(完結)おれとぼくらのあどべんちゃー   作:アズマケイ

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第92話

むかし、むかし、あるところに、この国を守ってくれる神様がいました。1人目は、かみむすびのかみ様といい、この世界が初めて生まれた時、3番目に現れた神様でした。

1番目と2番目の神様は男の子か女の子かわからなかったのですが、この神様は女の子でした。女神様でした。

 

生まれた時から、死んじゃった神様を生き返らせたりする不思議な力があるこの神様は、生産と生成の神様で、神様が造るものを司っている神様です。だからこの神様は創造の巫女様です。2人目は、たかむすびのかみ様といい、神様に捧げる神聖な高木を神様に見立てて生まれた神様です。

 

この神様は世界が生まれた時、2番目に生まれた神様でしたが、かみむすびのかみ様が宇宙という名前の世界を作るというお仕事をするとき、女の子だけでは大変なので、

わけっこして、二人で力を合わせて頑張る相棒になりました。ですが、この神様には不思議な力はありません。

 

どうして相棒になれたのかというと、すべての神様の代表をしている太陽の神様の遠い遠い親戚だったため、ほんの少しだけ不思議な力があったのです。ですが、それはほとんど役に立たないため、創造の巫女様の身の回りの世話をしたり、サポートしたりする、双子のような神様です。

 

 

3人目はたまつめむすび様といい、神様の命が体から離れていくのをとどめるために、がんばれ、がんばれっ、負けるなって命を一生懸命応援する神様です。そのおかげですべての神様はずーっと生きていられます。

 

 

4人目は、いくむすび様といい、生産や成長を意味し、生成発展の活動を司る神様です。たまつめむすび様が頑張ったので、すべての神様はずーっと生きていられるようになりましたが、なんにもしないことはとっても退屈で、とっても暇で、死んじゃうのと変わらないくらい何にもない世界になってしまいました。

 

そこで、いくむすび様は、なにかを生み出すことをすべての神様におしえて、一生懸命頑張ることを教えてあげることにしたのです。おかげで、暇ではなくなりました。

 

5人目は、たるむすび様といい、満足すること、充実すること、充足すること、を司る神様です。すべての神様は頑張ることを覚えて、いろんなものを作ったり、覚えたり、考えたりするようになりましたが、今度はずーっと頑張りすぎたせいで、体を壊したり、病気になったりするようになってしまう世界になりました。

 

忙しくなりすぎて死んじゃいそうなくらい大変な世界になってしまったので、この神様はみんなにほどほどにがんばることの大切さを教えました。おかげでみんな、心に余裕を持って、自分のペースで頑張ることができるようになりました。

 

6人目は、おおみやのめのかみ様といい、すべての神様が安心して暮らせるように平和を守ってくれる女神様です。

みんな心に余裕をもって、節度を持って頑張ることができるようになったのはいいのですが、今度はいろんなことができるようになったせいで、ほかの神様が持っているものが欲しくなって喧嘩したり、対立したり、そのせいで争い事が絶えない世界になってしまいました。

 

そこでこの女神様は、自分のことばっかり考えないで、ほかの神様のことも考えると、喧嘩しないで済むと教えました。そして、みんなで一緒に頑張ることの大切さを教えました。

 

この神様は木の種から生まれた神様なので、この国のようにたくさんの木で作った道具の発展や守護を司る神様でもあります。なので、商業や信託の神様でもあります。ここから、ますますいろんな神様が生まれるようになりました。

 

7人目は、みけつかみ様といい、お米などの穀物や食べ物を司る神様です。食べることが大好きなのんびりやさんの神様で、お米を作る農業や農業でお金を稼ぐので商業、工業の神様でもあります。別名はお稲荷さんといい、たくさんのお狐様を従えている神様です。

 

神社でのお稲荷様はお狐様をさすことが多いですが、お狐様はみけつかみ様のお使いであって、神様に見立てられることはあっても、神様の下っ端の神様です。いたずら好きでおあげをあげると願い事をかなえてくれる、マイペースでいいかげんな神様なので、みけつかみ様より大人気になっちゃった神様です。このみけつかみ様を祭っている本山の神社では、女神様だそうです。

 

8人目は、ことしろぬしのかみ様といい、7人目までの神様が治めている国とはもともと違う国を治めている神様の長男の神様でした。その国と7人の神様の国は、どちらがこの世界を治めるのかでずーっともめていて、大変仲が悪く、ずっと喧嘩していたのですが、ずっと平和な世界が造れないのは困るので、最後の喧嘩でどっちの神様が偉いのかを決めることになりました。

 

そしてことしろぬしのかみ様の父神様は負けてしまいました。父神様は長男のことしろぬしのかみ様は、たくさんいる息子の神様に慕われていると知っていたので、自分が決断を下すのではなく、この神様にこれからどうするのかを決めさせることにしました。

 

そのほうが世界が平和になると思ったからです。

 

そして、人間と大変仲が良く海で一緒に漁をしていたこの神様は、決断を迫る7人の神様の国の使者に、いいだろう、と了承したのですが、人間の前には2度と姿を見せなくなってしまいました。その代わりに8人目の神様に選ばれたので、信託と商業、そして海の神様でもあります。

 

 

そして、最後に忘れてはいけない神様がいます。

 

 

