超次元ゲイムネプテューヌ:リバース・リ・バース 作:ひきがねコート@pixiv名アスラ
「……はぁ……クソ……」
「開始早々困ったわね……」
「ん?どったの二人とも?」
コンパの家に帰ってきて早々にアシュレイとアイエフがため息を吐いた。
「どうもこうも、ラステイションへの入国許可が降りないんだよ」
「どういうことですか?」
「どうやらラステイション、他国から一般人を入れないような体制を敷いているらしいのよ」
「つまり、拒否られてるってこと?」
「平たく言えばな」
ラステイションに住む人は知らないことだが、この政策は明らかにネプテューヌ達をラステイションに寄せ付けない為の政策だ。
このような無茶な事をしても表向きには教会の決定。
つまりは女神の指示ということになる。
アヴニールには何の被害も無いというわけだ。
「実質ラステイションを仕切っているのはアヴニールなわけだし、今まで私たちがしたことを考えれば当然と言えば当然ね」
「けど、困りましたわね。正規の手続きが無理となりますと……」
違法に入国するしかない。
つまり……。
「忍び込むのね」
「しか、ないだろうな」
「なるべく犯罪は犯したくないですけど……でも、この際贅沢は言ってられないか……」
人の命、果ては世界の命運とたった一回程度の犯罪歴。
天秤に掛けるのもおこがましい。
「じゃあ、どこぞのデイビットな蛇さんの如く、ダンボールを被って忍びこむんだね!」
「そんな面倒なことはしないわ」
「えぇ。空を行きますわ」
「……空?」
ネプテューヌが頭の上にクエスチョンマークを浮かべる。
「あなた、自分が女神だってこと忘れていません?」
「あ、そっか。飛んでいけばいいのか!」
「……やっぱり忘れてたのか……」
「まぁ、そういうことよ」
このゲイムギョウ界に空を飛ぶ乗り物は無い。
何故か?
答えは簡単だ。
空を飛ぶモンスターが居る。
それだけで空は危険な場所となるのだ。
それに空を飛ぶ乗り物を作ればそれらが行き着く場所も用意しなければならない。
つまり土地と莫大な資金が必要になる。
何をどうしてもリターンがリスクを上回らないのだ。
だったら大型転移陣を作った方が安上がりで速く、安全に国を移動することができる。
これらの理由がゲイムギョウ界から空の旅を消し去ったのだ。
「始めての空の旅ですぅ!楽しみですぅ」
だが憧れだけは人の心にある。
コンパもその一人のようだ。
「そうと決まれば、早速ラステイションに出発するわよ!」
「「「「おー!」」」」
「……賑やかなこって……」
5人が拳を突き上げる中、アシュレイだけがやれやれと肩を竦めた。
……………………
「さて、この辺で良いか?」
アシュレイが不意に立ち止まる。
ここはプラネテューヌから東の丘。
モンスターも少なく、同時に人気も少ない。
空へ飛び立つならここが一番良いだろう。
「そうね。ここなら誰かに見られる心配もないわ」
「オッケー。ここで変身すれば良いんだよね?」
「ですわね。それでは……」
三人が体が光に包まれ、その姿を変える。
光が収まれば、そこには三人の女神が立っていた。
「…………」
「?……あいちゃん、どうかした?」
「なんでもないわ。ただ、目の前にいる三人が女神様だってことを改めて実感しただけよ」
「ま、女神同士がつるむなんざ、ちょっと前まではわたし達自身ですら考えたことなかったしな」
「では、欠けている最後の一人を迎えに参りましょうか。あいちゃん、わたくしの背中に乗ってくださいまし」
「あ、はい。失礼します」
恐る恐るといった感じでアイエフがベールの背に乗る。
「こんぱもわたしの背中に乗って。楽しい空の旅を体験させてあげるわ」
「はいです。期待してるですよ」
「フフッ……一生忘れられない1日にしてあげるわ」
コンパもネプテューヌにおぶさり、いつでも出発できる体勢になった。
