超次元ゲイムネプテューヌ:リバース・リ・バース   作:ひきがねコート@pixiv名アスラ

15 / 27
第13話 二度目の初めまして

 

降り積もった雪をキシキシと踏み締める音が辺りに響く。

 

「アッシュ、女の子背負ってるんだからあんまり不安定な所を歩かないでよ?」

「分かってるっての……」

 

集団の最前列を進むアシュレイの背中にはフィナンシェが歩に合わせて上下に揺れていた。

人を背負っている以上、出来ることなら全員が通って踏み固められた道を歩ける最後尾が良いのだが、背負われているのが道案内役なので最前列に行くしかない。

アシュレイがいつも背負っている剣はアイエフが持っている。

 

「……本当にこの道で合ってるのか?」

「…………」

 

サイバーコネクトツーやフィナンシェが言う通りに真っ直ぐ進んでおり、足下には人が通った形跡のような物も確認出来るが、如何せん同じ風景が延々続けば聞き返したくもなる。

 

「…………」

「…………」

「おい、フィナンシェ」

「ふぇっ!?……あ、はい、なんでしょう!?」

「……絶対寝てただろ」

「う……すみません。最近忙しくてあまり眠れていないんです……」

 

どうやら眠っていたらしいフィナンシェがしょんぼりと肩を落とす。

 

「お仕事で疲れてるなら大目に見てあげるです。それにアッシュさんはあったかいですから」

「疲れとおんぶの揺れとコタツのようなあったかさ!この殺人コンボで寝ないなんて人間じゃないよ!」

「だからって今寝るのはどうかと思うがな……まぁいい。というか、まだ着かないのか?」

「あ、はい、もうすぐ……見えてきましたよ」

 

そう言って指を指した先には街の明かりのような物が確認できた。

 

「やったです!街に着いたです!」

「ほらね、やっぱり信じて正解だったでしょ?」

「周りにも追手らしき人たちはいないようですし……どうやら完全に巻いたようですわね……おや?」

 

と、ベールが言った直後、街の方から2人組がやって来ているのが見えた。

2人はこちらに向けて真っ直ぐ歩いてくる。

 

「あいつらは?」

「安心して下さい。彼らは一応味方ですよ」

「……一応?」

 

その仲間らしい2人組がネプテューヌ一行と合流する。

 

「やあ、フィナンシェ。久しぶりだね」

「……ふむ、素敵なお嬢さんを二名も連れているように見える。彼女らが君が言っていた例の?」

「はい。教会に追われていたところをなんとかお連れすることができました」

「なるほど。わたしの名前は……そうだな、兄とでも呼んでくれ。こちらは弟」

 

背の高い方は兄と名乗った。

低い方は弟と言うらしい。

 

「兄さんと弟さんです?不思議な名前です」

「本当の名前ではないよ。コードネームのようなものさ。ねぇ、兄者」

「あぁ、そうだとも。ところで、眼鏡の似合う金髪のお嬢さん。あなたのお名前を我ら兄弟に教えては頂けないでしょうか?」

「まぁ、素直な方ですのね。わたくしはベールと申しますわ」

 

兄の言葉にベールが名乗る。

 

「ベール……なんとも慈愛に満ちた豊満なる響き……是非、ベール様と呼ばせてください」

 

すると兄はやたらオーバーなリアクションを取りながらそんなことをのたまった。

 

「えぇ、構いませんわ」

「では、ピンクの髪のあなたの名前はなんというのですか?」

「わたしです?わたしはコンパっていうです」

「コンパさん……まるで天使のような豊かな響きの名だ」

 

弟も弟で兄と同じく大袈裟にそんなことを言う。

 

「わたし、ネプテューヌ!」

「わたしはアイエフよ」

「アッシュだ」

 

三人が兄弟に自己紹介をする。

 

「フィナンシェよ、これからこの方々はあの方に……?」

「はい。少し複雑かもしれませんが……それでも力になってくれると思うんです」

「では僕たちも共に行こう。レディをエスコートするのは紳士の役目だ。コンパさん、さぁこちらへ」

「ありがとうございますです」

「ベール様もわたしとご一緒に。この辺りは滑りやすくなっているので気をつけてください」

「あら、お気遣いありがとうございますわ」

 

