超次元ゲイムネプテューヌ:リバース・リ・バース 作:ひきがねコート@pixiv名アスラ
「すまん。悪かった」
コンパの家。
全員揃ったところで灰色の髪を揺らしながら頭を下げるアシュレイが真っ先にそう言った。
「…………」
視線が下を向いているアシュレイにはわからないことだが、ネプテューヌ達は皆口を開け呆然としている。
「こんな大事な時に一人で勝手に混乱してみんなに迷惑をかけた。謝って許されるとは思ってないが、それでも言わせてくれ。本当にごめん」
沈黙を責められていると勘違いしたアシュレイがさらに謝罪の意を述べた。
これ以上この状態が続くと土下座しそうだ。
「顔を上げてくださいな」
「…………」
アシュレイがゆっくりと顔を上げる。
しかしそこに不満気な顔の人物は誰一人としていなかった。
「最初から怒ってなんかないわ。自分が自分じゃないなんて言われたら、誰だってパニックになるわよ」
「けど……」
「それにこうして戻ってきてくれた訳だし、何も気にすることなんかないじゃない」
ノワールとアイエフが暗い顔のアシュレイを元気付ける。
「それよりも、アッシュさんが無事だったことが嬉しいです!」
「どうしても償いがしたいのなら、またわたし達と一緒に戦ってちょうだい」
「お前ら……」
「だから言ったでしょー。そんなに気にしなくても大丈夫だって」
「何より、お前がいなくては戦力に響く。お前はこのパーティになくてはならない存在なのだ」
全員の似たりよったりなセリフにアシュレイが大きくため息を吐いた。
「まったく……バカばっかりだな」
「でも、嫌いじゃないでしょ?」
「悔しいがな」
呆れたように肩を竦めるアシュレイの前にイストワールが飛んでくる。
「あなたではなく、謝るのは私の方です。本当に申し訳ありません」
「別にいい。知りたいって言ったのは俺だし、知らないままにして良いことでもない」
「ありがとうございます……それと、実は以前伝えていなかったことがあるのです」
「伝えていなかったこと?」
イストワールはどうやってアシュレイの秘密を知ったのか。
答えは簡単だ。
「先日話したことは全て、グレイさんから教えてもらったことなのです」
「グレイさんから!?」
「はい。あなたに伝えるようにと……」
グレイはあの狐の面の男の正体。
つまりはマジェコンヌの手下ということだ。
あの時の光景は今でもアシュレイの脳裏に焼きついている。
「けど、なんでグレイはそんなことをわざわざ教えたのかしら?」
「アッシュを混乱させ、あわよくばパーティそのものを瓦解させる為。分かりきったことだわ」
グレイのことを良く思っていないブランがそんなことを言った。
確かに敵の腹心であるはずのグレイが敵に塩を送るとは考えにくい。
敵に自ら開示する情報は、ブラフか、敵を混乱させるものか、あるいはよほど必要ないものであるかだ。
「その可能性が高いとは思いますが……」
「なに?わたしの推理に文句があるの?」
「そうではありませんけど、どうしてもグレイさんが悪い人には思えないのです」
以前グレイはネプテューヌの解毒に積極的に協力してくれた人物。
暴走したアシュレイを救えたのも少なからずグレイの存在があったからこそだ。
マジェコンヌの敵であるはずの二人をわざわざ助けて彼に何の得があるのだろうか。
「……アッシュはどう思うの?」
「……わからない」
昔からグレイはニヤついた顔の裏で何を考えているのかわからない人物だった。
だからこそ。
「会って、問い詰める。何にせよ、あの人とは戦わなきゃならない」
「そのためにも、まずは英雄の武器とユニミテスの討伐ね」
本来、このメンバーはそれに関する報告をするためにこの場に集まったのだ。
「では、早速皆さんの手に入れた伝説の武器を見せてください」
「ラステイションに祀られていた武器はこの通りよ」
ノワールが伝説の武器の一つを取り出す。
見た目はショートソードのようだが……。
「……なんかこのデザイン……どっかで見たような……」
「逆に私は見覚えがありませんけど……ノワールさん、ラステイションに祀られていた武器は英雄マウスロープの双式巨銃だったと思うのですが……」
