超次元ゲイムネプテューヌ:リバース・リ・バース 作:ひきがねコート@pixiv名アスラ
「……で、今日は具体的に何をするんだ?」
時刻は午前10時。
寝るときに使った2人がけのソファの真ん中を堂々と選挙しているアシュレイが口を開く。
この質問自体はもっと早くするつもりだったが、寝坊したネプテューヌが朝食をとるのを待っていたらいつの間にかこんな時間になってしまった。
「具体的にって?」
「旅には準備ってもんが必要だ。俺は兎も角、お前らは何かしら準備する物があるんじゃないのか?」
アシュレイは普段、ギルドの依頼を受けながら各地を旅する旅人だ。
なので野宿などにも慣れているが、初めての旅になる二人はそうはいかない。
「はい。だから今日は準備の為にお買い物に行こうと思ってるです」
「お買い物!?わーい!」
ネプテューヌがわざとらしく手を上げて喜ぶ。
「じゃ、行くならさっさと行こうぜ?」
「今日のお昼は外食にしようと思うです」
「おお!美味しいものが食べれるなら、コバンザメの如く何処まででもついてっちゃうよ!」
「お前な……」
コンパの家を出て、三人でプラネテューヌの街を歩く。
「……改めて見ると、凄く都会って感じの街だね」
ネプテューヌがプラネテューヌの街に対して感想を述べる。
「プラネテューヌは4国家の中で一番技術力が発展しているからな」
「へぇ……だからプリンって言う美味しい食べ物があるんだね」
「プリンぐらいどこの国に行ってもある」
「おい、例の洞窟の噂、聞いたか?」
不意に背後から声が聞こえてきた。
後ろに並んだ2人組の男が話し合っているようだ。
「最近発見された洞窟のことだろ?まさか森の地下にあんな洞窟があったなんてな……」
「あの洞窟の中には凄まじい数のモンスターがいるらしい。ネットではあれこそモンスターの巣なんじゃないかってもっぱらの噂だ」
「マジかよ、それが本当なら大発見じゃん!」
「まぁ、中に居るモンスターも凶暴で人手が足りないみたいでな。ギルドに仕事を回して、冒険者に依頼しないと調査もままならない状態らしい」
「他の国は女神様が先頭に立ってモンスター退治をしてるってのに……この国は大丈夫なのかねぇ……」
「さあな……」
男達の声が聞こえなくなっていく。
行き先は同じではなかったらしい。
「…………」
「こんぱ?どしたの?」
「……気になるか?」
「はいです」
森の地下の洞窟とは、間違いなく先日アシュレイ達が落下した洞窟のことだ。
「こんなわたしでもプラネテューヌの為に……女神さんの為に何かしたいんです」
「じゃあ、今日は買い物はやめて……えーと……」
「ギルド、な。行くぞ」
「二人とも、良いんですか?」
「今まではこんぱがわたしに付き合ってくれてたんだもん。今度はわたしがこんぱに付き合う番だよ」
「どうせ反対しても2対1で負けが確定してるしな」
「……ありがとうございますです!」
三人は急遽予定を変更し、依頼を受けるためにギルドへと急いだ。
幸いギルドは現在地からそれほど遠くなく、数分でたどり着けた。
「ここがギルドってとこ?」
「はいです。ここではいろんなお仕事を受けることが出来るんですよ」
「ふーん……例えばどんなの?」
「特定のモンスターの排除、物資の回収、未開拓エリアの調査から迷子の捜索まで、とにかくいろいろだ」
「わたしが今までやったのは、病院のボランティアとかお使いみたいな簡単なものだけで、ダンジョンを探索するのは初めてです」
アシュレイが手早く目的のクエストを見つけ、端末に必要な情報を入力する。
「受注完了っと」
「おお!なんかベテランって感じ!」
「馬鹿なこと言ってないで行くぞ」
「よーし!三人で頑張ろうね!」
……………………
地図を頼りに歩き回り、ようやっと洞窟の入り口にたどり着いた。
「やっと着いた……疲れたぁ……」
「まだ始まってすらないってのにもうグロッキーか?」
「あの時は夢中でしたけど、こうやって歩いてみたら結構遠かったんですね」
