本宮大輔くんは、この漂流生活で最年少の小学校2年生である。にもかかわらず、一人ぼっちで巻き込まれている。でもまわりのことを見ることが出来る上に、しっかりしている。今までの日々のなかで蓄積していた感情が、ヤマトとタケルの大喧嘩によるお母さんの取り合いで、ホームシックになって爆発しちゃったので、ちょっと待ってあげましょう。
下級生組にしばらくの休憩を伝えに来たヤマトが、その予定外のスケジュールを組むに至った理由を簡単に説明したので、はーい、とうなずいたタケル、ミミ、光子郎である。
いわれてみれば、タケルと違ってヤマトお兄ちゃんにあたるひとがいない、本宮大輔君はひとりぼっちである。それはしかたないね、待ってあげましょう、大輔君はまだ小学校2年生なんだし、と思った4年生組である。なーんだ、大輔君も、やっぱり子供ねなんてちびっこらしくないちびっこのちびっこらしい所を発見して微笑むのがミミで。
上級生組のみんなより一緒にいるのに、サッカー部の先輩なのに気付かなかったなあ、しまった、とちょっとだけ後悔するのが光子郎である。そして、ヤマトから俺も酷いことしたから、後で一緒に謝ろうなって言われて、ますます自分のせいで大輔君を傷付けてしまったと果てしなく落ち込んでいるのがタケルである。
タケルは大輔から、いろんなことを教えてもらっているはずだった。これっぽっちも生かせてなかったから、宝の持ち腐れだけど。
デジタルワールドにはジュンお姉ちゃんがいないから、ヤマトお兄ちゃんがいるタケルがうらやましいって大輔がこぼしていたこと。
ジュンお姉ちゃんと仲が悪いので、喧嘩ばっかりで、「お姉ちゃんて呼ばないで」って言われてから1年間、ずっとお姉ちゃんに認めてもらえない、褒めてもらえない、分からないってずーっと悩み続けていること。
「弟として、家族としてどう思っているのか聞きたい」って思いながら、結局何にも出来なくて、サマーキャンプから帰ったら、PHSを返す時に聞くんだって決意して、願掛けにPHSを付けていること。
この漂流生活に巻き込まれたお台場小学校2年生の男の子であること。そして、仲が悪いジュンお姉ちゃんの代わりに、太一さんと空さんをお兄ちゃん、お姉ちゃんって思ってて、そのうち太一さんはお兄ちゃんって見るのやめたこと。いろんなことを思い出して、ようやくタケルは気付くのである。
これら全部の問題は、ジュンお姉ちゃんがいないこのデジタルワールドでは、絶対に解決することが不可能な問題である。ヤマトお兄ちゃんがいるタケルが相談した時と違って、タケルがなんにも出来ないのは当たり前である。そしてジュンお姉ちゃんと仲が良かった時の記憶を取り戻した所で、それはちょっと安心することができる材料でしかないこと。
「相談を聞いてもらえるだけでも結構、安心する、今まで相談したことなんてなかったから、ありがとう」って大輔なりにタケルに感謝していたのだ。タケルはちゃんとこの状況下でしかできない、大輔に対する相談の助力をちゃーんとやってたのに、全然きづいていなかったこと。
大輔はタケルにちゃんと言ってくれていたのである、自分なりに。それなのに、タケルは言っちゃったのだ。「太一さん、僕を弟にしてよ」って。そりゃ、絶交だっていわれるよう、とタケルはへこんだ。
大輔からすれば相談していたのに、となるわけだから。よりによってそんなこというのかと。だから喧嘩をしたら謝るのが普通だっていう道徳的概念で機械的に行動するタケルからつむがれる「ごめんなさい」がいかに薄っぺらいものでしかないかという話になる。なってしまう。
だから大輔君、謝ったことは許してくれたんだけど、「絶交」って言葉をなかったことにしてくれなかったんだってタケルは理解する。大輔はかなり怒っているのだ。タケルはがんばらなくても大輔は親友だと思っていてくれたのだ。とっくのむかしに。だから余計悲しくなる。そうじゃなきゃ絶好なんて言葉出てこないからだ。
タケルがとんでもなく気付かないにぶちんさんだから、わざわざ「絶交」っていう強烈な言葉を使ったのである。こんだけ怒ってるよって。
「トコモン」
「なあにー?タケル」
「僕ね、もういっかい、大輔君に謝るよ。もう遅すぎるかもしれないけど、僕、もっと、大輔君と仲良くなりたいから」
