超次元ゲイムネプテューヌ:リバース・リ・バース 作:ひきがねコート@pixiv名アスラ
「シアン、いるかしら?」
「おう、ちょっと待ってろ」
朝、ネプテューヌ達はシアンの工場にやってきていた。
ノワールの声にシアンが奥から顔を出す。
「やっほー、シアン!」
「お久しぶりです。シアンさん」
「元気してた?」
「おっと、お前たちも一緒か!少し見ない間に二人も人数が増えてるじゃないか」
「始めまして。わたくしはベールですわ」
「……ブランよ。よろしく」
「こんな可愛い子を6人もはべらせて、いい身分だな?」
「からかうな。苦労の方が多い」
アシュレイがひらひらと手を振りながら返事を返す。
「それはそれとして、見てくれよこの工場を!見事に元通りだろ?」
「元通りと言うより、前より立派になった気がするです」
「……機械こそジャンク品の再利用だが、型番自体は新しい型だな……どういうことだ?」
工場の機材を眺めながらアシュレイが呟いた。
「アヴニールが利用してるジャンク置き場から拝借したんだ。あいつらどんどん機材を新しいのに置き換えるからな」
アヴニールは常に最新の機材を使って新製品の開発を行っている。
それを逆手にとった訳である。
ジャンク品の利用に関してはアヴニールよりシアン達の方が一枚上手のようだ。
「あぁ、ノワール。素材の方はどうなった?」
「もちろん手に入れたわ」
ノワールが洞窟にいたクリスタルゴーレムから採取した鉱石をシアンに渡す。
「おおっ!これこれ!これを待っていたんだよ!これで限界出力に耐えられるフレームが出来る!」
「……楽しそうだな、お前」
「当たり前だろ?じゃあ、さっそく武器の改修に取り掛からせてもらう。今は時間が惜しいからな」
「そういえば、博覧会っていつなんです?」
「……そういえば言ってなかったな」
「3日後よ」
「そうですか、3日後ですか」
そこまでコンパが言い切り、頭を傾げた。
「って3日後です!?大変です、時間がないです!」
そしてもう博覧会まで日がないということにやっと気付き、慌て始める。
「そういうことだから、わたしは工房にこもらせてもらう。それじゃあな!」
挨拶もそこそこにシアンは工場の奥へ早足で戻っていった。
「行っちゃったです……」
「ねぇ、これからどうする?」
「……私の勘が正しければ、きっとアヴニールは博覧会で何かするはずよ」
「何かって……なに?」
「わかってるならもうとっくに対策を立ててる」
「少なくとも、アヴニールの新兵器はマジェコンヌにとって必要な物のはずよ」
ブランの言葉にはその場にいるほとんどが頷いた。
そうでないのならブランに化けていたマジェコンヌがアヴニールと関係を作る必要がない。
ただの排除すべき障害であった筈だ。
「なんにせよ、全ては3日後の博覧会でわかる。それまで各々準備を欠かすなよ?」
……………………
「そんなわけで、3日後ー!」
「騒ぐな。つーか誰に話してるんだよ」
博覧会当日、ネプテューヌ達は会場に足を踏み入れていた。
この3日でやることはやった。
微調整に次ぐ微調整でシアン作の武器……アルマッスは最高の出来に仕上がっている。
後は何事もなく博覧会が終わってくれるのを待つのみだ。
「これが、ラステイション最大の科学博覧会……」
「どう?すごい規模のイベントでしょ!これだけでも凄いでしょうけれども、まだまだラステイションには凄い技術が沢山あるのよ!」
興味深そうに辺りを見渡すブランに自慢げにノワールが話しかける。
ブランが突然頭を止めた。
「物販ブース発見。ちょっと覗いてくるわ」
「目当ては物販かい!」
どうやら武器兵器まみれの展示物より売り物の方がご所望だったようだ。
「ねぇ、ノワール。ゲームを出展する企業はありませんの?」
「今回のテーマは武器や兵器だから、ゲームを出展するところなんてないわよ」
「そんな……それだけを楽しみにしていましたのに……」
ゲームの出展なしという情報にベールのテンションが一気に下がる。
「あのねぇ……わたしたちは遊びに来てるわけじゃないのよ」
「わかっていますわ。けど、せっかくのイベントですもの。少しくらい楽しんでもいいではありませんの」
「そーだそーだ!ベールにさんせー!」
脇からネプテューヌが騒ぐ。
「ネプテューヌも乗っからないの!もう、どうしてあなたたちはこうも緊張感がないのよ!アッシュも何か言って……」
ノワールが振り向く。
が、そこにアシュレイの姿は無い。
「あれ?アッシュは?」
「お手洗いに行くって言ってたです」
「なんでこのタイミング!?」
