超次元ゲイムネプテューヌ:リバース・リ・バース 作:ひきがねコート@pixiv名アスラ
「……それにしても、まさかモンスターがディスクから生まれるなんて思いもしなかったわ」
「ですね。けど、これでモンスターさんが出てくることはなくなったです」
洞窟の調査を終えたネプテューヌ達は、ギルドにクエストの報告をし、現在はコンパの家に戻ってきている。
「後はみんなで退治していけば、きっと平和になるです」
「まぁ、あのディスク……じゃ少し呼びにくいから、これからはエネミーディスクって呼ぶことにしましょ」
アイエフはあの洞窟で見つけた、モンスターを生み出すディスクをエネミーディスクと名付けた。
「で、そのエネミーディスクが他になければ、の話だけどね」
「そんなぁ……」
現在ゲイムギョウ界はモンスターで溢れかえっている。
あのディスク一枚から世界規模の数のモンスターが出てくるとは、考えたくても考えられなかった。
「……そんなに落ち込まないで、コンパ。発生源もわかったし、以前より格段に対策も立てやすくなったはずよ」
「いやぁ、働いたあとのプリンは格別だね!こんぱ、おかわりある?」
少し重めな雰囲気の部屋にネプテューヌの呑気な声が響く。
「……ハァ……」
「あはは……」
「……ん?二人とも難しい顔してどうしたの?」
「あんたねぇ……」
どうやらネプテューヌは二人の会話をまるで聞いていなかったようだ。
「まぁまぁ、あいちゃん。変身すると凄く疲れるみたいですから、大目に見てあげて欲しいです」
「あとアッシュ、いつまで死んでるつもりよ」
アシュレイは男に戻れたのも束の間、再び女に戻ってしまったショックをまだ引きずっていた。
現在はソファにうつ伏せになったままぶつぶつと独り言を呟いていた。
「なんでこうなるかなぁ……」
「諦めなさい。一瞬でも元に戻れたんだから、進展なしよりよっぽどマシでしょ?」
「ハァ……」
「アッシュさん、元気出してください。いつかきっと元に戻れるですよ……多分……」
さて、とアイエフが仕切り直す。
「エネミーディスクより、アッシュが倒したあのおばさんの方が気になるわ。いったい何者なのかしら……」
「鍵の欠片を知ってたです。そして集めていたみたいです」
「なら、先を越されないためにも、早く出発した方がいいかもしれないね」
おかわりのプリンを食べ終わったネプテューヌが話に混ざる。
「そうですね。今日はもう遅いですから、明日の朝すぐに出発するです」
「ところであいちゃん、わたしとこんぱとアッシュは鍵の欠片集めの旅に出るんだけど、あいちゃんも一緒に来てくれないかな?」
「わたしが?」
「わたしとこんぱは始めての旅だからさ、あいちゃんがついてきてくれると心強いんだ」
「別にいいわよ」
「わーい!やたー!」
洞窟の時と同じ様に二つ返事でアイエフはネプテューヌ達について行くことに決めた。
「あいちゃん、本当に良いんですか?」
「特にプラネテューヌに留まる理由もないしね。それに、ここまで巻き込まれて今更抜けるのもなんだし」
こうして、アイエフが正式にネプテューヌ達の仲間入りを果たした。
……………………
次の日、午前9時過ぎ。
「ねぷねぷ、こっちです!」
「ごめーん!道に迷っちゃった!」
「あんたはまだ良いわよ。アッシュはいったいどこにいったのかしら?」
ネプテューヌ達はそれぞれが必要なものを買うために、一旦別れてプラネテューヌの象徴でもあるプラネタワーで待ち合わせをしていた。
「あれ、アッシュ、まだ来てないの?」
「試したいことがあるって言って、どこかに行っちゃったです」
「試したいことって?」
「さぁ……?」
そんなことを話していると、人混みの中からアシュレイが姿を現した。
「悪い、遅くなった」
「あんた今までどこほっつき歩いてたのよ」
「モンスター討伐だ」
「モンスター討伐?なんでまた?」
「これを試したかったんだよ」
アシュレイがそう言うと、突如アシュレイの足元から、ごく少量だがあの時と同じ黒い炎が吹き出す。
「ちゃんともう一回出来るか確認したかったんだよ」
「まったく……そういうことなら事前にそう言いなさいよ」