そう言われてノワールと一緒にラステイションに行っていたMAGES.以外の全員がもう一度ノワールが持ってきた武器を見る。
どれだけ見ようとショートソードだ。
とても銃には見えない。
それとも剣からビームでも出るのだろうか。
だったらそれこそ銃の形をしていた方が良い。
「……元の武器は偽物の自爆に巻き込まれて粉々になっちゃったわ」
「壊されたんですか!?」
「でも安心して。シアンたちラステイションの技術者たちがパーツを活かして私専用に作ってくれたの」
「……どうりで見覚えがある訳だ」
「銃じゃないんですが……大丈夫でしょうか……」
正直不安だが、大丈夫だと信じるしかないだろう。
「わたしも無事に持ってきたわ。これよ」
ブランが取り出したのは無駄に金色に光るハンマーだ。
「ぶ、ブランさん……ルウィーに祀られている武器ってたしか……」
「英雄ハイブリッジの連槍よ」
「どう見てもハンマーだろ……」
「しかも金色で、いかにも大乱闘って感じがするんですが……」
どうやらルウィーの伝説の武器にも何かしらあったらしい。
「随分昔に耐久年数と老朽化の問題が起きてハンマーに作り替えたらしいわ」
「作り替えるにしても何だってハンマーに……」
「けど、安心して。柄の芯に連槍を使っているそうよ」
「あの……今のお話のどこに私は安心すればいいのでしょうか……」
「全部よ……」
「…………」
「全部よ」
「……まぁ、同じポールウェポンだし、ノワールのよりかは原型留めてるだろ」
4つの英雄の武器の内、二つがご覧の有様だ。
古来から、二度あることは三度あると言う。
となれば……。
「次はわたくしの武器ですわね。見てくださいな、この立派な槍を!」
「…………」
「……イストワール」
「……リーンボックスで祀られている武器というのは、英雄ツイーゲの大賢弓ではありませんでしたか?」
「弦が切れたり、弓が折れたりカビが生えたりして使い物になりませんでしたので……」
どんなお粗末な管理をすればそのような有様になるのだろうか。
市販の剣だろうともっと丁寧に保管する。
「それで、槍に改造したんですね」
「もはやどこが弓なのかさっぱりじゃねぇか……」
「……はぁ……見事に3つとも原型を留めていませんね……」
イストワールがネプテューヌを心底不安げな様子で睨んだ。
「まさか、プラネテューヌに祀られているツリーベルの三元戦剣まで原型を留めていないなんてことはありませんよね?」
「安心してよ、いーすん。それ以前に、わたし持ってきてないんだから」
「……アッシュさんが一緒に居ましたし、奪われたということはなさそうですが……」
「それについては俺が話す」
ネプテューヌの説明では要領を得ないことはまずわかっていたので、代わりにアシュレイが前に出る。
「偽物が現れたのは地下のプラントだったんだが、そこには英雄の武器はなかったんだ」
「なかった?では英雄の武器はどこに?」
「その真上。プラネテューヌの教会に祀られていた」
「では、場所がわかっているのになぜここに英雄の武器がないのですか?」
「教会の人が貸してくれなかったんだ。貸すには女神様の許可が必要だーって」
あの後、ノワール達が戻ってくるまでの数日間、二人は何回か貸してくれないか頼みに行ったがいずれも追い返されてしまった。
「けど、なんでネプ子の偽物は英雄の武器がある教会じゃなくて、地下プラントを襲ったのかしら?」
「……これは俺の勘なんだが……」
「ほう……言ってみろ」
「場所を間違えたんじゃないか?」
「……ねぷねぷならやりかねないですぅ……」
閑話休題。
「それにしても困りましたね。これでは武器が一つ足りません」
「私たちが持ってる3つじゃだめなの?」
「相手はマジェコンヌです。一つ欠けた状態では不安が残るんです」
とはいえ、ネプテューヌが女神だと証明できなければ最後の一つの武器は手に入らない。
そしてその女神の力はマジェコンヌが持っている。
諦めるしかないだろう。
「しかたありません。3つの英雄の武器で挑みましょう」
「それに、わたしたちには武器なんかよりも頼りになる仲間がいるもんね!」
