超ブロリーです   作:モアニン

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ブロリーのキャラってどんなのだったっけ
戦闘シーンは文章を追いかけすぎず自分の頭の中である程度好きに妄想してくれた方がスピード感あると思います(おすすめ)。
抽象的過ぎても具体的すぎても通じない悲しみ。


超ブロリーです

  何故父さんは死んでしまったのか。僕が悪かったからだ。僕が自分の力に振り回されてばかりだからだ。父さんを何度も脅かし、遂には命まで。

気付けば何時も終わっていた。それでも父さんは何時もいてくれたのに。復讐に心を傾け、僕をそれに利用しようとしていた事は知っている。でも、果てしない繰り返しの毎日の中でずっと側に居続けてくれたのは父さんだけだ。父さんが憎い時もあった。けど物心付いたときから最後まで、その最期まで一緒にいてくれたのは父さんだけだ。まだ僕は何も返せてなかったのに。

頭を充たす高揚と激憤が()の水面に姿を消す。水嵩が高まって迸る哀しみが身体の芯から溢れだした。

 

「■■■■■■■■■―!!」

 

(理性)が蒸発する。

 

――――――――――――――

 

 

僅か数分にも満たぬ間に廃墟と化した遊園地。そこを荒れ地にした男女双子の人造人間17、18号。そして兄の如く慕う師匠の救援に駆け付けるも、気絶した手負いの弟子を抱えて隠れる青年の悟飯がいた。

地面から生えたように突き刺さった崩れた壁一枚を隔てると、双子が近くにいる為に僅かにも物音をたてられず、離れることの出来ない悟飯。彼の凡そ三メートルにも満たぬ先で、人造人間は遊び(隠れんぼ)はお仕舞いだと言わんばかりに掌に気を充填していた。その総量に悟飯は焦りが額に滲む。

妙案が思い付かず、爆心地に共にいる弟子のために彼はその片腕を犠牲にする事になる。その時が訪れようかと言う時、空気が一変した。

 

(何だ・・・)

 

悟飯は更けた夜のごとく光が急速に失われていく現象に上空を見上げた。果たして空は暗く、それは彼にあるものを想起させた。絶望と対峙して黄金に輝く父親と、緑の巨龍。

 

(神龍か・・・?)

 

「誰だ、お前は」

 

17号の声に意識を戻すと、彼はこの場に一人の闖入者がいることに気付いた。

双子は目の前に突然現れた、日焼けした半裸の巨漢をまじまじと眺めた。異様なほどに発達した太さの骨と筋(がたいがいい)。彼等は先程打ちのめした遊び相手とそれを直ぐに結び付けた。

 

「お前も孫悟飯の仲間か?」

 

「・・・違いますよ、て顔だね」

 

呆然。恒星の熱量に匹敵する青い波涛に飲み込まれようかと言う時、目の前の景色が瞬かぬ内に変わったのだ。死ぬのだ、という絶対的な確信(認識)と恐怖が彼の脳内を占めていた。自分が死から逃れたという事に彼の思考が追い付いた時、彼はその屈強さから他者に与えるプレッシャーが霧散する程に脱力していた。

しかし、この二人は彼が星の海を航った先の住人であるとは思いもせず、この世界()において悪名高い自分達の事を知らぬ人間などいないことを疑いもしなかった。日食を見も知りもしない彼等は、太陽が座す中天に突然夜の帳が落ちたことと巨漢の反応に摩訶不思議なものを感じた。

享楽的で刹那的な彼等の興味は目の前の玩具へと直ぐに移った。

 

「なぁ、お前、何処から来たんだ」

 

「・・・何処?ここは何処?」

 

「・・・あんたね、先に私達が質問してるんだけど」

 

辺りを見回す彼には青い(・・)空が目に入った。彼の故郷とは異なる色だ。

 

「地球・・・?」

 

「はっ、そりゃあ地球に決まってるだろうよ」

 

「・・・お前、まさか何処か別の星から来たとか言わないよな」

 

好奇心と疑念の渦巻く彼は提案した。

 

「じゃあ、証拠を見せてみろ」

 

「証拠・・・」

 

「そうだ。俺達の目に映り、俺達が納得できる(・・・・・)物だ。生憎、お前と俺達は外見が似ているからな」

 

「・・・17号、あんたマジかい?」

 