満を持して、再び洞窟に入る。
「そういえばアッシュ、洞窟の調査って具体的にどんなことするの?」
「お前……ちゃんと依頼書の内容読んだのか?」
「細かい事は気にしないのがわたしのジャスティスだからね!」
「そこは自慢するところじゃないです……」
ネプテューヌのいい加減さに二人がため息を吐く。
「……依頼内容だが、生息するモンスターの調査、及び可能ならそれの排除。後は、異常箇所がないかの調査だ」
「モンスターで思い出したんだけど……まだあのおっきなモンスター、まだ生きてるんだよね?」
「わたしたちよりも前に何人も調査の人たちが入ってるですから、もう倒されていると思うですよ」
「それなら安心したよ。もうあんなのとは二度と戦いたくないからね」
「お前……旅の目的忘れてないか?」
イストワールの話が本当なら、鍵の欠片の近くには凶悪なモンスターが生息しているそうだ。
「あんなのと何回も戦うからあのイスト何某は危険な旅だって言ったんだぞ。わかってんのか?」
「まぁまぁ、後のことはその時考えれば良いって!」
「やれやれ……先が思いやられる」
そんな会話の後、ネプテューヌ達は本格的に調査を開始した。
時々現れるモンスターを退治しつつ、薄暗い洞窟の中を進む。
「アッシュ!そっちのお願い!」
「わかってるよ!」
アシュレイが炎を纏った剣を上段から地面に叩き付ける。
「フレイムクロウラー!」
ひび割れた地面から噴き出した炎が蛇のように走り、軌道上の敵を一掃した。
「これで全部か……」
「アッシュさん、どんどん強くなってるです」
「魔法の使い方が分かってきただけだ」
「いやぁ、こうも味方が強いとなんだか雑魚敵との戦いが流れ作業になってくるよね!」
「油断してると足元掬われるぞ。"何事も三回目"だ」
「……アッシュさん。"何事も三回目"ってどういうことですか?」
コンパがアッシュが強調した言葉に疑問を抱いた。
「何かをする時は、初めてのガチガチした感じでもなく、慣れてきたダラダラした感じでもなく、適度な緊張感を持って挑めって意味。親父の口癖だ」
「アッシュさんのお父さんですか?」
「ちょっと前にぽっくり逝っちまったがな」
「…………」
「気にすんな、不健康な生活態度のツケが回ってきただけだ」
「三回目かぁ……ちょっと難しいけど、覚えたよ!」
「それで良い」
そんな会話を終えて、調査を再開する。
「……やっぱり、奥に行くに連れて暗くなってくね」
洞窟のその暗さはいよいよ目を凝らさないと足元すら良く見えないほどになっていた。
「ね、ねぷねぷ〜。アッシュさ〜ん。暗くて二人が良く見えないですぅ〜」
「ったく……おい、コンパ、こっちだ」
「暗くて危ないから気を付けるんだよ。どこに何があるか分からな……」
「いたっ!?」
「ねぷっ!?」
二人分の短い悲鳴が洞窟に響いた。
「おいネプ公、どうした?」
「そこらじゅう岩だらけですから、ねぷねぷも気を付けるですよ」
「いたた……違う違う。岩にぶつかったんじゃなくて、誰かがぶつかってきたのー。もう、暗いんだから気を付けてよね!」
ネプテューヌがぶつかった相手に抗議の声を上げる。
「いったぁー……ぶつかって来たのはそっちでしょう!?」
ぶつかった相手も負けじと抗議する。
アシュレイが魔法の炎で辺りを照らすと、ぶかぶかのコートに双葉を模したリボンを付けた少女が浮かび上がった。
「そもそも、なんでこんなところをあんたたちみたいな子供がうろついてんのよ……」
「人のこと言えた口かよ。ほれ」
「まったく……」
アシュレイが差し出した手を渋々といった感じで少女が掴み、起き上がる。
「……で、あんた誰だ?」
「わたしはアイエフ。ゲイムギョウ界に吹く一陣の風、とでも名乗っておくわ」
「「「…………」」」
アイエフと名乗った少女の言葉に三人が一様に固まった。
「……あ、あれ?」
アイエフはやっと自分が滑ったことに気がついたらしい。
