凛々子は李衣紗の家を訪れていた。
「凛々子さん、わざわざ来てくれてありがとう」
「ううん。私こそ。りぃちゃんとケーキ食べたかったから。
ほら、ここのおいしいって言ってたでしょ。
お芋のケーキと、ブドウのタルト選んでみた。
好きなほうどうぞ」
「うわぁ・・・おいしそう!
あ、コーヒー淹れてくる!」
「おっと!りぃちゃんは何もしなくていいの。
ほら、コーヒーもゼブンの買ってきたから。」
「もー、凛々子さん、一緒に暮らしたい!」
「いいよ。おいでよ。」
「え?」
「知ってるよ。圭太から聞いてた。
ごめんね。勝手にきいちゃって」
「え・・圭太が・・・」
赤面し、うつむく李衣紗。
「そうだよー。ほんとに圭太は
りぃちゃんのこと心配しててね。
りぃちゃんがお父さんのことで悩んでるの
すっごく心配してて。
なんとかなんねーかなー・・・
オレ、何にもできねぇ・・・くそっ!
って、自分の膝を殴るのよ。
だから、やめなさい!って
大事な自分の膝をそんなことしても
りぃちゃんは喜ばないよって。
私がよい案あるから、それりぃちゃんに
言ってみるから、圭太は待っててって
そう、なだめてきたところだよ」
「圭太・・・・」
「お父さんのことで悩んでるんでしょ?」
「うん・・・。心配してるのはわかるんだけど
がんじがらめなの。
スマフォにもGPSしろっていうし
門限は8時で、毎日の行動を報告しなくちゃ
叱られるし」
「事件があってからより厳しくなっちゃったの?」
「うん・・・前からだったけど。
自由がなくて、窮屈だったの。
でも、じいちゃんはいつもわかってくれて
話をきいてくれて。じいちゃんも、お父さんに言って
くれたんだけど、お父さんは聞く耳持たず・・・
じいちゃんだけが救いだったんだけど
入院しちゃって、そのときはどうしたらよいかわからなくなって・・・
そんな時、圭太がじいちゃんを励ましてくれて。
うれしかった・・・」
「りぃちゃんさ、うちに下宿しない?
日帰り下宿」
「え?げ、下宿?」
「そう。学校から帰ったら、うちにきて
うちでご飯食べて、お風呂も入って。
寝る直前に家まで送ってあげる。
私はタクシーのパスがあるからいつでも利用できるの。
りぃちゃん家に送って、そのままUターンして
私は家に戻る。
うちにはWIFIもあるし、使ってないパソコンもあるから
勉強もしっかりできるよ。それに、画像用ソフトも入ってるから
りぃちゃんが、おじいちゃんに作ってあげた画像の詩集も編集できるよ。
おうちの人には、私の家で勉強見るってことにして
その代わり、私の身の回りを手伝ってもらうからって。
そう言えば、納得してくれるんじゃないかな?」
「いいの?」
「いいのっていうか、私がそうして欲しい。
私ね、りぃちゃんが笑ってる顔が大好きなの。
りぃちゃんが喜んでると私もうれしい。
圭太も大好きだし、日南田も。ほかの子たちも。
みんなが幸せだと私もうれしいの。
だって、日南田はじめ、みんなに救われたのは
私の方だし。
だから、りぃちゃんが苦しんでる姿は見ていられない。
お父さんはとてもまじめな方だから、りぃちゃんが
心配で仕方ないのね。
気持ちはわかるわ。ただ、そこまでがんじがらめにしたら
せっかくの大切な娘が壊れてしまうわ。
まあ、はっきりとそういったお話はしないけど
学校の講師の家で、勉強みてもらうっていうなら
お父様も承諾してくれるんじゃないかしら」
「それ、グッドアイディア!私、数学苦手だから
塾に入れようかって言われてたし。凛々子さんに
数学みてもらうって言ったら、絶対喜ぶ」
「でしょ?善は急げ!ほら、お手紙書いてきたから
これをお父さんに渡して、説明してみて。
それで、いつでもお伺いするわ。お電話でも良いし。
りぃちゃんが卒業するまでいてくれてもいいし
なんだったら、ずっといてくれていいのよ
部屋も一つ空いているから、そこを使ってもらっていいし。
私が遠征のときは、一人でのんび~り過ごすことだってできる
自分の時間と空間を満喫できるんだから
りぃちゃんも羽を伸ばせるわよ
殻に閉じこもってないで、一歩を踏み出すの。
そうすれば、世界が広がるよ。私でできることなら
なんでも手伝うわ。」
「凛々子さんありがとう!
いろいろ教えてほしいこともあるし、
早速、今日、お父さんにこのお手紙渡すね!」
「そうして。私もりぃちゃんに教えてほしいこと
いっぱいあるの。
お返事待ってるわ」
こうして、凛々子は李衣紗に日帰り下宿の件を
提案し、もう一つ片づけなければいけないミッションを
遂行しようとしていた。
大切なヒトが喜んでくれることは
自身の喜びですね。
つらい思いをたくさんした人ほど
人になにかしてあげたい、そして好きな人が
喜んでくれるのがうれしいものなのです。
凛々子も李衣紗もがんばれ!