そんな会話をしながらベールとコンパは兄弟と一緒に歩き出した。

 

「……ねぇ、あいちゃん」

「ネプ子、あんたも気づいてた」

 

その短い会話をした直後、二人の頭に急激に血が上っていく。

 

「あの二人、わたしたちのこと無視してるよね、絶対!こんぱとベールだけ贔屓しちゃってさ!」

「なんのつもりかわからないけど、久しぶりにかちんと来たわ」

「ごめんなさい。あの二人は胸の大きな女性にしか眼中にない少々特殊な兄弟なので……どうか気を悪くなさらないでください」

 

フィナンシェが少し高い所から二人に謝罪の意を述べる。

 

「なん……だと……」

「こ、ここに来て胸で差別!?なんなのよこの大陸は!?」

 

が、どうやらそれは二人にとっては逆効果だったようだ。

 

「(……ああ、だからフィナンシェとは口をきくのか)」

 

特に興味の無いアシュレイはふと頭の隅でそんなことを考えた。

 

「許せないよあいちゃん!」

「……ネプ子、わたしが許すわ。変身でもなんでもしていいから、あの二人をギャフンと言わせてやるわよ」

「オーケーだよ、あいちゃん!……あ……」

「……ん?どうしたのよ、ネプ子」

 

その時、ネプテューヌに電流走る。

一瞬の間を置いてネプテューヌが女神化を行う。

 

「ちょっと、そこの二人。待ちなさい」

 

ネプテューヌが前を歩く兄弟を呼び止める。

 

「む、この声は……」

「なあっ!?あのちんちくりんがいなくなった代わりにナイスバディなお姉さんだと!?」

 

流石にこの兄弟もネプテューヌの変化の具合には驚いたようだ。

そしてネプテューヌが言い放つ。

 

「これがわたしの本当の姿よ」

「我ら兄弟、未熟故に見た目の豊かさしか見抜けなかったことをお許し下さい」

 

次の瞬間にはネプテューヌの前に兄弟が跪いていた。

 

「あの……名をなんと申されますのでしょうか?」

「ネプテューヌよ」

「あぁ、なんと甘美なる響きの名前だ……」

「まるで心が洗われるような……まるで女神のような名だ……」

 

掌返しも良いところだ。

しかもそれが両方だというのだから始末がつかない。

 

「ってかおいネプ子!裏切るの!?」

 

もちろんそれを見ていたアイエフが文句を言わない訳がない。

 

「ごめんなさい、あいちゃん。これも、わたしの姿なの……」

「……下衆の極みを見た気分だ……」

「ネ、ネ、ネプ子の裏切り者おおぉぉぉおおお!!」

 

アイエフの断末魔のような叫びは白い雪に溶け込んで消えた。

 

 

……………………

 

 

「ベール様……あぁ、まるで女神のような素敵な名だ!」

「女神だけどな……」

 

合流から暫く歩き、街もだいぶ近くなって来た。

到着まで後数分と言ったところだろう。

 

「ネプテューヌと言う名も、まるで女神の名を冠しているような素晴らしい名前だよ」

「女神だけどな……」

「あいちゃんがすっかりやさぐれてしまったですぅ」

「あ、あはははは……」

 

もはやフィナンシェは苦笑いしかすることが無いようだ。

 

「……で、街に行くのは分かるが、目的地は何処なんだ?」

「「…………」」

「……コンパ、通訳」

「えっと……これからどこに行くんですか?」

「そういえば、女神のような美しい女性に目を奪われ、すっかり忘れていたよ」

「女神だけどな……」

「大きいことは罪だね、兄者」

「小さくて悪かったな」

 

背後からの小言にアシュレイがバレないようにため息を吐いた。

 

「端的に説明しよう、我らはレジスタンスだ」

「レジスタンス?」

「「…………」」

「……ベール」

「レジスタンスはわかりましたわ。けれども、何に対してのレジスタンスですの?」

「それはもちろん、ルウィーの女神、ホワイトハート様に対するレジスタンスさ」

「な、なんですって!?」

 

