超次元ゲイムネプテューヌ:リバース・リ・バース   作:ひきがねコート@pixiv名アスラ

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第5話 やるべきこと

 

「フフフ……」

「…………」

 

現在ネプテューヌ達は謎の白い髪の女と相対している。

お互い武器を構えたまま微動だにしない。

 

「……ねぇあいちゃん、この人……」

「……えぇ。なんとなく変身したネプ子に似ているわね」

 

レオタード風の服装に電源ボタンのマークのような眼。

背中に浮かんだ羽や武器の形状など、変身したネプテューヌとの類似点は多い。

 

「わたしの勘が外れてなければ、きっとネプ子のことを何か知っているはずよ」

「えぇ、ネプテューヌのことなら、よーく知っているわよ」

「!?」

 

アイエフの話を聞いていた女が構えを解き、そう言い放った。

 

「本当なの!?なら教えて!私は一体何者なの!?」

「あはははっ!ネプテューヌにお願いされるっていうのも悪くないわね!」

「……御託はいい、はっきりしろ。言うか、言わないか」

 

アシュレイがいつもよりワントーン低い声で女を威嚇する。

 

「……いいわ、教えてあげる……」

「……本当だな?」

「その代わり、一つ条件があるわ」

「条件?それは一体なに?」

 

女が再び剣を構えなおす。

 

「もちろん、私に勝負で勝てたらよ!」

 

走った。

 

「くっ!?」

 

すんでのところで振り下ろされた剣を受け止める。

 

「甘い!」

 

腕を蹴り上げられ、胴ががら空きになってしまった。

 

「もらった!」

「させるかよ!」

 

女は攻撃をやめ、代わりに突如切りかかったアシュレイに向かって剣を振る。

火花を散らしたのは一瞬。

女が素早く距離を取り、アシュレイを睨み付けた。

 

「……何の真似かしら?」

「1対1とは聞いていない。卑怯とは……言わないよな?」

「……いいわ。雑魚がいくら集まったところで無意味だってことを分からせてあげる!」

 

その言葉にアシュレイがニヤリと笑う。

アシュレイの足下から黒い炎が一気に噴き上がった。

 

「じゃあ、遠慮なく行かせてもらう」

 

炎が止み、中から黒髪の男が現れる。

 

「……へぇ。どんなトリックを使ったか知らないけど、見かけ倒しでやられる私じゃないわよ?」

「言ってろ。行くぞ、ネプ公」

「えぇ……!」

 

女が二人より先に動いた。

掲げた剣を振り下ろす。

二人が左右に分かれるように攻撃を回避する。

追撃の矛先はアシュレイに向いた。

 

「たぁ!」

「フン!」

 

刃が噛み合う。

 

「セイ!」

「見え見えよ!」

 

背後から切りかかったネプテューヌに対し、女は回転切りでアシュレイごとネプテューヌを弾き飛ばす。

 

「おらよ!」

 

アシュレイが炎の弾を女に向けて打ち出す。

弾は女に命中し、爆発した。

 

「フン、こんな炎じゃ私には傷一つ付けられないわよ!」

 

爆発の煙の中からほぼ無傷の女が姿を現した。

どうやら火には強いようだ。

 

「それそれそれそれ!」

 

アシュレイと女が高速で剣を打ち合う。

始めはほぼ互角だったが、だんだんとアシュレイが押し負けていく。

 

「もらった!トリコロールオーダー!」

「ぐ……おおぉ!?」

 

防御の隙間を縫って放たれた強烈な攻撃がアシュレイを捉えた。

吹き飛ばされたアシュレイが地面を転がる。

 

「アッシュ!?」

「他人の心配してる場合?」

 

突如ネプテューヌの背後に現れた女が剣を横薙ぎに振るう。

ネプテューヌはなんとか防いだが、衝撃に耐え切れず、アシュレイと同じ方向に飛ばされてしまった。

 

「どうしたの?大口を叩いていた割には呆気ないわね」

「言うだけのことはあるわね……」

「だからって、降参するつもりはないがな!」

 

アシュレイが立ち上がり、女に向かって走る。

剣を首に巻き付けるように構える。

 

「何度やっても同じ……」

「……フォーム・ツヴァイ!」

「!?」

 

SSSが稼働。

瞬時に薙刀へと形を変える。

予想外のリーチから放たれた一撃が油断していた女に命中し、その衝撃で岩壁へと叩きつけられた。

 