「……で、パスは取ったのか?」
「……あ」
アシュレイの言葉にアイエフが素っ頓狂な声を上げた。
ネプテューヌとコンパの頭には?マークが浮かんでいる。
「アッシュ、パスってなに?」
「お前、まさかなんの許可書も無しに他国に入れると思ってんのか?」
「入れないんですか?」
二人の言葉にアシュレイがため息を吐いた。
「アイエフ……」
「しょ、しょうがないじゃない!ずっと一人旅だったから他人のパスのことまで頭が回らなかったのよ!」
「分かったから、教会に行くぞ」
「教会……ですか?」
「他国に入る時には、入国許可書になるパスが必要なんだよ。そのパスは教会で発行されてるから、今からそれを取りに行こうっつー話だ」
「よくわかんないけど分かった!そうと決まれば早速行こー!」
幸い国の象徴であるプラネタワーから教会までは歩いて数分の位置にあるため、移動に時間はかからなかった。
「こんにちはー!」
「ようこそ、プラネテューヌ教会へ!今日は当協会になんの用だい?」
教会に入ると、教会の職員がすぐに対応してくれた。
「ラステイションへの入国パスを取りに来た。二人分だ」
「なら、この書類の必要事項を記載した後、ここにサインをお願いします」
二人が書類を書き終え、職員に手渡す。
「コンパさんとネプチューヌさんだね」
「お兄さん、わたしの名前間違ってるよ。ネプチューヌじゃなくてネプテューヌだよ!」
「あぁ、すまない。僕としたことが君の様な可愛らしいロリっ子の名前を間違えるなんて……」
「うぅ……やっぱりわたしの名前って言いづらいのかなぁ……」
「やっぱりも何も間違いなく言いづらい」
そしてツッコむところはそこじゃないだろとアシュレイは思った。
「ともあれ、これで二人の手続きは終わり。これでラステイションとプラネテューヌが自由に行き来できるよ」
二人が発行されたばかりのパスを受け取った。
「ねぇお兄さん、女神様って今いるの?」
「すまない。パープルハート様は天界にいるみたいで、まだプラネテューヌには降りてきていないんだ」
「そっかぁ……もしかしたらいると思ったんだけどなぁ」
「風の噂では、他の国の女神様たちはそれぞれが守護する大陸に降りてきているらしい」
職員の人ががっくりとうなだれる。
「パープルハート様の身に何もなければいいんだけど……」
「守護女神(ハード)戦争で何かあったのかしら?」
「まさか、パープルハート様が他の女神様に敗れるなんてそんなことありえないよ」
ネプテューヌがアシュレイの肩を叩く。
「ねぇねぇ、守護女神戦争ってなに?」
「……守護女神戦争っつーのは、遠い昔から行われているこの世界の覇権をかけた戦いのことだ」
「その戦いに勝ったらどうなるの?」
「ゲイムギョウ界を統べる神サマになれるんだとさ」
「へぇ……よくわかんないけど、みんなで仲良くすればいいのに」
「誰が勝とうがどうだっていい。興味ない。パス貰ったんだろ?行くぞ」
「あ、待ってよアッシュ!……それじゃお兄さん、バイバーイ!」
「あぁ、気を付けて」
職員の人に見送られながら、ネプテューヌ達は教会を後にした。
「……あのネプチューヌって子、どこかで見たことがある気がするんだよなぁ……うーん……」
彼が言ったその呟きを聞く人は誰一人としていなかった。
……………………
「ついに来ました!ラステイション!」
プラネテューヌからバスに乗り、長いトンネルを抜けてついにラステイションへとたどり着いた。
「なんだか鋼鉄島ーって感じ!あいちゃんあいちゃん!ここってどんなところなの!?」
「守護女神ブラックハート様が治める国よ。重工業が盛んで、工場なんかが多いの」
「ねぇねぇ、アッシュってラステイションの出身なんでしょ?」
「それがどうかしたか?」
「こういうさ……ディティールっていうの?大陸ごとに建物が違ったり雰囲気が違うのってさ、やっぱり女神様の趣味なのかな?」
「んなわけないだろ、女神サマはただ国を治めてるだけ。そこに文明を築くのは俺たち人間のやることだ」
だがその国の特色を気に入って移住する人もいて、中々固定された特色から抜け出せないのも事実ではある。