「少しくらい待ってあげましょ。お腹を下したってわけでもないんだし、すぐに戻ってくるわよ」
……………………
「くそ……この体だとマジで我慢が効かないな……」
男の体ではある程度堪えられる尿意も、女の体ではそうはいかない。
おかげでアシュレイは人ごみの中を早歩きでトイレへ向かうハメになっていた。
幸い案内板が壁に貼り付けられているので肝心のトイレが見つからないということはなさそうだ。
「あー……やっとついた……」
最後の肉の壁を潜り抜け、ようやく目的地まで辿りついた。
そして躊躇なく“男子”トイレへ。
「ちょ、ちょちょちょちょちょっと待った!」
そのアシュレイの腕が誰かに掴まれた。
「……あぁ?なんだよ?」
アシュレイが振り向くと、そこには白いコートを着た少年が立っていた。
「なんだよ?じゃないよ!ここ男子トイレだよ!?」
「んなこと知ってるよ、何がおかしい」
「全部だよ全部!君女の子でしょ!」
「はぁ?……あー……」
そこでようやくアシュレイは自分が女ということに気がついた。
普段はほぼ男女共用のトイレを使うのでたまに男女別のトイレを利用するとこういうことになるのだ。
「……確かにそうだな」
「……なんか引っかかるけど、わかってくれて良かったよ」
少年が手を離す。
「まぁ、別に誰もいないしここでも構わないだろ」
アシュレイが再び一歩踏み出す。
「わかってなかったー!?待てい!プリーズウェイト!」
何故か英語混じりになりながら少年がアシュレイにしがみついた。
「お前もしつこいな……!」
「こっちのセリフだって!」
「それと」
「え?」
どうやら少年は気がついていないらしい。
「しがみついて人を止めるのはいいが、手の位置には気を付けろ」
「……ゑ?…………うおぉぉぉおおお!?」
少年が後ろからしがみついた結果、幸か不幸かその手はちょうどアシュレイの胸を鷲掴みする位置になってしまっていた。
とはいえ、気がついた後もしっかり三秒ほど感触を楽しんだあたり故意なのかもしれない。
ちなみにもちろんアシュレイはブラなどつけておらず、コートを除けば上はタンクトップ一枚だ。
「あー、えーと、ご……ご馳走様!違う!ごめんなさい!」
振り向いて睨むアシュレイに顔を真っ赤にしながら少年が頭を下げる。
「……ふん」
一つ鼻を鳴らし、アシュレイは隣の女子トイレに向かう。
それに気付いた少年がアシュレイの背中を追いかける。
「ちょ、ホントにごめん!わざとじゃな……いぃ!?」
「……ん?おぉう!?」
焦ったのか、少年が躓き、声に振り向いたアシュレイにぶつかった。
耐える間も無く二人してその場に倒れこむ。
図らずも少年がアシュレイを押し倒す形になった。
「……お前、絶対わざとだろ……」
「違う!断じて!神に誓っても良い!」
「神サマなんぞに誓う前に離れろって……っの!」
「アウチ!?」
アシュレイに蹴り飛ばされ、その反動で少年は後転の要領で床に後頭部をぶつけた。
アシュレイもその場で跳ね起き、コートに付いた汚れを払う。
「ふ、不幸だ……」
「ったく……もうついてくんなよ?」
それだけ言って、アシュレイは渋々女子トイレへ。
「……俺もトイレ行こう」
むくりと起き上がった少年も後頭部を抑えながら男子トイレへと入って行った。
「……あー、マジでこの体でトイレ行くの面倒だ」
それからしばらく、男のとは明らかに工程の多いそれに文句を言いながらアシュレイがトイレから出てきた。
「さて、もうすぐセレモニーだな。さっさと合流するか」
「あれ、もうそんな時間だったっけ?」
「…………」
「それにしてもセレモニーかー。話を聞くだけっていうのはあんまり好きじゃないんだよなー」
「おい」
「え?何?」
「なんでお前がついて来てるんだよ……!」
顰めっ面のアシュレイの後ろからは先ほどの白コートの少年がついて来ている。
「いやー、実は知り合いを探してるんだよ」
「知るか。自分で探せ」
「癖っけがあってあちこち跳ねてる紫の髪の小さい女の子知らないか?友達なんだよ。いや、そうじゃないっていえばそうじゃないんだけどね?」
アシュレイはその少年が言う人物を知っていた。
というか、ついさっきまで一緒にいた。
「……そいつなら知ってるが、名前を名乗らないような奴には教えられないな」
「おっと、そういえば言ってなかったな」
少年がアシュレイの隣に並ぶ。
「俺はヒロム。別の次元のゲイムギョウ界から来たんだ」
「…………」
「あ、別の次元っていうのは別に信じなくてもいいぞ?説明が長くなるし」
「……アシュレイだ」