「くっ……やってくれたわね!」

 

怒りの形相を浮かべた女がアシュレイへと迫る。

 

「ネプ公!お前も手伝え!」

「分かったわ!」

 

アシュレイはSSSを剣に戻し、再び女と剣を打ち合う。

だが今回は女の背後にネプテューヌが回り、挟み撃ちの形になっている。

 

「くっ……鬱陶しい……!」

 

前後からのラッシュに対応が追いつかなくなっていく。

 

「フォーム・ドライ!」

「っ!?」

 

アシュレイの剣が瞬時に大鎌へと変形し、女はなんとかその不意打ち気味の攻撃をふせいだ。

 

「ヤァ!」

「しまっ……!?」

 

だがその一瞬の隙をついてネプテューヌが女の剣を弾き、そのまま切り上げでカチ上げ、抜き打ちの構えをとる。

 

「クリティカルブレード!」

 

強烈な斬撃が抜き胴のかたちで女を切り裂く。

 

「……っ!……まだよ!」

 

だがまだ倒れない。

 

「アッシュ!」

「こいつでトドメだ!」

 

アシュレイが鎌をバットのように構え、フルスイングで振り抜いた。

 

「ストームザッパー!」

 

鎌から溢れ出るように大量の風の刃が産まれ、その刃全てが女へと殺到。

防ぎきれず刃の餌食となり、ダメージが限界に達した女が膝を折った。

 

「……っ……ハァ……ハァ……っく!助けがあるとはいえ、この私が負けるなんて……どういう事なの……!?」

「さぁ、約束よ。わたしのことを話してくれるわね」

「たった一度私に膝をつかせた程度で、勝った気にならないでよね!」

「お前がどう言おうと勝ちは勝ち、だろ?」

 

女が歯を強く噛み締める。

 

「こんなの……こんなの認めないわっ!」

 

女が突然飛び上がり、その場から逃げようとする。

 

「待って!」

「っ!逃がすか!」

 

アシュレイの腕が植物に変化し、空中にいる女の左手を蔦で絡め取った。

 

「っ!?触らないで!」

 

だが蔦はいとも容易く女の剣で切られてしまい、そのまま飛び去ってしまう。

 

「ネプ子!追って!」

 

アイエフがそう叫ぶと同時にネプテューヌが光に包まれ、変身を解いてしまう。

 

「あ、あれれ!?」

「ちょっとネプ子、何で変身といてるのよ!」

「ごめんあいちゃん。さっきの戦いでエネルギー切れしたみたい。もう疲れてヘトヘトで無理……」

「ったく肝心な時に……」

「だったら走って追いかけるわよ!」

 

そう言ってネプテューヌ達は女が飛んでいった方角を目指して走り出した。

 

 

……………………

 

 

「……はぁ……ネプテューヌには負けるし、女神化も解けるわで今日は踏んだり蹴ったりだわ……」

 

誰もいない渓谷を黒髪ツインテールの少女が歩く。

 

「まさか、私がネプテューヌに負けるなんて……けど、あれは1対2だったし、きっと1対1なら私の方が……」

「捕まえたー!」

「のわあああぁぁぁああ!?」

 

直後、少女の背後から何者かがしがみついた。

 

「とったどー!」

「な、なに!ちょ、ちょっと!いきなりなんなの!?」

「洗いざらいぜーんぶ話してくれるまで、ぜーったい離さないよー」

「おい、ネプ公。よく見ろ」

 

アシュレイにそう言われ、ネプテューヌがツインテールの少女を離す。

 

「……って、あれ?違う人だ」

「お前、デパートで迷子になった時に間違えて見知らぬ他人に抱きつくタイプの人間だろ」

「ど、どうしてあなたたちがここにいるの!?」

「えーっと、人を探してるんだけど、こっちの方に飛んで来なかった?」

「……空を飛んでるツヤツヤした黒いやつだ。見なかったか?」

「うぅ……なんか嫌な例えね……」

「で?見たのか?」

 

少女はネプテューヌ達が来たのとは反対の方向を指差した。

 

「凄いスピードであっちの方向に飛んでいったわよ。もう追いつくのは無理なんじゃないかしら」

「そっかぁ。せっかくの手がかりだったんだけどなー」

 

ネプテューヌががっくりと肩を落とす。

 