「えーと……ゲイムギョウ界に吹く……なんだっけ?」
「一陣の風よ。まぁ、簡単に言うとギルドの仕事で生計を立てながら世界中を旅する旅人みたいなものよ」
「……それって……」
コンパがアシュレイの方を向く。
「何かと思ったら同業者かよ……」
「あら、あんたもそうなの?」
「一陣の風なんて名乗ったことはないがな」
アシュレイがやれやれと肩を竦める。
「で、あんたたちこそ、どうしてこんな危険なところに居るのよ?」
「わたしたちもギルドのお仕事で来てるんだ。あ、わたし、ネプテューヌ!」
「コンパです。よろしくです」
「アシュレイ……呼ぶときはアッシュだ。間違えんなよ?」
「ギルドの仕事って……そこのアッシュは兎も角、あんたたちが?」
「むー……失礼だなー。洞窟の調査くらいわたしたちだってできるもん!」
アイエフの顔にありありと浮かんだ呆れにネプテューヌが腹を立てた。
「あのねぇ……調査に入った人たちが何人も謎のモンスターに襲われて大怪我を負ってるのよ!」
「……え」
「呆れた……そんなことも調べないで仕事を受けたのね」
アイエフは謎のモンスターがいることにネプテューヌが驚いていると思っているが、三人が考えたことはその一歩先だった。
「ねぷねぷ……それって……」
「……まぁ、そう簡単には倒されてくれないよな……」
直後、洞窟の壁をぶち破りながら例のモンスターが現れた。
切られた左腕は再生しているが、昨日より怒り心頭な様子だ。
「出たあああぁぁぁああ!?」
ネプテューヌたちを見つけると、大剣を振り回し、敵意を剥き出しにする。
「どうしよう、こんぱ!あいつ絶対わたしたちのこと探してたんだよ!」
「なに!?あんたたち、あいつ知ってるの!?」
「あぁ、俺は一回殺されかけた」
「ちょっとアッシュー!わたしがちゃんと助けたでしょ!?」
「事実だ」
「でもその後、ねぷねぷがぼっこぼこにやっつけたです」
「……にわかに信じられない話ね。けど、戦えるなら協力してもらうわ」
全員がそれぞれ武器を構える。
「……ネプ公、行けるな?」
「もっちろん!最初からクライマックスでいっちゃうよー!」
そう言ったネプテューヌの体が光に包まれる。
そして収まったころには元の姿とは似ても似つかないネプテューヌの姿があった。
「……ふぅ。こちらの準備はできたわ」
「はいっ!?ちょ、何が起きたの!?」
「ねぷねぷはなんと、変身することができるんです。変身すると、とーっても強くなるんですよ」
「どう?これならあいつにわたしが一度勝っていること、信じてくれる?」
「信じるもなにも、そんなの見た後じゃ信じるしかないわ……」
モンスターが何度目かの咆哮を上げる。
「……殺る気満々ね。けど、それはこちらも同じよ」
ネプテューヌが大太刀を構える。
「これ以上被害を出さないためにも、今ここであなたを討たせてもらうわ!」
戦闘が始まった。
まずはネプテューヌが仕掛けた。
「ハァ!」
大太刀による一撃は大剣で受け止められ、剣が翻る。
カウンターの横薙ぎの一閃がネプテューヌに迫る。
「遅い!」
上昇してかわすが、続けて左腕が飛んでくる。
「ネプ公!」
アシュレイが魔法の炎弾を飛ばし、爆風で左腕の軌道を逸らす。
「ごめんなさい、助かったわ!」
「そういうのは後だ!」
モンスターの目の前に魔法陣が出現する。
「ちぃ!」
アシュレイがその場から急いで離れる。
直後、魔法の雷が先ほどまで居た位置を貫いた。
「ヤァ!」
ネプテューヌの攻撃がモンスターの胴を捉える。
深い傷が入るが、それだけでは怯まない。
「足を崩す!アイエフ、手伝え!」
「オッケー!」
アシュレイとアイエフがモンスターのサイドに回る。
「……そこっ!」
アイエフがモンスターの関節部をカタールで正確に切り裂いた。
痛みにもがくモンスターがアイエフを蹴り飛ばそうと足をうごめかす。
「大人しくしとけ!」
魔法で高熱を纏ったアシュレイの剣が、モンスターの一際大きな足を切り落とした。