「むぅー……アッシュは夢がないね。こんぱはこの国のことどう思う?」
「工場とか煙突とかが目立っていて、産業革命って感じがするです。でも、わたしにはちょっとマニアックな感じかもですぅ……」
「まぁ女の子が食いつきそうな感じではないかもね。わたしは割と好きだけど……って、それよりも一度教会にいきましょ」
「なんで?」
「鍵の欠片を集めるんだろ?女神サマなら何か知ってるかもしれないしな」
そう言って工場の隙間を縫いながらラステイションの街を進む。
「……ねぇあいちゃん、教会にはまだ着かないの?」
「おかしいわね……こっちの方向だと思ったんだけど……」
……が、途中で思いっきり道に迷ってしまった。
「というかアッシュ、あんた教会の場所とか知らないの?」
「教会なんかほとんど行ったこと無いし、新しい工場が立ちまくっててまるで検討がつかん」
「行ったこと無いって……あんたもしかして他国の女神を信仰してるの?」
アイエフの言葉をアシュレイが鼻で笑う。
「女神サマなんかそもそも信仰してねーよ」
「嘘でしょ!?」
「今嘘言ってなんの得があんだよ」
「なんで女神さんを誰も信仰して無いですか?」
「……女神に祈ったって腹は膨れない……そんだけだ」
「……ねぇあいちゃん」
唐突にネプテューヌが話に入ってきた。
「女神様を信仰してないって、悪いことなの?」
「いや、悪いとは言わないけど……非常識でしょ」
「非常識ねぇ……『集は個ではない』ってな」
「それもアッシュのお父さんの言葉?どんな意味?」
「集団の常識が必ずしも個人の常識になるわけじゃない。俺にとっては女神を信仰してないのが常識ってことだ」
勿論女神を信仰してるやつのことをおかしいなんて思ったことはないがな、とアシュレイは付け足した。
「んなことはいいから、さっさと誰かに道でも聞くぞ」
「じゃあ、あのいかにも冒険者って人はどうかな?」
そう言ってネプテューヌが赤い髪の少女に近付いていく。
「ん?あたしに何か用かな?」
「ブラックハート様って女神様に会いたいんだけど、どこに行けばいいか教えて欲しいんだ」
「それなら、この道を真っ直ぐ行って、突き当たりを右に曲がったところに教会があるよ」
「どうやら方向は合ってたみたいね。助かったわ」
「困ったときはお互い様だからね」
赤髪の少女がにっこりと笑う。
「ここで会ったのも何かの縁だし、名前教えてよ。わたしはネプテューヌ!で、こっちがこんぱとあいちゃんとアッシュ」
「あたしはファルコム。駆け出しの冒険家なんだ。こっちで会ったのも何かの縁だし、もし困ったことがあったら力になるよ」
「ほんと!?」
「うん!」
ネプテューヌとファルコムはすっかり仲良くなってしまっていた。
「……で、冒険家なんだろ?ラステイションの次はどこに行く予定なんだ?」
「うーん、北上してルウィーに行くのもいいけど、まずはリーンボックスかな」
「つーことは海を越えることになるから……船旅か」
「そう、だね……」
なんだかファルコムの言葉の歯切れが悪い。
「それじゃ、わたしたちは急いでいるから、これで失礼するわ。また会いましょ」
「うん、またね」
「船が難破しないように気をつけろよ?」
そう言ってネプテューヌたちは教会へと急いだ。
「すみませーん!ブラックハート様に会いに来たんですけど、ブラックハート様いますかー?」
ネプテューヌが教会に入って早々にそう叫んだ。
「なんだ貴様らは。ここは子供が遊びに来るような場所ではない。帰れ帰れ」
「えー。せっかくブラックハート様に会いにわざわざ来たのにー。ケチー!」
ラステイション教会の職員と思われる人物の粗暴な態度にネプテューヌが怒る。
「ねぷねぷの記憶を取り戻すのに、どうしても女神さんに聞きたいことがあるです。お願いしますです」
「……あ!もしかして“誰だ貴様らは”って聞かれたってことは、名前さえ言えば会わせてくれたりするのかな?だったら、わたしネプテューヌ!で、こっちはこんぱと、アッシュと、あいちゃん!」
「例え名乗ろうが、どんな事情があろうが関係ない。仕事の邪魔だ、さっさと出て行け」
「……教会って、ずいぶん不親切なのね」
後ろの方で黙っていたアイエフが痺れを切らしてネプテューヌ達の前に歩み出る。