「ところで、あなたはどうしてこんな所に一人で……ってよく見たら傷だらけでボロボロだよ!?」

「……へっ?」

 

少女が素っ頓狂な声を上げた。

 

「確かに、ボロボロだな。切り傷が目立つが……モンスターにでも襲われたか?」

「うわぁ……ひっどい傷……でも安心して!このあたりの悪いモンスターは、わたしたちが退治したから!」

「……あなたたちにやられたんだけどね」

 

俯いた少女の呟きは二人には聞こえていない。

 

「まぁ、このまま放っておくのもなんだしな。コンパに見てもらうか」

「うん、その方がいいよね」

「え?ちょ……いや、その……このくらい大したことないから……」

「だいじょーぶ!ホワイトなことに定評のあるパーティだから、お金なんてとらないよ!」

「いや、そういうことじゃなくて!」

「はぁ……ごちゃごちゃ言わずにお前はコンパの治療を受ければ良いんだよ」

 

そうこう言っているとネプテューヌ達にアイエフとコンパが追いついた。

 

「あー!こんぱー!ちょっとこっち来てー!」

「わたしに何の用ですか、ねぷねぷ?」

「うん。この子……えぇーっと、そうだ。まだ名前聞いてなかったね」

 

ネプテューヌが自己紹介をしていなかった事を思い出した。

 

「わたしネプテューヌ。で、こっちがこんぱで、こっちがあいちゃん。それでこの無愛想なのがアッシュ!」

「やかましい」

「アイエフよ、よろしく」

「で、あなたのお名前は?」

 

少女が口をモゴモゴと動かす。

 

「……え?」

「……ノワールよ」

「へぇ、ノワールって言うんだ。なんか友達がいなさそうな名前だね」

「ぶっ!?」

 

無言でアシュレイがネプテューヌにゲンコツを叩き込んだ。

 

「いたた……冗談だって冗談」

「初対面の人がネプ子のノリについていけるわけないでしょ。コンパ、この子のこと診てあげて」

「はい、任せるです」

 

大きな傷は少なかったため、治療はものの数分で終わった。

 

「ありがとう……えーと……コンパ、だったかしら?あなたは……ネプテューヌのお友達なの?」

「はいです。倒れていたねぷねぷを介抱して以来、ねぷねぷとはふかーい仲ですぅ!」

「……で、話は変わるが、なんであんたはこんなところに一人でいたんだ?」

「それに傷だらけだったわね」

「えっと……その……それは私もよく分からないというか……」

「そ、ソレって……もしかして記憶喪失仲間!?」

 

分からないという単語にネプテューヌが食いつく。

 

「え?あ、そ、そうそう!記憶喪失!」

 

ノワールが急に頭を抱え、あちこちをウロウロと歩き始めた。

 

「あー、思い出せない!きっとモンスターに襲われたせいだわ、どうしよう!?」

「なぁ、アイエフ、どう思う?」

「どうもこうも……」

 

アシュレイとアイエフの二人の顔にはすっかり呆れが浮かんでいる。

 

「記憶喪失じゃ、お家の場所が分からないです。それだと帰れないですね……困ったです」

「うんうん、わかるよ。記憶喪失って本人はなんともないのに、やたらと周りが気を使ったり、同情されたりしていろいろ大変だよね」

 

それに対してネプテューヌとコンパはノワールの記憶喪失を信じているようだ。

 

「ところで、これからノワールさんはどうするです?お家がわからないと、どこに送り届けていいかわからないです」

「……そうだな」

「……試しに教会にでも届けてみる?」

「えぇ!?」

 

ノワールが驚いたポーズのまま固まる。

 

「あんなろくでなしの集まりの中に放り込むのか?逆に危険な気がするぞ」

「そうだ!記憶が戻るまで、わたしたちと一緒にいようよ!」

「……ええっ!?一緒ぉ!?」

「もしかして嫌だった?けど、せっかくの記憶喪失仲間同士なんだし、仲良くしようよ!」

「そうです。その方が教会に任せるより、ずーっと安心です。それに、人数が増えたほうが楽しそうです」

「えーっと……嫌とかそんなんじゃなくて……その……」

「じゃあ決まりー!改めてよろしくね。ノワール!」

「じゃあ、お近付きの印に……」

 

そう言ってアシュレイがノワールの左手を取り……

 

チュ……

 

「……へ?」

 

