桜の咲く頃   作:coltysolty

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李衣紗と日南田。
共に悩みを共有する。


反省はしている。けど後悔はしていない。

急に気温が下がり、街の緑も色づいて

紅葉に彩られる季節に早変わりしたある日の午後

日南田は、母から用事を頼まれていた。

 

「なんだこれ?IH用なべ・・・。IHってあれだよな。

電気の調理器具だと思うけど、それ用のなべってあんのか?

 

・・・・あ!これか。なんでもいいのかな。

てか、結局オレが料理すんだから、オレ目線でいいんだよな?」

 

携帯を取り出し、母に電話する日南田。

 

「あ、オレ。ねえ、なべってさ、なんでもいいの?」

 

(------!!!$%&’$%&’%&’(!!!!)

 

受話器の向こうでなにやら怒鳴っている声が聞こえる。

 

「はいはい、わかりました。サーセン。オレが

聞いてませんでした」

 

母がテンション上がってるときは、ひたすら

同意しておくのが最善の方法だということを

愛息子は重々承知していた。

 

「大きいくて、深いやつだと鍋もできるし

煮物もできるから、それとりあえずひとつと

卵焼き用、四角いやつね。・・・あ、これか。

 

意外に高いのね。おつりはあげるって言われたから

安いの買っちゃおう~って思ってたけど

これじゃあ、ジャージも買えねえな・・・

 

ま、いいや。スィーツでも買って帰ろっと」

 

買い物帰りの道すがら、おいしそうなスィーツショップを見つける。

 

「チョコ系は・・・・と。

あ!ドーナツある。李衣紗が好きなやつだ。

買って、ちょっくら病院にでも寄ってみるか」

 

日南田は自分の分とは別に、お見舞い用にドーナツを

袋に入れてもらった。

 

店から遠くない病院に立ち寄ると、

日南田は李衣紗の病室に向かった。

 

「面会時間とか大丈夫だよな?ま、だめだったら

受付にでも預けてこよっと」

 

病室前で、入院者の名前を確認すると

李衣紗の名前がなかったため、近くにいた看護師に

尋ねると、午前中に退院したことがわかった。

 

「なーんだ。退院しちゃったんだ。

連絡くれればいいのに。あ、でも、いろいろ忙しいし

疲れただろうから、連絡とかできねーか

 

じゃ、李衣紗の家にでも届けるか」

 

病院前からバスで5つ程のところにある李衣紗の家に

日南田は向かった。

 

バスを降りて、日南田は李衣紗に文字メッセージを送った。

 

「あ、日南田だけど、ちょっと届け物あるから

家、ピンポンしていいか?」

 

するとすぐに李衣紗からのコール音が鳴る。

 

「ひなティ!!!え?来てくれたの???

ありがとう!!!ピンポンしないで、入って!

今、玄関開いてるから!!

 

かあさん、お隣さんにお見舞い返しおいてるだけだから」

 

少々戸惑いながら、日南田は李衣紗の家の玄関をくぐった。

2階から李衣紗の声がした。

 

「2Fに上がってきていいよ!」

 

日南田はゆっくりと2Fに上がり、李衣紗の部屋前に来た。

ドアは少し開いていたが、いちおう女子の部屋であるから

日南田はノックをした。

 

「ヒナティ!入って!!!!」

 

日南田の姿をみるなり、喜びながらベットから立ち上がろうとした

李衣紗。

 

まだ足は痛々しい白い布切れで覆われていたが

顔色は血色もよく、元気な様子だ。

 

李衣紗が日南田のほうに歩み寄ろうとしたその瞬間

李衣紗がバランスを崩す。

 

日南田はとっさに李衣紗を抱きかかえる。

 

「おい、気をつけろよ!」

 

と、言いながら、李衣紗をベッドに戻す日南田。

 

冷静になってから、赤面する日南田。

李衣紗は相変わらず日南田をみてほほ笑んでいる。

 

「来てくれたんだね。ありがとう!