「ようやく攻勢に出れる……か」
そう思った矢先だ。
「〜〜〜〜〜〜!!」
地鳴りと共に以前聞いたことのある鳴き声が響いた。
「この妙にトラウマな感じの声はもしかして……」
「一歩遅かったか……!」
「どうやら外からのようです」
アシュレイが立ち上がり、窓を開く。
その直後。
『ハーッハッハッハッハッハ!』
例の高笑いがプラネテューヌの街に響き渡った。
『聞こえるか!下界に這う蛆虫ども!私の名はマジェコンヌ!今日より女神に代わり、このゲイムギョウ界を統べる絶対なる神である!』
「この声……一体どこから聞こえているの……」
「拡声魔法……発信源は……」
「あそこですわ!」
ベールが指差した先。
ビルの隙間からユニミテスの体の一部が覗いていた。
「……行くぞ!大事になる前に!」
「りょーかい!」
全員がコンパの家を出る。
向かう先は、プラネタワー前広場。
……………………
広場にはあっという間に人集りが出来ていた。
その中心にはマジェコンヌとグレイ。
そしてユニミテス。
「お、おい……女神様に代わって支配するってどういうことだ!?」
「それに……あいつの後ろにいる化け物はいったいなんだ!?」
心胆の強い男が一歩前に出ると、周りの人たちも次々に口を開き始めた。
ここまではマジェコンヌの筋書き通り。
「無知な貴様らに教えてやろう。これこそ、ゲイムギョウ界の終焉の鐘を鳴らす魔王ユニミテスだ!」
マジェコンヌの宣言に答えるようにユニミテスが吼える。
「あ、あれが……ユニミテス……」
「た、助けてくれ……パープルハート様……」
人知の外の存在であるユニミテスに怯える人々が次々と跪き、指を組んで自らが信仰する女神の名前を呼んだ。
「幾ら願おうが、パープルハートが貴様らの前に姿を現すことはない」
その心の支えを手折るようにマジェコンヌが言葉を発する。
「何故なら!この魔王ユニミテスに敗れたのだからな!」
「嘘だ!あのパープルハート様が魔王なんかに負けるはずがない!」
「そうよ!デタラメよ!」
「ふん、愚か者共が。この場に姿を現していないのがその証拠だとわからんのか」
その発言に折れた人々が顔に絶望を浮かべた。
「そ、そんな……」
「まさか……パープルハート様が……!」
そして広場にパープルハートを呼ぶ声はゆっくりと消えていった。
「うぅ……わたしまだ死んでないのにぃ……」
拡声魔法でマジェコンヌと人々の声を聞いたネプテューヌが泣きそうになりながらもプラネテューヌの街を走る。
「まったく、ネプ子が変身できないからって好き勝手言ってくれちゃって」
「ですが、これにより少なくともユニミテスがネプテューヌさんより強いと思い込まされたはずです」
人々の記憶から生まれた存在。
記憶が更新されればユニミテスの存在も更新される。
「マズいな……」
「今のマジェコンヌの言葉で、ユニミテスは女神よりも強いという存在になったはずですわ」
「なら、これ以上強くなる前にやっつけるです!」
人集りを掻き分け、ようやく広場にたどり着いた。
「マジェコンヌ!そこまでだよ!」
「ほぉ……よく逃げずに再び私の前に現れたものだな、ネプテューヌ!」
「プラネテューヌもゲイムギョウ界も、お前の好きになんてさせないんだからね!」
「たかが人間に成り下がった小娘に何ができるというのだ?」
「ちょっと、私たちのこと忘れてないかしら?」
ネプテューヌの隣に女神三人が並ぶ。
「……グレイさん」
「……あなたは、ここに居ないものと思いましたが……」
改めてアシュレイとグレイが向き合った。
「人ならざる身で、なおも彼女たちを守ろうというのですか?どちらかと言えば、あなたはこちら側の存在だというのに」
「……俺が人であるかなんてのはどうだっていい……」
アシュレイがアンチエナジーを取り込み、姿を変える。
「そんなことより、もっと大事なことがある……それだけです」
「……そう、ですか」
「俺たちはマジェコンヌを倒す。立ち塞がるなら、容赦はしません……!」
「……ならば、その前にこの異形を打ち払いなさい」
ユニミテスがズンズンと足音を響かせながら前に出てきた。
