超次元ゲイムネプテューヌ:リバース・リ・バース 作:ひきがねコート@pixiv名アスラ
変化と変身
「記憶喪失とナースの卵ねぇ……えらく個性的な奴らが揃ったな……」
「いやいや、アッシュも十分個性的でしょ」
「みんな個性的で楽しいです」
自然公園を進みながら三人は自己紹介を兼ねた身の上話をしていた。
「それにしてもアッシュさんは何で女の子になっちゃったですか?」
「……心当たりはある」
「そうなの?」
アシュレイは気を失う前……女になる直前の記憶を掘り起こし始めた。
「……ギルドの依頼で、俺は新種のモンスターの調査をしたんだ」
「新種……ですか?」
「スライヌ系の亜種だと思うんだが……粘土みたいに変形して他のモンスターに擬態するっていう厄介な奴だ」
大きさから質感に至るまで完璧に再現できるため、近くのモンスターに擬態されて探すのに手間取ったとアシュレイは付け足した。
「幸い、そいつ本体はそれほど強くなかったし、実際難なく倒せたんだ」
「……あれ、それだと話が終わっちゃうよ?」
「最後まで聞け。倒したとこまでは良かったんだよ」
「なんか急展開の予感……」
「背後から現れたもう一体に不意を突かれて……喰われた」
「た、食べられちゃったですか!?」
「体内で変なガスを吸わされて、気を失って……気が付いたらこれだ」
思わずアシュレイが諦めたように肩を竦める。
「ガスを吸わされて性別が変わるなんて、見た目は子供の名探偵もビックリだよ」
「俺は空から落下してきた上に地面に突き刺さって擦り傷だけで済んでるお前の方がビックリだよ」
「いやぁ、それほどでも〜」
「……人生楽しそうだな」
そうこう言いながら歩いていると、コンパが不意に声を上げた。
「ねぷねぷ、見えてきたですよ」
「おお、これが……!」
「落下地点ってやつだな」
自然公園の奥地にぽっこりと小さな穴が空いていた。
小さいと言ってもそれは穴の直径の話であり、深さはちょうどネプテューヌの上半身が埋まるくらいの大きさだ。
「……で、ネプ公。なんか思い出したか?」
「うーん……」
ネプテューヌが頭を捻る。
「むむむ……」
更に捻る。
「んー……ダメだ!全然思い出せないや」
「……無駄足……か」
三人が溜め息を吐く。
「そういえばアッシュさん、ネプ公ってねぷねぷのことですか?」
「いちいちネプテューヌって呼ぶの面倒だしな」
「そう?わたしは文字数も稼げて良いと思うんだけどなぁ」
「知るか」
そう言ってその場を後にしようとした。
その直後だった。
足下からパキリという音が鳴る。
「……何の音ですか?」
「なんか嫌ーな予感が……」
「……同感だ」
足下の亀裂が音を立てて一気に広がり、瞬く間に大穴が口を開けた。
「く、崩れたぁぁぁああ!?」
「落ちるですぅぅぅうう!?」
「ざけんな、クソッ!」
咄嗟の出来事に反応すら出来ず、三人の体は大穴に飲み込まれていった。
「っとぉ……!」
アシュレイは着地と同時に前転して落下の衝撃を逃がすことに成功する。
「いたた……まさか地面が崩れるとは思わなかったよ……」
ネプテューヌが落下時に打ち付けたであろう腰を摩りながらアシュレイに近づいてきた。
「コンパはどこ行った?」
「どこ行ったんだろ?おーい!こんぱー!」
「だ、大丈夫ですぅ〜」
瓦礫の影からフラフラとコンパが現れ、二人と合流する。
「それにしても……ここどこ?」
「さっきの自然公園の真下の洞窟だと思うです。こんなところに洞窟があるなんて初耳です」
三人が上を向くと、穴から差し込んだ陽光が薄暗い洞窟を照らしていた。
「登るのは無理だな。別の出口を探すか……」
「……ねぇみんな、なんだろ、これ?」
そう言ってネプテューヌが瓦礫の中に混ざっていた奇妙な石を見せる。
「綺麗な石ですねぇ。なんなんでしょう?」
「宝石か何かか?」
「おお!という事はお店に売れば大金が手に入るんじゃない!?プリン何個分くらいになるのかなー!」
「全部プリンに費やすつもりか?」
その直後、洞窟内にモンスターの咆哮が響き渡った。
「な、何……?今のあからさまに強そうなモンスターの鳴き声……?」
「……もしかしなくても、あいつだな……」
「真っ直ぐこっちに来るですよ!?」
まるで三人を目の敵にしているかの如く、凄まじい速度でこちらに巨大なモンスターが向かって来ていた。
伸びる左腕の矛先は間近にいたコンパに。