体制が大きく傾くが、がむしゃらに剣を振り回し、それ以上の接近を拒む。
「クソッ……ネプ公、近付けるか!?」
「くっ……流石に厳しいわ!」
「えいです!」
不意にモンスターの動きが鈍る。
見ると、いつの間にか背後に回っていたコンパがモンスターに巨大な注射器の針を突き刺し、麻痺毒を注入していた。
「ねぷねぷ!今です!」
「ありがとう、こんぱ!」
炎を纏った剣を抱えたネプテューヌが一気に懐まで飛び込む。
「ブレイズブレイク!」
渾身の一撃が命中し、轟音と共にモンスターが光になって消えた。
「ふぅ……手強かったけど、所詮は手負いのモンスターね。わたし達の敵じゃないわ」
ネプテューヌの周りに全員が集まる。
「やるじゃない……正直わたし一人じゃ危なかったわ。ありがと」
「元はわたしが仕留め損なったのが原因だもの。気にしないで」
「にしても、変身って凄いのね。もう別人じゃない」
「わたしも初めて見た時はびっくりしたです」
ネプテューヌが光りに包まれ、変身を解いた。
「ぷはぁ……疲れたぁ……」
「ねぷねぷ、お疲れ様です。今日もかっこ良かったですよ!」
「いやぁ、そう言われるのも照れますなぁ……」
「前々から思ってたが、本当に同一人物かよ……」
そうだ、とネプテューヌが手を叩く。
「ねぇあいちゃん、良かったらわたし達のパーティに入らない?」
「……あいちゃん?」
「それって、もしかしてわたしのこと?」
「うん!アイエフだからあいちゃん!そっちの方が可愛いでしょ?」
「……あいちゃん、か……」
アイエフが顔を赤らめる。
「もしかして嫌だった?昔そのあだ名でイジメられてたとか?」
「別にそんな過去ないわよ。名前くらい好きに呼んでくれて構わないわ」
「じゃあ、わたしもあいちゃんって呼ぶです!」
「で、話は戻るんだけど、あいちゃんも一緒に調査しない?」
「まぁ、あいつみたいな凶暴なモンスターがいつ現れるかも分からないしな」
「いいわよ。数は多いに越したことはないしね」
アイエフは二つ返事でネプテューヌと行動を共にすることを承諾した。
「じゃあ、改めてよろしく!あいちゃん!」
「ええ、よろしく」
パーティにアイエフを加えた一行は再び調査を再開した。
「……こうやって調査してみて気付いたけど、この洞窟ってかなり広かったんだね……」
暫く調査をしていると、ネプテューヌが不意に口を開いた。
「逃げてる途中で迷子にならなくて本当に良かったですぅ」
「……そういえばあんたたちって、前にもここに来たことがあるのよね?」
「半分は事故みたいなもんだがな」
「ただ歩いてるのも暇だし、あのモンスターとの因縁も含めて話してくれない?」
そういう訳で、アイエフに三人のこれまでの経緯を話し始めた。
「と、いうわけなんだ!」
「なにがというわけだ。俺が補足しなかったらまるで意味わかんなかっただろうが」
「空から降ってきた記憶喪失のネプ子に、女になったアッシュ、天の声ことイストワール。そして鍵の欠片ねぇ……あんたたちトラブルに巻き込まれすぎじゃない?」
「大半はこいつのせいだがな」
「いやぁー、それほどでもー」
「「いや、褒めてないから」」
アイエフとアシュレイの声が重なった。
……………………
「……かなり奥まった所まで来たな」
「そうね。辺りを見渡して、特に何もなければこの辺りで切り上げましょう」
ネプテューヌ達はその後も探索を続け、ようやく洞窟の最深部と思われる場所にたどり着いた。
「……ねぇあいちゃん、こんなの拾ったんだけど」
隅っこの方を調査していたネプテューヌが近くのアイエフに声をかける。
その声にアシュレイとコンパも二人の近くに集まった。
「……何かのディスクかしら?ネプ子、こんなのどこで拾ったのよ?」
「さっきは言いそびれちゃったけど、ネプ子ってもしかしなくてもわたしのこと?」
「ネプテューヌだと呼び辛いし、あんたみたいな小さいのはネプ子の方が似合ってるわ」
「また呼び辛いって言われた!これでもう三人目だよ!?」