手の甲にキスをした。

ちなみにまだアシュレイは男のままである。

 

「……アッシュ?……なに今の……?」

「なにって……」

 

アシュレイがあっさりと言い放った。

 

「ただの挨拶だ」

「……きゅう……」

 

突然の出来事にノワールが顔から火を吹いて倒れてしまった。

 

「ラステイションよ、わたしは帰ってきたどー!」

 

「恥ずかしいから突然街中で叫ばないでくれる?」

 

あの後も一悶着あったが、ひとまずネプテューヌたちはラステイションへと戻ってきていた。

 

「…………」

「おい、ノワール」

「ひゃい!?」

「あのなぁ……」

 

すでにアシュレイは女になっているが、さっきからノワールはアシュレイが呼ぶとこんな感じになる。

 

「なんか勘違いしてるみたいだが、挨拶の一環だ。変に意識するな、こっちが迷惑だ」

「う……わかったわよ」

「それでいい、ところでノワール」

「……なによ」

「お前、腹減ってないか?」

「はい?」

 

時刻は7時。

夕飯には良い時間だ。

 

「……まぁ、空いてないこともないわ」

「じゃあ、せっかくだしあそこで飯にするか……」

「?」

 

ラステイションを数十分ほど歩き、目的地にたどり着く。

 

「たっだいまー!しっかりモンスターを退治してきたよー!」

「ほんとか!?助かるよ、これで部品不足に悩まされる心配がなくなるってもんだ」

「報告ついでに飯も食っていくが、構わないよな?」

「あぁ!もちろんだ!」

 

ネプテューヌたちはシアンの母親が切り盛りしている食堂に、クエストの報告ついでに食事を取りに来ていた。

 

「……そういえば、一人増えてる気がするんだが、その子は誰なんだ?」

「交易路で拾ったノワールだ。どうも記憶喪失らしい」

「そうなのか……って、あれ?」

 

シアンが首を傾げる。

 

「……その子、どこかで見たことあるような……あ、あぁ、も、もしかして……ブラックハート様!?」

「ギクッ!?」

「ノワールさんが、ブラックハート様です!?」

「な、なんだってー(棒)」

 

シアンの言葉にコンパが驚く。

ネプテューヌは驚いたフリをしている。

 

「……ネプ公、信じてないなら最初からリアクションするな」

「わ、私がブラックハート……様だなんて、そんなわけないでしょ!私のこれはその……こ、コスプレが好きで……ブラックハート様のコスプレを……」

 

ノワールが慌てて言い訳を並べたてる。

と言ってもかなり苦しい言い訳だが。

 

「あぁ、なんだ。それでブラックハート様そっくりの格好をしてたんだな。あまりにもそっくりだから、てっきり本人かと思ったよ」

「残念ですぅ……ノワールさんが女神さんなら、シアンさんのお願いを聞いてもらえたかもしれないのに……」

「まったく、ノワールったら人騒がせなんだからぁ。けど、普段から女神様のコスプレをしているなんて、ノワールって意外と痛い趣味なんだね!」

「ぶーっ!?」

 

アシュレイがネプテューヌの頭にゲンコツを叩き込んだ。

 

「ねぷっ!?」

「ったく、思ったことをそのまま言うんじゃねーよ」

「それじゃ、シアン。さっきアッシュが言ってたけど、夕飯はここで食べていくわね」

「あぁ、お礼にご馳走してやるよ」

 

 

……………………

 

 

「はむはむはむ……おいしー!シアン、このハンバーグ、すっごく美味しいよ」

「スープも体の芯から暖まって美味しいです」

「うちの母親の自信作なんだ。気に入ってくれて嬉しいよ」

「ほれ、オムライス」

「あれ?」

 

アイエフの目の前に置かれたオムライスを運んできたのはアシュレイだ。

 

「いないと思ったら、あんたなにしてんのよ」

「手伝いだ。味わって食えよ」

「なによ、まるで自分が作ったみたいな言い方ね」

「まるでもなにも、俺が作ったからな」

「え!?」

 

アシュレイの言葉にアイエフが驚く。

 

「……あんた、料理できたの?」

「野宿も多かったからな。これぐらいは出来る」

「これぐらい……ねぇ」

 

アイエフの呟きを聞きながらアシュレイが新しい料理をカウンターに出す。

 