残ったのは……。
「…………」
「……どうした?早く乗れよ」
「いや、自分より小さい奴に乗るのは少し抵抗がな……」
「バカ言ってるとマジで置いていくぞ……」
「冗談だ。道中頼むぞ」
ブランの小さい背にアシュレイが掴まり、全員の準備が整った。
「それじゃ、みんな!行くわよ!」
6人が一斉に大空へと飛びたっていった。
後はのんびり空の旅を満喫……と言いたいところだったのだが……。
「ひやぁぁぁあああ!?ね、ねぷねぷぅぅぅぅうう!止めてくださいですぅぅぅうう!?」
「まだまだ!わたしの全力はこんな物じゃないわ!もっとスピードを上げるわよ!」
「も、もうたくさんですぅぅぅうう!?」
コンパがネプテューヌのゲッター飛行ばりのとんでもフライトにただただ悲鳴を上げる。
「……何やってんだあの馬鹿」
「コンパ……可哀想だけど、代わってあげるのは遠慮したいところね」
「あのネプテューヌに捕まったのが運の尽きだな」
「わたくし達にはトラウマにならない事を祈ることしか出来ませんわ」
「いや、どう考えても手遅れだろ」
ネプテューヌの遥か後ろで今度こそ快適な空の旅を満喫している四人が呟いた。
「暴れるのは良いが、後でバテるなよー。聞いてないと思うがなー」
「……なぁ、アッシュ」
「あ?どした?」
「お前は何してんだよ……」
「……何の話だ?」
「しらばっくれてンじゃねぇ!『これ』の事に決まってんだろ!」
普段のブランの髪型はショートカットだが、女神化するともみあげだけが伸びている少し変わったものとなる。
現在、アシュレイの手によってその長く伸びたもみあげの右側が綺麗な三つ編みになっていた。
ご丁寧に魔法で作った赤いリボンの飾りまで付いている。
ブランが怒鳴ったのはアシュレイが右側を終え、左側に移行しようとした矢先のことだ。
「あぁ、久しぶりな割に綺麗に出来たと思ったが、不満か?」
「ああ不満だよ、不満しかねぇよ!早く解け!」
「あら、いいじゃありませんの。見た目相応で、プッ……可愛い、ですわよ?」
「笑いが堪えきれてねーじゃねぇか!」
「あー……えーと……わたしは普通に良いと思いますよ?」
「だからフォローになってねーんだよ!」
よほど三つ編みにされたのが嫌なのか、ブランの怒りは収まらない。
「何がそんなに嫌なんだ?似合ってるぞ?」
「……こういうのは……その……ガラじゃねぇんだよ……」
「……お前はもう少し身の回りに気を使った方が良い。自分を磨いて損な事はないぜ?」
「自分を磨くだ?」
「『虎も河辺で体を洗う』ってやつだ。獰猛な野獣でも体は綺麗にする。身の周りを小綺麗にしてみるのもたまには良いんじゃないか?」
「…………」
「どうせ女神化を解いたら元に戻るんだ。それまでこのままでも問題ないだろ?」
「……わかったよ」
まだ少し不満そうだが、ブランはもう暫くこのままでいる事を了承した。
「そうと決まればペースを上げろ。このままだとネプ公らを見失うぞ」
「調子が出てきたわ!今度はもっとスリリングな技をやるわよ!」
「も、もう空はこりごりですぅぅぅうう!?」
この後、コンパが空の旅へは二度と行かないということを誓ったのは言うまでもない。
……………………
「さて、ラステイションに着いたわけだけど、これからどうすんの?やっぱ教会?」
人の目を避けるために降りた街の近くのダンジョンから歩くこと数分。
ようやく街の入り口といったところでネプテューヌが口を開いた。
「シアンのところに行きましょ。どうせ教会に行ってもノワールには会えそうにないし」
「間違いないな」
「あいちゃん。そのシアンという方は、あいちゃんたちの知り合いなんですの?」
シアンという始めて聞く名前にベールが興味を示す。
「はい。アッシュの幼馴染で、前ラステイションに来た時にお世話になった人です」