「……ここに来て言うのもなんだけど、これ倒せるのかなぁ……」
「なにガラにもなく弱気になってんだよ」
ネプテューヌの隣にいた三人はいつの間にか女神化していた。
「ここでアイツを倒せば『弱い』ってみんなが思ってくれるはずよ」
「それに、種は蒔きましたわ。今は芽が出ることを信じて戦うしかありませんわ」
全員が武器を構え、ユニミテスが吼える。
「行くぞ!」
戦いの火蓋が切って落とされた。
「はぁぁぁあああ!」
ノワールが素早く斬りかかる。
ユニミテスの大木のような腕がその一撃を容易く受け止めた。
反対の腕が持ち上がる。
「でやぁぁああ!」
振り下ろされる前にブランが斧で腕を弾き飛ばした。
ユニミテスの体制がわずかだが崩れる。
「ルビーブレイズ!」
そこにすかさずアシュレイが巨大な火炎弾を打ち込む。
「〜〜〜〜!」
ユニミテスの4本の足が収束した蜘蛛の胴体のような下半身。
そこに存在する巨大な口が開いた。
「〜〜〜〜!!」
その口内に光が集まったかと思えば、次の瞬間には巨大な黒い魔法弾が打ち出された。
魔法弾はアシュレイの火炎弾を飲み込み、なおも前進を続ける。
「ちぃ!」
追撃を行おうとしていたアシュレイは一旦足を止め、前方に魔方陣を展開。
さらに腕を鋼鉄に変化させる。
「っはぁ!」
魔方陣と魔法弾が触れ合う瞬間、アシュレイが魔方陣を裏から殴る。
その衝撃は何倍にも増幅され、魔法弾を押し返す。
それによりなんとか魔法弾の相殺に成功した。
「〜〜〜〜!」
ユニミテスもその様子を指を咥えて見ているだけではない。
自分に纏わり付いているノワールとブランを両腕で掴み、アシュレイ達の方へ投げ飛ばす。
「もう!どれだけデタラメなパワーしてるのよ!」
空中で体制を整え、各々武器を地面に突き立てることでなんとか地面と激突することは回避した。
「〜〜〜〜〜〜!」
ユニミテスが吼え、背中にある金色の翼のような部位が大きく広がる。
「なんだよあれ……」
「悪趣味ですわね……」
その翼には無数の目。
全てがこちらを見つめている。
その目の内、一つが怪しく光った。
「……マズイ!」
アシュレイが前に出て剣を振るう。
金属音が響いた。
弾き飛ばしたのは小さな黒い矢だ。
次々と別の目が光りだす。
「来るぞ!」
雨のように黒い矢が放たれる。
「はぁぁぁあああ!」
ベールとノワールが降り注ぐ黒い雨を弾き飛ばす。
弾かれたそれは壁を貫き、地面に食らいついた。
やがて雨は止む。
「はぁ……はぁ……やってくれるわね……」
「……いや、まだ終わりじゃないみたいだぞ!」
ユニミテスが両腕を上げる。
すると黒い矢はひとりでに動きだし、嵐のようにアシュレイ達を囲んだ。
「タスク・プロテクション!」
いち早く敵の思惑に気がついたアシュレイが指示を飛ばす。
「おらよ!」
ブランが地面を殴りつける。
アシュレイ達を囲むように分厚い氷の板が現れた。
ユニミテスが開いた拳を握り締める。
それを合図に黒い矢は一斉にアシュレイ達に殺到した。
「はぁ!」
ベールが槍を振るう。
氷の板を包むように巨大な竜巻が発生。
矢はその軌道を逸らし、氷の板に斜めに突き刺さる。
正面からでは防げなくとも、斜めからならば防げる。
避弾経始という概念だ。
嵐が止み、動きを止めた矢は霧散して消えた。
「さぁ、反撃だ!」
四人が走りだす。
「〜〜〜〜!」
ユニミテスが両腕に魔法弾を作り、それを投げ飛ばす。
「効くかっての!」
「お返しよ!」
ノワールとブランがその魔法弾を武器で打ち返した。
反応できなかったユニミテスはそれをモロに受ける。
「ベール!タスク・グリーンザッパー!」
「了解しましたわ!」
アシュレイが素早くユニミテスに接近。
「おぉぉおお!」
龍の腕でユニミテスをかち上げる。
「これで!」
ユニミテスの足元に潜り込んだベールが頭上の槍を回すと、巨大な竜巻が起き、ユニミテスをさらに上空へと巻き上げた。
「防げるもんなら防いで見せろ!」
竜巻にアシュレイとベールが乗る。
流れに乗ったまま二人が中央のユニミテスへ無数の魔法の槍を放つ。
最初こそ防いでいたユニミテスも不安定な体制のまま四方八方から飛来する槍を捌くことはできなかった。
