異世界なんて相棒がいればよユウです   作:颯野秋乃

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第9話

ユウとひとしきりじゃれ合ったあと息をついていると、ユウが早速話を変える。

 

《今日は何をしますか?》

 

ギュールと相談かな。早いうちにここを立つなら、おやつみたいな物が欲しいんだよ。かなりちっちゃいけど、市場もあったしそこには行きたいかな。

 

ユウと予定を立てていると、ドアがノックされる。

 

「誰ですか。」

 

「ギュールです。」

 

「どうぞ、入ってください。」

 

「失礼します。もう起きていらしたのですね。朝食の時間になりましたので、お呼びに来ました。」

 

「ありがとう。ここの一階で良いのかな?」

 

「はい。」

 

階段を降りると、宿屋の食事処は賑わっていた。空席を探して席に着くと、対面にギュールが座る。しかしその机にはアルテナの常識にはあるものがなかった。

 

「メニュー表はないの?」

 

そう、メニュー表が無いのだ。一体どのようにして注文するというのか、とアルテナは戸惑うがギュール別の形で戸惑っていた。

 

「メニュー表……?それはなんでしょうか?」

 

《マスターの常識がまた通用しないみたいですね。》

 

「いや気にするな。どうやって注文するんだ?」

 

「待っていれば、来ます。私におまかせください。」

 

なら任せるとしよう。

 

「宿泊のお客様ですね。朝食は何にされます?」

 

「何が出せるかね?」

 

「練り芋の揚げ物かキッシュを選んで。サラダとパンは付いてるから。」

 

「アルテナ様、どうなされますか?」

 

「うーん…。両方食べてみたいからさ、ギュールは練り芋の揚げ物をしてくれない?僕はキッシュにするよ。」

 

「かしこまりました。ではその様に。」

 

「わかったよ。少しの間待っててね。」

 

店員の女性は厨房に戻っていく。

 

「聞きたいことがあるんだけどいい?」

 

「はい、なんなりと。」

 

「メニューが少なくない?キッシュと練り芋の二種類しかなかったよね?」

 

「その通りです。この様な食事処でメニューが多くては、その分仕入れる品目が増えて、無駄が多くなるのです。そのため、メニュー数が減るのです。」

 

「なるほど……。」

 

 

宿屋は賑わっていた。この村のご飯と言えばここ!とのこと。各家庭で料理はしない風習らしい。その為に、必然として老若男女がここに集まるわけである。そしてアルテナは料理が出てくるまでの間、今若男女、主に小学生から中学生位の子どもに囲まれていた。

 

ことの発端はアルテナが暇つぶしを探して食事処を見渡していたら、遊び道具入れを見つけ漁ってみるとオセロを見つけ、ギュールと遊んでいたことだった。

 

ギュールはオセロを知っていたから、パチパチと指していると子ども達が寄ってきたのだ。

 

「何それ~?」

 

「黒と白?」

 

そして子ども達にルールを教えていると料理が届いた。子ども達にオセロ盤ごと渡すと、子ども達は空いている席に集まって、オセロを指し始めた。

 

その光景を少し見たあと、アルテナとギュールは出された料理に手をつけた。

 

「アルテナ様はオセロをご存知だったのですね。驚きです。」

 

「娯楽が少ないから、少しでも面白そうなものはインプットしているだけだよ。遊んだことは無かったけどね。」

 

パサパサして、堅いパンを細かく千切ながら口に運ぶ。……顎が辛い…。

 

サラダにはドレッシングなんて洒落たものはかかっていないから、苦めの味が口に広がる。キッシュはキッシュで塩味が薄くて、美味しいとは言いにくい。

 

(贅沢なのかもしれないけど、もうちょっとどうにかならないかな…。)

 

《世界の変革を待つより、行動してみた方が早いと思います。マスター、早急に取り掛かりましょう。》

 

ユウ?急にどうしたの?

 

《マスターの味覚情報は私の元にまで届けられます。これは許容したくないのです…いや出来ないのです。》

 

(料理が不味いくて辛いから、何とかしろよってこと?)

 

《……端的に言うとそうなるのかも知れません。》

 

(ユウがちょっと欲望に満ちてきている気が……。ま、アルテナも同意見だから全然良いんだけどね。)

 

ギュールの練り芋の揚げ物は、緑色の中身を見て、食べるのを見送ったから解らずじまいだった。

 

「ギュール、もうここを立つ?」

 

「はい、そうしようと思っています。何か必要なものでもありましたか?」

 

「いやそういうのじゃなくて、ちょっと市場を見て来たいなと思ったんだけど…。」

 

「それなら楽しんでいらしてください。ここを立つのは明日でも良いのですから。お金は足りますか?」

 

「ありがと。お金は昨日の分があるから大丈夫。でもここを立つのは、今日中にしよう。」

 

「分かりました。私は馬車の用意が出来ましたら、村の出口で待っております。」

 

「わかった。それじゃ後で。」

 

「お気を付けて。」

 

恭しく頭を下げるギュールを背むけ、ナード村の市場にむけて店を出た。

 

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