(完結)おれとぼくらのあどべんちゃー   作:アズマケイ

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第74話

デジタルワールドという異世界がある。この異世界は、デジタルモンスターがより現実世界に生息する生き物に生態や環境、生活を作るために、たくさんの島や大陸を作るためのプロジェクトが計画された。その結果、ネットワークが張り巡らされた現実世界みたいな、地球みたいな世界が出来た。この異世界は、イグドラシルというホストコンピュータの中にある。

 

そのイグドラシルという人工知能により、管理、統制がおこなわれているのだが、お役所仕事と一緒で全部一人でやるにはいくら神様でも過労死しかねないので、その中でも沢山の役割分担、縦割りの体制が作られている結構シビアな世界である。

 

デジタルワールドはイグドラシル様が管理しやすいように、島や大陸は違えどその内部構造や法則も基本的には地球とほぼ同じ姿をしている。その内部はとてもデータでできているとは思えないほど、リアルな作りになっている。きっと凝り性なのだろう。とんでもない技術力の持ち主である。

 

 

とりあえず言えるのは、イグドラシル様=デジタルワールド=神様すげえ、ということである。ちなみに、ホメオスタシス様は闇と光のバランスだったりデジタルワールドのパワーバランスだったりを調整するセキュリティ部門を管轄している。

 

ホメオスタシスは、内部環境を一定に保とうとする人間の恒常性を保つ重要な機能の一つのことである。デジタルワールドのネットワークセキュリティの中でも実動部隊を指揮する司令官だ。

 

そんな神様たちが監理するデジタルワールドは、「ネットの海」と呼ばれる領域が大半を占め、その上に陸が浮かんでいる。現在、選ばれし子供達が冒険しているのは、初期に作られた「ファイル島」そして、近接する「サーバ大陸」である。

 

「ファイル島」は、中央にそびえたつムゲンマウンテン、始まりの街、迷わずの森、ビートランド、竜の目の湖、シーラ岬などの南に位置するエリア。ギアサバンナ、ミハラシ山、ドリルトンネル、ファクトリアルタウン、ゴミの山・ダストキングダム、ゲッコー湿地、ダイオン郷などの西に位置するエリア。

 

トロピカジャングル、マングローブ域、ダイノ古代境、オーバーデル墓地、闇貴族の館、グレートキャニオンなどの東に位置するエリア。ミスティツリーズ、おもちゃの街などの北西に位置するエリア。

 

フリーズランド、アイスサンクチュアリなどがある北東に位置するエリアと、まったく異なる6つエリアで構成されている。デジタルワールドには季節という概念が存在しないため、このような四季がバラバラな6つエリアが作られたのである。

 

 

そして「フォルダ大陸」は、ファイル島とは比較的近距離にある。しかしファイル島には存在しない“究極体”デジモンが存在し、成長期程度のデジモンですらファイル島の完全体ほどの力を持つものさえいる。大陸であるためファイル島の数倍の大きさを誇る。

 

ちなみにその東西南北を守護する究極体を復活させること、そしてデジタルワールドを再編させることが、選ばれし子供たちに課せられた使命という奴なのだが、もちろんそんなことまだ、誰も知らない

 

。大陸の南に位置し、昆虫デジモンなどが多く住み、豊かな自然が広がるスピリチュアルランド。大陸の西に位置し、砂漠地帯や草原が広がるガーディアンサバンナ。大陸のほぼ中央に位置し、デジモンの墓、不気味な古城などがあるナイトメアフォレスト。

 

大陸の東に位置し、大峡谷に立つ工場地帯メタルエンパイア。そしてフォルダ大陸の近海セイバーズベイと主に5つのエリアに分別される。フォルダ大陸は未だに未知の部分が多い大陸である。

 

 

子供たちが思っている以上にこの世界はとても広い。

 

 

サーバ大陸は乾燥地帯である。だから見渡す限り、砂漠地帯である。灼熱地獄である。オアシスは貴重な水分補給元だ。乾燥地帯だから、日照時間が長く昼間の気温上昇が大きいが、夜間の気温低下も著しい。それに加えて極端に降水量が少ない。ものの見事に地球に存在する実在の気候が反映されているイグドラシル様の凝り性も困ったものである。

 

