは違ってると思うよ。絶対そうだよ。だって、そうじゃなかったら、もう何回も何回もオレ、エクスブイモンに進化してるけど、普通だったらもう死んじゃってるかもしれないんだ」

 

「ええええっ!?なんでそんな大事なこと、今になって話すんだよ!」

 

「仕方ないだろー、オレ、ずーっと寝てたって言ったじゃんか!忘れてるよ、そんなこと!思い出させたのは、大輔のせいなんだからな、責任とってくれよ!」

 

「えー、なんでだよ」

 

「だって、何ともないんだよ。ぜーんぜん、進化したって平気なんだよ。データチップだって撒き散らしてないだろ?おかしいんだよ、オレ、もうとっくの昔におかしくなってるんだよ、これって大輔がいるからとしか考えられないだろー!」

 

「た、たしかに」

 

 

はえー、というしかない大輔である。

 

 

「オレさ、なんで大輔のパートナーデジモンになったのか、わかった気がするんだ。大輔って、すっごく心が広いでしょ。なんでも受け入れてくれるでしょ。最後まで、向き合おうってしてくれるでしょ。大輔は大っきらいになっちゃってるみたいだけど、オレはそーいうとこが大好きなんだよ。なんか、デジメンタルみたいなんだよ。すっごく、すっごく、懐かしいきがするんだ。なのに、大輔、オレの大好きなとこ、つぶそうとしたんだよ、あの時。オレがどんだけ悲しかったか、わかる?わかんないだろ、だからオレがわざわざ言ってあげてるんだから」

 

 

もうここまで言われてしまっては、もう鈍感になれるわけがない。

もう、大輔はブイモンの方を向かざるを得なくなる。それにさ、と続くので、まだあんのかよー、とおもわず大輔はつぶやいた。もう頭がパンクしそうなのだ。しかし、ずーっと我慢してきたブイモンの怒りはこれからが本題なのだ、とみなぎる一方である。

 

 

「大輔、言ってるよね?ジュンお姉ちゃんが弟として見てくれない、認めてくれない、褒めてくれない、わからない、寂しい、寂しい、こっち向いてくれないって。オレのこと見てくれないって」

 

「うあー……まあ、そうだよ?」

 

「じゃあ言うよ、大輔。よーく聞いててよ、目をそらしたら、最初っからだからね。何度言っても分かんないみたいだから、もーはっきり言っちゃうけどさ、大輔、ジュンお姉ちゃんにされてるやなこと、ぜーんぶ、ぜんぶ、オレにやってるんだよ、気付いてる?」

 

 

俺がブイモンに、俺がジュンお姉ちゃんにされて嫌なことを全部している?はあ?何だよそれ、とてんで記憶にない大輔は、首を傾げるしかない。

 

 

「……ごめん、ブイモンがいってること、全然わかんねえや」

 

 

だろうと思ったよ、とブイモンは大きくため息をついた。

 

 

「大輔がオレのこと、パートナーデジモンとして頼ってくれるの、泣いてる時だけだよな?ピンチになった時だけだよな?オレがいくら頑張っても、オレが言うまで、ぜーんぜん褒めてくれもしないよな?オレがいくらオレのこと見て見てって、いっても、ぜーんぜん見てもくれないだろ?寂しいんだよ。こっち向いてくれないんだもん、大輔。だからオレ、今でも大輔のこと、これっぽっちも分かんないんだよ。大輔がオレのことどう思ってんのか、ぜーんぜんわかんなくなっちゃうんだよ。もうやだよ、オレ。言葉じゃ足りないんだよ、ぜーんぜん足りないんだよ、どうしてくれるんだよ!大輔のせいだよ、全部全部。大輔のせいだよ、ばかあああ!」

 

 

ありったけの感情をこめて抱きついてきたブイモンである。大輔の身体が悲鳴を上げていることなんかお構いなしで、ぎゅーっと抱きついてきているパートナーに、呆けるしかなかった大輔は、顔をうずめて泣いているブイモンを見た。

 

初めて見た気がする。ブイモンがブイモンのために、怒って、泣いて、行動する所なんて。これが古代種の特徴なのか、それとも大輔のパートナーデジモンであるが故の似た者同士になってきた影響なのかは、大輔にはわからない。でも、それがとんでもなく嬉しいってことはわかった。

 

 

だから、大輔はなんとか腕をまわした。デビモンが残した忌まわしきトラウマを我慢して、ブイモンに抱きついた。それに気付いたブイモンは、もう嬉しくて嬉しくてたまらない。

 

そっか、オレ達似てたんだ、すっげー似た者同士なんだって大輔はわかったのである。じゃあ、もしかしたら、オレ、ブイモンみたいにもっといろんなこと頑張れるかもしれない。素直になれるかもしれない。お姉ちゃんと仲直りできるかもしれない。そう、思ったのである。

 

 

「大輔は、オレにとって、きっとデジメンタルなんだと思う。だってオレ、大輔が傍にいてくれるだけで、こんなに元気になれるんだから」

 

 

ちなみに、ブイモンが本来のブイモンと違うのは、大輔がオーバーライトすら半分こしてくれているからである。これを知る必要は、きっとないけれども。

 

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