ネプテューヌが驚くのも無理はない。

ラステイションのアヴニールは国を牛耳ろうとしていたが、それはあくまで金儲けの延長線。

リーンボックスのゴタゴタの原因は水面下で暴走していた排他的思想が元々の原因だ。

だが今回はそのどちらでもない。

国民が、自分達の意思で、国の象徴である女神に、明確な敵意を持って反旗を翻したのだから。

 

「あー……わかるわー……ホワイトハート様も貧乳でしたもんねー……」

 

…………。

 

「どうせ胸のない女神様を下ろして自分たち好みの胸の大きな女神様を祭り上げようって魂胆なんでしょ、はいはい」

「……ねぷねぷ、あいちゃんのやさぐれ具合が酷くなっているですぅ……」

「ごめんなさい、あいちゃん……わたしが裏切ってしまったせいで……」

「裏切った自覚があるんなら最初から裏切るなよ……」

 

と、アイエフの小言にいちいち付き合っていると話が進まない。

 

「で、フィナンシェ。実際のところはどうなんだ?」

「はい。ルウィーは他の三つの国とは異なる文化を持つ、子供も老人も、みんな笑顔のたえない平和な国でした」

 

アシュレイの記憶にもルウィーはそういう国という認識があった。

しかしそれはどうやら過去形のようだ。

 

「ここ最近になって、ルウィーは他国侵略のために武力を強化するなど、かつての笑顔溢れる大陸とはほど遠い過激な軍事国家へとなってしまったのです」

「……まさか、あのルウィーがそんなことになっていたなんて……」

「もちろん、そんなのわたしたち国民が望んだことではありません……全てはホワイトハート様の独裁政治によるもの……」

 

そういうフィナンシェの声はかなり辛そうだ。

 

「だからわたしたちはかつてのルウィーを取り戻すために、レジスタンスを結成したんです」

「……ん?」

 

アシュレイの短い声にネプテューヌが気づいた。

 

「アッシュ?どうしたの?」

「……いや、“まだ足りない”」

「……どういう意味?」

「こっちの話だ」

 

アシュレイが背後を振り返る。

 

「アイエフ。ルウィーについて、何か知らないか?」

「どうせわたしは小さいですよーだ……小さいですよーだ……小さいからなんだって言うのよ……うぅ……」

「……まだダメージが残っているみたいですわね」

 

やさぐれ具合が一周回って泣きそうになっているアイエフにベールも思わず苦笑い。

 

「ねぷねぷ、あいちゃんが酷くなる一方ですぅ」

「思っていた以上に気にしていたのね、あいちゃん……」

「……フィナンシェ」

「はい?」

「もう自分で歩けるか?」

「あ、はい。もう大丈夫です。ごめんなさい、ずっとおぶってもらったままで……重かったですよね?」

「お前は軽すぎだ。ちゃんと食わないと体力がつかないぞ」

 

そう言いながらフィナンシェを降ろした後、ネプテューヌ達に先に行くように促し自分はアイエフへ近寄る。

 

「ふんだ。どうせわたしは……はぁ……」

「おいアイエフ。いつまで拗ねてるつもりだ?子供じゃないんだしよ……」

「何よ……わたしの身体が子供体型だとでも言いたいの!?」

「言ってねぇし言うつもりもねぇし思ってもねぇよ。被害妄想も良い加減にしろ。後、剣返せ」

 

アイエフのやり場のない怒りの矛先はアシュレイの方を向いたようだ。

 

「そうよね。結局男なんて大きいのが良いに決まってるわよ。どうせアッシュもその口なんでしょ?」

「んなわけないだろ」

「まぁ口ではなんとでも言えるわよね……」

「あんなデカイのぶら下げて戦闘なんて考えたくもない。今のサイズですらバランス取るのにかなり苦労してるってのに……」

「……って好みじゃなくて自分に付いてる方の話!?どう考えてもこの流れでそうなるのはおかしいでしょ!?」

「冗談だ」

 

アシュレイのボケにアイエフがいつもの調子でツッコミを返す。

 

