現実になってしまうという不思議。
未だ、意識の表層には表れていない願望が
やがて明らかになる。
空には鰯雲が広がり、澄んだ空気の下で
生徒たちは文化祭の準備であわただしく動いている。
「ね、李衣紗。文化祭は一緒にまわろ?
てか、男子たちは運動部枠で、行動別だから
おわったらみんなで、ごはん行こ?」
璃乃は肩まであった髪を顎のラインまで
切りそろえ、もともとシャープな顔立ちが
一層引き立つような、より活動的なイメージに
雰囲気が変わっていた。
「うん。いいよ。走ったりとかじゃなきゃ
遊んでも大丈夫って、ドクターに言われたから
カラオケとかごはんなら大丈夫」
久々に友達と遊ぶことができる李衣紗は
心が弾んでいた。
女子二人が会話しながら歩いていると
後ろから、聞きなれた男子の声がした。
「おい!俺様、話したいことがあるから
ちょっとこっちにこい」
二人が振り向くと、バックパックを
片方だけ肩にルーズにひっかけ、
日に焼けた顔を女子達に向けた圭太が立っていた。
「圭太!会いたかった!」
単刀直入に素直な李衣紗の反応に
照れながら、圭太は路面をみながら応じた。
「李衣紗によ、話あんだよ。
悪いけど、璃乃外してくれねえか?」
一瞬顔を曇らせた璃乃だったが、なぜか素直に
圭太の要求に応じた。
「いいよ。今日は私留守番で
早く帰らなくちゃだから、もう行くよ。じゃね」
そう言い残すと、振り向きもせず璃乃は
足早に、圭太と李衣紗のそばを離れた。
「璃乃・・・留守番とか言ってなかった・・・
たぶん、気を利かせてくれたんだと思う。
なんだか悪いな・・・でも、圭太と話せてうれしい!」
李衣紗は笑顔で圭太の手を取る。
真っ赤になりながら、圭太はファミレスに行こうと
李衣紗を誘った。
学校から遠くないファミレスで
久しぶりに、二人だけの時間を楽しむ圭太と李衣紗。
「圭太と二人だけって、なんだかすんごーく
久しぶりな気がする!」
喜びたい気持ちを抑えながら
圭太が声を抑え気味に話し出す。
「すっげぇ心配した・・・。まじ心配した
今まで生きてきて、一番心配した。生きた心地しなかった。
でも、元気でよかった。」
「うん!ありがとう!そんなに心配してくれてたなんて
知らなかったよ!!!すっごくうれしい!」
紅潮させた顔を圭太の真正面に向ける李衣紗。
その笑顔がまぶしくて、圭太は気絶しそうになりながら
会話を続けた。
「でさ・・・気になることがあって、お前に聞きたかったんだ」
「なに?」
「階段から落ちた時、おまえの近くに
誰かいなかったか?」
「・・・よく・・・覚えてない・・・
気が付いたら病院だったから」
「てか、おまえはなんであそこにいたんだ?」
「・・・えっと、のら克先生に頼まれてた日誌
届けに行こうとして・・・」
「!!!!!おまえ、ハゲ克のところに行こうと
してたのか?」
「・・・うん。」
「そんとき、ハゲ克は階段にいたのか?」
「ん・・・・・・そういえば、職員室に行く前に
のら克先生がいたから、私ちょっと急いだのかも・・・」
「他に誰かいたか?」
「・・・・だれもいなかったけど・・・」
「けど?」
「・・・・のら克先生は、だれか女子と話していたような・・・
声が聞こえたかもしれない・・・階段からはのら克先生しか
見えなかったけど・・・」
「それで?」
「・・・・・ごめん・・・・頭痛くなってきた・・・
あの時のこと思い出そうとすると、頭痛くなっちゃうの」
「はっ・・・ごめん!!!李衣紗、悪い。
やなこと思い出させちゃったな・・・・
もう、いいよ。とりあえず忘れようか。ゆっくり休んで
完璧に治せ。まだ、治ってないのに、こんなこと聞いて
悪かった・・・オレ、せっかちだから・・・・・」
「ううん!!!いいの!私は、圭太と話せただけで
うれしいの!圭太のお嫁さんになりたい!」
いきなりの直球に、全身フリーズする圭太。
「圭太とずっと一緒にいたい!圭太の笑い声きいてると
すっごく上がるんだ!」
もう、なにがなんだかわからなくなってしまい
意識が混濁しそうな圭太。
「$%&’()%&’($%&’()・・・・
お、おまえ・・・てか
オレみてーな奴が、おまえと釣り合うのかよ・・・
声でけーし、単純だし、短気だし、空気よめねーし
勉強嫌いだし・・・」
「勉強なんか好きなひといないよ!
でも、好きなことだったら、一生懸命やるでしょ?
圭太はずっと合気道してるし、すっごいかっこいい!
やめないで続けるってすごいことだよ。
誰にでもできることじゃないよ。
それに、釣り合うってなに?
誰が上でだれが下とかってないよ。
私は圭太の心が大好きで、圭太の全部が好き。
圭太がそばにいるだけで、安心するし、うれしいんだよ。
その他になにがあるの?」
いきなり告白され、卒倒しそうになりながら
圭太もなんとか応じようとする。
「・・・・そんなに言われるなんて
思ってなかったからさ・・・
オレ、いやマジで、ガチで、お前のこと・・・・
あ、てか、今回の件、ちゃんとしねえと
永斗や行成にぶち殺される」
「え?今回の件ちゃんとするって?」
「(やばっ・・・)あ、えっとー」
「ダメ!圭太、嘘つけないんだから!ちゃんと教えて!」
「あー・・・・やべー・・・・
てか、まだ何の証拠もないから、李衣紗には言うなって
言われてんだ」
「・・・・・ショウ・・・・コ?」
その時、走馬灯のように李衣紗の脳裏に
ある場面が浮かんだ。
「ユルセ・・・・ナイ・・・・・」
李衣紗がいきなり立ち上がり、無表情でつぶやいた。
「え?????李衣紗?」
バタン!と、李衣紗が倒れた。
「おい、りいさ!!!!しっかりしろ!!!!」
ファミレスのソファに李衣紗を寝かせ、あわてて永斗と行成に
連絡をする圭太。
数分して、李衣紗が意識を取り戻した。
「あれ?私どうしたんだろ・・・」
ちょうど、永斗と行成もファミレスに到着した。
圭太はこれまでの経緯を、少し離れたところで二人にざっくり話した。
「オレ、ハゲ克に聞いてみたんだよ。
そしたら、李衣紗になんか頼んでて、それを届けようと
上がってきたんじゃないかって、それは言ってた。
だから、そこは本当だな。
ただ、その時ハゲ克としゃべってた女子ってのが
誰なのか・・・やっぱり璃乃なのか・・・」
行成が腕を組む。
「いや、まだそれだけじゃ、璃乃が押したという
証拠にはならない。璃乃に詰め寄るには証拠が少なすぎる。
それに、ハゲ克も怪しい。」
永斗が分析する。
「とりあえず、オレは李衣紗を送っていくから、
おまえらここで待っててくれ。すぐに戻ってくる」
圭太は、永斗と行成にそう告げると、李衣紗を
抱えながら、タクシーで李衣紗の自宅まで送り届けた。
李衣紗のけがは、単なる本人の過失なのか。
それとも、誰かに突き飛ばされたのだろうか。
事件の真相を、親友の男子たちが暴き出す。