「やかましい、呼び辛い名前のお前が悪い」
アシュレイが若干のジャイアニズムをかましたところで本題に戻る。
「で、そのディスクはどこで見つけてきたの?」
「なんかあっちの壁に飾られてたよ」
「飾られてた?このディスクが?……それ本当?」
「ねぷっ!?酷いよあいちゃん!このわたしを疑うの!?今まで長年連れ添ってきた仲間のわたしを……」
「いや今日が初対面だろ……」
「ねぷねぷを疑うなんてあいちゃん酷いです!」
アイエフが何故か二人から罵られる。
「……はぁ……分かったわよ、信じてあげるわ」
「さっすがあいちゃん!あいちゃんの“あい”はきっと“愛”の“あい”だね!」
「じゃあ、これからは英語で“ラブちゃん”って呼ぶです!」
「いいねいいねー!あ、けど“ラヴちゃん”の方が文字的には可愛いかも」
「……だ、そうだぜ。“ラヴちゃん”?」
盛り上がる二人にアシュレイが乗っかった。
「ちょ、ちょっと二人共やめなさいって!アッシュも一緒になって人をからかわないの!」
「やーい、あいちゃんのくせに照れてやんのー」
「……どうでもいいけどラブちゃんって聞くと、犬の名前のような気がしてならないんだが、アイエフはそこんとこどう思うよ?」
「あんまり続けると、そろそろマジで怒るわよ!」
アシュレイ達がアイエフを弄って遊んでいると、不意にネプテューヌが手にしているディスクが光り始めた。
「ねぷっ!?な、何これ!?」
「あいちゃん、何が起こってるんですか!?」
「分からない……わたしだってこんなこと初めてよ!」
ディスクから飛び出した光が空中で分裂し、地面に落下する。
落下した光が変形し、モンスターへと変貌した。
「嘘でしょ!?まさか、このディスクから出てきたっていうの!?」
「ごちゃごちゃ言ってる場合か!迎撃するぞ!」
出てきたばかりで体制が整っていないうちに、アシュレイが手近な一体を剣で切りつける。
「てやぁ!」
ネプテューヌが手にした木刀でモンスターを叩く。
弱まりつつあるが、今だにディスクからは新しいモンスターが次々に出現していた。
「フレイムリッパー!」
アシュレイが剣から炎の斬撃を飛ばし、直線上の敵を一掃する。
ディスクから新たなモンスターが出てくるのは止まったが、その頃には凄まじいモンスターの大群が出来上がっていた。
「凄い数ですぅ!?」
「ちっ……切りが無いな……」
「三人とも、離れなさい!」
アイエフのかけ声に三人がモンスターから離れる。
「魔界粧……轟炎!」
直後、大量の爆発と火柱がモンスター達を襲う。
ひと塊になっていたモンスター達は逃げることも出来ず、一網打尽となった。
「おお!あいちゃんすごーい!」
「今の……魔法か?」
「疲れるから、あんまりやりたくなかったんだけどね」
「でも、あれだけいたモンスターさん達をほとんど倒しちゃったです!」
残ったモンスターを処理し、再びディスクの周りに集まる。
「それにしてもびっくりしたぁ……この世界のモンスターってディスクから生まれるんだね。それならそうと早く言ってよ!」
「ディスクなんかからモンスターが出てくるかよ……」
「そうよ。モンスターの出処なんて未だに判明してな……」
「どうした?アイエ……フ」
アシュレイとアイエフがいきなり固まった。
「アッシュ?あいちゃん?どうしたの二人共急に固まって……」
「……そうよ!モンスターの出処が分からなかったのはそのせいだったのよ!」
「これは大発見です!」
「ハーハッハッハッハッハ!」
洞窟内に不快な高笑いが響く。
「ガーディアンの反応が消滅したから、何事かと思って来てみたが……まさかここで貴様と会うとはな、ネプテューヌ!」
「誰!?この時代遅れな笑い声は!?」
「時代遅れは余計だ!」
そう言って声の主と思われる女が姿を表す。
不気味なほど白い肌に三角帽子。
所々に茨をあしらった衣装が特徴的な魔女風の女だ。
「フン……人をおちょくる意地の悪さは相変わらずのようだな」