「よく覚えとけアイエフ。『物の価値は密度で決まる』だ」

「密度?……まさか」

「胸に脂肪が詰まってるとかそういう話じゃないぞ。要は皮よりその中が大事って意味だ」

「ふーん……」

 

興味なさげなアイエフを放ってアシュレイは続ける。

 

「どれだけ小さなメモリだとしても、その中にとんでもない容量のデータが入ればそいつの価値は自然と上がる」

「…………」

「逆にどんだけ大きな機械でも、中身がスカスカならただのハリボテだ」

「…………」

「で、お前の価値はどれぐらいだと思う?」

 

アシュレイが踵を返し、ネプテューヌの後を追いかけ始めた。

 

「……ま、外見どうこうでいつまでもウジウジしてるようじゃ、たかが知れてると思うがな」

「〜〜〜〜っ!わかったわよ!」

「それで良い」

 

相変わらず不機嫌そうだが、さっきより遥かに明るい顔になったアイエフがアシュレイに剣を押し付けズンズンと抜かして行った。

 

「で、アイエフ。ルウィーについて何か情報はないか?」

 

アイエフとアシュレイがネプテューヌたちと合流し、改めてアシュレイが聞く。

 

「ルウィーが武装を始めたのはここ数ヶ月の間のことよ。なんでも、ある日を境に突然人が変わったかのようにホワイトハート様が過激な方になったらしいわ」

「ご苦労。ビンゴだな」

「さすがあいちゃんですわ」

「ネプ子はそろそろ変身解いたら?いざという時に疲れて変身できなくなっても知らないわよ?」

「それもそうね」

 

ネプテューヌがやっとちんちくりんと評された元の姿に戻る。

 

「いったい、ホワイトハート様に何があったんです、フィナンシェさん」

「それはわたしたちの口から説明するより、これからあなた方に会わせる方に聞いたほうが早いと思います。さぁ、ちょうど着きましたよ」

 

と、フィナンシェが指差した先はどうみてもただの一軒家。

あの方だのと言われていた人物がいるとは思えない。

中に入り、少し歩けば目的の扉にたどり着いた。

フィナンシェが教会で見せたような丁寧な動作で扉を三度ノックする。

 

「……失礼します、こちらが先日ご説明した、強力な助っ人の方々です」

 

フィナンシェが扉を開ける。

 

「……今、忙しいの。悪いけど……帰ってもらって」

 

絨毯の上に寝転び、パラパラと本をめくる少女は間違いなくホワイトハートその人だった。

 

「「「「ええええええええっ!?」」」」

 

“四人”の声が部屋の中に響き渡る。

 

「せっかくの助っ人ですよ。無下に返すわけには……」

「な、な、なんでホワイトハート様がここに!?」

「ここはわたしの部屋よ。いて何か文句ある?」

 

狼狽える四人を尻目にアシュレイが前に出る。

 

「……“初めまして”……だよな?ホワイトハートサマ?」

「……そうね、あなたとは初対面よ」

「え?初めまして?初対面?なんで?みんな教会であったはずだよね?アッシュなんかホワイトハート様にナイフまで投げたのに!?」

「……うるさい」

「まったくだ」

 

ようやく立ち上がり、一人用のソファに座ったホワイトハートの横にフィナンシェが立つ。

 

「こちらにおられるのはレジスタンスのリーダーであり、ルウィーの女神であるホワイトハートことブラン様です」

「な、なんだってー」

「わけのわからない状況過ぎて、ねぷねぷが変な顔になっちゃったですぅ」

「……なんとなくですが、状況が飲み込めてきましたわ。フィナンシェ、このブランが本物なんですわね」

「はい、そのとおりです」

 

まだわかってないメンバーを見てアシュレイがやれやれと首を振る。

 

「つまり、俺たちが教会で会ったブランは偽物。本来あの椅子に座っているのはここにいるブランって訳だ」

「しかし……改めてベール様と比べると、我らが女神の胸はなんと貧相で嘆かわしい……」

「……何か言った?」

「いえ何でもありません!」

 

不意に兄が零した台詞をブランが咎め、それを素早く訂正する。

 