「……信用してもいいの?アヴニールと繋がってたりしない?」
「そこは俺が保証する」
「繋がるどころかシアンとアヴニールは犬猿の仲なんだ!」
そうこう言っている内にネプテューヌ一行は本格的に街の中へと足を踏み入れた。
ベールとブランの二人は変装……と言うには少し厳しいが、眼鏡を掛け、身分を隠しているつもりで堂々と街中を歩く。
「この間来たばかりなのに懐かしいですね」
「あの時はのんびり街を見てる余裕なんてなかったしね。どうする?シアンとこに行く前に少し観光してく?」
「さんせー!」
「いいですわね。ちょうどラステイションにはどのようなゲームがあるか気になっていたところですの」
「わたしも、ラステイションの文学に興味がある」
アイエフの提案に三人のテンションが上昇する。
一方アシュレイの顔はいつもの顰めっ面になった。
「おい、アイエフ……」
「いいじゃない。たまの息抜きも仕事の内よ」
「……ったく……好きにしろ」
「決まりね。じゃあ、少し自由行動にしましょ。2時間後にここに集合ってことで」
「わかりましたわ。それではあいちゃん。参りましょうか」
なんでもないようにベールがアイエフの手を取る。
「……えっ、わたしですか!?」
「わたくしのエスコートはあいちゃん以外ありえませんわ。それに、あいちゃんとは二人でゆっくりお出かけしてみたかったんですの」
「え、ええええエスコート!?っていうかそれってデデデデートじゃ……」
「そういうことですから、よろしくお願いしますわ」
ベールは優雅に一礼した後、いまだテンパったままのアイエフを引き連れて歩き出した。
「……えっと、わたしは本屋に……」
「ブランさんの道案内はわたしがするです」
「……いいの?」
「はい。行きたかった雑貨屋さんが、本屋さんのちょうど近くなんです」
「そう……なら、お願い」
「はいです!」
ブランとコンパもベール達とは反対方向へ並んで歩いて行った。
「……さて、一足先にシアンのとこに顔出しに行くか」
「ずこー!」
アシュレイが歩き出そうとしたところでネプテューヌがわざとらしく転んだ。
「ちょっとアッシュ!そこはわたしとアッシュがペアになるところじゃないの!?」
「知るか。俺はお前とペアになんざなりたくない」
「そんなー!?あの日の事は嘘だったの?あんなに激しくされたのに……」
「そんなあらぬ誤解を招くような事をした覚えはない」
「いやいやほら、作者の作品の中にR-18のタグが付いたのがあるじゃん?あれの話だよー」
「また訳のわからない事を……」
「ねぇ待ってよー。遊んでくれたらなんでもしてあげるからさー」
「なんでももクソも、別にお前にしてほしいことなんざないっての」
「うー……こんな美少女がなんでもしていいって言ってるのにー……はっ……もしかしてアッシュってホモなの!?」
「俺はノーマルのストレートだし、場所をわきまえてるだけだ。節操無しのお前と違ってな」
「えー……口ではそう言ってるけど本当はそっち系なんじゃないのー?ほら、ホモは嘘つきっていうしさー」
「……何なら今ここで証明してやろうか?」
「……え?いや、いきなり野外はちょっと……それにわたしこういうのは始めてで……」
「どうした?あれだけ言っておいて、今更ビビってるのか?」
「あ、アッシュさん?目がマジだよ?」
「俺はいつだって本気だ。特に、こういう時はな……」
「……優しく……してよ?」
「保証は……出来ないな」
「アッシュ……」
「ネプ公……」
「ちょっ、ちょっと!ストップストップ!二人共道の真ん中で何してるのよ!」
道の壁に手を付いたアシュレイと、それらに挟まれているネプテューヌ。
所謂壁ドンの体勢で際どい会話していた二人にようやく声を掛けた人物がいた。
「あ、ノワール。やっと出てきたね。もうちょっと遅かったら野獣と化したアッシュに食べられるところだったよ」