さいわい、選ばれし子供達が冒険しているこの時期のサーバ大陸は風や雨と言った気候が続く、雨季ではないことが幸いである。なぜなら、乾燥地帯では、熱射病と言った灼熱地獄関連の死亡原因ではなく、実は水死、溺死が死因の第一位を占めている。なぜかというと、雨が潤いとなるのは保水機能をもつ主に豊富な土壌を兼ね備えた樹林の役目、山や森の役目が機能している地域だけであり、それらの許容範囲を超えた集中豪雨ではよく土砂崩れや地滑りが起こりやすくなる。

 

雨は受け止めるクッションがないとただの災害である、あまりにも乾燥しすぎたカラカラの、ただ砂が広がっている所に、ずーっと雨が降り続けてしまえば、それはあっという間に許容範囲を超えて、大洪水となってしまうのである。ちいさな子供達、デジモン達が巻き込まれたらひとたまりもない。

 

もちろん、知識としては知っていても、光子郎も丈も、なんにも知らない子供たちならなおさら、雨降らないかなあが共通の口癖である。あいかわらず、今日のサーバ大陸は灼熱地獄である。そんな中をオアシスに向けて一生懸命に走っている小さな子供がいた。

 

 

「お姉ちゃんやお兄ちゃんはお前の考えている以上に大変なんだ。その理由は自分で考えろ」

 

 

実はだれよりも本宮大輔のことを考えてくれていて、そしてだれよりも最善を尽くしてくれた人がいる。しかも、尊敬してるんだけど、失敗した太一先輩やすっげー丈先輩から聞いて初めて対処法が分かった空先輩や、それを大輔にも分かるくらいまで言葉を砕いてくれた、配慮や気遣い、細部にわたるまでの優しさを尽くしてくれた丈先輩が「すごい」とまで言わしめるほどの人!である。

 

本宮大輔は言いようのない、心地よい、高揚感のまんまの思考回路で考える。なんか、よくわからないけど、ちゃんと自分の思っていること、考えていること、感じたことを正直にそのまま言葉にするという、簡単な作業をするだけで、あんだけがんばっても全然ダメだったのに、褒めてもらえる、なでてもらえる、そしてよくわかんないけどみんな笑顔になる。

 

今までは迷子の「ごめんなさい」のせいで、全然出てこなかった、むしろ大っきらいになっていた大輔のいい所がようやく顔を出し始めた瞬間である。だから1年間という途方もない抑圧から解放され、年齢相応の無邪気さがようやく発露し始めたやんちゃ坊主は、もう分かりやすいくらいの一直線である。あれ?よく考えてみたら、ヤマト先輩の方がすごくね?

 

いやいや、オレは太一先輩一筋なんだ、浮気はいかん、浮気は。それにヤマト先輩はタケルのお兄ちゃんだ。人の大好きに手を出したら、とんでもないことになるんだってことくらい、大輔は知っている。実はいろいろすごいヤマト先輩から宿題をようやく完遂させる用意できた大輔は、ブイモンと共に下級生組と待っているという名の足止めをしてくれているであろうヤマト先輩の所まで急いでいた。

 

目的はもちろん「すごいなって褒めてもらうため、頭をなでてもらうため」である。おおっと、いけない、忘れてた。大輔はまってよだいすけーと慌てて追いかけてくるブイモンに振り返る。無意識のうちに、お姉ちゃんにされて嫌なことをぜーんぶやってるよ!と直談判されたのだから、嬉しいことはちゃんと返さなくっちゃいけない。

 

 

「ブイモン、ありがとな」

 

 

えへへ、というのが何だか照れくさそうに、はにかみながら、きらきらとした笑顔で大輔はいうのである。大好きな大好きなパートナーが言うのである。ずっとずっと頑張ってきたブイモンが、いちばん欲しかったもの。ご褒美以外の何物でもない。やっとブイモンは長年の苦労から解放されたのである。もちろん、ブイモンはいっえーい、とハイテンションだ。

 

だいじょーぶい!という無邪気な口癖がでてくるのは、このころからである。さんさんと降り注ぐ太陽も、いっぽふみだすたびに、不自然にぐにっとなってしまうサラサラの砂の上すらも、何もかもが大輔とブイモンには輝いて見えるのである。きっと、世界は変わったのだろう。大輔の中でも、ブイモンの中でも。