「きゃあ!?た、助けて欲しいですぅ!?」
「コンパ!」
「こんぱがモンスターに捕まって全年齢向けの作品じゃ書いちゃいけないようなことされてるー!?」
「そんなことされてないですー!いいから助けて下さいですー!」
「よーし!待っててこんぱ!今助けるよ!」
ネプテューヌが手にした木刀でモンスターの足を殴りつける。
だがしかし、コンという軽い音が響いただけで助けるどころか傷一つ付けられていない。
「なんか全然効いてないよー!?」
「あぁ、クソ!」
アシュレイが腿から取り出したナイフをモンスターの顔に向かって投げる。
ナイフは目に命中し、モンスターが呻き声を上げる。
「こっちだデカブツ!」
モンスターが攻撃された怒りからアシュレイを標的にした。
手にした大剣をアシュレイに向かって真っ直ぐ振り下ろす。
アシュレイはそれを横っ飛びに回避し、素早くモンスターの腕に飛び乗る。
「あああぁぁぁあああ!!」
逆手に構えた剣を振り回し、腕を切りつけながら胴に向かって駆け上がる。
振りほどかれる前に腕から跳び上がり、更に頭を踏み付けてコンパを掴んでいる左腕へと跳ぶ。
「だっしゃあああぁぁぁああ!」
順手に剣を持ち直し、左腕に振り下ろす。
「きゃあ!?」
アシュレイは左腕を切断するつもりだったが、思ったより甲殻が堅く、剣が腕の半分ほどで止まってしまった。
だがその衝撃で掴んでいたコンパを取り落とす。
「くっ……コンパ!無事か!?」
「助かったです……大丈夫です!」
落下したコンパがモンスターの足下から急いで離れる。
「クソッ……抜けねぇか!?」
だがアシュレイの剣が甲殻に挟まって、腕から抜けなくなってしまった。
「ッ!」
殺気を感じ、アシュレイが剣を諦めて腕から跳ぶ。
アシュレイが直前まで居た場所をモンスターの大剣が通り過ぎる。
安心したのも束の間、続けて飛んできた左腕がアシュレイの身体を掴んだ。
「ぐっ……!?こんの……離しやがれ!」
腕の中でもがくが、凄まじい力で締め付けられ、ミシミシと骨が軋む音が響く。
「あ……ぐ……!?ね、ネプ公……!コンパ……!お前らだけでも……逃げろ……!」
「うわー!?こんぱが助かったと思ったら今度はアッシュが大ピンチー!?」
「ねぷねぷ!?どうするですか!?」
「……ネプテューヌさん、ネプテューヌさん」
「えっ!?誰!?」
突如、何処からともなく声が聞こえてきた。
「わたしです。イストワールです。夢の中でお話をしましたが……」
「そうそう思い出したよ!あの時の天の声さんだ!……って呑気に雑談してる場合じゃないよ!アッシュが大ピンチなんだよ!ねぇ天の声さん、あいつの弱点とか知らない!?」
「落ち着いて下さいネプテューヌさん。弱点はわかりませんが、いつものネプテューヌさんなら、女神化して戦えばすぐに倒せるはずですよ?」
女神化というワードを聞いて、ネプテューヌの頭に?マークが浮かぶ。
「メガ……身化?」
「ねぷねぷは記憶喪失なんです。一から教えて上げてくださいです」
「……先ほどから妙に話が噛み合わないと思ってはいましたが、まさかネプテューヌさんが記憶喪失とは……」
「お願いだよ、天の声さん!友達を……アッシュを助けたいんだよ!」
モンスターの大剣の切っ先がアシュレイの首を捉える。
「……わかりました。わたしの力で、ネプテューヌさんを強制的に女神化させます。それで女神化の感覚を掴んで下さい」
ネプテューヌが一歩コンパから離れる。
「準備オッケー!いつでもいけるよ!」
「では、いきます……ネプテューヌさん……あなたに力を……」
一瞬のブランクの後、ネプテューヌの体を凄まじい光が包んだ。
「な、なんだ!?」
「眩しいです!?」
光が収まると、そこには元のネプテューヌとは似ても似つかない人物が立っていた。
「……これが……わたし!?」
「それが、ネプテューヌさんの真の姿です」
「ネプ公の……姿が変わった?」
「凄いです!変身です!」
変身したネプテューヌが目の前に現れた大太刀を手にする。
「体の中から力が溢れてくる……これなら、負ける気がしないわ!」
ネプテューヌが大太刀を構える。
「待ってて、アッシュ。今助けるわ!」
変身したネプテューヌに危険を感じてか、モンスターがアシュレイに向けていた大剣をネプテューヌに向かって振るう。
「遅い!」
それに対してネプテューヌは受け流すどころか、正面から弾き返した。