「うげえぇー……誰!?この料理にナス入れたの!絶対アッシュでしょ!」

「ねぷねぷ、もしかしてナスが嫌いなんですか?」

「嫌いってレベルじゃないよー!こんぱこそよくこんなにグニョグニョしたのたべれるね」

「ナスぐらい文句言わずに食えよ……」

 

そう言いながらアシュレイがキッチンから戻ってくる。

ネプテューヌがそこで何かを思いついた。

 

「何か思い出すかもしれないし、このナス、ノワールにあげるー!先輩から後輩へのプレゼントだよ!」

「……えっ」

「ネプ子、子供じゃないんだし、好き嫌い言わず全部食べなさい」

 

そう言ってアイエフが箸でナスを掴み、ネプテューヌの口に押し込もうとする。

 

「むぐっ!あ、あいちゃん……や、やめ……」

「もしかしたら、ナスがきっかけで何か思い出すかもしれないわよ?」

「むぐむぐ……お願……やめっ……」

「楽しそうなこって……」

 

アシュレイがやれやれと肩を竦めながらノワールの隣に座った。

 

「…………」

「ノワール?」

「……もしかして、騒がしいのは苦手ですか?」

「いえ、そんなことはないわ……なんかこういう賑やかな食事って初めてだから、つい」

「そうだったんですか。けど、これからはノワールさんもずーっと一緒ですよー」

「……その件なんだけど、私にあなたたちを手伝わせてくれないかしら?」

「手伝い?」

「おぉー!なになに、ノワールも一緒に戦ってくれんの!?」

 

アイエフからなんとか逃げだしたネプテューヌが話に割って入る。

 

「えぇ。ただであなたたちと一緒にいるのも気が引けるし。それに意外と強いのよ、私」

「確かに、あなたが仲間になってくれると頼もしいわ」

「……え?」

「あの二人のボケにアッシュが乗っかったらわたし一人じゃツッコミきれないしね」

「あぁ……なんとなくわかるわ、それ」

 

こうして、ノワールがパーティに加入することが決定した。

 

「いやぁ、まさかこんな序盤で5人目の仲間とは、幸先調子がいいね!」

「なら、幸先ついでにまた仕事を受けてくれないか?」

 

シアンがカウンターから身を乗り出して話を持ち出す。

 

「今年開催される総合技術博覧会に出展する武器のモニターを頼みたいんだ」

「……あぁ、もうそんな時期か」

「それってなんです?お祭りでもあるんですか?」

「ラステイションでは四年に一度、総合技術博覧会ってのがあって、いろんな会社が決められたジャンルで展示を行う催しがあるんだよ」

「目的は技術交流らしいが、それだけじゃない。出展したモノの中でもっとも優れた展示品には、女神様から直々にトロフィーが贈られるんだ」

「トロフィーが贈られるですか!?スゴイですぅ!」

「でも、目的はそっちじゃないんだろ?」

 

アシュレイの言葉にシアンが力強く頷く。

 

「博覧会で女神様に会って、直談判するつもりだ!」

「なるほどです!それで、シアンさんが博覧会に出展するわけですね」

「あぁ。その為の武器のモニターをお前たちに頼みたいんだ」

「そんなのお安い御用だよ!それで、武器のモニターって何をすればいいの?」

「とにかくこの武器を使って、その感想をフィードバックしてくれればいい」

「なーんだ、今度は意外と簡単そうだね」

「これなら、他のお仕事と一緒にできそうです」

「……なら、アヴニールの仕事を受けてみるのはどうかしら?」

 

不意にノワールが口を開いた。

 

「何言ってるのさ、ノワール!アヴニールは悪いやつなんだよ!そんなのに協力するなんてぜーったい嫌!」

 

ノワールの提案にネプテューヌが激しく反対する。

 

「……いえ、案外いい提案かもしれないわ」

「どういうことですか?あいちゃん」

「中小企業がモンスターのせいで部品や原材料の流通に困っているのなら、きっとそれはアヴニールも一緒のはず」

「もしかしたら受ける仕事の内容によっては、アヴニールが博覧会に何を出展しようとしているかもわかるかもしれないわ」

「……と、いうわけだ。分かったかネプ公」

「うー……ん。でも、なんか釈然としないんだよなー……」

「贅沢言ってないの。わたしだって、アヴニールの為に何かしてあげるのは嫌よ。けど、時には相手を知ることだって大切なのよ」

「ねぷねぷ、今は我慢するです」

「うぅー……ん、こんぱがそう言うなら仕方ないかぁ……」

 