 

 

「すっげー嬉しかったぜ、ありがとな。元気づけてくれて、側にいてくれて、本当にありがとう」

 

「大輔」

 

「んー?」

 

「大輔、大輔、大輔、だーいーすーけー!」

 

「なんだよ」

 

「なでてくれよ!頭!オレ、がんばったんだろー!」

 

 

なあ!と後ろからくっつかれたら大輔はもう頭をなでるしかないのである。わああああ、とブイモンは目を輝かせる。なんだかブイモンが後ろからぎゅーってくっつくようなしぐさが増えてきたような気がする。まあ後ろからじゃないと、大輔からぎゅーッてしないと、また大変なことになってしまうので、仕方ないんだけども。

 

おんぶできるほど体格差はないから、大輔が座ってたり、立って話を聞いてたりっていう和やかな空気の時だけなんだけども、まーいっか、とブイモン限定なら躊躇しなくなった大輔は、あんまり拒否することもなくなってきた。でも、大輔は思うのである。

 

 

「なあ、ブイモン、お前ぜーんぜんキャラ違うよな」

 

「なにが?」

 

「オレの時と、みんなといる時とだよ」

 

「なんでみんながいる前で一緒でいる必要があるんだよ?」

 

「えー」

 

「だってオレは大輔が一番なんだよ。大輔だけ知ってればいいんだよ。こーいうとこは」

 

「そんなもんか?」

 

「そんなもんだよ」

 

 

ふーん、と大輔は思いながら、ずるずると降りたブイモンと手をつないで先を歩くことにした。ちょっと疲れたらしい。いつだって大輔のパートナーデジモンの中には、無邪気なやんちゃ坊主と無駄にカッコいい大人びた面と、したたかすぎる打算的な一途さが同居している。一体誰に似たのやら。

 

 

「なー、大輔。オレと大輔は運命共同体なんだろ?タケルと大輔は友達なんだろ?太一とヤマトって親友なんだろ?なにがちがうの?」

 

 

そこんとこ、はっきりさせなきゃいけない、とブイモンは思っている。だってなんかタケルはよく大輔を親友と形容するから。ブイモンはデジモンである。だから、大好きには、家族、友達、好きな女の子、先輩、といういっぱいのすきがあることを知らないので、いつだってごっちゃちゃなのである。だから迷走した。

 

いろんな人に嫉妬した。邪魔だってした。いまだって結構、大輔の預かり知らぬところで、いろんな攻防が繰り広げられているのだが、本人だけが知らない。突然難しいことを聞かれた大輔は、えーっと、と頭を悩ませる。考えることも説明することも苦手だ。

 

どうしよう?小学2年生の男の子にはっきりと表現するのは非常に重労働だが、ブイモンが欲しいのは大輔の答えであって、他の答えなんかいらない。だから、その一途な眼差しに応えるべく、大輔はなんとか感覚で分かっていることを口に出す。

 

 

「丈さんがいってただろ?運命共同体って、どんな時でも一緒に、怒ったり、泣いたり、笑ったり、喜んだりする、なにがあっても半分こするんだって、死ぬまで一緒なんだって」

 

「うん」

 

「ブイモンは、あれだろ?オーバーなんとか」

 

「オーバーライト?」

 

「そうそれ、オーバーライト。オレがその、デジなんとか」

 

「デジメンタル?」

 

「そうそれ。デジメンタルがないから、オレがいなくなったら死んじゃうんだろ?だったら、オレ達本当に運命共同体なんだよ。オレとブイモンだけしかなれないんだ。だってオレももしブイモンが死んじゃったら、多分……」

 

「無理して言わなくてもいいよ、大輔。じゃあ、オレが大輔の大好きの一番?」

 

「うーん……なんつーか、大好きっていっぱいあるんだよ」

 

「いっぱい?」

 

「うん。だって、オレ、ジュンお姉ちゃんも、お母さんも、お父さんも大好きだし。でも、それって多分、ブイモンの大好きとは違うんだよ。太一先輩とか、空先輩とか、タケルとか、トコモンとも違うんだよ。なんつーか、えーっと、その、ブイモンだけは特別、みたいな?」