「タケル、ふぁいとー」
「うん」
そう、タケルは思ったのである。ここから、タケルの苦難の道は、ちっぽけだけど、大きな一歩を踏み出した。これはやがて、逃れるための嘘でしかなかった言葉を真実に変える。いまはまだ、その時ではないけれども。
空はお台場小学校サッカー部のツートップとして、太一と相方を組んできたスポーツ少女である。デジタルワールドにくる前から、太一という生まれながらのリーダーの原石の塊みたいなやつと幼馴染だったせいで、いろんなことで苦労してきたのだが、そのおかげで彼女は太一にないものを徹底的に磨き上げてきた片鱗があり、みごとにこの漂流生活に置いて開花したものが沢山ある。
女の子らしい、男の子であるヤマトや太一では到底まねすることが出来ない気遣い、配慮といった相手のことを思いやれる気持ち。つっぱしったら一直線、猪突猛進な太一をサポートするために、周りをみることが出来るという幅広い視野と情報を的確に判断する冷静さ。
一歩離れたところから、冷静に辺りを見渡して、自分がどうすればいいのか、何をすればいいのかちゃんと理解できるうえに、それを実行できる行動力、そして、みんなのことを一番に考えることが出来るって言う、とんでもない包容力。まるでお母さんみたいな人である。
そのかわりに、おいてきぼりにしてきたものも沢山ある。女の子であるという事実にして現実を見つめて、女の子である自分を楽しむという感覚、そんな自分の本心に気付いてあげて、ちゃんと構ってあげるという感覚、心の悲鳴を聞きとってあげるという感覚、そして、ちょーっと勘違いが過ぎてしまうと、一気に周りが見えなくなってしまうという、どっかのテレ屋みたいな欠点。
でも、その欠点はよほどのことがない限り、空の行動として現れることはない。なぜならばそれを補って有り余る彼女の最大にして最高のアドバンテージが、完璧にフォローすることができるからである。
それは、状況に応じて、的確な相手(それがたとえ誰であろうとも)に対して、相談することが出来る、ということである。空に連れられて、大輔は丈の所にやってきた。あらかたの事情は、連れてきた太一が話しているので、丈はすでに把握積みだ。きょとーん、としているサッカー部の後輩に、空は教えてくれる。
お台場小学校6年生である最高学年のこのお兄さんは、両親がお医者さんで、二人いるうちの一人もお医者さんで、もう一人はお医者さんになるために勉強中で、丈自身もお医者さんを目指して勉強しているんだよっていうことを教えてもらう。医者一家に生まれた末っ子である。
本人の意識が本当にその夢に向かって突き進んでいく覚悟と共にあるのかどうかは別にして、医者になるための勉強をしている丈である。とりあえず、なんにもわからないまま、大輔の問題に尽力するよりはずーっとましである。そう、空は思ったらしかった。
それを聞いた大輔は、自分が置かれている状況とかが分かるんなら。ぜひ聞いてみたいって思ってついてきたわけだが。丈のお家がお医者さんっていうすっげーお金持ちの家であると知って、すっげーと思う。一方で、え?俺って病気なのかよ?ってすっごく不安になってしまって、挙動不審になっている。
無駄に緊張して、おどおどしているパートナーを支えるべく、ブイモンは大丈夫だって、とにっかり笑って見せたので、ちょっと安心する。オレのパートナーが病気なわけないじゃない、そんなことあり得ないよ、と根拠もないけど自信たっぷりに言われて、これ以上に安心できるものはない。やっぱりブイモンと大輔ははんぶんこして丁度いいみたいである。とりあえず丈が真っ先にしたのは、太一を睨むことだった。
「どうして僕にいってくれなかったのさ」
だって、と太一が紡ぐ言葉には眉を寄せた。心外である。確かにレオモンの時には、勉強をしているというだけで、年齢的に考えても実際に医療関係のことをしたわけではないし、経験や体験なんて皆無に近いから、ただレオモンが大輔とブイモンを診断するのを横で見ているだけしかできなかった。
しかし、丈からすれば、中途半端な知識しかない未熟者が、自分が自分がって出ていく方が、かえって危険であることをよく知っている。ましてや人の命を預かる職業を目指しているのだから、ことさら慎重になる。ただ最善をしただけである。