「コンパさんたちが教会で会ったであろうブラン様は偽物……宣教師のコンベルサシオンが化けた姿さ」

「やっぱりな……」

「コンベルサシオンを知っているのなら話は早い」

「ある日ブラン様は不意を突かれて奴に女神としての力をコピーされ、そして国をも奪われた」

「あいつの顔は思い出してもむしゃくしゃする……信用してたのに……!」

 

呟くブランの声からはありありと怒りが感じ取れた。

信じていた部下に裏切られ、力を奪われたあげく自分の国を乗っ取られた怒りは計り知れないものだろう。

 

「それにしてもアッシュさん。いつからあの教会で会ったブランが偽物だとわかったのですか?」

「フィナンシェからレジスタンスの話を聞いた時だ。その後のアイエフの話で確信した」

 

アシュレイは壁にもたれかかり、ヒラヒラと手を振る。

 

「女神は国民のシェア……つまりは信仰を受けてその力をより強大なものにする。国と女神は一蓮托生なんだよ」

「それはわかってるわ」

「考えてもみろ。わざわざ女神が国民の心が離れるような真似をすると思うか?それもレジスタンスができるほどな」

「あ……」

「反撃する力があるならここでのんびり本なんて読んでる暇は無いはずだ。だがそうしない。理由は……」

「シェアが低下して力が弱まっているから……ですわね」

「そういうことだ。だろ?」

「……癪に障るけど、その通りよ」

 

そこでブランが改めて全員の顔を見渡す。

ブランの頭はちょうどベールを向いたところで止まった。

 

「あなた、どこかで見た気が……それに、そっちの小さい紫色のも……」

 

ベールが万を持して眼鏡を外す。

 

「ふふっ、久しぶりですわね。ブラン」

「ベール、何であなたが!?まさか、ルウィーを……」

「安心してくださいな。わたくしがルウィーに来た理由はあいちゃん……いえ、ネプテューヌのお手伝いとコンベルサシオンに借りを返すためですわ」

「じゃあ、やっぱりその小さいのは……」

 

ブランに睨まれ、ネプテューヌが前に出る。

 

「やっほー、ブラン。久しぶりだね……って言ってもわたしは全然覚えてなくてごめんね」

「まさか、ネプテューヌがこの国を……いえ、守護女神戦争で勝つためにわたしを……」

「すとっぷ!すとっぷ!すとーっぷ!ややこしくなる前に言っておくけど、わたしブランと戦うために来たんじゃないから、それだけは信じて欲しいな」

「あとこいつ、記憶喪失で守護女神戦争のことはすっぽり忘れたらしい。多分興味も無い」

「記憶喪失……あなたが?」

「それはわたしたちが証明するです」

 

暫く考え込んだブランが口を開く。

 

「……そこまで言うなら、信じてあげるわ」

「どうです、ブラン様。これ以上ない助っ人ですよね?」

「……確かに、フィナンシェの言うとおりこれ以上無い助っ人ね」

 

そこでブランは一息置く。

 

「けど、協力してもらうつもりはないわ」

 

そしてネプテューヌ達の協力を断った。

 

「これはルウィーの問題よ。他国の女神は帰って……このくらい、わたし一人で解決してみせるわ」

「……ブラン様」

「……気に入らない」

 

アシュレイが背負った剣を振り上げ、床に突き刺した。

 

「アッシュ!?」

「何のつもり……?」

「俺は、お前みたいに、変に強がって全部背負ってるつもりになってる奴が一番嫌いなんだよ……!」

「つもりなんかじゃないわ」

「じゃあなんでこんなところでモタモタしてんだよ。自分の国だろ?自分でなんとかするんだろ?じゃあ早く偽物なんかぶっ飛ばして自分の国だって早く言えるようにしろよ?なんでそれが今すぐできないんだよ!?」

「……言わせておけば……!」

「いいか!最初にそのちっこい頭でもよく覚えられるように言ってやる!」

 

ズカズカとブランに歩み寄り、帽子ごと頭を掴む。

 

「俺たちは!何かが欲しい訳でもなければ!お前や国に恩を着せようって訳でも無い!」

 

ブランに睨まれようとアッシュは続けた。

 

「俺たちは!ただの!お節介焼きの集まりだ!お前が俺たちをどう思ってようと!俺たちは俺たちの意思でお前を助けてやる!覚悟しておけ!」

「…………」

 