「女神様に仕えるアナタたちがそんなんじゃ、ブラックハート様も大したコトないんじゃない?」
「なんとでも言え。たかが女神をどう言われようが痛くも痒くもないわ」
「…………」
「……おい、テメェ」
アシュレイが腿からナイフを抜き取り、素早く職員の喉に突きつける。
「ぐ……貴様……なにを……」
「黙って聞いてりゃ仕事の邪魔だの、たかが女神だの……とても教会職員のセリフとは思えないな」
「ちょっとアッシュ!なにしてるの!?」
「……本当に職員かどうか……ここで『確かめて』やろうか?」
「アッシュ!!」
「…………」
アイエフの怒声にアシュレイがナイフをゆっくりとホルダーに戻した。
「これ以上は時間の無駄よ。一旦戻りましょ」
「でも……」
「いいから、さっさと帰るわよ」
アイエフに引きずられるようにネプテューヌ達は教会を後にした。
「あーもーあったまくるなー!あの教会の人もそうだけど、あいちゃんもあいちゃんだよ!アッシュのはやりすぎだと思うけど、どうして引き下がっちゃうわけ!?」
不満を募らせたネプテューヌが歩く道すがら喚く。
「気づかなかったの?あの人、女神様に仕える身でありながら女神様を呼び捨てにしていたわ」
「確かに、言われてみればあの人、女神さんを呼び捨てにしてたです。そんなの絶対おかしいです」
「どうして?実は超仲良くてお互いに呼び捨てる超フレンドリーな関係って可能性はないの?」
アシュレイがため息を吐いた。
「そのポジティブさ、なんかに活かせないもんかね」
「ネプ子は知らないと思うけど、普通なら自国の女神様を呼び捨てにするなんてありえないわ」
「女神の下で働く教会職員ならなおさら……な」
「なのにこの国には“たかが女神”扱い……絶対おかしいわ」
「アッシュさんは何か心当たりはないですか?」
アシュレイが腕を組んで考え込む。
「……アヴニール……」
「アヴニール?何よそれ」
「ラステイションでは最近、アヴニールっていう企業が急成長してるんだよ。それこそ、女神なんてもう必要ないなんて言うやつが出てくるほどな」
「女神様が……必要ない……」
「アヴニールが急成長を始めて少したった後、教会でお祈りが出来なくなっただなんだと怒ってたやつがいたな」
「……無関係、とは言い難いわね」
「……調べてみるか?」
「……いえ、旅の目的はあくまで鍵の欠片だし、せめて調査はここの鍵の欠片を集めてからにしましょ。というわけで、これからクエストに行こうと思うんだけど」
「えーなんでクエスト?鍵の欠片を集めるんじゃなかったの?」
アイエフの提案にネプテューヌが文句を言う。
「思い出してみて。プラネテューヌではエネミーディスクがあった場所に鍵の欠片もあったのよ」
「なら、ラステイションもその可能性があると……そういうことか?」
「おおっ!?さすがあいちゃん!じゃあ早速クエストを受けにギルドに行こう!」
……………………
「あ、きっとあの人です!モンスターさんを倒してほしいっていう社長さんは!」
あの後、ネプテューヌ達はギルドに行き、なるべく強めのモンスターを討伐するクエストを受けた。
依頼主との待ち合わせ場所に行くと、すぐにコンパが依頼主と思われる人物を発見した。
「えー?なんか一回り小さいよ?社長さんなんて言うくらいだから、もっとがっちりした人じゃないの?」
「でも……あ、気がついたです……顔をしかめたです……手を振ってくれたです!やっぱり間違いないですぅ!」
「向こうの人も、もしかしたらこっちと同じ気分かもね……どしたの、アッシュ?」
「……見間違い……じゃ、なさそうだな」
依頼主と思われる人物がこちらに近付いてくる。
「もしかして、仕事を受けてくれた女の子四人組っていうのはお前らなのか?……本当に大丈夫なのかよ……」
「見かけによらないのはお互い様よ。わたしはアイエフ。で、後ろのがコンパとネプテューヌとアッシュ……じゃなくてアシュレイよ」
「アシュレイ……アッシュ?」
アイエフの言葉に依頼主が首を傾げる。
「あら、何かおかしなことでも言ったかしら?」
「あぁ、いや。知り合いと同じ名前だったから、つい」