丈は怒る。たまたま太一と大輔の相性が最高で、大輔が太一のことを心の底から信頼しているという1年と4カ月の蓄積があったから、まあなんとか無理やり歯車がかみ合って、状況的に考えてもすっごくうまくいったけど、あくまで結果論。
ヘタしたら大変なことになっていた。しかもそれを後輩が自分だけに唯一相談してくれたことが嬉しくて、ずーっと黙っているとか、言語道断である。ごめんなさい、と太一はへこんでいる。丈は大輔の所に行くと、近くの岩場に座った。
「病気じゃないよ、大輔君。安心していい。なんにもおかしくなんかないさ、大輔君は当たり前のことをしているんだよ、ごく普通のことをね」
「え?そうなんすか?」
ほっとした様子で、胸をなでおろす大輔である。太一の言った「おかしい」は大輔の心の中で深く抉りこんでいた。太一からの説明で嫌な予感がしていたらしい丈は、ちらっとまた太一をにらむ。めんもくない、と反省しきりのキャプテンである。よかったー、と笑う大輔は、だからいっただろ?と胸を張るブイモンと顔を合わせて笑ったので、気付いていない。
「大輔君はお姉ちゃんと仲良く出来ないんだね?それをおかしなことだって思ってる。違う?」
「そうっす。だって、サッカーの試合の時とか、太一さんの妹、光っていう子がいるんすけど、いっつも来てるし」
「すごいね、大輔君」
「へ?」
「おかしなことをおかしなことだって気付けるのは、とってもすごいことなんだよ。周りがとっても見えるんだね」
生まれて初めてそんなことを言われた大輔は青天の霹靂である。うん?と首をかしげる大輔には上級生組は苦笑いだ。なんか良く分からないけど、すごい、って褒めてもらえてうれしそうである。あたりまえのことを褒めてもらえるなんて初めてだ。なんか照れくさそうにしている。
「大輔君はまだ8歳だから、お姉ちゃんと仲が悪いってすっごく寂しいことだと思うさ。僕だって兄さんと1年間も喧嘩して、仲直り出来ないままなんて状況になったら、相当きついね」
「そうなんすか?」
「そうだよ。あたりまえのことさ。誰だって大好きな人から嫌われてるのに、理由が分からないなんて、怖いに決まってるさ。ましてや、友達や先生みたいに、こっちから距離がおけるような人たちならともかく、ずーっと一緒に暮らしてる家族なんて」
「あたりまえ」
「そう、あたりまえ」
でも、と丈は空と太一を見る。
「大輔君には、ジュンさんっていうお姉さん以外にも、お姉さんやお兄さんをしてくれる人に、いっぱい恵まれちゃったのが、ちょっと良くなかったんだろうね。でも、大輔君はそれもおかしなことだって、どっかで思ってたみたいだね、後ろめたさはあったんだろう?」
「はい」
「だから、太一や空に迷惑が掛からないように、こっそりお姉さんやお兄さんって思うことで、なんとかおかしいを無くそうとしたんだね」
「……はい」
「でも、おかしいはなくならない。だから、おかしいことだらけで、大輔君もおかしいんじゃないかって不安になって、嫌われちゃうんじゃないかって怖くなって、誰にも相談できなかったんだね」
「………はい」
「そんなときに、デジタルワールドにきちゃって、ただでさえ寂しいのに、ジュンさんと会えなくなっちゃったから、きっと大輔君の中では、どんどん太一と空君が大きくなっちゃったんだろう。側にいてくれるからね。それと一緒に、おかしいって思ってる気持がどんどんおおきくなっちゃって、なんとか無くそうって頑張り続けてたら、どんどんみんなにばれてくんだ、そりゃこわいさ。そしたら、太一が「おかしい」なんて言うから尚更」
「ごめんな、大輔」
「いいっす、オレも悪いんで」
「まだ大輔君は小学校2年生さ。お姉ちゃんに甘えられなくて、構ってもらえなくて、寂しいって思うのはあたりまえさ。ましてや、お姉ちゃんがいっつもお母さんをとってしまって、なかなか甘えられなくて、家じゃ一人ぼっちなら、なおさらね。しかも、たまに帰ってくるお父さんしかいないんなら、可愛がってくれる太一や空君に気持ちが向いちゃうのも無理はないね」
大輔はすっげーと尊敬のまなざしである。