「誰が野獣だ」
「……え?やっと?」
「全部演技だ。わからなかったのか?」
「いやー、途中から笑いを堪えるのに必死だったよ」
「嘘ぉ!?」
演技と気付かず、真っ赤な顔で飛び出してきたノワールの顔は騙されたショックで今度は青くなっていた。
「街に入った時からこっちに気が付いていることは知ってたしな」
「そのくせ目が合いそうになったら顔をそむけて他人の振りなんかしちゃってさー。だからぼっちなんだよ」
「だ、誰がぼっちよ!誰が!」
腕を振り上げてノワールが叫ぶ。
半ばヤケである。
「冗談はここまでだ……久しぶりだな、ノワール」
「長いこと会えなかったけど元気してた?」
「……一応元気よ。成果は上がってないけどね」
「そうだよー。ノワールがしっかりしないから結局わたしたちがアヴニールの倉庫を壊すハメになったんだからね」
「……あれ、やっぱりあなたたちだったのね」
ネプテューヌが言っているのはルウィーでの一件でのことだ。
やはりアヴニールの動向を探っているノワールにも伝わっているようだ。
「それで、今回はラステイションに何しに来たのよ」
「他の国でやることが終わったってだけだ。博覧会も近いし、ちょうど良いタイミングだと思ってな」
「そう……」
「そういえばノワールはなんでここに来たの?」
「私?」
この辺りは完全な工場地帯で買い物にはあまり適さない。
ただ散歩するほどノワールも暇じゃないだろう。
となれば、何か目的があってここまで来たはずだ。
「あ、そうそう。シアンに素材の回収を頼まれてたのよ」
「……博覧会出展用の武器のか?」
「えぇ」
「そういうことなら手伝うよ!元々はわたしに頼まれてたことだしね」
「別に手伝わなくても良いわ。私一人で十分よ」
「……だそうだ。行くぞネプ公」
「そうだねー」
アシュレイとネプテューヌが歩き出す。
「え?ちょ、ちょっと!?」
「なんだよ。別に一人で構わないんだろ?」
「た、確かにそう言ったけど……その……人数が多い方が楽かなーと……ね?」
「…………」
「…………」
「そ、それに……そうだ!どうせ二人共暇でしょ?私の素材集めを手伝っても構わないわよ?」
「…………」
「…………」
「えーと、じゃあ……その……」
二人がわたわたと手を動かすノワールをニヤニヤと眺める。
「……ノワール」
「な、何?」
「言いたい事を、正直に、十文字以内で言え」
「う……」
「ほらほら、早く言わないとほんとに行っちゃうよ?」
「お……」
「お?」
「お願い、手伝って」
「……句読点含めて十文字。合格だ」
「それじゃ、早速素材集めにレッツゴー!」
「うう……もう!」
こうして三人はラステイションを後にした。
……………………
「トリコロールオーダー!」
「これで……おしまい!」
ノワールが強烈な三連撃をモンスターに叩き込み、ネプテューヌがトドメの一撃を浴びせる。
「……クリア、だな」
「楽勝楽勝!」
「油断しない。先はまだまだ長いんだから」
敵を倒し終えた三人が武器をしまい、再び歩き出す。
「……ねぇ、ノワール。目的のモンスターってどんなの?」
「クリスタルゴーレムっていう水晶の塊みたいな奴よ。フレームの強化にそいつの体に付着した鉱石が必要らしいの」
「場所は?」
「お約束通り、この洞窟の一番奥よ」
「まぁ、こんな道中に居るモンスターの素材なら、普通に市場に出回ってるだろうしな」
三人で会話をしながら薄暗い洞窟を進む。
その途中、ノワールが人影を見つけた。
「……誰か居る?」
「ん、どこ?」
「ほら、あの岩の陰よ」
ノワールが指差した先には黒いフードを被った長身の男。
その場にしゃがみ込み、何やらブツブツ言っている。
「……どうする?なんか怪しそうだけど……」
「いや、あれは……」
「え?ちょっとアッシュ!?」