「知り合い……ですか?」
「あぁ、半年前に飛び出して行ったっきり連絡もよこさないようなやつでな。どこで何やってんだか」
依頼主がアシュレイをまじまじと見つめる。
その目が一点で止まった。
「……その剣……あいつの……え、ちょっと待て、お前一体……?」
「……あれから、もう半年か。久しぶりだな、シアン」
アシュレイがニヤリと笑った。
……………………
ここは依頼主であるシアンの工場。
……の隣にあるシアンの実家の食堂。
立ち話もなんだしとシアンがネプテューヌ達を連れてきたのだ。
「やれやれ、知らないやつが世界に一本しかない剣を持ってると思ったら……まさか女になってるなんてな」
「笑うな。こっちはこんな体になっていろいろ大変なんだよ」
依頼の話も忘れ、世間話に花を咲かせていた。
「それにしても実家が食堂なんていいよね。パフェでもプリンでもなんでも頼み放題なんだよね!」
「「いや、自分の家で頼み放題しても仕方ないだろ」」
シアンとアシュレイの声が重なった。
「すごいです。息ぴったりです」
「……それに、工場の稼ぎだけじゃ苦しいから母さんがここを片手間でやってくれてるんだ。ただで贅沢はできないよ」
「……そんなにヤバイのか?」
「正直、かなりヤバイ」
「じゃあ、そろそろ仕事の詳しい話を聞かせてくれないかしら?」
「あぁ、そうだな」
ようやくシアンが仕事の話をし始める。
「単刀直入に言うと、あんたたちには交易路のモンスターをどうにかしてほしいんだ」
「交易路?」
「あぁ。少し前までは安全な交易路だったんだが、最近モンスターが出るようになっちまってさ。そのせいで、せっかく作った商品の流通が滞っているんだ」
「ビンゴね。いいわ、その依頼、確かに受けたわ」
「助かる。ただでさえアヴニールのせいでこっちは景気が悪いっていうのに、それにモンスターまで加わってたまったもんじゃなかったんだ」
「アヴニール……」
その言葉にアシュレイとアイエフが反応する。
「アッシュたちは知ってるか?」
「……一応教えたが間違ってるかもしれん。念の為説明してくれ」
「わかった。アヴニールは家電から兵器に至るまでなんでも作って、そのラインナップの多さと低価格で、ほぼ市場を独占していると言っても過言じゃないんだ」
「家電から兵器までって……いくらなんでも手が広すぎでしょ……」
「おかげでこっちの商品は種類も価格もアヴニールに負けて物は売れないし、下請けをさせてくれるわけでもないしで、今月に入ってから知り合いの工場も何件潰れたことか……」
「女神様に相談はしたの?こんな状況、余程のことが無い限り女神様が放っておくなんて考えられないわ」
「……まぁ、この様子だと結果はお察しみたいだがな」
「……教会は表向きはブラックハート様を信仰しているようにみえるが、中身はアヴニールに乗っ取られているといっても過言じゃないね。アヴニールはわたしたちにはブラックハート様に会わせてくれないどころか、顔すら見せてくれないんだ!」
「アヴニールは悪い会社なんだね。シアンも街の人も、それで困っているんでしょ?」
「悪いなんてもんじゃない!バケモノみたいな会社さ!」
「どうどう、落ち着けシアン。叫んだってどうにもならん」
「……なるほど。それならさっきの教会でのことも頷けるわ」
「教会がそんな状況じゃ、女神さんに会うことなんてできそうにないですね……」
「まぁ兎にも角にもまずはモンスター退治だ。交易路がどうにかならないと真っ先に工場が潰れちまうしな」
「それもそうね。それじゃ、早速その交易路に言ってみましょ」
アシュレイ達は一旦シアンと別れ、問題の交易路へと向かった。
その後を黒い光がはるか上空から着いてきていることも知らずに。
……………………
「とうちゃーっく!ここが噂の交易路だね!どんなモンスターが出てくるのかな!」
だだっ広い渓谷を走り回りながらネプテューヌがはしゃぐ。
アシュレイ達はネプテューヌのだいぶ後ろの方を歩いていた。
「おーい!あいちゃーん!こんぱー!アッシュー!早く早くー!」
「はぁ……はぁ……ねぷねぷ、少し待って欲しいですぅ……わたし、もうヘトヘトですぅ……」