「なんでそんなにいっぱいわかるんすか、すっげー」
「かんたんだよ、僕たちだって寂しいのさ」
「え?そうなんすか?」
きょろりと辺りを見渡す大輔に、空や太一、丈は苦笑いでうなづいた。
「でも、僕らが言ったら大輔君どう思う?不安にならないかい?小学校5年生、6年生のお兄さん、お姉さんたちが、そんなこといったら、みんな不安になるだろう?これから大丈夫かなって、この人たちに任せて大丈夫かなって。だから言わないだけで、みんな寂しいんだよ。家族に会いたいのさ」
ここでようやく、大輔は、お姉ちゃんやお兄ちゃんは大輔の思っている以上に大変なんだ、と言ったヤマトの言葉を理解するに至る。すげえ、あの人、と心の中でこっそりつぶやく。ぜーんぶお見通しだったんだ、あの人。ヤマト先輩。さすがは太一先輩の親友。
空さんや太一先輩とは、ぜーんぜん違う方向性ですごいのかもしれない。先輩って呼ぶに値する人なんだって大輔は自覚するに至る。そしてちょっとだけ、ヤマト先輩の紋章が大輔の好きな色っている共通点が嫌じゃないかもしれないって思うのである。あくまでも、ほんのちょーっとだけだけど。
「いままでよくがんばったね、大輔君」
いっぱい褒めてもらえて大輔はもう嬉しくて死にそうである。
「もう、大輔君は何をするべきなのか、ぜーんぶわかってるみたいだから、言わなくてもいいかもしれないけど、一応、先輩としてのメンツとして言わせてもらおうかな。デジタルワールドから帰ったら、ちゃんとジュンさんと話をするんだよ。その先で、またなにかあったら、太一や空君、もちろん僕たちに頼ってくれればいい。いつでも力になるからね」
「はい。ありがとうございます」
やっぱり丈さんはすっげー、って大輔は思うのである。上級生はみんなすごい人たちばっかりだ。
「丈先輩、私はどうしたらいいんですか?」
「空君はなんにもしなくていいさ。いつもどおりにサッカー部の先輩として、大輔君に構ってあげればいいのさ。大輔君もお姉ちゃんをしてほしい訳じゃないんだろう?」
「はい。オレはえーっと、その、……その、空さんと一緒にいれればそれで」
もごもごである。なんか恥ずかしい。そっかー、とお姉ちゃんをしなくていいことがちょっとだけ残念そうな空である。でも同時に安心する。ただでさえ、空は上級生のサポート役、選ばれし子供たちの精神的なリーダーを果たしているという、重責務がのしかかっているのである。これ以上の負担は彼女にはあまりにも酷だろう。それを無意識のうちに気付いている大輔だからこそ、ごめんなさい、って言葉が出たわけだから。
「構い過ぎたり、甘やかしすぎたりすると、大輔君の中では、空君をお姉ちゃんとして慕ってるって言うこと自体が、おかしいって気付いてるものだから、大パニックを起こしちゃうんだよ。1番の大好きはジュンお姉ちゃんだからね。もう罪悪感や申し訳ないって言う気持ちでいっぱいになっちゃって、怖くなっちゃうみたいだ。あやうく大変な所になってたんだ。わかったかい?太一」
「ごめん、大輔」
「いいっすよ、「おかしい」ことってはっきり分かったの、太一先輩のおかげです」
おまえはどこまでいい奴なんだ、と太一はくしゃくしゃになでる。なんで頭をなでられるのか分かっていない鈍感は、首をかしげていた。
「もっとも、流石と言うべきはヤマトかなあ。僕だって本でも読んでなきゃ分かんないよ。こんなこと。なんにも知らないのに、ただアドバイスをして見守るっている最善を選んだわけだからね。まあ、お母さんに甘えられなくて寂しいけど、タケル君がいるからって頑張り続けてきたヤマトだからこそ、気付けたのかもしれないね」
おおおおお、とすっげー丈さんから、すごいって言われるヤマト先輩を発見して、また驚く大輔である。どんだけすごいんだ、ヤマト先輩。最上級生から、流石って言われるとか。
かつて自分にだけ向けられていた筈の眼差しが、ヤマトという言葉が出てくるたびに、どんどん輝きを増して行く。ちょっとだけ、いらっとするのは太一である。くしゃくしゃにされていた頭に、ぐぐぐ、と力を入れられて、力任せにわしづかみにされた大輔は、いたたたたた、と悶絶する。
「なにするんすか、太一先輩!」
「うるせえ」
「いだだだだだだっ」
