実況パワフルプロ野球9 ~恋恋高校~   作:chappypw

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8球目 冬が来た!

「いたっ!」

 

「どうしたの、あおいちゃん!」

 

だいぶ外での練習がつらくなってきた12月、突然の声にオレは直ぐにあおいちゃんに駆け寄った。

 

「ちょっと指をついちゃって。」

 

「まさか、突き指?」

 

「わかんない・・・」

 

あおいちゃんは指をそっと曲げたり開いたりを繰り返している。

 

「どうしたの?」

 

「あっ、先生・・・」

 

偶然通りかかったのか、保険医の加藤先生が来てくれた。

 

「あおいちゃんがちょっとケガを。」

 

「・・見せてみて。」

 

「はい。」

 

「・・・大丈夫、突き指まではいってないわ。」

 

加藤先生の優しい声に、あおいちゃんとオレはほっとした。

 

「包帯を巻いて・・・と。これで大丈夫。1日はそっとしておいてね。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「ふふっ、じゃあね。」

 

冷静で大人な対応にオレは先生への尊敬を感じた。

 

「良かったね、あおいちゃん。」

 

「うん!」

 

改めて今日は安静にするようにオレからも注意して練習へと戻った。

 

 

 

 

 

 

練習へ戻ってみると今度は矢部くんの様子がへんに見えた。

 

「矢部くんどうしたの?浮かない顔して・・・」

 

「最近バッティングの調子がイマイチな感じでやんす。」

 

「以前から気になってたんだけど、体が前に突っ込みすぎてるんじゃないかな?」

 

オレもプロじゃないのであまり自分から経験者の矢部くんには言い出せないでいたが、いい機会だと思って言ってみることにした。

 

「ちょっと素振りしてみてよ」

 

「分かったでやんす。」

 

( ブン )

 

「こうでやんすか?」

 

「・・やっぱり思ったとおりだ。もうちょっとためる感じで振ってみて。」

 

( ブンッ! )

 

「こうでやんすか!?」

 

矢部くんも手ごたえを感じたようで返答にも元気があった。

 

「そうそう!いいスイングだったよ矢部くん!」

 

「ありがとうでやんす。パワプロくんのおかげでやんす!」

 

「そ、そう言われるとテレるな~」

 

矢部くんの悩みはなくなったみたいで、その後は張り切って練習に励んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

また少し経って今日はクリスマス、終業式と重なったので練習もなく街の大型スーパーにあるスポーツショップで買い物をして帰ろうとしているとはるかちゃんを見つけた。

 

「おーい、はるかちゃん。」

 

「・・こんにちは、パワプロさん。」

 

近づいてみて気付いたけど、どうやらはるかちゃんはファンシーショップで動物のキーホルダーをじっと見ていたようだ。

何か気に入ったのがあるのだろうか?

せっかくだしぷれぜんとしようかな。・・・さて、それにしてもどれがはるかちゃんの好みなんだろうか?

キーホルダーは、こいぬ、小鳥、たぬき、こぶた、こねこ、の5種類に色の違いもある。

うーん・・・直観を信じてこれに決めよう!

 

「はるかちゃん、ちょっと待っててくれる?」

 

「・・はい、かまいませんよ。」

 

オレはキーホルダーを手に取り会計を済ましてすぐに戻った。

 

「はるかちゃん、クリスマスだしちょっとしたものだけどプレゼントするよ。」

 

「・・・い、いいんですか?ありがとうございます!私もこのピンクのこぶたのキーホルダーがかわいいと思っていたんです。本当にありがとうございます。大切にしますね。」

 

「ふふ、どういたしまして。」

 

正解だったみたいだ。はるかちゃんが今まで見た中で一番いい顔をしていて、オレもなんだか嬉しくなる。

 

「そうだ。私もキーホルダーをプレゼントしますので、パワプロさんもおそろいでつけてみませんか?」

 

そう言いながら彼女は水色のこぶたのキーホルダーをオレにプレゼントしてくれた。

 

 

その後は家族に買い物を頼まれていたというはるかちゃんに付き合って回って、そのお礼に何か軽く甘いものをご馳走するというので喫茶店に入ることになった。

 

「はるかちゃん、ありがとう。」

 

2人分のケーキが運ばれてきて、はるかちゃんに改めてお礼を言った。

 

「いえ、私こそお買い物に突き合わせてしまって・・それに素敵なプレゼントをいただいてありがとうございます。」

 

余程気に入ったのか、はるかちゃんは今日一緒にいるときも何度かキーホルダーを見つめていたのだが、今また見つめていた。

キーホルダー一つでここまで喜んでもらえると嬉しいのだが、少し申し訳ない感じも出てくる。

 

「いただきます。」

 

両手を合わせてから食べ始めるはるかちゃんを見て育ちのいい子だなあと思ったところで、大きな家に住んでいることを思い出した。

行儀や言葉遣いや立ち振る舞いからお嬢様だと感じさせるはるかちゃんだったけど、目の前で幸せそうにケーキを食べているところはギャップも感じて凄くカワイイく見えた。

 

「今日はなんだかデートみたいだったね。」

 

はるかちゃんがケーキを食べ終えたタイミングでオレは冗談のつもりで言ってみたがはるかちゃんはみるみる顔が赤くなって、固まっていた。

 

「・・・・・・そ、そう・・なんですね。」

 

「いや、あんまり気にしなくてもいいと思うよ。冗談みたいなものだし。」

 

「い、いえ・・・あらたまってみると男の子と一緒にお買い物なんて初めてなので恥ずかしくなってしまって・・・」

 

初めてがこんな行き当たりばったりなんて申し訳なく思えてきた。

 

「初めてならなおさら気にしなくていいよ。ごめんね、変なこと言って。」

 

「違うんです・・・パワプロさん今日はとても楽しかったです。今日は今までのクリスマスで一番の思い出になりそうです。わたしとデートしてくださってありがとうございます。」

 

今日何度目になるかもうわからないお礼をはるかちゃんは恥ずかしそうにしながらもオレの目をちゃんと見つめて言った。

 

「・・・オレもはるかちゃんに会えて良かったよ。」

 

 

それから、はるかちゃんはむかえが来ていると言うのでそこで別れた。

 

今日は一生忘れることのない大切な思い出が出来た!

 

行きも帰りも一人だが、今のオレの足取りはとても軽やかだった。

 

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