「まったく、元気なのはいいけど、後でバテても知らないわよ」
「まぁ、間違いなくバテるだろうな」
「大丈夫大丈夫!悪いモンスターなんてさっさと倒して、シアンに報告してあげようよ!」
「やれやれ……」
アシュレイ達は足取りの重いコンパに歩調を会わせながらネプテューヌの後を追った。
道中のモンスターを退治しながら先にすすむ。
「アイエフ!そっちの頼んだ!」
「了解!」
シアンの言う通り、交易路には大量のモンスターが我が物顔で歩いていた。
「ソウルズコンビネーション!」
アイエフが蹴り上げたモンスターにカタールで追撃。
トドメに蹴り落としを浴びせる。
「おら……っよ!」
アシュレイはモンスターに足払いを仕掛け、浮いた敵を踵落としの要領でブーツから飛び出した刃で切り裂いた。
「さて、今のが最後か」
「あんた、ブーツにまで武器を仕込んでんの?」
「この剣じゃ小回りが効かないしな」
アシュレイが戦闘中に投げたナイフを回収し、ホルダーにしまう。
先に進もうとしたところで不意に立ち止まる。
「アイエフ、あいつらは?」
「ほら、あれ」
アイエフが指差した方向には、とうの昔にスタミナが底をつき、フラフラと後からついてきているネプテューヌとコンパの姿があった。
「はぁ……はぁ……あいちゃぁー……ん……待ってぇ……疲れたよぉ……」
「やれやれ、言わんこっちゃない」
「だからあれほどバテても知らないって言ったじゃないの」
「だって思ってた以上に坂道が多いんだもん。卑怯だよぉ」
「あたしも、足の裏が痛くてもう一歩も動けないですぅ。あいちゃん、ここでちょっと休憩するです」
「もう、二人共揃ってだらしないわね。いいわ、休憩しましょ」
「やっと休めるですぅ……」
近くの日陰に入り、腰を降ろす。
「そうだ!せっかくだし、休憩ついでにみんなでおやつ食べようよ!街を出る前にプリンを買っておいたんだよねー」
そう言ってネプテューヌが手荷物の中から四人分のプリンを取り出した。
「大自然の中で食べるプリンは格別だよ、きっと!」
「お前、どこでもそれだな……」
だが直後、休憩していた日陰が突然大きくなった。
頭上から鳥の鳴き声の様な声が聞こえる。
「……と、行きたいけど、実は例のモンスターが出没するのってこの辺りなのよね」
「……え」
羽ばたきの音がだんだん大きくなっていく。
「……あ、あのぉー……あいちゃん?この明らかに今まで戦ったことのないようなモンスターってもしかして……」
「えぇ。シアンからの情報通りよ。そいつで間違いないわ」
「うぅ……せっかく美味しくプリンを食べれると思ったのにー!」
ネプテューヌが光に包まれる。
「仏のネプテューヌと言われたこのわたしも、今日ばかりは鬼になるわ!」
変身を終えたネプテューヌがそう言い放つ。
どうやらご立腹の様子だ。
「相変わらず、ねぷねぷは変身すると見た目だけじゃなく、性格もまるっきし変わるですね」
「ま、疲れてヘタっているよりは、プリンのことで怒ってくれていた方がまだマシね」
「わたしはねぷねぷと違って、ヘトヘトなままなんですが……」
「こんぱ、あいちゃん!雑談なんてしてないで、さっさと倒すわよ!」
「お前に言われるまでもねーよ!」
各々が武器を構えた。
……………………
「あっぶね!」
突進してきたモンスターをアシュレイが横っ飛びに回避する。
先程から高空から突進、その勢いのまま再び離脱、と繰り返されまるで攻め込む暇がなかった。
「くっ……ほら、こっちに来なさい!」
アイエフがモンスターを挑発し、標的を自分に向けさせる。
「よし、そのままよ……」
真っ直ぐにアイエフへモンスターが突撃する。
ギリギリまで引きつけたアイエフが回避行動をとった。
本来ならばまた離脱をされていただろうが、今回は違う。
アイエフの背後には巨大な岩の壁があったからだ。
モンスターが勢いのまま、岩壁に爪を食い込ませる。
「もらった!」
アイエフが反動で動けないモンスターをカタールで切りつける。
だが厚い皮に防がれ、殆どダメージは与えられていなかった。
モンスターが岩壁を砕きながら爪を引き抜き、再び上空へと飛びたった。
「くっ……あいつ、思ったより硬いわね……」