一本、また一本と体を槍が貫いていく。
やがてユニミテスの体は竜巻のさらに上へ投げ出された。
そこには手にした槍を構えたベール。
「さぁ、落ちなさい!」
槍を投げる。
それはユニミテスの体を貫き、ユニミテスごと猛スピードで落下。
地面に巨体を縫い付ける。
「トドメだぁぁぁああ!」
それを追うように落下してきたアシュレイが槍の底部に踵落としを打ち込んだ。
その衝撃に呼応し、魔法の槍が破裂。
衝撃波を伴ってユニミテスの体が爆散した。
二人が仲間の元に戻る。
「……やったの?」
「言わなきゃいいものを……」
アシュレイとベールの攻撃でユニミテスは上半身を失った。
しかし、残った下半身の切断部が蠢き、ゆっくりと再生を始めたのだ。
「ちっ……しぶといヤロウだぜ」
「これでもまだ火力不足か……」
「何故だ!女神共より圧倒的に強くなっているはずなのに、何故押されている!」
一時的とはいえ、ユニミテスがやられたことにマジェコンヌが狼狽える。
「どうやら、蒔いた種から芽吹いてきたようですわね」
「なんだと!?貴様ら何をした!?」
ユニミテスは人々の記憶から作られた存在。
記憶が更新されればユニミテスの存在も更新される。
「簡単よ。伝説の武器を取りに戻った時に、魔王なんて嘘っぱちだってみんなに説明してきたのよ」
「お前ら……いつの間に……」
「流石に全員が信じたわけじゃないけど、それでもかなりの数の国民が信じてくれたわ」
「ぐぬぬぬぬ……」
「ルウィーもレジスタンスだったやつらが協力してるんだ。これで弱体化しないわけがねぇ」
「ネットも、わたくしの方で掌握済みですわ」
しかし、それだけではまだ足りない。
少なくともここにいるプラネテューヌの人々はパープルハートがユニミテスに負けたと信じ込まされている。
現にユニミテスは再生を終え、再び立ち上がろうとしていた。
「なら、次はネプ子の番よ」
「わたし!?」
急に話を振られたネプテューヌが慌てたように声を上げる。
「で、でもさ……わたしが言っても信じてくれるかな……ほら、女神だって証明しようにも変身できないし」
「それならわたしが、みんなに証明するです!ねぷねぷが女神様だってことは、最初からずーっと一緒だったわたしがよーく知ってるです!」
「こんぱ……うん!」
ネプテューヌが咳払いをしながら広場の近くに集まった人たちの方を向く。
「議会の方と、このテレビを見ているプラネテューヌ国民の方には、突然の無礼を許していただきあいたー!?」
そして言い切る前にアシュレイの拳がネプテューヌの頭を打った。
「何こんな時にふざけてんのよバカネプ子!」
「だってー!いきなりだから何を言っていいかわかんないんだもん!」
「だとしても、んな堅苦しい挨拶なんざいらねぇだろ!」
「極端な話、テキトーに『いえーいみんなのねぷねぷだよー実はプラネテューヌの女神だったんだー今は訳あって変身できないんだごめんねー』くらいでいいのよ!」
「あいちゃん、ねぷねぷのモノマネそっくりです。台詞もねぷねぷが言いそうです」
「いやぁ……さすがにそれはテキトー過ぎる気が……」
一息で例えを言い切ったアイエフにネプテューヌが否定的な発言をする。
「おい、聞いたか!あの子、パープルハート様らしいぞ!」
「まじかよ!パープルハート様って普段はあんなに小さかったのか!」
「うそぉ!?わたしまだ何も言ってないどころかあいちゃんの台詞で信じちゃうの!?」
ネプテューヌが驚くのも無理はない。
普通信じない。
しかしこの場の人たちはそうではなかった。
「あの子って、よくギルドの仕事とかやってくれてる子よね?」
「どこかで見たことがあると思っていたら、ワシが子供の頃にお会いした女神様と瓜二つじゃ」
「なんだよ、パープルハート様がやられたなんて嘘じゃねぇか」
「あらやだ、あの子ったらいつもうちでプリンを買ってくれてる子じゃない。女神様が贔屓にしてくれていたなんて嬉しいねぇ」
火種は瞬く間に周りの人々を巻き込み、すでにこの場にネプテューヌを女神だと信じない人間はいなくなった。
