「さてと、グラウンドの整備をしなくちゃ。」
( どーん! )
春も過ぎた5月中頃の日も暮れそうな夕刻ごろの練習終わりのできごとだった。
はるかちゃんが誰かとぶつかったみたいだった。
「いたっ!」
「ご、ご免あそばせ・・・ん?」
「えっ?」
「あ、貴方は!七瀬はるか!」
「えっ、あなたは?」
「こ、このわたくしをご存知ない!?入学時の実力テストで学年2番だった 倉橋 彩乃 よっ!貴方さえいなかったら学年トップでしたのに!」
「え・・・」
「2番!イヤな言葉ですわ!よくもわたくしのプライドを傷つけてくださいましたわね!」
「そ、そんなこと言われても・・」
事情も分からないので少し遠くで見守っていたのだが、どうやらはるかちゃんが困っているらしいことは分かった。
「パワプロくんボクが行くよ。」
(あおいちゃんが行ってくれるみたいだけど・・・大丈夫かな?)
「どうしたの、はるか?」
「あ、あおい・・・」
「あら、そのユニホーム・・・!そう、貴方がウワサの・・・。ふーん。へーえ。」
「何よ!言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!部外者は出ていった方がいいと思うけど。ボールが当たっても知らないわよ!」
「あら、わたくしにそのような口のきき方をしてもよろしいのかしら?」
「・・・どういう意味?」
「わたくしはこの恋恋高校の理事長の孫なんですのよ!わたくしがオネダリすればひとひねりなんですからね!」
「・・!?」
「なんだか騒がしいけど、何かあったの?」
「本当でやんす。おちおちサボっていられないでやんす!」
「・・矢部くん・・さぼってたの?」
「い、言い間違えたでやんす!つかの間の安らぎをてにしていただけでやんす!」
矢部くんへの追及はそこそこにしておいて、そこではじめて少女の方に向き直り目が合った。
「あ・・・!」
「ん?」
少女はどこか驚いたような表情で固まっていた
「・・・・・・、・・・・・//!!」
そして、頬を赤くして行ってしまった。
「な、何なんだ?」
「モーレツな勢いで走り去っていったでやんす!!」
「何なのよ、モウ!!」
「ば、場も落ち着いたことですし、帰り支度進めましょうか。帰りが遅くなってしまいます・・・」
「あの子のことは気になるけど・・・それもそうね。」
次の日の放課後、珍しくはるかちゃんの方から声をかけてきた
「あ、あのお・・・パワプロさん。」
「はるかちゃん、どうしたの?」
「この方に頼んだら、野球やってくれるそうです。」
「ホ、ホントに!?」
「は、はい・・・どうぞ!」
そいつははるかちゃんの掛け声を聞いてから陰から出てきた。
「はるかさんの頼みなら断れないっス!継田っっス、よろしくっス!」
「そ、そう・・。」
凄いテンションの高さに身構えてしまった。
「・・・まあ何はともあれよろしく!」
「ふふ、よかった」
まあ、はるかちゃんも笑顔だし良しとしよう。
「ごめんよー!おーい!」
一旦はるかちゃんと別れたのもつかの間に二人の男子に呼び止められた。
「え、キミたちは?」
「オレは三木、こっちが十河。ウチって部活動必須らしいんだけど、男子のいる部ってここしかないからさ、入れさせてくれよー!」
「今日が期限らしいからさー!」
「もちろん大歓迎だ!ヨロシク!」
すでにグラウンドにいた矢部くんに早速報告した。
「へえー、そんなことがあったでやんすか。これで一気に8人でやんす!」
「この調子ならもしかして夏の大会に間に合ったりして?」
「そんな気がしてきたでやんす!」
喜ぶオレたちを見て悲しそうに眉をはるかちゃんが眉を下げていた。
「それが・・ダメなんです。」
「えっ?」
「どうしてでやんす?」
「1年生の男子、つまり全校生徒の男子は・・これで全員なんです。」
「・・・へ?ということは?」
「はい。1年生での大会出場は・・不可能です。」
「うそー!!」
「がーんでやんす!!」
「2年生になるまでは練習を頑張るしかないか・・」
今更といえば今更だが、このショックな知らせにはどうにもやる気が下がるオレたちだった。
補足 倉橋 彩乃:金髪で長い髪をしていてオデコが少し広いのが特徴な少女で、パワプロにどこかで何かあったらしい・・・