まだみんな学校あるかと思って、連絡しなかったんだ。

明日の夕方にでも、みんなに一斉メールしようと

思ってた。

 

でも、一番最初に日南田が来てくれて

うれしいよ。」

 

「・・・・圭太を出し抜いちゃって、なんだか

悪いな」

 

すると、一瞬顔を曇らせ、俯く李衣紗。

 

「ん?どした?」

 

日南田が李衣紗の顔を覗き込む。

 

「・・・圭太、なんかへん。ずっと怖い顔で

しゃべってくれないんだ・・・。

 

私がバカで、うっかり階段から落っこっちゃって

みんなに迷惑かけたから、怒ってるのかも・・・

 

圭太、人に迷惑かけるの大っ嫌いだから」

 

日南田は李衣紗の隣に座り、笑顔でたしなめる。

 

「おい。おまえ圭太のことわかってねえな。

あいつはそんな奴じゃねえよ。迷惑とか違うし。

 

お前のことが心配で心配で仕方ないんだよ。

でも、助かって元気になってるのをみて嬉しくて

それもまた、なんも言えねえで。

 

そういう奴なんだよ。」

 

「そう・・・あ、そういえば璃乃から

聞いてたけど、ヒナティも大変だったんだよね?

 

もう、解決した?」

 

首を少し傾けながら、うるんだ瞳で

日南田を見上げる李衣紗。

 

「あ、あれか・・・未だに真凛音とは

やりとりないけどな。オレも忙しかったし

下手に接触しても、また怒らせちゃうかもしんねえし。

 

いつかわかってくれると思うよ。

おれ、SEになりたいんだよ。だから

いろいろあれこれ分析解析しちゃうけど

真凛音も中学入って、プログラミングとか習ったら

わかってくれるんじゃねえかって

 

まあ、わかってもらえなかったら

それはそれで仕方ねえしな。

 

真凛音のことは嫌いになってねえから

オレはいつでもウエルカム。」

 

天井を見つめながら独り言のように語る日南田。

 

「ヒナティ、大丈夫。きっといつか

わかってくれる日が来るから。真凛音はまだ

知らないことがたくさんあるから、わからないことにぶつかると

怖いってか、不安になるんだと思う。

 

前にもへんな大人の人にいろいろ言われて

それで、敏感になってるところもあるから

ヒナティのことも疑ったりしてるのかもしれない。

 

大人になってたくさん物事を知って、勉強していったら

いろんなケースがあって、って、多面的にものをとらえられるように

なると思う。」

 

「おまえ、すげえな。看護師じゃなくて、弁護士に

なれんじゃね?」

 

「ううん。いっぱい勉強していろんな人のことみて

看護師になったら、どんな患者さんでも、笑顔にしてあげられるように

お話上手にきいて、励ませるように、本読んだり、人の意見きいたり

してるんだ」

 

「いい看護師になれるよ。おまえ」

 

「そう・・・ありがとう!」

 

そう言ってほほ笑んだ李衣紗を思わず抱き寄せる日南田。

すぐにはっ!と、我に返り、ベッドから立ち上がり

慌ててごまかす日南田。

 

「あ、やべ!おれ、母ちゃんに買い物頼まれてたんだ・・・

早く帰んねえと、この鍋で頭カチ割られるわ・・・

 

じゃな。またメッセージ送るわ。みんなにも

オレから言っておくから。おまえは、無理すんな。

ゆっくり休めよ」

 

「うん。ありがとう!本当にうれしかった。

来てくれて、話聞いてくれて、心が軽くなったよ!」

 

「いや、オレのほうこそお前に励まされたな・・・

完璧治ったら、またみんなで遊ぼうな」

 

「うん!帰り気を付けてね!」

 

李衣紗の家を後にして、帰り道を急ぐ日南田。

今も手に、李衣紗のぬくもりが残っている。

しかしながら、親友の圭太を裏切るわけにはいかない。

李衣紗への気持ちには、封印しようと密かに決めた

日南田だった。

 

 

 




李衣紗の願ったことが叶ってしまうという
不思議な現象が、近い未来、連続して起こるようだ。

李衣紗を突き飛ばしたのは、果たして璃乃なのか。
真相は後程明らかに。

☆☆☆☆☆☆☆☆

今年限定の休日。天皇陛下即位礼正殿の儀が執り行われた日ですね。

令和がよい時代になっていきますように。
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