「おおっ!よくわかんないけど超展開キター!でもってなんだか力が湧いてきた気がするよ!」
「ねぷねぷ!気がするじゃなくて、本当に湧いてるですよ!光ってるです!」
コンパの言う通り、ネプテューヌの体から紫の光が放たれている。
そして光はひとつではない。
「ベール様たちも光ってますよ!?」
「これは……いったい何がおこっているんですの!?」
「もしかしてこれは……シェアの共鳴……!?」
イストワールが呟く。
「きょうめい……です?」
「おそらくですが、世界の危機に対し、人々が女神様をより強く信じているのが原因かもしれません」
「つまり……ここで起きていることが世界全体で起こってるってのか!?」
一人が祈れば、その隣の人も祈る。
そしてその隣も。
その隣も。
火種が燃え移るように。
波紋が広がるように。
「なら、どうして女神じゃなくなったねぷねぷも影響を受けているんですか?」
「予想ですが、人々がネプテューヌさんを自分たちの女神様として求め、そして望んでいるからではないでしょうか」
ネプテューヌの頭にアシュレイの手が置かれる。
「……やるじゃないか」
「え?わたし何もしてないよ?」
「お前がそう思っていても、これは紛れも無いお前の才能だ。人を引き寄せ、結びつける。味方も、敵も、見知らぬ他人も」
天性のカリスマとでも言おうか。
ネプテューヌにはそれがある。
「ネプテューヌさん。今のあなたなら再び……いえ、新たな女神様になれるはずです!」
「おおっ!なら、主人公らしく美味しいところもらっちゃうんだから!」
ネプテューヌが改めて広場の人たちに向き合った。
「みんなー!今からわたし、変身するよー!」
割れんばかりの歓声が辺りを包む。
「わたしの変身に……刮目せよ!」
ネプテューヌが光を放つ。
そしてゆっくりと光が収まっていく。
「変身……完了よ」
長く伸びた紫の髪。
青い瞳には女神の証である電源ボタンを模したマークが浮かぶ。
女神、パープルハート。
「あいちゃん、ねぷねぷが変身したです!」
「ようやく復活って感じね」
「みんな、待たせたわね」
「遅すぎだっての」
ネプテューヌが四人に合流する。
「女神様が四人揃った今なら、ユニミテスを倒せるはずです!」
「だとさ。いけるか?」
「当然よ。さぁ……行くわよ、みんな!」
再生を終えたユニミテスが吼えた。
「さぁ、覚悟しなさい!」
再びノワールが斬りかかる。
ユニミテスの腕が先ほどと同じように防ごうと動いた。
「さっきまでの私と思ったら大間違いよ!」
ノワールの剣が迷いなく振るわれる。
その一撃はユニミテスの右腕を真っ二つに切り落とした。
「〜〜〜〜!?」
驚いたような声を上げたユニミテスが後ろに下がり翼を展開。
無数の目が開かれる。
「同じ手は……」
矢を撃たれる前にノワールが翼を根本から断ち切った。
切断されてなお目はノワールを見つめる。
「二度も通用しないわ!」
鋼鉄のように硬い翼をノワールが折り、砕き、分断する。
翼は瞬く間に木っ端微塵となった。
「これで……終わり!」
ノワールの姿が一瞬消え、地面に降りる。
指を弾けば、無限の剣閃がその残りカスすら消滅させた。
「〜〜〜〜!」
ユニミテスの口が開き、禍々しい光が集まっていく。
「タスク・レフトハンド!」
「承知いたしましたわ!ネプテューヌ!」
「ええ!」
ネプテューヌがリボンのような細長い魔法路を作り、それをスプリングのように巻いて筒状に。
そしてさらにその魔法路にネジ巻き状に電撃を流す。
「〜〜〜〜!」
ユニミテスから魔法弾が放たれた。
「ベール!」
「全力で参りますわ!」
ユニミテス、魔法弾、魔法路、そしてベールが一直線に並ぶ。
「ちぇいさー!」
ベールが魔法路の中央を通すように槍を投げる。
魔法路に槍が入った直後、槍が一気に加速。
青白い光と雷鳴を引き連れ、魔法弾とユニミテスの脚部を貫いた。
「!?!?!?!?」
「左手の法則だ。流石に効いただろ!」
「一気にケリをつけてやるぜ!」
脚部が使い物にならなくなったユニミテスにブランが迫る。
「〜〜〜〜!」
ユニミテスが障壁を展開。
接近を拒む。
「なんだって叩き切る、超弩級の戦斧の一撃!」