サッカー部の先輩、後輩のやり取りを眺めながら、丈と空は笑った。
「大輔君、これからどうしたい?」
「へ?」
涙目の大輔はキョトンとしている。
「僕達がやっちゃうと、大輔君、大パニックになっちゃうから、大輔君から意思表示してもらわないとね」
「・・・・・・・・はい?」
まさか、まさか、まさか、またこのパターンか!?かつて、ブイモンから、大輔に抱きつくと身体が拒否反応するから、大輔から抱きついて来てくれって言われたことを思い出す。
結局、今となってはブイモン限定で躊躇なくなっている部分ではあるが、面と向かって言われるとなかなかきつい。ましてや、すさまじく甘えるのがへたくそな癖に、人一倍あまえたがりなこのくそがきには。当然もう、耳まで真っ赤である。
「そーだぞ、大輔。しょーじきにな」
にやにやの太一である。逃げようとするが、首根っこつかまれて逃げられない。ぎゃああああ。とうとう観念したのか、大輔はがっくりと肩を落とした。がんばれ、大輔、とブイモンはエールを送る。空やヤマトに尊敬のまなざしが分散されれば、太一がどんどん大輔の中で失墜していくのである。大歓迎な傾向だ。
「………あの、空、さん」
「なあに?」
「空先輩って、よばなくっても、いいっすか?」
「もちろん」
「お姉ちゃん、って、思っても、迷惑じゃ、ない、ですか?」
「心配しなくっても、大丈夫よ。私一人っ子だから、むしろ弟ができたみたいで嬉しいわ。お姉ちゃんが出来なくて残念なくらいよ。でも、デジタルワールドから戻ったら、ちゃんと、ジュンさんと仲直りして、そしたら空先輩って呼ぶの許してあげるわ」
「はい!オレ、がんばります!」
ぱっと輝かせた大輔である。
「大輔君、ヤマトにお礼いってきなよ」
「はい!」
いこうぜ、とブイモンに呼びかけた大輔はたーっと行ってしまった。サッカー部の後輩を見届けて、上級生たちはほっと胸をなでおろした。
「空君」
「はい」
「気を付けてね。病気じゃないとはいえ、大輔君にはあまりにもつらい毎日だから、かなり不安定になってるみたいだから、呑まれないように気を付けてね。空君はみんなに一生懸命になりすぎる所があるから。ちゃんと距離を持つんだよ。大輔君は私しかいないんだって思い込むのは、危険だ。人はそれを共依存って言うんだ。共倒れは危ない」
「ありがとうございます」
「まあ……大輔君も今のまんまはあんまり良くないことだって分かってるから、ちゃんと距離をとるために、太一にあんだけ抵抗しまくってた訳だから、しっかりした子だよ。さっき言ったのは最悪のパターンだから警戒はしなくていいよ。大丈夫。大輔君は不相応なくらい、周りが見える子だ」
そうですね、と空はつぶやいた。本当にできた後輩である。びっくりするくらいに。でもそれが今の現状を作り出しているのかと思うと、あまりにも悲しい現実である。
「だから、もっと別の可能性の方がありそうだけどね」
「え?」
「何でもないよ。とはいえ、空君一人に負担がこれ以上かかるのもなあ。まだまだ、リーダーは決まらないし」
はあ、と溜息をついたのは丈だった。その真意に気付いた太一は、丈お前、と呟いた。ようやく踏ん切りがついたのか、丈はちょっとさみしそうな顔をして笑った。
「まだまだリーダーは決まらないのに、これ以上空君に負担が増大して、空君になにかあったら困るよ。今の僕たちは空君のサポートで何とか持ってる状態だからね。エテモンのことも気になるし、紋章のことも探さなくちゃいけない、進化だってそうだ。空君に倒れられたら僕たちは終わりだ」
だから、と丈は宣言した。
「僕は僕なりのリーダーを探すよ。だから、残念だけど、僕はリーダー争いから降りるよ。これからは空君と一緒にサポートに回る。どうやら、リーダー争いはまだまだ続きそうだしね」
「あんのなあ、他人事だと思ってっ!あん時から、ずーっと後ろが怖くて仕方ねえんだぞ、勘弁してくれよ!ヤマトの殺気が尋常じゃねーんだよ、オレいつか殺される!」
「じゃあ、リーダーはヤマト君でいいんじゃない?」
「骨くらいは拾ってあげるよ」
「なんでそうなるんだよ!」
ぎゃーぎゃーわめく上級生組である。すくなくても、これでリーダー争いは太一とヤマトに絞られた。決着は、相当先になりそうではある。