ノワールの声とアシュレイの足音にフードの男が顔を上げた。
「おや、アッシュくんじゃないですか」
「やっぱりグレイさんでしたか……」
「……知り合いなの?」
グレイが立ち上がり、被っていたフードを脱いで頭を出す。
「昔お世話になった先生だ」
「始めまして、グレイと申します」
「……ノワールよ」
二人が挨拶を交わす。
と言っても、グレイこそ穏やかな表情だが、ノワールの顔には明らかに怪しい人物を見る目をしていた。
「それで、グレイはここで何してたの?」
「えぇ、これを見てください」
グレイが指し示した場所には奇妙な台座が存在していた。
「これは?」
「実はこの台座、鍵の欠片を設置するための物なのです」
「なんですと!?……ってあれ?その肝心の鍵の欠片がないよ?」
ここにあるのはあくまで台座だけ。
台座の模様や装飾からして鍵の欠片が安置されていても見劣りはしないと思うが、ネプテューヌの言う通り台座の上には何もない。
「どうやら鍵の欠片は誰かに持って行かれた後みたいですね」
「誰かって誰?」
「……マジェコンヌ……ですか?」
「断定は出来ませんね。ここの鍵の欠片が持って行かれたのは一ヶ月ほど前のようですし」
「わかるの?」
「台座の砂埃の量から察するに、間違いないでしょう」
台座には鍵の欠片が埋め込まれていたであろう窪みがある。
その窪みには僅かにだが、砂埃が詰まっていた。
「そういえば、ルウィーの鍵の欠片は見つかりましたか?」
「はい。ルウィー教会のマジェコンヌの部屋にあったそうです」
「……だとすれば、ここの鍵の欠片を持って行ったのは別の第三者である可能性が高いですね」
「マジェコンヌ以外の誰か?」
「彼女……マジェコンヌは、普段コンベルサシオンの名で各地を転々としていましたが、本拠地はルウィー教会だったはずです」
「自分の部屋まで用意してるぐらいだもんね」
「そしてそこには鍵の欠片は一つしかなかった。ここの鍵の欠片を入手したのが彼女だとすると……」
「……なるほど」
グレイの話を聞いてアシュレイが頷いた。
「ねぷ?アッシュ、何がなるほどなの?」
「思い出してみろ。ここの台座から鍵の欠片が持ち去られたのは最近の事じゃない」
「うんうん」
「もしここの鍵の欠片を持ち去ったのがマジェコンヌだとすると、ルウィー教会の奴の自室に鍵の欠片は二つあるはずなんだ」
「あ、そっか!」
鍵の欠片が二つなかったという事はラステイションの鍵の欠片を持っているのはマジェコンヌではないという事になる。
「……なんか話が勝手に進んでるけど……一体なんの話?」
話についていけず、後ろでただぼーっと聞いていたノワールが口を開いた。
「あー……ノワールには後で詳しく話す。全員揃ってからの方が都合が良いだろうしな」
「……では、私はもう少し鍵の欠片の情報を集めてみます。持っているのが気のいい人なら譲ってくれるかもしれませんしね」
「なんかいろいろ助けてもらってばっかりだね。いつもありがと!」
「いえいえ、私はやりたいことをやっているだけですよ。それでは、また会いましょう」
グレイは三人に頭を下げた後、フードを被りなおしながら洞窟の出口へ歩いていった。
「さて、俺たちもやる事やって帰るぞ」
「……わかったわよ」
「みんなを待たせるのも悪いしね!ちゃちゃっとやっちゃうよ!」
三人は再び奥へと向かって歩き出した。
……………………
ネプテューヌ達がラステイションの街に戻ってきた時、すでに待ち合わせ場所には全員が集まっていた。
「みんなお待たせ!ノワールもいるよ!」
「やっと戻ってきたわね。あんたはともかくアッシュまでいないから何事かと思ったじゃない」
「少し素材集めに行っててな」
「少し見ない間に随分大所帯になったのね」
ここにいるのはノワールを含めて7人。
初めは三人で始めた旅だったが、いつの間にか人数は倍以上になっていた。