巨漢は真っ先に腰に巻いたうぐいす色の毛皮を摘まんだ。ひらひらとした部分を17号の目の前で振ると彼は渋い表情をした。18号は大笑する。

 

「そんな、毛皮なんか(・・・)で私達を納得させられるわけが無いだろう?馬鹿かいお前は」

 

獣のように鼻をひくつかせ、歯茎を見せんとする巨漢。彼の髪が何かに煽られるようにざわざわと蠢き、彼を中心に突風が吹き荒れた。飛んできた礫を払いのけた17号は名案を思い付く。

 

「そうだ、それだよ。力を示すんだ」

 

彼のその発言に湧いた疑問によって怒りを忘れた彼は、彼等の体格を見て反発する。

 

「それは・・・危ない」

 

「?どうしてだ」

 

人の心の機微を気にして生きてきた故に憚られたが、言葉を探すことにおいて不器用この上ない彼は結局ストレートな物言いを放つ。

 

「・・・強そうには見えないから」

 

「へぇ?言うじゃないか・・・じゃあ、見せてやるよ」

17号は隙を窺う。彼の様子から本能が臨戦態勢を取った巨漢。どこか緩かった巨漢が引き締まったのを感じ、無くなった隙に少なくない手応えを期待した。

 

「・・・お前、名前は何て言う」

 

「・・・ブロリー」

 

「じゃあ俺を楽しませてくれよ、ブロリー」

 

それを合図と見たブロリーに17号が飛び掛かり、初めの一撃を試金石とする。最初から壊れては面白くないからだ。

 

「・・・!」

 

だが小動もしないとはどう言うことだ。気の抜けていた所に驚愕に脳内が占められていた17号の視界が白熱する。

「17号ッ!」

 

一撃で地平線へと飛んでいく彼が顔に灯る熱を激情に変えて前を見ると、巨漢が拳を構えていた。反射的に両腕を交差して一撃を受け止めた彼は、その衝撃とまったく止まらぬ勢いにまたも驚く。

 

(これじゃあガードが下ろせない・・・!)

 

何処かの廃ビルを突き抜けると、痺れる腕で懸命に守りを保つ17号は余裕を投げ捨て全力の膝蹴りをブロリーのレバーに見舞う。

流石に怯んだ彼の打点のずれた一撃を避けると、17号は気功波でブロリーを彼の苦悶ごと呑み込んだ。

 

「くたばれッ」

 

「――」

 

彼等はどちらも戦巧者ではない。互いを力そのままにぶつけるだけだ。それはどちらもこれ迄の戦いに勝つにはそれ以上の必要性がなかったからである。一戦闘において17号は変わらない、圧倒的でかつ衰えない強さを誇っていた。一方ブロリーには相手に応じて急激に上昇し続ける強さがあった。

 

「・・・クソ、お気に入りだったのに」

 

x軸から遥か上で平行線を描き続けるグラフ。x軸とほぼ垂直に描かれ続けるグラフ。それが彼等の強さだ。

ところで、異様なタフネスさによって種族の天井をぶち抜いたブロリーには副次的な恩恵があった。それは打たれ強さである。 自己よりも遥か高みにいる相手をバグじみた速度で追い越し、それを維持して尚何のリスクもなく生命活動を続行できる。だから、全身のエラー(突然変異した)細胞の一つ一つが莫大なエネルギーに耐えられる。無論、そんなもので構成された彼が外部の衝撃一つで音を上げる訳がない。

瓦礫が気の余波でブロリーと共に浮かび上がる。

彼の応えていない様子に17号は喜ぶ、訪れるだろう気持ちの良い勝利(優越感)に。消耗戦を強いられているのはどっちかとも気付けずに。

―――――――――――――――

 

トランクスの身をブルマの元に置くと、悟飯は直ぐ様に踵を返して乱入者の救援へと向かった。相手はあの人造人間だ。しかし、現れた時のあの男の気からそう簡単にはやられはしまいだろう。そう感じていたが、悟飯は一向に収まる気配もなく高まり続ける気に妙な焦りを覚えていた。

 

(僕は・・・畏れているのか)

 

まだその力は黄金になった悟飯や悟空程ではない。しかし、必ず追い付き、追い越していくだろう。否応もない暴力を向けられるのを彼の生物(弱者)としての本能が恐れていた。しかし、彼は逆境にこそ強い戦士だ。理性でそれを捩じ伏せると飛翔する速度を上げた。