「おいネプ公、こいつ知り合いか?」
「まっさかー。さすがのわたしでもこんな悪趣味なメイクのおばさんと知り合いなわけないってー」
きっぱりとネプテューヌが言い放つ。
「それは良かったです。ちょっとだけ、ねぷねぷの人付き合いを疑っちゃったです」
「それもそうね。ネプ子とはいえ、あんな人と知り合いだったらわたしでもドン引きだわ」
「だとよ、おばさん」
女が怒りに打ち震える。
「き、貴様ら……私を好き勝手言いおって!全員纏めて葬ってやる!」
女は槍と杖を掛け合わせたような武器を取り出し、敵意を剥き出しにする。
「よーし!そっちがその気なら!」
ネプテューヌも武器を取り出し、単身で女に突撃する。
「おい!待てネプ公!」
「大丈夫!こんな奴、わたし一人で十分!」
ネプテューヌが木刀を振り上げる。
「やぁあ!」
「フン……遅い!」
ネプテューヌの一撃はあっさりと弾かれ、腹部に掌底を貰い、吹き飛ぶ。
「ネプ公!?」
「次は私の番だ……さて、誰にしようか……」
女の手が持ち上げられる。
標的は……
「っ!コンパ!避け……」
言うより早い。
女の掌から打ち出された魔法弾がアシュレイとアイエフの間を縫うようにすり抜け、その後方に居たコンパに命中する。
「……うう……痛いですぅ……」
「……テメェ!」
「アッシュ!……ああもう!」
頭に血が上ったアシュレイが剣を構えて走る。
遅れてアイエフも続いた。
「オラァ!」
剣を振り下ろす。
「ぬるい」
「なっ……」
だがアシュレイの攻撃は杖で起動を逸らされ、虚しく空を切る。
「死にゆけ」
女の手がアシュレイの腹部に当たり、そのままゼロ距離で魔法弾を食らった。
「うぐっ……!」
そのまま吹き飛ばされ、洞窟の壁に激突する。
「ハァ!」
「見えていないとでも思ったか?」
背後に回り込んだアイエフの攻撃はあっさりかわされ、アシュレイと同じようにゼロ距離からの魔法弾で吹き飛ばされた。
「クソッ……なんだよこの強さ……」
「くっ……どうやら人は見かけによらないみたいね……」
「フン、雑魚共が……ん?」
女がネプテューヌに視線を向ける。
正確にはネプテューヌのポケットからこぼれ落ちた石に。
「ほぅ、やはりガーディアンを倒し、鍵の欠片を奪ったのは貴様だったか。だが鍵の欠片は返してもらおう」
「どろぼー!それはわたし達が頑張って手に入れたんだぞー!返せー!」
鍵の欠片を拾い上げた女に向かってネプテューヌが掴みかかった。
「黙れ!」
「ぐへぇっ!?」
溝を蹴り上げられたネプテューヌが崩れ落ちる。
「ネプ公!……こんの……!」
「貴様も大人しくしていろ!」
「ぐあぁっ!?」
立ち上がろうとしたアシュレイの背中に数発の魔法弾が打ち込まれた。
「さて、ようやく待ちに待ったこの時がきた。ネプテューヌ、貴様の力をもらうぞ!」
女の杖に禍々しいオーラが集まっていく。
「ハーハッハッハ!やっとだ!やっと私の悲願の第一歩が、今ここから始まるのだ!」
「ねぷねぷ!危ないです!」
「く……っそぉ……ネプ公……!」
自らの意思に反し、アシュレイの視界はかすみ、意識が離れていく。
(俺は……助けられないのか?)
アシュレイが目を瞑る。
(いや……違うな。俺に助ける資格なんて……無い)
アシュレイの意識は、ゆっくりと暗闇へと沈んで行った……。
……………………
 ̄ ̄ ̄ ̄チ カ ラ____
(!?)
暗闇に落ちかけた意識が一気に浮上する。
目を開けると、閉じる前と全く同じ風景が見えた。
いや、少しづつだが動いている。
自分以外がスローになったように見えた。
 ̄ ̄ ̄ ̄チ カ ラ____
(まただ……)
意識を引き上げた言葉が再び認識できた。
聞こえるとか、頭に響くとかそんなレベルじゃない。
視覚や触覚、嗅覚から味覚に至るまでがその言葉を『認識』していた。
 ̄ ̄ ̄ ̄ツ カ ッ テ____
(使えって……なんだよ)
 ̄ ̄ ̄ ̄チ カ ラ____
(力なんて……俺にあるのか?)