 

「そっかー」

 

 

とくべつ、か。いい響きだ。ブイモンは上機嫌である。

 

 

「じゃあ、親友は?」

 

「んーと、太一先輩とヤマト先輩みたいな感じ」

 

「それはオレも分かるよ。どんなの?」

 

「えーっと、タケルじゃねーけど、あれじゃねーの?対等で平等ってやつ。全然意味分かんねえけど。だって、太一先輩はいっつもどんどん前に進んでくけど、ヤマト先輩はいっつも俺達のこと守るために一緒にいてくれるだろ?それって、べつに一緒にいなくっても、大丈夫だーって分かってるからだろ?そーいうことだよ」

 

「つまり、太一と大輔みたいな感じ?」

 

「オレと太一先輩はちげーよ。だって、太一先輩、どんだけ頑張っても、オレのこと守る側にしか見てくれないんだ。いつだって。オレがまだ、ちっさいから」

 

「ふーん。じゃあ、もし大輔に親友ができたら、どっちが大事?一緒くらい?」

 

「え?そーだなあ、一緒くらい、かなあ?でも、ブイモンはオレがいないと死んじゃうんだから、やっぱ何かあったら、オレはブイモンのとこに飛んでくよ。ブイモンがいなくなったら、ホントにオレ、何していいんだかわかんなくなる。戦う時、迷った時、理由をくれるって言ってくれたのブイモンだけだし。親友って、そういうのぜーんぶわかっててほっといてくれるんだろ?オレ、そんな奴、見つけられるかなあ」

 

 

浮かぶのはミドリ帽子の少年だが、あいつは頼りない、子供っぽい、対等になりたいって言ってるくせに何でかいっつもオレを頼ってる、と大輔の無意識は苛烈に現実を勘定して、却下する。うらやましいなあ、ヤマト先輩。太一先輩の親友で、しかもすごい人だし。

 

 

「見つけられたらいいね」

 

「おう」

 

 

なるほど、親友って言うのは、大輔とブイモンの関係をぜーんぶ分かってくれて、ほっといてくれるのか。じゃあ、大丈夫そうかな?こうして、ブイモンの天敵認定を免れることになったことなんて、親友候補は知りもしないのである。本宮大輔君はこう言いたいのである。

 

自分という大きな丸があって、他の人と言う大きな丸がある。友達っていうのは、その丸の重なり合いが小さいもの。ちなみに現段階において、理想的なお兄ちゃんの呪縛から解放された本宮大輔の認識では八神ヒカリはギリギリこの範囲になる。

 

まだ仲直りしていないので、知り合いからちょっと昇格しただけだ。その重なり合いが大きいのが親友になる。ちなみに、この重なり合いをパーソナルスペースという。ペットとか所有物はこの重なり合いの中にあるのだが、人間は面白いもので、これを考慮せずにずかずかと踏み越えてくる奴のことは、無意識のうちに避けようとする習性がある。このわっかがぴったり重なった状態は、いわば自分と他人が同一視されてしまう状態である。

 

 

異常事態である。

 

 

自分と他人がいっしょくたになっているのだ。DVに巻き込まれた女性が、男性からなかなか解放されないのはそのせいである。この人は私しかいないんだ、なんていう身勝手同士の思い込みである。他の人が引っ張り上げなきゃいけない。もちろん、それは人間関係でのみ適応される。

 

デジタルワールドなんて言う過酷な漂流生活に巻き込まれた小学校2年生組には、ちゃーんとどこかの誰かさんはもっとふさわしいパートナーを用意しているのである。パートナーデジモンって言う、なにものにも代えがたい、一番自分のことを分かってくれる理解者。ソウルメイトみたいな、限りなく自分の立場に近くて、一緒にいてくれるようなやつ。性格造形をしたデジモンというかけがえのない、もうひとりの自分っていうやつを用意してくれているのである。

 

わかりにくいけども、大輔とブイモン、そしてタケルとトコモンは、実は関係性は一緒なのである。だからタケルとトコモン、大輔とブイモンは、ぴったりかさなっちゃっても大丈夫。無意識は危ないけど、意識すれば大丈夫。お互いにそういう存在なんだけど、実はお互いに微妙に違うところがあるんだよというところに心のどっかで気付いてさえいれば、大変なことは起こらないのだ。