「じゃあこいつならどうかな!」
アシュレイが足下に魔法陣を展開し、左手から炎弾を打ち出す。
だが高速で空を飛ぶモンスターに当てることはできなかった。
「速いな……だったら!」
再びモンスターが突進してくる。
だがアシュレイは避けるどころか剣をしまい、モンスターに向かって真っ直ぐに走っていく。
「アッシュ!?」
「あんた、何を!?」
アシュレイはモンスターと接触する直前にスライディングの要領でモンスターの真下に滑り込む。
アシュレイの鼻先をモンスターの鋭い爪が駆け抜けていく。
その直後、アシュレイの姿が消えた。
「……アッシュがいない!?」
「ねぷねぷ!あいちゃん!あそこです!」
コンパが指差した先には先ほどより荒れた飛び方をするモンスター。
そしてそのモンスターの尻尾にしがみついているアシュレイの姿があった。
「この距離なら……外れるわけないよな!」
放った炎弾がモンスターの体に吸い込まれていく。
「こいつで……落ちろ!」
モンスターの体内で爆発が発生し、重力に従って落下し始めた。
アシュレイは尻尾から手を離し、無事着地する。
「まったく……無茶するわね」
「でも、これで動きは止まったわ」
「一気に決めるぞ、ネプ公!」
二人がモンスターに向かって駆ける。
「ハァァァァアアア!」
「オラオラオラ!」
ネプテューヌは大太刀で、アシュレイは炎を纏った剣でモンスターを連続攻撃。
「これで終わりよ!」
ネプテューヌがモンスターを打ち上げる。
同時に魔法で脚力を強化したアシュレイが飛び上がる。
「もう一発!」
切り上げながら更に上空へ。
「クロスコンビネーション!」
遅れて飛んだネプテューヌがモンスターを打ち下ろす。
だがまだ倒すには至っていないようだ。
「逃がすかよ!」
落下してきたアシュレイの剣がモンスターに突き立てられる。
「おおぉぉぉおおお!」
大量の魔力を剣伝いに送り込まれ、モンスターがうめき声を上げた。
「爆ぜろ!」
アシュレイが剣を引き抜くと同時にモンスターから離れる。
一瞬の空白の後、モンスターの体から炎が溢れ出し、跡形も無く爆発した。
「……ふぅ、少し手こずったわね」
「ほんと、アッシュのアレがなかったらかなり厳しかったんじゃない?」
「アッシュさん、お手柄です!」
「成功するかどうかは賭けだったがな」
戦闘が終わり、一息つく。
「……ふと思ったんだけど、変身したネプ子がわたしたちを飛んで運べば早く着くんじゃないかしら?」
「嫌よ。ただでさえ疲れるのに、三人もなんて運べないわ」
「タクシー代として、片道1プリンでどうですか?1個100円の高くて美味しいプリンを奮発するですよ」
「うっ……とても魅力的な提案だけど、断らせてもらうわ」
「そうですか……ねぷねぷが飛んでくれたら、とっても楽できたんですけどねぇ」
「つーか三人も運ぶのはタクシー代云々じゃなくて物理的に無理があるだろ……」
「それじゃ、いい加減元の姿に戻るわね」
ネプテューヌが変身を解こうとした時、不穏な気配をアシュレイとアイエフが感じ取った。
「ちょっと待ってネプ子。まだ変身を解いちゃ駄目よ」
「なにかしらあいちゃん。プリンには釣られないわよ」
「アイエフも気付いたか……」
「えぇ。そこの岩陰に誰か居るわ」
「っ!?」
「……よく気付いたわね。褒めてあげるわ」
岩陰から気配の主が姿を現す。
「久しぶりね……ネプテューヌ」
黒いレオタード風の服装に白く長い髪の女だ。
その女がニヤリと笑う。
「……もっとも、あなたは覚えていないかもしれないけどね!」
「くっ!?」
女がどこからともなく大剣を取り出し、ネプテューヌに切りかかった。
ギリギリで受け止め、つばぜり合いになる。
「ふふ……あはは!」
「っ……ヤァ!」
ネプテューヌが女を弾き飛ばし、距離を取った。
はい、場面転換多過ぎな第4話でした。
この頃は移動中に小話を挟んだり飛ばすにしてもその後移動中の様子を簡単に説明したりといった事が出来てませんでした。
こうして改めて昔に書いたものを見返すと反省点や成長点が浮き彫りになりますね。
駄作ではありますが、もう少しお付き合い頂ければ幸いです。