――――――――――――――

 

「17号・・・?」

片割れを探しに来た18号は何処にも相棒と巨漢の姿を見付けることが出来ずにいると、地表から弾丸のように何かが飛び出していくのが見えた。

 

「くっそォ!」

 

緑色の気弾を携えるブロリーへ、追撃される17号が急停止からの切り返しで顔面を殴る。それを無いものの様に動作を途切れさせる事なくブロリーは17号の腹部へブローをする形で気弾を投げ飛ばした。

打上花火になった17号を雄叫びを上げたブロリーが両腕で鎚を作り、振り下ろした。

17号の落ちた一点から巨大なクレーターが出来上がる様子に18号は呼吸が止まる。

 

「そいつを止めな!」

 

ブロリーはこちらに飛来する18号を視界に収めると、再度地面に横たわる17号の腹部へ、今度は拳でブローを食らわせる。

 

 

「がっ・・・あ」

 

彼の体から漏れた衝撃が大地に亀裂を走らせ、振動で割れた土の塊が上下して抜けかけの歯の様にぐらぐらと揺れた。

地盤が緩くなった事で土に沈んでいく17号の姿に18号の何かが触れた。振り抜いた拳はブロリーの首をゴムであるかの様に殴り飛ばす。手応えはあった。しかし彼は18号を獣の形相で睨み続け、その目を離してはいなかった。踏み込みと共に鞭の様に振り下ろされた彼の片腕()が18号の体を鞠のように地面に叩き付ける。バウンドした彼女は体勢を整える事なく、三次元的な軌道を利用して予測困難な蹴りを放ち、ブロリーの顎を捉えた。

 

「ぐ・・・」

 

「吹き飛びなぁッ!」

 

続いて彼女が彼の至近距離から気功波を全出力で迸らせた。瀑布のひいた後にブロリーの姿が見えないことを確認した彼女は片割れの名前を叫ぶ。

大地から生えた気の柱が土を吹き飛ばすのを見て彼女は17号の元へ駆け付けると、彼を掘り起こした。

 

「大丈夫かい?17号・・・」

 

「いや、死ぬかと思った。アイツ、まるで底が見えないな・・・」

 

「良いから行くよ」

 

彼女が17号の肩を組んで体を起こすと、彼はぼそりと呟いた。

 

「・・・何処にだよ」

 

「え?」

 

それを拾った彼女が逡巡した僅かな間に、この場に男が降り立った。悟飯だ。天変地異に相応しい地上の有り様に僅かに呆気に取られ、眉間の皺を濃くした。

18号に何時もの余裕の笑みはなく、悟飯に掌を翳してじりじりと後退していた。

 

 

「随分と手酷くやられたじゃないか、17号」

 

「ああ、全くだ。癪にさわるな」

 

「18号、お前もだな?どこか傷を庇った動きだ」

 

「・・・お喋りに付き合ってる暇はないね」

 

「これが最後の、絶好のチャンスかもしれないんだ。お前達を絶対に逃しは・・・しないっ!」

 

「我慢しろよ!17号!」

 

―――――――――――――――

 

土がもこりと盛り上がった。ぼこりともぐらみたく日焼けした男が顔を出す。辺りはすっかり暗くなっており、夜空には流星が幾つも現れては消えを繰り返しているのが見えた。漠とその光景を彼が眺めていると、声を掛けられた。気付けば彼の隣には女性がいたようだ。

 

「おーい・・・あんた、大丈夫かい」

 

「・・・だれ?」

 

「あたし?あたしはマイさ。まぁ、そんなことより早くここを離れよう」

 

こてりと頭を傾けたブロリーに何かを悟ったマイは彼の体を持ち上げようとするが、乙女を投げ捨ててもぴくりとも動かすことはかなわなかった。

 

「あんた、早く、逃げようよ!危ないよ、ここは!」

 

「・・・疲れて動けない」

 

「は?」

 

「お腹が空いた」

 

「いや動いておくれよそんな場合じゃないって今私達は生きるか死ぬかの瀬戸際なんだぞ!」

 




ブロリーて40ぐらいなんでしたっけ
人造人間が飛んでるのは舞空術と呼んでいいのか・・・

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