「あ、もしかして今までぼっちだったから羨ましいんでしょー」
「だからそのネタいい加減にして!」
「ふぅん。あなたがノワールですのね」
「じー……」
ベールとブランの二人が興味ありげにノワールをまじまじと見つめる。
「うぅ……何よ、この眼鏡の二人は」
「いやいや、ノワールも眼鏡だから」
「探し人も見つかったし、どこか別の場所に移動しましょ」
「そうですわね。さすがに道の真ん中であの話をするわけにはいきませんし……」
「何?もしかして、私に用があってラステイションに来てくれたの?」
「半分はそうだな」
「ノワール、心なしか嬉しそうだね」
「べ、別に嬉しくなんかないわよ。ただ気になっただけよ」
「ノワールさんも相変わらずですねぇ」
7人は近くのホテルへ向かい、大部屋にチェックインする。
今回、シアンの工場の空き部屋は使えない。
シアンはもちろん、ここにいる7人以外に聞かれてはならない話をするからだ。
「ここならどんな話でもできるはずよ」
「ラステイションのホテル……悪くはないわ」
「わたくしとしては、ベッドはダブルで、もう少しフカフカな方がいいですわ。VIPルームはありませんの?」
「さ、さすがにそんな贅沢はできないですぅ……」
が、そんな話はどこ吹く風で各々リラックスし始めてしまった。
「…………」
「どったの、ノワール?そんな借りてきた人んちの猫みたいに大人しくしちゃって」
「だって、知らない人だし……何を話せばいいかわからないじゃない……」
「……ノワールが思っていた以上にぼっちをこじらせていた件」
「だからぼっちじゃないって言ってるでしょ!」
ノワールが叫ぶ。
「……ただ、知らない人とどう接していいかわからないだけよ……」
そしてしょぼくれる。
「……うわぁ」
「なんというか……いや、言うまい」
流石のネプテューヌとアシュレイもこれには引かざるを得ない。
「ノワール。わたくしたちにそのような気遣いは無用ですわ」
「そうだよ。別にわたしたち知らない仲じゃないんだしさー」
「あなたとは知らない仲じゃないかもしれないけど、そっちの眼鏡の二人は……」
ここで改めてノワールがベールとブランの二人を見た。
「……ってあれ?よく見ればどこかで見たことがあるような……」
「見たことがあって当然よ」
ブランが眼鏡を外す。
「あ、あなたはルウィーの!?」
「やっと気づいたのね」
「それでは、わたくしも……」
続けてベール。
「嘘ぉ!?リーンボックスの女神!?」
「ようやく気付いてくれましたのね」
「ねねねねネプテューヌ!どういうことなの!?なんでこの二人がラステイションにいるのよ!」
パニックに陥ったノワールがネプテューヌの肩を掴み、ガクガクと揺らす。
「あー、それはねー」
「はっ……もしかして、協力してラステイションを潰そうって魂胆じゃ……」
ノワールは弁解しようとするネプテューヌをスルーして勘違いを続ける。
「しかも、その手引きをしたのがネプテューヌだったなんて……一瞬でも友達だって信じた私が馬鹿だったわ!」
そのまま割と洒落にならないレベルまで深読みを始めてしまった。
「いいわ、例え三対一だとしても受けてあげる。けど、これでも私も女神よ。ただで負けてあげるつもりはないわ!そして、私の心を踏みにじったことを後悔させてあげるわ!」
「はいはいごめんよっと」
「……え?なに?」
アシュレイがノワールの背後に回り、脇の下から腕を回す。
つまりは羽交い締めである。
「スタンバイOK」
「了解!とおっ!」
「いたぁっ!?」
ネプテューヌが華麗なフライングチョップをノワールにお見舞いした。
アシュレイがノワールを解放すると、よほど痛むのかノワールは頭を抑えてその場に座り込んだ。
「何するのよネプテューヌ!」
「もう、落ち着いてよ、ノワール」
