桜の咲く頃   作:coltysolty

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ちょっと仕事が忙しく
久々の投稿になりました。



紫陽花の雫

じめじめとした日々をを忘れさせてくれるかのように

庭に咲いている紫陽花の葉の上で光る雫が

すがすがしさを感じさせる梅雨時の午後

 

行成の上の弟である羽音琉(ばとる)が

リビングに突っ伏していた。

 

「おい、ばと、邪魔!」

 

行成がぶっきらぼうに羽音琉の足を蹴る。

 

「おまえは、愛しい弟をそっとしておこうとか

そういう思いやりねえの?」

 

つっぷしたまま、羽音琉が毒づく。

 

「お前こそ、長男に向かって『おまえ』とか

いっちゃう無礼を改めようとかないわけ?」

 

「うっせんだよ。それがオレだ」

 

羽音琉の声が、鼻声になっていたのに気づいた行成。

 

「おまえ、風邪ひいたのか?具合わりーのかよ?」

 

気づかれたと察知した羽音琉は、懸命にごまかそうと

強がってみせた。

 

「風邪じゃねえよ。花粉症だ、ばーか」

 

「おまえ、一言余計だよな。しかも

花粉は終わってんだろ。熱あんのか?」

 

行成は羽音琉の体を起こして、状態を確認しようとした。

すると目が真っ赤になり、鼻水だらけになっている

羽音琉の顔をみて、状況を察知した。

 

「なんかあったのか?また、担任になんか言われたのか?」

 

少しの沈黙の後、羽音琉が詰まりながら答えた」

 

「・・・・・ちげぇよ・・・・・」

 

「友達関係か?」

 

図星をつかれた羽音琉の目からまた涙が零れ落ちた。

 

「今、ココア入れてやるから、そいつ飲んで落ち着け」

 

うっすら状況を把握した行成が、弟を気遣って

落ち着かせてから話を聞こうとした。

 

「牛乳は入れてないけど、砂糖入れたから」

 

背中をさすりながら、羽音琉をソファに促し

あえてこちらから質問せずに、羽音琉を見守る行成。

すると羽音琉の方から口を開いた。

 

「裏切られた」

 

行成の表情が一瞬曇る。

 

「誰に?」

 

泣きはらした目をこすりながら

羽音琉はゆっくりと状況を説明しだした。

 

実は自分と仲間だと思っていた同級生が

ギルド内で裏切っていたらしいのだ。

 

ここで言う「ギルド」はゲーム内の

組織のことを言う。オンラインゲームなどで

リアル、非リアル問わずつながることができるので

省く省かれるといった、仲間外れ現象が起きることも

ないわけではない。

 

よくよく話を聞いてみると羽音琉の

勘違いではないかと思った行成だった。

 

「じゃあ、そいつはもう鯖変えたんだな?」

 

「うん・・・・・」

 

鯖とは、サーバーを意味し、学校で例えれば教室みたいなもので

ひとつの場所で複数の人間がオンラインにアクセス

していると、サーバーが落ちてしまいゲームに支障が

あることから、小さいパーテーションでゲームを展開できる

仕組みになっている。

 

つまり、複数のゲームサーバーを立ち上げることで

オンライン上で回線が落ちることがないように

小さいグループで対戦などができるようにしてあるのだ。

 

二次元の世界ではあるが、顔が見えないだけで

そこでも人間関係が成立するため、友情や思いやりも

垣間見れる一方、裏切りや誹謗中傷といったマイナスの

感情が発生することもあるわけだ。

 

「おれ、そいつ知ってるぞ」

 

行成が思いがけない言葉を発した。

 

「え?なんで?」

 

「そいつの垢『平成のキングエレイン』だろ?」

 

垢とはアカウントのことで、SNSやゲームでの

固有のIDを意味する。

 

「え?あ!うん・・・・」

 

「そいつ、おれ、リアルで知ってんの。

で、お前のことも知ってて、お前が担任と

折り合い悪いってのも知ってんだよ。

 

まあ、先輩なんだけどな。俺の部活の。

で、先輩が1年の時の担任が、今のお前の担任。

 

で、お前のことを心配して、わざと離れたんだよ。

まあ、ゲームでつながってんのが

担任にはバレねぇだろうけど、でもなにかの加減で

ばれたら、お前と知り合いだって思われて

 

お前のことをかばったりすると、色眼鏡で見られるから

それで離れたんだよ」

 

「・・・・・・マジか・・・・・」

 

「ああ。体育祭のときに、お前がさぼってねーのに

さぼったって言われてたろ?あのあと、

先輩は担任に言いに行ったんだよ。

 

『さっき、先生が注意していた生徒ですけど、

彼は、さぼろうとした他の生徒を呼びにいって

連れてきてくれたんですよ。すごくまじめで

体育祭の準備も見えないところでしっかりやってくれて

います』

 

って。そしたら、担任は、そうだったのか、って。」

 

行成の言葉を遮るように羽音琉が叫んだ。

 

「あ!!!!!だからか!!!!お前

さぼってなかったんだな。悪かったって言われた。

で、なんのことがわかんなくて、???だったけど」

 

「な?ものごとってのは、確かめてみねえと

わかんないことがあんだよ。まあ、ショックなのは

わかるけど、非リアでのことって、目に見えないところがある分

わかりにくかったりするから、

ちゃんと事実を調べてみるのも、悪くないぜ。

 

でないと、人間不信になるからな」

 

行成は自分の体験と重ねて、弟をたしなめた。

 

「そっか・・・・さすが兄貴だな。

おれ、マジで、登校拒否るとこだった。

誰、信じていいか、わかんなくなったから。」

 

羽音琉は、鼻をチーンと噛みながら

落ち着いた様子で兄をほめたたえた。

 

「いや、俺もあったんだ。前に。

圭太が裏切ったと勘違いして、殴り合ったんだけどさ。

でも、リアルだと、その場でやりとりできるから

事情がわかって。で、なーんだ、そんなことか!ってなって

 

圭太とアイスバー食らいながら、笑ってたんだよ。

お互いに顔がはれたからな。冷えポタがわりに

アイスかっくらった」

 

「だなあ・・・・あるな・・・・非リアだと

勝手に勘違いって・・・・

 

なあ、これからも、わけわかんなくなったら

相談していいか? にーちゃん」

 

普段は兄のことを行成と呼び捨てにする羽音琉だったが

甘えてくるときは、昔からにーちゃんと呼ぶかわいい弟だった。

 

「かあさんたちかえってくるまえに、その泣きはらした顔

なんとかしろよ。心配するからな」

 

行成は濡れタオルを羽音琉に投げ渡すと

明日からの遠征の用意に席を立ち、圭太にラインをした。

 

その頃圭太は李衣紗のおじいちゃんにプレゼントする

財布を仕上げ、疲れ果てて大の字になって

リビングで爆睡していた。

 

 




7月後半はまた忙しくなるので、
その前の連休に1回投稿できるかな~

あとはお盆かな~
お読みくださってありがとうございます!
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