未だにあの女に攻撃された箇所が痛み、一瞬でも気を抜けばまた意識を失いかねない。
 ̄ ̄ ̄ ̄ツ カ ッ テ____
(……分かったよ)
全身に焦げるほどの熱が回り始める。
(俺に……あいつを助ける力があるってんなら……)
 ̄ ̄ ̄ ̄イ コ ウ____
「そいつを……引き出してみやがれぇぇぇええ!!」
 ̄ ̄ ̄せ る____
 ̄ ̄ ̄ ̄と ら ん す____
視界が、黒い焰に包まれた。
……………………
「っ!?なんだ!?」
アシュレイが先ほどまで居た位置から真っ黒な火柱が立ち昇る。
「アッシュ!?」
「アッシュさん!?」
アイエフとコンパが声を上げるが、返事は無い。
「一体……何がどうなっている!?」
女も杖を構えたまま動けない。
黒い火柱がゆっくりと小さくなっていく。
「…………」
火柱が完全に消える。
そして……
「…………」
何も起きない。
火柱が立っていた位置にアシュレイの姿はなく、硬い地面のみがあるだけだ。
「くっ……ふふふ……ハーハッハッハッハッハ!」
女が笑い声を上げる。
「ふふふ……何をするのかと思えば……只の時間稼ぎか……いや、それとも一人で逃げたか?」
「そんな……アッシュ!居るんでしょ!出てきなさい!」
「アッシュさん!わたし達を見捨てないでほしいです!」
「心配するな……貴様らを墓場に送った後、あいつもすぐに後を追わせて……っ!?」
殺気を感じた女が咄嗟に防御姿勢をとる。
直後に凄まじい衝撃が女を襲った。
「ぬ……おぉ!?」
弾き飛ばされ、空中で体制を整える。
「ぐっ……"誰だ貴様は"!?」
自分を吹き飛ばした主を睨みつける。
「……誰が……逃げるかよ」
「貴様……一体何処から……いや、一体いつからここにいた!」
「俺は……もう逃げない……」
青い目が真っ直ぐに女を見据える。
「大事な仲間を……友達を……守り通してみせる!」
刃渡りが1メートルを越える長剣を逆手に持ち、つぎはぎまみれのコートを羽織った黒髪の男がそこに居た。
「……アッシュ?」
ネプテューヌの言葉に黒髪の男が振り向く。
「悪い……待たせたな」
「……やっぱりアッシュだ!」
男の言葉にネプテューヌが笑顔になる。
「嘘……本当にアッシュ!?」
「どうなってるです!?」
「話は後だ」
再びアシュレイが女の方を向く。
「俺の仲間を怖がらせたツケ……しっかり払ってもらう」
アシュレイが剣を持ち上げる。
「……SSS起動。フォーム・ドライ」
その言葉で剣の鍔にあたる部分に装着された機械部品が作動する。
刃が機械部分ごとスライドし、隠れていた柄が飛び出す。
そのまま刃が峰の方向に90度回転。
瞬く間に長剣が大鎌へと変形した。
「ぐっ……貴様……まさか新手の女神か!?」
「……神になった覚えは無い、が……ひとつだけ言えることがある」
大鎌を構える。
「今の俺は……すこぶる調子が良いってことだ!」
走る。
「ぐおぉ!?」
女はすんでのところで鎌の一撃を受け止めた。
「こっちだ!」
弾かれる前に体を反転させ機械部分による殴打を繰り出す。
受け止められず、女が吹き飛ぶ。
「フォーム・アイン!」
大鎌が変形し、再び剣に戻る。
「フレイムリッパー!」
剣から炎の刃を飛ばす。
先ほど放ったものとは速度も大きさも段違いだ。
「舐めるな!」
女は受け身と同時に飛び上がり、炎の刃をかわす。
「逃がすか……」
アシュレイが左腕を突き出す。
すると、普通ならあり得ないことが起こった。
アシュレイの腕が粘土のように変形し、植物へと変化する。
植物の腕から無数の蔦が伸び、女の足を絡め取った。
「なんだと!?」
「落ちろ!」
足を掴んだまま地面へと叩きつける。
蔦を戻すと変形した腕が音を立てて元の腕に戻った。
「さぁ、こいつでトドメだ!」
走る。
「オラオラオラオラ!」
ダメージから復帰できていない女を炎を纏った剣で連続で切り裂く。