「そうですわ。別にわたくしたちはあなたと戦おうと思って来たわけではありませんわ」
「……話し合いにきただけ。だから落ち着いて」
「……話し……合い?」
「そ。わたしたち、ノワールとお話しをしに来たんだ。って、その目は信じてないなー」
「当たり前でしょ。いきなり人の大陸に女神が3人でやってきて素直に話を聞く方がどうかしてるわ」
少し前まで守護女神戦争をしていたのだ。
ノワールの言い分もわからなくはない。
「ノワール、お前の身の安全にも関わる。話だけでも聞いてやれないか?」
「私の……安全?」
「あぁ、お前の為を思って言ってるんだ」
「……心配……してくれてるの?」
「当たり前だ」
「……わかったわ。そこまで言うなら聞いてあげるわ」
「……ちょろいね」
「ちょろ甘だ」
少し赤い顔で話を聞くことを了承したノワールに隠れてネプテューヌとアシュレイが呟いた。
……………………
「マジェコンヌ、か……話を聞く限り、アヴニールと繋がってそうな気がするわ」
あれから様々な話をした。
リーンボックスのこと、ルウィーのこと、そしてマジェコンヌと鍵の欠片のこと。
逐一脱線する話を軌道修正していると、いつの間にか夜が近付いてきていた。
「その口ぶりは、わたしたちの話を信じてくれるんだね」
「正直、嘘だと思いたい内容だけど、最近のアヴニールの動向とも一致するし、信じない理由がないわ」
どうやらノワールはネプテューヌ達の話を聞いて、考えを改めたらしい。
「確かにあなたたちの言う通り、当分は纏まっていた方が良さそうね」
「となれば、暫くは鍵の欠片の捜索だな」
「グレイさんの話が本当なら、鍵の欠片を持っているのはマジェコンヌではない別の誰か……でしたわよね?」
「ダンジョンでその台座が見つかったってことは、鍵の欠片を持っていったのがただの一般人じゃないのは確実ね」
「商人に売られたか、その誰かがまだ持ったままか……」
「いずれにせよ、骨が折れるのは確実ね」
その誰かはすでに他の国へ行っている可能性もある。
下手をすればどこか別のダンジョンで死んでいる可能性まである。
なるべく国内で見つけたいところだ。
「後は博覧会ですね」
「……結局、アヴニールの出し物は分からずじまいだったな」
「あれ?あのキラーマシンとか言うのじゃないの?」
「あれはすでに量産体制に入っていた。出すならまだ未発表のものだろう」
「関係ないわ。博覧会より前にアヴニールを潰せばいいのよ」
と、物騒なことを言い始めたのはブラン。
「マジェコンヌが動けない今こそ、アヴニールを潰すべきよ」
「ブランがアヴニールをよく思っていないことはよくわかりましたわ。けど、だからこそ落ち着くべきですわ」
「アヴニールを敵に回すってことはラステイションを敵に回すってことだから、全面戦争になりかねないわ」
そこでネプテューヌがふとあることに気がついた。
「つかぬ事をお聞きしますがノワールさん。もしかして、まだ教会にハブられてる?」
「……ぷっ」
「ネプテューヌ!変な言い方しないで!そしてそこは笑うな!」
「だって女神なのにハブられるって……ぷっ」
「だーかーらー!ハブられてるんじゃなくて!アヴニールが独裁を強めてきたってことなの!」
ネプテューヌとブランにいじられ、ノワールが半ばヤケになりながら叫んだ。
「女神さん同士だとお話しが進まないのはわたしの気のせいです?」
「気のせいじゃないわ……」
「というか、ブランに限っては笑える立場じゃなかっただろ……」
「それで、ノワール?アヴニールが独裁を強めてきたって話だけど……」
「えぇ。あなたたちが去ってから、私なりに正体を隠しながら国民の為にいろいろ尽くしてきたわ」
いないと思われていたブラックハートが再び国民の前に現れたとなれば、シェアは確実に上がっただろう。
「そのかいもあって、教会も女神派の勢いを取り戻しつつあったわ」