「ん?」
「アシュレイ……俺の名前だ。ただし、呼ぶ時はアッシュだ」
「……オーケー、えーとアッシュ?」
「それでいい。ついてこい、探し人のところまで案内してやるよ」
……………………
「あ、やっと帰ってきたわね」
「悪い、待たせたな」
「早くしないとセレモニーが始まっちゃうよ!」
待ち合わせ場所に戻ってきたアシュレイにいち早く気付いたノワールとネプテューヌがアシュレイを手招きする。
「アッシュさん?その後ろの人は誰ですか?」
「あぁ、こいつは……」
「えーと、初めまして……でいいよな?俺は別次元から来た……」
「ただの痴漢だ」
「ワッツ!?」
「ち、痴漢!?アッシュ、何かされたの!?」
「い、いや俺は……」
「トイレで胸を触られた」
「トイレでなんて……ハレンチですわ!」
「オマケに押し倒された」
「えーと、押し倒されたってその押し倒されたってことだよね……?」
「もう嫁に行けない」
「……テメェ……わたしの友人に手ェ出しといて覚悟はできてんだろうな……!」
「……あれー?なんか俺大ピンチ?」
「はいはいストップ。冗談が過ぎるわよ」
敵意を剥き出しにするネプテューヌ一行と狼狽えるヒロムの間にアイエフが割って入った。
「た、助かったぜ……えーと、アイエフ……だよな?」
「あなた、さっき別次元からって言ってたわよね?ということはMAGES.の知り合い?」
「ああ。俺はヒロム。改めてよろしくな」
「ヒロムさんですね。わたしはコンパです」
「おお!そっちはやっぱりコンパか!俺が知ってる二人より随分大きいな!」
こちらのネプテューヌ達は知らないことだが、ヒロムやMAGES.の存在する通称神次元でのアイエフとコンパは5歳程度の子供なのだ。
まだ10代とはいえ、子供の姿を見慣れているヒロムにとってはアイエフとコンパの姿は大きく見えるのだろう。
「わたし、ネプテューヌ!こっちのぼっちっぽいのがノワールで、あとの二人がベールとブラン!よろしくね!ヒロくん!」
「だから誰がぼっちよ!」
「こっちでもネプ子たち四人は変わらないな」
騒ぐ八人へシアンが合流する。
「お前ら!そろそろセレモニーが始まるぞ!」
そうシアンが言った直後、中央の台にマイクを手にしたガナッシュが立った。
「会場におこしの皆様。本日は我がアヴニールが主催する総合科学博覧会にお越しいただき、ありがとうございます」
「あいつ、なに勝手にアヴニール主催に変えてんのよ……協会、っていうか私が主催なのに」
ノワールが愚痴る。
その間もガナッシュの話は続いていたが、アヴニール主催では記念すべき第一回だのこれも皆様のご支持のお陰だの割とどうでもいいことだった。
「で、あるからして、この度は特別にオープニングセレモニーをご用意しています」
「オープニングセレモニー?」
「音楽の演奏とかか?」
パンフレットにもこんなものは書かれていなかった。
会場がざわつく。
「オープニングセレモニーは総合科学博覧会の趣旨にのっとり、出展物によるエキシビジョンマッチです!もちろん、エントリーするのは我が社が誇る新兵器!」
「茶番ね。エキシビジョンマッチって言いながら、結局は自分とこのを宣伝したいだけじゃない」
アイエフが呟いた。
ガナッシュの口元が歪む。
「そして!それに対する相手は……下町からのエントリー!パッセ工房!」
ネプテューヌ達全員の心臓が跳ねた。
「ちょっとちょっとシアン!どういうことなの!?わたし聞いてないよ!?」
「わたしだって聞いてないさ!いきなり過ぎてわけわかんないよ!」
どうやらシアンも知らないらしい。
となれば……。
「ガナッシュの野郎……ハメやがったな……!」
「エキシビジョンマッチは10分後に開始します。両者は準備をお願いします」
「準備ったって……何をしろっていうんだよ……」
「シアン……」
「……焦るのは分かるが、とりあえず落ち着け」
こうなったら道は二つに一つ。
逃げるか、その逆かだ。
「どうする?逃げる?」
「無理よ。こんな大勢の中逃げるなんて会場の人が許してくれないだろうし、そんなことしたらシアンたちみんなの頑張りが無駄になっちゃうわ」
となれば、残された道は一つだけ。
壇上から一旦降りたガナッシュが狼狽えるネプテューヌ達を見ていた。
「……やはり、驚いているようです」
「だろうな。だが、これだけの舞台を揃えてやったんだ。奴等も逃げられはせんよ」
ガナッシュと一緒にネプテューヌ達を睨んでいるのはマジェコンヌだ。
「それよりも、アヴニール側の兵器は大丈夫なんだろうな?」