直後、静まり返った部屋が大きく揺れた。

 

「ねぷっ!?な、何ごと!?」

「この揺れ……どうやら外からのようだ」

 

部屋の扉が乱暴に開けられ、外からレジスタンスのメンバーと思われる人物が入ってきた。

 

「いったい何ごと?」

「教会のレジスタンス狩りです!ブラン様を差し出さないと皆殺しにすると……」

 

ブランのこめかみに青筋が浮かぶ。

 

「……あの野郎」

「聞いたな。出るぞ」

 

ブランに続き、ネプテューヌ達も外へ飛び出した。

 

「大丈夫なのブラン。ふらふらだよ……」

「あいつのせいでシェアが減ったせい……けど、問題ない」

 

威勢良く飛び出したのは良いが、ブランの足下はおぼつかない。

しきりに壁に手をつきながら必死に前に進んでいた。

 

「くれぐれも無理はなさらないで」

「……わかってる」

 

街の広場にはもう1人のブラン……化けたコンベルサシオンが立っていた。

 

「とうとう姿を現したわね。女神を語る偽物が」

「その言葉、そっくりそのままあなたに返すわ」

「相変わらず強がりだけは一人前ね。けど、それも今日で終わり。そこの邪教徒共々始末してあげる」

 

偽ブランが頭の横に手を上げる。

 

「来て、キラーマシン」

 

指を弾く音。

直後、空から降ってきたキラーマシンが地面を砕いた。

 

「こいつ……あの時の……!」

「行くのよ、キラーマシン。見せしめにこの街もろとも皆殺しにしなさい」

「……街もろとも、皆殺し、だと……?」

「ねぷ?……ブラン?」

 

突如、ブランが豹変した。

 

「てめぇ!わたしだけじゃ飽きたらず、街もみんなも皆殺しにするだと!?ふざけんじゃねぇこのカスがっ!」

「ねぷっ!?」

「……へぇ」

「ね、ねぷねぷ……ブランさんが、ブランさんが怖いですぅ……」

「も、もしかすると、ブランて普段は大人しいけど、一度キレると爆発する系だったり?」

「はい、それはもう鬼神のごとく……」

「おい外野!ごちゃごちゃうるせぇぞ、黙ってろ!」

「……と、いった感じの方です!」

 

なぜか説明するフィナンシェは自慢気である。

 

「こ、これが巷で噂のキレる若者ってやつですね、わかります」

「偽物が何をほざこうが無駄よ。キラーマシン、後は任せたわ。やりなさい」

「てめぇ、逃げんのか!待ちやがれ!」

 

踵を返し、その場を後にしようとする偽ブランの後をブランが追いかけようとすると、そこに先ほどまで微動だにしなかったキラーマシンが斧で進路を塞いだ。

 

「……へっ、てめぇが代わりにやろうってのか。望むところだ!」

 

ブランが地面を踏み抜く。

それと同時にブランの身体が光に包まれ、姿を変えた。

白いボディスーツに水色の髪。

赤い目には女神の証である電源マークが浮かぶ。

女神ホワイトハートの姿がそこにはあった。

 

「ねぷねぷも変身です!」

「ベール様もお願いします!」

「……いや、待て」

 

アシュレイが二人の女神化を止める。

 

「アッシュ?」

「もしや、見ているだけ、と言うわけではありませんわよね?」

「……お前らは街の奴らを避難させろ」

「アッシュさんはどうするんです!?」

「俺は……」

 

背中の剣を掴む。

 

「こいつの相手だ」

 

黒い炎に包まれたアシュレイがブランの隣に並んだ。

 

「……わかったわ。その代わり、無理だけはしないでよ!」

「我ら兄弟も喜んでベール様の手足となりましょう」

「避難場所はこっちです!行きましょう!」

「アッシュ!また後でね!」

 

そう言ったネプテューヌ達がフィナンシェや兄弟共々広場から離れていく。

広場に残ったのは二人と一機だけだ。

 

「おい、おまえ……」

「気にするな。こういう体質だ」

「そうかよ……」

 