「あった……ね」
「……それに危機を抱いたアヴニールは女神派を完全に教会から追い出して、更に支配力を高めたの」
「それで、ルウィーにあんな兵器を……」
「そんな状況だから私も教会には戻りづらくて、今はシアンのところに居候中なわけ」
「ノワールさん、かわいそうですぅ」
「そんな訳だから、迂闊にアヴニールには手を出さないほうがいいわ。今は耐えるしかないの」
以前より遥かに高まったシェア。
しかしアヴニールの支配力はそれを上から押さえつけているようだ。
むしろ状況は以前より悪化しているのかもしれない。
「……とりあえず、アヴニールをどうするか考えるのはまた今度だ。時間はまだある。今日はもう休むぞ」
「そうだね。わたしも喋りっぱなしで疲れちゃったよ」
「わたしも疲れたです」
「シアンのところに行くのはまた明日ね」
「では、誰が何処に寝るかを決めましょうか。あいちゃん、今回も一緒に寝ましょうか?」
「あ、はい……わかりました」
「……あ、シアンに今日は戻れないって連絡しないと……」
こうしてラステイションの夜は更けていった。
……………………
「ねぇ、誰か起きてる?」
「起きてませんわよ」
「……起きてるじゃない」
「ベール様……寝てる人が起きてないなんて言いませんよ……」
「静かにして」
「ブランの言う通りだ。喧しい」
全員がベッドに入って約一時間ほど。
ノワールの声になんとなく眠れなかった四人が目を開けた。
ネプテューヌとコンパは未だぐっすり眠っている。
起きる気配すらない。
「……なんだか不思議な気分ね」
「……と言いますと?」
「私たちって、少し前までは天界で戦ってたでしょ?」
「……そうね」
「その私たちが今こうやって、同じ部屋で寝てるなんて……まだ少し信じられなくて……」
かつての敵が今は味方。
何十年、何百年と戦いを繰り返したというのに。
この僅か数か月で、その溝は埋められようとしていた。
「……正常な人間なら、戦いなんて望まない。意味がないなら尚更だ」
「意味……わたしたちには、世界の覇権がかかってるって伝わってますけど……」
「覇権、ね。んなもん手に入れて何がしたいんだ?」
「……そういうあなたは自分の信仰してる女神に勝ってほしくないの?」
ブランの言葉にアシュレイの顔が沈む。
「……アッシュさん、どうかしましたか?」
「そういえば三人は知りませんでしたね。アッシュは女神を信仰してないらしいんです」
「信仰してないって……四女神の誰も?」
「信仰なんざ、一文の得にもならない……そんだけだ」
「……アッシュ、もしかしてあんた……妹さんのことが原因じゃないの?」
アシュレイが露骨な舌打ちをした。
「アッシュ、妹がいたの?」
「あ……えーと……」
「あいちゃん?」
「……1年前に死んだ……よくある話だ」
その言葉に全員が静かになる。
ネプテューヌたちの寝息だけがやけに耳についた。
「あいつが死んだ時……喉が潰れるまで泣いたさ……けど……どんなに泣いても、あいつは帰ってこない。当然だけどな」
「アッシュ……」
「どれだけ神に祈ろうが、どれだけ泣き叫ぼうが、時間は元に戻っちゃくれない」
「アッシュさん……」
「この世界に“神”はいない……本来の意味での話だがな」
布団を顔まで被り、全員から顔を背けるように横になる。
「神なんかにすがらなくても、俺は真っ直ぐ立てる。一人で歩ける。その為に俺は強くなったんだ」
それきりアシュレイは喋らなくなった。
ここまで重い夜は、今夜が初めてだった。
はい、山なし落ちなしの第16話でした。
山場と山場の橋渡しになる繋ぎの話は大事という事は理解していますが、やはり盛り上がりに欠けるのは良くないですね。
そして今回でようやく四女神が全員集合。
今回で全体の3分の2程度が終了しました。
もうすぐ物語も佳境に入っていきます。