お気をつけてお過ごしください。
点滴のチューブが李衣紗の桜色の腕につながれ
スタンドから垂れ下がっている。
ベットに寝かされスヤスヤと眠る李衣紗は
まるで天使のようだ。
「りいさ・・・」
圭太が思わず李衣紗の顔に手を伸ばそうとした。
行成はそっと圭太の腕をつかみ
首を横に振った。
「大丈夫だから。打ち所がよかったから
腕と足の打撲だけで、脳波には異常ないって。
今は体を打った衝撃で疲れて眠ってるだけだから
寝かせてやれ。」
行成の説明をきいてため息をつく圭太。
「ちょっと」
と、永斗が圭太と行成を病室の外に出るように
促した。
圭太と行成は顔を見合わせながら、永斗に続いた。
「なんか、へんなんだよな・・・」
永斗が眼鏡を上げながら、廊下の向こうを見つめる。
「へんってなんだよ!」
地声の大きいのを忘れて、思わず圭太が叫ぶ。
「しーっ!おまえ、ここは病院だぞ!」
いきなり圭太の頭をぶんなぐる行成。
「なんかあったのか?」
行成の疑問に答えるように永斗が話はじめる。
「李衣紗ってさ、お前らも知ってるように
ああ見えて、運動神経いいだろ?しかも
階段おりるときは、いつも慎重に手すりつかみながら
降りるだろ?
けがしちゃいけないから、って。
なのに、あんな転がり方って
不自然なんだよ」
「おい!誰かに突き落とされたとかってことかよ!」
「だから、おまえ声おっきい!
だめだ。ナガ、一旦外に出よ」
圭太を引きずりながら、永斗と行成は食堂横の喫煙所のほうに
移動した。
「おい!永斗」
おなかをすかせた野生のライオンのように
今にも襲い掛かりそうな圭太を制しながら
行成がたしなめる。
「おまえは、落ち着いて人の話を聞くってことが
できねーのか!」
永斗が話を続ける。
「俺が忘れモンとりに行ったときに
誰か階段を駆け上がっていくのが
ちらっと見えたんだよ。でも、オレも急いでたし
かんけーねーから、そんときはスルーしたんだけど・・・
その直後なんだよ。李衣紗が落っこったの。
凛々子さんも、李衣紗を介抱しながら、階段の上を
チラチラ見上げてたんだよ・・・
もしかしたら誰かいたのを見たのかもしれない」
「お前、その階段上がってったやつの顔はみたの?」
行成が尋ねる。
「顔は見てねえけど・・・・」
「けど?」
圭太が歯をむき出し永斗に食って掛かる。
「スカートと生足が見えたんだよな・・・」
「女子だな」
行成が目を細めなが、ら確認するようにつぶやいた。
「ああ・・・足、細かった・・・」
「手掛かりはそれだけか?」
「んーーーーー。あ!ほくろがあった。
ふくらはぎのところに、黒い点・・・そうだ!
ほくろがあったのを、覚えてる。
俺の妹の芽伊もさ、ふくらはぎにほくろがあるんだよ。
だから、印象に残ってるんだ」
「・・・・・・・・」
苦虫をかみつぶしたような顔で
圭太は低くうなっていた。
圭太には心当たりがあった。
細い足で、ふくらはぎにほくろががある
女子を。
突き飛ばしたとなると
犯罪ですよ!!
事故であることを祈ります・・・
悪いことをすると必ず報いがありますからね。
人が見てなくても、お天道様がみてますから
人の道に外れたことしちゃいけません。
って、おばあちゃんに教わったことは
守っていこうと思っています。