「ハァァァアア!」
ネプテューヌの一撃がモンスターの左腕を切り落とす。
「アッシュ!」
「っ!……ネプ公!」
落下していくアシュレイの腕をネプテューヌが掴んだ。
「待たせたわね」
「おせーよ、タコ」
「ふふっ……無事で何よりだわ」
アシュレイは自分でネプテューヌの腕を振りほどき、地面に降りる。
「んじゃ、ネプ公!やっちまえ!」
「ええ、決めさせてもらうわ!」
怒り狂ったモンスターが大剣を力任せに振り回す。
ネプテューヌは冷静に攻撃をかわし、時に弾きながら相手との距離を縮める。
「ハァ!」
鋭い一撃がモンスターを捉える。
だがまだ止まらない。
「ヤァァァアア!」
モンスターが咄嗟に防御姿勢をとるが、続く二発で体制を崩され、追加の一発で完全に防御を開けられる。
「クロス……」
胴に重い一撃。
巨体が浮き上がる。
「コンビネーション!」
追撃に渾身の上段切りが炸裂。
撃ち落とされた巨体が小規模のクレーターを作り、やがてモンスターは動かなくなった。
「まぁ、こんなものかしらね……」
構えを解いたネプテューヌがゆっくりと二人の側に降り立つ。
「凄いですねぷねぷ!あんな大きなモンスターさんをあっという間に倒したです!」
直後、再びネプテューヌの体を光が包む。
「ぷはぁ……疲れたぁ……」
「お疲れさまでした、ネプテューヌさん。アシュレイさん、それにコンパさんも怪我はありませんか?」
「はいです。アッシュさんとねぷねぷのおかげで怪我はないです」
「俺はまだ全身が痛むがな……っと」
アシュレイが残骸と化したモンスターの左腕から自分の剣を引き抜く。
「……で、あんた誰だ?正体も明かさないような奴と話すことなんかないぜ?」
「申し遅れました。わたしは史書イストワールです」
「そうそう、いーすんいーすん」
「いーすんさんですね。これはこれはご丁寧にありがとうございますです」
「……まぁ、いーすんでも良いでしょう……」
「んで、そのイスト何某が俺たちに何の用が……」
その直後、数分前に聴いたはずの咆哮が辺りに響いた。
「い……生きてたああぁぁぁああ!?
い……生きてたですぅぅぅうう!?」
「おいおい、冗談だろ!?」
クレーターからもがくように例のモンスターが起き上がる。
「クソッ……俺が時間を稼ぐ!」
そう言うとアシュレイの足元に赤い魔法陣が広がる。
「フレイム……」
左手から発射された炎の玉が真っ直ぐ洞窟の天井に当たり、吸い込まれる様に消える。
「イグニッション!」
開けた左手で虚空を握り潰す。
その瞬間、炎の玉が吸い込まれた場所が爆発。
熱で赤くなった瓦礫がモンスターに降り注いだ。
「行くぞ!走れ!」
「は、はいです!」
「逃げるんだよォォォ!」
「喧しい!」
……………………
「はぁ……はぁ……やっと着いたぁ……」
「九死に一生ですぅ……」
あれから数分後、背後からのモンスターの咆哮に煽られながら洞窟を抜け出し、アシュレイ達はプラネテューヌにあるコンパの家まで逃げ帰ってきていた。
「闇雲に逃げ回っても、なんとかなるもんだ」
「まさかあれだけダメージを与えたのに……まだ生きていたなんて……」
「ていうかアッシュ!?何さっきの!?」
「あ?さっきの?」
「魔法陣がぶわーってなって火の玉飛ばしたと思ったらどかーんって!」
どうやらネプテューヌはアシュレイが使った魔法に対して文句がある様だ。
「あんなの使えるんなら先に言ってくれても良かったじゃん!」
「……魔法」
そう言ってアシュレイが手の平を広げると、その中に火球が生まれる。
「……おかしいな」
「アッシュさん……どうかしたですか?」
「俺は魔法なんか使えない……筈だったんだが……」
「そうなの?」
ネプテューヌへの返事の代わりに、手の平の火球を握り潰す。
「恐らくですが、アシュレイさんの性別が入れ替わってしまったのと、魔法が使える様になったことは無関係ではないと思います」
「なるほど、意見は有難いが、本名で呼ぶのはいい加減やめろ」
「では、わたしもアッシュさんとお呼びします」
「それでいい。後あんた……イスト何某だかなんだか知らないが、随分博識だな。趣味はストーキングか?」
ネプテューヌの隠された能力を見破り、自分が元々男であることまで知られていることにアシュレイはイストワールに対して敵意を拭いきれないでいた。
