今日は元旦だ。
せっかくだから初詣にいこうかな。
「やっぱり人が多いなあ。」
「ふう・・・ようやくおさい銭箱までたどり着けたぞ。」
「さて、何をお願いしようかな。」
今一度少しだけ考えてみたがそれ以外は浮かばなかった。
(野球がうまくなりたいぞ!)
「よし、お参りもしたし帰ろう。」
帰ろうと思ったときに矢部くんがいるのが見えた。
「あれっ、矢部くん?おーい!」
「あ、パワプロくん。あけましておめでとうでやんす。」
「おめでとう。」
「パワプロくんも1人で初詣にでもきたんでやんすか?」
「うん。」
「ロンリー初詣でやんすね。」
「・・・ほっといてよ。矢部くんの方こそどうなの?」
「オイラは・・・」
矢部くんは意味深にほほ笑んだが、何だか顔がこわばっているので察してしまった。
「矢部くん?」
「まあそんなことはどうでもいいじゃないでやんすか。これでも飲んで元気をだすでやんす。」
「えっ・・・これはパワリン(健康飲料)。矢部くん、もらっていいの?」
「もちろんでやんす。一年の計は元旦にあり、でやんす!ではさらばでやんす!」
矢部くんは走って行ってしまった。
オレは直ぐにパワリンを飲みほした。
「ん?あんなところにバットが。」
矢部くんと別れて家に帰る道中の河川敷の下に一本のバットが置いてあるのが見えた。
お、結構手にしっくりくるなあ。ちょっと素振りでもしてみよう。
( ブンッ! )
うん、いい感じ。
そして、オレはしばらくそのバットでスイングの練習をした。
そして、新年からも1か月以上がたち、2月の中旬になった。
今日はバレンタインか。誰かチョコくれるかなあ・・・
そんな淡い期待を胸に登校しているときに後ろから呼び止められた。
「あ、あの・・・」
「あ、はるかちゃん。おはよう!」
「これ、どうぞ。」
「これは・・・あ、ありがとう!」
今日この日に手渡されるきれいなラッピングが施されている手のひらサイズのプレゼントといえば一つしかない。
「い、いえ、どういたしましてっ!」
はるかちゃんは言い終わるとかけて行ってしまった。照れながら手渡す姿は可愛らしかった。
それにしてもはるかちゃん、オレにチョコをくれるってことは・・・ん?
そこで改めて見てみると「義理です」と大きな字で書かれたカードがはさまっているのに気付いた。
はるかちゃん、意外と残酷だ・・・でも、くれたってことは、脈ありかな?
うーん・・・プラス思考でいこうっと。
オレは朝から凄くやる気がでた。
「へえーっ。みんなけっこう上手くなってきたんじゃない。」
練習風景をみてあおいちゃんがふと、つぶやくように言った。
オレも改まって見てみると、確かにみんなだいぶ動きが様になってきたように思う。
「ははは・・・コールド負けは避けられそうかな。」
「大会に出られるようになったら、せめて初戦くらいは突破したいでやんす!」
「いーえ、ぜっったいに甲子園に行くの!」
「そーだ、オレたちゃやるぜっ!」
「1,2年生だけで甲子園だー!」
「世間をあっといわせてやるぜ!!」
いつの間にかみんな近くに集まってきて口々に思いを口にしていた。
みんながうまくなっているのも嬉しかったが、オレはみんなが野球を楽しくやってくれていると思えてそれも何だか嬉しかった。
「そうだね、目標は大きく持とう!!」
「その前にまだ人数がたりないでやんすけど。」
「そのためにも練習だ!」
「「おー!」」
「みんな、もうすぐよ。あと少し頑張ってね。」
「・・・ん?」
どこからか視線を感じた気がしたが見渡しても分からなかった・・・
2月のこの肌寒い季節を乗り切れば、暖かくなり春が来て部員も増えるはずだ!
そして、オレ達は今日もくたくたになるまで練習をする。