ブランが大斧を、アシュレイが剣を構える。

 

「アッシュとか言ったな。期待はしねぇぞ」

「こっちの台詞だ」

 

一瞬視線を交わし、二人が走り出した。

 

「よっと!」

 

地面を凪ぐ斧の一撃を飛んで避ける。

地面につくタイミングを見計らってキラーマシンが斧を切り返す。

アシュレイが魔法陣を踏み台に空中で跳ねる。

 

「トロいんだよ!」

 

キラーマシンの肩にアシュレイの剣が突き立てられた。

そのまま剣に高熱を纏わせ、関節を焼く。

直後、アシュレイの背後からキラーマシンのウォーメイスが迫る。

 

「わたしを無視すんじゃねぇ!」

 

ブランが斧を投げ、それをウォーメイスにぶつけることで起動を逸らした。

 

「オ、オオォ!」

 

金属の軋む音と共にキラーマシンがウォーメイスを振り上げ、真っ直ぐにブランに叩きつけた。

 

「ブラン!」

「へっ……効くか……っよ!」

 

なんとブランはあの巨体から繰り出された一撃に耐えるどころか真っ向から受け止め、弾き返した。

ウォーメイスをかち上げられ、キラーマシンに隙ができる。

 

「こいつを……喰らいやがれ!」

 

ブランが飛び上がりながら空中で投げていた斧をキャッチし、それを振り下ろす。

その一撃がキラーマシンの右腕を切り落とした。

 

「頃合いだな……」

 

アシュレイが肩から離れる。

そして足を虎ばさみのような形に変化させ、薙刀に変型させたSSSの柄を咥え込む。

 

「ぶった切れろ!」

 

空中で一回転しながらかかと落としの要領で弱った関節を真っ二つに切断した。

 

「オオオオォォォ……!」

 

両腕を切られたキラーマシンが弱々しく吼える。

斧を肩に担いだブランの隣に剣に戻したSSSを足に取り付けたままのアシュレイが着地する。

 

「けっ、もうこうなったらただのスクラップだな」

「そう言ってる割にはまだやり足りなさそうだな」

「あたりめぇだ」

 

キラーマシンが最後に残った尻尾を二人に向けて振るう。

アシュレイは足に取り付けた剣を地面に突き立て、そのまま再び薙刀に変型させる。

変型の勢いでアシュレイが高く飛び上がった。

 

「ふん」

 

ブランは鼻を鳴らし、尻尾を脇で挟むように受け止める。

 

「よ……っとぉ!」

 

尻尾を引っ張りキラーマシンを引き寄せ、斧を振り上げる。

おもちゃのようにキラーマシンのボディが跳ね上がった。

そしてその真上には剣を手に持ち直したアシュレイの姿が。

 

「法陣展開……」

 

キラーマシンの周囲に多数の魔法陣が出現。

 

「ジャックフロスト!」

 

魔法陣から雨のように水滴が発射され、それらがキラーマシンに吹き付けられる。

水滴が付着した箇所が一瞬で凍りついた。

吹き付けているのは液体窒素だ。

 

「オ……オオォ……」

 

あっという間にキラーマシンは氷像となる。

 

「これで終わりだ!」

 

アシュレイがキラーマシンを切り刻みながら共に落下していく。

 

「そらよ!」

 

最後に残った塊を蹴り飛ばす。

地面に激突し、その塊も粉々になる。

アシュレイが地面に着くころにはキラーマシンは木っ端微塵になっていた。

 

 

……………………

 

 

「アッシュ!無事!?」

「って何これ……?」

 

崩壊した広場には原型をとどめていないスクラップが山となっている。

 

「……よう、遅かったな」

「こっちはもう終わったわよ」

 

その山の上では元の姿に戻った二人が背中合わせで座っていた。

 





はい、本物のブランさん初登場となった第13話でした。
今回は渋の方だと18000字とかいうトチ狂った文字数だった回なので分割しています。
原作だとここからキラーマシン祭りになるのですが、うちのお話だとキラーマシンの出番はここで打ち止めです。
姿形か同じ敵と何度も戦うのはゲームなら兎も角小説だとマンネリ化しますしね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。