「わたしはネプテューヌさんを媒体として、様々な情報を得ています。なので、ネプテューヌさんが見聞きした情報はわたしも把握しています」
「ふーん……」
「……そうだ、ねぇいーすん。これなんだろう?洞窟で拾った綺麗な石なんだけど……」
ネプテューヌがポケットから石を取り出し、手の平の上に乗せる。
「それは鍵の欠片。4つ集めると、わたしの封印を解くことができます」
「鍵の欠片?」
「いーすんさん、封印されちゃってるですか!?」
「お願いです、ネプテューヌさん。4つの大陸に一つづつある鍵の欠片を集めてください!」
「ちょっと待て」
アシュレイが話に横槍を入れる。
「さっきのモンスターと鍵の欠片、無関係には思えないな。もしかして、毎回鍵の欠片の近くにはあんなデカブツがいるんじゃないのか?」
「そのとおりです。危険な旅になるとは思いますが、もし封印を解いてくだされば、ネプテューヌさんの記憶喪失を治してあげることができます」
「ほんと!?」
「どの道、ネプテューヌさんには記憶を取り戻していただかねばなりませんし」
「よーし!それならわたし頑張っちゃうよー!」
「わたしもお手伝いするです!」
意気込むネプテューヌにコンパが混ざる。
「いいの?こんぱ、学校は?」
「モンスターさんが原因で休校中です。それに困っている友達を見捨てるなんて出来ないです」
「こんぱ……ありがとう!」
盛り上がる二人を尻目に、アシュレイはしかめっ面のままだった。
「アッシュさんにも、協力をお願いしたいのですが……」
「……悪いが、俺は何の見返りも無しに危険を冒せる程お人好しじゃない」
そしてアシュレイはあっさりと協力を断った。
「そんなー!つれないなぁアッシュぅ、わたしとアッシュ、一緒に共同作業をした仲じゃんか?」
「んな仲になった覚えは無い」
「ぶー……アッシュのケチ!」
「贅沢で死ぬくらいならいくらでもケチになってやるよ」
ネプテューヌが説得を試みるが、アシュレイはこのままだとテコでも動きそうにない。
「……わかりました。アッシュさんが協力してくれれば、あなたの体に起こっていることを調べてあげます」
「……それで?」
「もし治療可能ならば、あなたを元の性別に戻してあげましょう」
「…………」
イストワールの提案で、アシュレイが言っていた見返りは出来た。
「アッシュ……」
「……わかったよ。そこまで言われて断るのも失礼だしな」
「ほんと!?」
「宛のない旅に行き先が出来たとポジティブに考えるさ」
「わーい!アッシュ大好きー!」
ネプテューヌがアッシュの腕に抱きつく。
「はなれろ、暑苦しい」
「えー、こんな可愛い女の子に抱きつかれて嬉しいくせにー」
「本当に可愛い奴は自分のことを可愛いなんて言わない。あとそんな貧相な体で抱きつかれても全然嬉しくない」
「ふふっ、仲がよろしいようで何よりです」
不意に三人に届いたイストワールの声はさっきより随分小さくなってしまっていた。
「あれあれ?いーすんの声が聴き取り辛いよ?電波状況悪いの?」
「鍵の欠片が持つエネルギーを媒体に話をしていましたが……どうやら時間のようです」
イストワールの声がみるみる小さくなっていく。
「では、皆さん。鍵の欠片のことをよろしくお願いします……」
そう言った直後、イストワールの声が完全に聴こえなくなってしまった。
「聴こえなくなっちゃったね……」
「いーすんさん、大丈夫でしょうか……」
「さあな。間に合うようにするしかないさ」
ふと外を見ると、既に太陽は傾き、プラネテューヌの街を赤く照らしていた。
「今日はもう遅いですし、二人ともわたしの家に泊まるです」
「いいの?」
「ベッドはわたし一人じゃ少し大きいですし、使ってないお布団も沢山あるです」
「俺は男だぞ?体は女だが」
「それがどうかしたですか?」
「襲われるかもしれないとかは考えないのか?」
「襲うの?」
「襲うか馬鹿」
「女の人が寝込みを襲われるって言ったら、帯を引っ張られて『あーれー』ってやつが定番だと思わない!?」
「知るか、一人でやってろ」
その日は日が落ちるまで、コンパの家から騒ぎ声が絶えることはなかったそうな。
はい、内容は濃いのに文が薄い第2話でした。
戦闘シーンを書くのは未だに苦手です。
こう、拮抗してる感を出そうとすると精神力がガリガリ削られるんですよね。どっちかが無双するだけなら割とどうとでもなりますが。
精進いたします。