 

まだ彼らは小学校2年生なのだ。大きくなったら大人になるから、ちょっとだけパーソナルスペースは離れていく。かつての自分という造形に関係性は姿を変える。

 

 

大輔にとっては大切なパートナーに変わりないし、ブイモンも緩やかに1番が姿を変えるだけだから、きっと大丈夫。問題は、デジメンタルと引き離されたせいで、ブイモンは大輔に対する独占欲がとんでもないことになっていることだ。古代種という数奇な運命、オーバーライトという寿命の問題、死の気配、という強烈な枷で大輔を縛りつけている。

 

まあこれは、大輔の持っている問題を反映しているんだから、どこかの誰かさんも始末に負えない。極端に自己評価が低い大輔とはバランスがいいのだろう。きっとこれがブイモンっていうデジモンの地なのだろう。とんでもないやつである。だから、大輔はタケルは?って聞かれたら困ってしまうのだ。

 

 

友達というには親しすぎるし、親友と言うにはもうひとりの自分であるトコモンと仲良くなった方法で仲良くなろうとする。ぴったりくっついた丸の中に大輔を押しこもうとしてくるから、大輔は無意識のうちに拒否反応を示している。大輔の知っている親友じゃない。でも大輔は大輔なりに親友だと思っている。だから、あえて言うなら、友達以上親友未満、でも親友にはなりたい。

 

でも大輔はタケルの失言に怒っていた。これ以上ないくらい怒っていた。だからブイモンと共にやってきた大輔は、絶交宣言した侵入者の所には近寄りもせず、ヤマト先輩の所に一直線で向かうのだ。スル―する、見もしない、伸ばしかけた手なんか気にも留めない。

 

滅多に本気で怒らない人間を怒らせたらどうなるかなんて、言うまでもないのである。しかも喧嘩の数だけなら百戦錬磨の実力者だ、よっぽどの相手じゃないと勝てないだろう。ヤマトは過保護なお兄ちゃんをやめたので、友達同士の喧嘩にまで干渉するのはもうしない。これはタケルの問題である。

 

 

「大輔、お前のこと忘れて、喧嘩してごめんな。辛かっただろ?」

 

「いーっすよ、気にしないでください。つーか、今まで、オレのこといろいろ考えてくれてたのに、気付かなくてごめんなさい」

 

「大輔……!」

 

「つかヤマト先輩もそーいうところもあるんだなーって安心しました」

 

 

あはははは、と笑う無邪気な顔に、飛んでくるのは鉄拳である。後ろからが彼の優しさである。

 

 

「おまえは本当にオレを怒らせる天才だな」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、わき腹やめて、死ぬっ!だってタケルに近付いたら怒ってばっかだし……!」

 

「やっぱりおまえはオレを怒らせる天才だなっ……!」

 

 

おまえはガブモンか。嫉妬してたのは否定できない、というか自覚しながらやってました、大輔気付いてくれるから。なんて言えるわけもないのでくすぐり攻撃で黙らせる。ぎゃあああ、と大輔は悲鳴を上げた。

 

大輔はかまってくれるのが嬉しいので全然構わない。でも笑い過ぎて死にそうである。たすけてーとブイモンを見るが、ブイモンの頭の中では、太一の親友という天敵を確実につぶしてくれるうえに、こっちの関係には無害であろうヤマトの味方なので手を貸さない。

 

 

「そーだ、ヤマト先輩!オレ、宿題出来ました!」

 

「宿題……ああ、あれか。で?」

 

「お兄さん、お姉さんも、寂しいってことですよね!」

 

「つまりおまえは母さんの取り合いをしたオレをバカにするためにここまで来たって訳か」

 

「あ、って、ちが、ちがいますってば、え?ちがうの!?」

 

 

あってる。だいたいあってる。あってるんだけど、言い方がまずかった。そして大輔はヤマトの耳が赤いのを見て気付く。しまった、このひとオレと一緒でテレ屋で恥ずかしがり屋だった、直球で言ったら怒られるじゃねーか!

 

 

「ぎゃあああああ!」

 

 

同族嫌悪の似た者同士である。合掌。

 

 

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