それが、なおびのかみ様です。この神様は8人の神様が生まれたずーっと後に生まれた神様なので、世界を治めている神様ではないので、9人目とされることはありません。

ですが、この神様だけはこの8人の神様と同じくらい大事な神様です。

 

なぜかというと、この神様は8人の神様の代表して世界を治めている太陽の神様の力が一番弱くなる日に、その力を高める大事な大事な儀式があるのですが、その儀式を執り行う主催者だからです。

 

この神様は8人の神様の父神様が母神様が死んだせいで、この世とあの世で別れ別れになってしまったときに、忘れられなくて会いに行った父神様が変わり果てた母神様に耐え切れずに逃げ帰り、大喧嘩して、離婚してしまったときに、生まれた双子の神様のうちの弟です。

 

双子の兄の神様は父神様があの世に行ったときに、わるい力を浴びてしまい、それを清めるときに生まれたので悪い神様になってしまいました。そこでわるい力がなくなった父神様から生まれたこの弟は、兄をいい神様にするために、わるい力を追い払う不思議な力が生まれたころからあったのです。

 

この双子の兄弟の神様のあとに生まれた二人の神様にもそんな力がありましたが、このなおびのかみ様が一番その力が強く、この神様は弟、妹の神様とも仲良しです。とりわけ双子の兄弟の神様はとても仲が良く、表裏一体の神様になりました。

 

その功績をたたえられて、この神様は、太陽の神様の力がわるい力によって一番弱くなってしまうときに、わるい力をいい力に変えられる不思議な力を生かして、わるい力を追い払う神事の祭主になりました。この儀式ができるのはこのなおびの神様だけなので、弟で男の神様なのに、兄弟神の代表になり、この儀式の主催者であり、祭主であり、巫女まで全部こなす、その儀式を執り行う準備期間、執行期間、終了期間は、世界で一番忙しい神様になりました。

 

 

「なあ、坊主。お前はそんな8つの神様と巫女様に守られてる八神家の長男坊として生まれてきたんだ。いいか?男の子ってのは強くなくっちゃあ、いけないんだ。俺がお前くらいんときには、みんなでちゃんばらごっことかして、原っぱを駆け巡ったもんさ。妹が生まれて、もう5年もたつってのに、いつまでも「ぼく」なんて弱弱しい言葉つかうもんじゃねえぞ。だから、今日から俺みたいに、「おれ」っていうようにしな。なに、お前の親父さんもお袋さんも怒りはしねえさ、なんかあったらすぐにいえよ?俺がちょいといえば許してくれるさ。いいな?」

 

「うん」

 

「うん、じゃあねえだろう?ここはいっちょ男らしく、おう、じゃねえとな」

 

「お、おう!」

 

「いいこだ。さすがは俺の初孫だな。今日から坊主、お前は「ぼく」じゃなく、「おれ」の八神太一になるんだ。わかったな?」

 

「おう!」

 

「よしよし」

 

わしわしと撫でてくれる大きな大きなごつごつとした手が大好きだった。初孫ということで一番贔屓でかわいがってくれるこの声が大好きだった。この声が聞かせてくれる9人の神様の話が大好きだった。

 

愛と勇気だけを連れて散って行ったたくさんの友達の話、生き残った話、命を守るには力がないといけない、強い男にならないと誰も守れないんだと雄弁に語ってくれた、

 

今生きているのはきっと9人の神様のおかげだって経験から、神様の存在を誰よりも信じている瞳が大好きだった。

その神様の存在を感じられた英雄の証を何度ねだってもねだってもくれなかったのに、その日は違った。

 

今でも八神太一ははっきりと思い出すことができる。太一が知る中で、一番強くて、かっこよくて、無敵な英雄である。もう写真やビデオの向こう側でしか会えないその男は言ったのである。

 

「誕生日おめでとう、太一」

 

「え?おれ、今日誕生日じゃないよ、おじいちゃん」

 

「ばあか、今日は「おれ」の太一の誕生日じゃあねえか。ま、冗談はおいといて、あのやろう、俺に隠れて勉強机もランドセルも2段ベッドも全部揃えやがって。こっちがどんだけ入学祝なに送るか楽しみにしてたか、気付きもしねえ。親不孝もんだぜ、お前のおふくろは。まあ、甘やかして育てちまった俺の責任でもあっからしゃーねえが、おかげで何欲しいんだかわかんなくなっちまった。なんにもやれるもんがねえからな、仕方ねえから、これやろう。お前がずーっと欲しがってたやつだ。くれてやる。大事にしろよ、俺の命よりも大事な相棒だ」

 

「ありがとう!おじいちゃん!」

 

「はっはっは、こんなぼろくせえゴーグル欲しがるのなんざお前だけだぞ。ま、いいけどな。その代わり約束だぞ、太一。世界で一番強い男になれ。守りたいものがあった時、てめえの力が弱くっちゃ結局なんにもできねえんだからな。なんにも守れねえんだからな。経験者がいうんだ、まちがいねえ。男と男の約束だ、わすれんじゃねーぞ」

 

「おう!男と男の約束だ!」

 

「よしよし。おっと、言い忘れてたな。お台場小学校入学おめでとう、太一」

 

「ありがとう!」

 

この男はもう空のお星さまになってしまったけれども、いつまでも太一の心の中に、世界で一番強い男は共にいるのである。トレードマークとなったゴーグルと共に。

 

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