「デモン……」
拳を打ち込み、そのままゼロ距離で炎弾を発射し、空中に打ち上げる。
炎弾は空中で巨大化し、炎の結界となる。
フォーム・ドライ。
大鎌を抱えたアシュレイが結界に向かって跳ぶ。
「ブレイズ!」
大鎌で結界を切り裂く。
臨界を突破した結界が強烈な破壊エネルギーを伴って炸裂した。
黒焦げになった女が地面に叩きつけられた。
「……う……がふっ……!」
「……やれやれ、しぶといな」
これだけの攻撃を受けて女はまだ生きていた。
「……鍵の欠片、確かに返してもらったぞ」
女の懐からこぼれ落ちたそれをアシュレイが拾う。
「さて、じゃあ……」
「待って、アッシュ!」
鎌を振り上げたアッシュをネプテューヌが止める。
「ねぇ、もしかしておばさん、わたしのこと知ってるの?」
「……あぁ、知っているさ。貴様は知らなくとも、私は貴様をよーく知っているよ」
「じゃあお願い!わたしのことを教えて!」
「何をわけの分からないことを……頭でもぶつけたか?」
「違うです。ねぷねぷは記憶喪失なんです。だからお願いです!ねぷねぷのことを知っていたら教えて欲しいです!」
「……くっ……ふふ……ハーハッハッハ!まさか貴様が記憶喪失になっていたとはな!貴様を見失ったときはどうしたものかと思ったが……どうやら、まだ運命は私の味方のようだ!」
「何を馬鹿な……っ!?」
女の全身から衝撃波が発生する。
アシュレイは咄嗟に下がったが、次に顔を向けた時、女の姿はもうそこには無かった。
『鍵の欠片はしばらく貴様らに預けておいてやろう!さらばだ!』
女の声のみが洞窟に響き、やがてその声も消えた。
「……逃げたか」
「……あのおばさん、何者なのかしら?ネプ子を狙ってたみたいだし……」
「わかんない……いーすんと話せたらなぁ……」
「ねぷねぷ……」
「まだ、終わってないぞ」
「……そうね。今はこっちをどうにかしましょ」
アイエフのこっちとは、モンスターが出てきたディスクのことだ。
「とりあえず……えいっ」
アイエフはディスクを手に取ると、躊躇なく真っ二つにへし折った。
「さて、ディスクも破壊したし、帰るか」
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!?」
「なんだよ?」
「なんだじゃないわよ。一番大きな問題が残ってるでしょうが」
「一番大きな問題?」
アイエフの言葉にネプテューヌが首を傾げる。
「アッシュ、なんであんた男になってるのよ!」
アシュレイは未だ黒髪の男のままである。
ネプテューヌ達がよく知るアシュレイの髪は灰色のセミロングだ。
「……知らん」
「知らないって……何の心当たりがないわけじゃないでしょ?」
「少なくとも、なんで男に戻ったかは分からん。戻った方がありがたいがな」
「それに何!?あんたの腕どうなってんのよ!?」
「だから知らん。無意識にやってたんだよ」
「まぁまぁあいちゃん!良いんじゃない?元に戻っただけなんだし!」
「あんたねぇ……」
「……ん、あー……」
「アッシュさん、どうしたですか?」
「……なんか……気分悪い……」
直後、アシュレイの体が再び黒い炎に包まれる。
「「「……あ」」」
「……え?」
炎が治まった時、そこにはぶかぶかのコートに灰色の髪の少女がいた。
「アッシュさん……」
「戻った……わね」
「アッシュ、どんまい!」
「…………」
叫ばずにはいられなかった。
「なんでだああぁぁぁああ!?」
はい、文字数が段違いに増えた第3話でした。
この12000字という数字は今でも私の1話の基準みたいになってます。書きたい事を書ききると大体この字数に収まるのよね。
しかしそれにしても三点リーダを並べて場面変換してる所が多い。
渋だとページ切り替えのついでに場面も変えてましたが、こちらではそんな機能はありませんし仕方ないのかも知れませんが。