「ご安心を。彼女らとの戦闘データを元に改良を重ねた新型です」
「だが、くれぐれも手は抜くな」
「もちろんです。幸いコレの調子も良いようですしね」
そんな話をしていたガナッシュ達にアイエフが気が付いた。
「アッシュ、あれ。ガナッシュの隣にいる奴……!」
「マジェコンヌ……自分が戦えないからって高みの見物か……!」
「すべてマジェコンヌが仕込んだことだったのね」
「これで、マジェコンヌとアヴニールの繋がりがはっきりしましたわね」
「クソ!やるしかないのか……!?」
「……話がよく見えないけど、何がヤバいんだ?」
ヒロムが呟く。
「お前……他人事だと思って……」
「つまり、そのエキシビジョンマッチでアヴニールとかいうのの新兵器をぶっ飛ばせばいいんじゃないのか?」
「……あ」
「たしかに、それはそうですけれども……」
「……ねぇ、ノワール。トロフィーをもらう為には、誰から見ても一番凄いって証明すればいいんだよね?」
ノワールが頷いた。
「女神の名の元、博覧会の審査は公平に行われるわ」
「だったら、シアンが作った武器が一番だって今ここで証明しちゃえばいいんじゃない?」
「……まったく、簡単に言ってくれるわね」
「けど、そこがねぷねぷのいいところです」
「ピンチはチャンス。この大舞台で勝って見せれば、凄いアピールになるはずだぜ?」
「……馬鹿共が」
アシュレイが振り向く。
「シアン、武器の調子はどうだ?」
「……残念ながら、絶好調だ」
「……決まりだ」
決断は済ませた。
あとはそれに賭けるのみ。
「となれば、問題は誰が武器を使うかですわね」
「この中だと、ネプテューヌかノワールじゃない?」
「ネプテューヌ、あなたが使いなさい」
「いいの?」
「元々その武器をテストしてたのはあなたでしょ?だから、譲るわ」
ノワールは全てをネプテューヌに託したようだ。
「それに、私は審査する立場だしね。いい?しっかりいいとこアピールするのよ?」
「おっけー!そういうことなら任せてよ!」
「俺も出る」
「アッシュも?けど、武器はひとつしかないわよ?」
「この剣も、元々はパッセで作られた武器だ。見世物にはしたくなかったがな」
「言い出しっぺの俺は応援しか出来ないけど……頑張ってくれ!」
となれば、アヴニールと戦うのはネプテューヌとアシュレイの二人だけとなる。
再びガナッシュがマイクを持った。
「それでは、これよりエキシビジョンマッチを開始します!」
すると舞台の床が開き、そこから多数の装甲板と大小様々な砲塔を携えた珍妙な戦車がせり上がってきた。
どうやらこれがアヴニールの新型らしい。
「それじゃ……頼むぞ、お前ら」
「任せろ」
シアンの声を背に受けながら二人も舞台へ上がった。
「よーっし、最初から変身して全力全開でいくよー!」
「あ、バカネプ子!こんなところで変身したらみんなに正体が……」
アイエフが慌てて止めようとする。
が、一向にネプテューヌが変身する気配はない。
「……あれ?あれあれ?あいちゃん、変身できないんだけど、どゆこと!?」
「そんなことあるはずないわ」
同様に三人も女神化しようとするが、ネプテューヌと同じく不発に終わった。
「どういうことなの……!?」
「アーッハッハッハッハ!どうやら戸惑っているようだな」
舞台の向こう側からマジェコンヌの笑い声が響く。
「……まさか、あなたのせいで?」
「ご名答。お前達からコピーした力とシェアエナジーを解析し、女神化を封じる装置を完成させたのだ!」
「いつの間にそんなものを……」
「フフフ……私の優秀な僕が働いてくれたお陰さ。そして、どうやら効果があるのは貴様らだけではないようだぞ?」
「まさか……アッシュ!?」
マジェコンヌの言う通り、アシュレイは立ってはいるものの、グラグラと不安定に揺れていた。
「アッシュ!大丈夫なの!?」
「なんでアッシュまで!?もしかしてアッシュって女神だったりするのか!?」
「……体が重い……変身も、無理だ」
「そんな……」
直後、舞台の周りに青白いバリアが整形された。
「この新兵器にはゴム弾を装填していますが、皆様の安全を考慮し、バリアフィールドを展開させて頂きます」
ノワールがバリアを叩くが、小さく波紋が走るのみでビクともしない。
「それではエキシビジョンマッチ……開始!」
そして無情にも開戦の合図がかかってしまった。
はい、渋の方で当時仲良くさせて頂いていた方のオリキャラがゲスト出演した第17話でした。
ヒロム君の主な活躍はまた次回。
こうやって作者同士の輪が広がっていくのは難しい部分もあるけれど、やはり楽しいものです。