一歩大きく踏み込み、斧を振るう。
その一発で障壁が粘土細工のように砕かれた。
続けて振り下ろし。
ユニミテスの足元から氷山が隆起し、天高く打ち上げた。
ブランもそれを追いかける。
「おっちろぉぉぉおお!」
大きく振りかぶった一撃がユニミテスを捉え、地面に叩きつけた。
「〜〜……〜〜……!」
「ネプテューヌ!」
剣を抱えたネプテューヌがユニミテスへ駆ける。
残った左腕がネプテューヌに迫る。
しかしその腕はネプテューヌに届くより前に地面に落ちた。
「ネプ公!やっちまえ!」
ユニミテスの腕を切り落としたアシュレイが叫ぶ。
「これがわたしの全力!」
ネプテューヌの一撃がユニミテスを吹き飛ばし、結界の中に閉じ込めた。
「ハァァァアアア!」
結界の周りを高速で飛びながら連続で攻撃。
「ネプテューン……」
高く飛び上がり、真下に剣を構える。
「ブレイク!」
結界を破り、ユニミテスごと剣を地面に突き立てれば、光の柱が立ち上り、ユニミテスを跡形もなく消滅させた。
「……わたしたちの勝ちよ」
ネプテューヌの声に再び辺りから割れんばかりの歓声が鳴り響いた。
「……まさか、ユニミテスを打ち破るとはな」
「魔王ユニミテスはもういないわ。観念するのね、マジェコンヌ」
ネプテューヌが剣をマジェコンヌに突きつける。
「ふん。たかが想像の産物を倒しただけで調子に乗るなよ、女神共!私が貴様ら四人の力を宿していることを忘れてはいないだろうな!」
ユニミテスを失ってなお、マジェコンヌには余裕がありありと感じられた。
「いい加減諦めたらどうなの?こういう言い方は好きじゃないけど、多勢に無勢。あなたに勝ち目はないわ」
「それはどうかな!」
「諦めないというなら、容赦しないわ!」
ネプテューヌがマジェコンヌに斬りかかる。
「ふん!」
マジェコンヌが杖を振るう。
それらが触れた瞬間、ネプテューヌの剣が砕け散った。
「な……!?」
「脆い!その程度の武器で私に傷をつけられると思うな!」
「やはり、英雄の武器でなければ太刀打ち出来ないの……?」
女神の武器は実体を持った武器にプロセッサユニットを纏わせることで発現する。
元がなまくらでも女神化すればそれなりの剣にはなるが、今回ばかりはそうはいかない。
英雄の武器でなければ、先ほどのようにたちまち砕かれてしまうだろう。
「なら、わたしたちに任せてもらおうか!」
「っ!?まさか、貴様らの持つそれは!?」
改造やプロセッサユニットで形状が変わっているが、マジェコンヌはブランたちの持つ物が英雄の武器であることを看破したようだ。
「……マジェコンヌ様、状況はこちらが不利です。一旦引きましょう」
「ちぃ……わかっている!」
「では……」
「逃げるつもり!?」
「逃げる?ちがうな。世界の終焉までに時間をくれてやろうというのだ。せいぜい残された時間を楽しむのだな……」
グレイが開いた魔法陣にマジェコンヌが乗り、何処かへと転移する。
「グレイさん……」
「……近いうちに、また会いましょう。待っていますよ」
そう言ったグレイも転移し、脅威はひとまず去った。
「……ぷはー!逃げてくれて助かったー。正直こっちも体力とか限界だったんだぁ」
変身を解いたネプテューヌがその場に座り込む。
「おつかれさまです、ねぷねぷ。かっこよかったですよ」
「ほんと!?コンパにそう言ってもらえるだけでも復活した甲斐があったってもんだよ」
続けて残りの三人も女神化を解く。
「あとは、マジェコンヌただ一人ですわね。時間がどうこう言っていた気がしますが……」
「確かに気になるわね。けど、今日はもうヘトヘト……考えるのは明日にしない?」
「わたしもノワールに賛成。休みたいわ」
「じゃあ、帰ってみんなで勝利のプリン、食べようよ!」
「…………」
わいわいと騒ぐネプテューヌたちの背後で、アシュレイは一人、師の居た場所を見つめていた。
はい、いよいよ後書きで書くことが無くなってきた第22話でした。
今回でリーンボックスからの因縁だったユニミテスを撃破。
ネプ子さんも女神の力を取り戻し、残るはグレイとマジェコンヌを打倒するのみになりました。
次回もよろしくお願いいたします。