コンパの言葉にネプテューヌが折れた。

 

「おい、わたしは無視かよ」

「……あなたも苦労してるのね」

 

端で一人愚痴るアイエフだった。

 

 

……………………

 

 

「じゃじゃーん、メガネ買っちゃったー。これで私の正体を怪しまれる心配はなくなるわね」

 

ここはシアンの工場の一角にある部屋。

ネプテューヌ達は工場の空き部屋を宿として利用させてもらうことになったのだ。

現在ノワールは買ってきた赤縁のメガネをかけて鏡を覗きそんでいた。

 

「……うん。我ながら良く似合ってるじゃない。これなら完璧に正体を隠せそうね」

 

鏡の前でノワールが様々な角度から自分を見る。

 

「今までメガネってかけたことなかったけど、意外と似合うのね……なんかいかにも出来る女って感じでかっこいいかも。目にも良いって聞くし、デスクワークの時はかけてみようかしら」

 

そこでノワールがふと思いついた。

 

「そうだ。ネプテューヌにも見せてあげ……って、何普通に馴染みはじめてるのよ私は!」

 

ベッドに座り込み、溜め息を吐く。

 

「今のままじゃダメね。敵であるネプテューヌと馴れ合うなんて……」

「ノワール!一緒にプリン食べよー!」

「ひゃう!?」

 

扉が勢いよく開き、ネプテューヌが顔を出す。

 

「あれ?もしかして驚かせちゃった?ごめんごめん」

「……もしかして、今の聞いてない?」

「今の?今のって何?」

「それなら、気にしないで。ちょっと恥ずかしい独り言だから」

「きーにーなーるー!」

 

そう言いながらネプテューヌがノワールに近付いていく。

 

「うわー!なんだろう、ノワールのちょっと恥ずかしい独り言って!もしかして、作詞作曲自分のオリジナルソングを歌ってたりしてたとか!?」

「馬鹿なこと言わないで!誰がそんな痛いことするもんですか!……それよりも、私に用があったんじゃないの?」

「あ、そうだった。はい、これ」

 

ネプテューヌがノワールにビニール袋を手渡した。

中にはプリンが入っている。

 

「……何よ、これ」

「プリンだよ。とっても美味しいんだよ!」

「いや、それは見ればわかるわ」

「えっとね、シアンからプリンもらったから一緒に食べよ!」

「いやよ。あなた一人で食べればいいじゃない?」

「わたしはノワールと一緒に食・べ・た・い・な?なんちゃってー!」

 

ノワールが思わず溜め息を吐いた。

 

「あのね、私はこんな時間まであなたに付き合ってあげるほどお人好しじゃないの」

 

そう言ってノワールがネプテューヌの脇を通り抜ける。

 

「……あれ、ノワールどっかいくの?」

「散歩よ。一人になりたいの」

 

ノワールが工場の外へと出て行く。

足音は二人分。

 

「……で、どうしてあなたがついてきて

るのよ。言ったでしょ、一人になりたいって」

 

ノワールの横には平然とネプテューヌが付いて来ていた。

 

「いやぁ、記憶喪失のノワールが一人夜道を歩くとなるといろいろ心配でさー。親心ってやつ?」

「誰が私の親よ!」

「何やってんだお前ら……」

「アッシュ!シアン!」

 

二人が振り返ると、そこにはしかめっ面のアシュレイと苦笑いを浮かべたシアンが立っていた。

 

「相変わらず仲がいいな。けど、夜はあんまり騒ぎすぎるなよ?」

「ちょっとネプテューヌ!あなたのせいで怒られたじゃないの!」

「あははは、ごめんね、シアン。うちのノワールが迷惑かけちゃって」

「誰がうちのノワールよ、誰が!」

「迷惑かけてんのはどう見てもネプ公だろうが。後ノワールうっせえ」

「ところで、二人はこんな時間にどうしたの?」

 

ネプテューヌがアシュレイとシアンが一緒にいることに疑問を持ったようだ。

 

「知り合いの町工場連中との会合だよ。博覧会に向けて技術交換をしてきたんだ。小さな町工場でもアヴニールより優れた技術を持っている奴らはたくさんいるからな」

「みんなで協力して良い物作って女神サマに会おう、って作戦だそうだ」

「しかも、潰れてしまった工場の奴らも力を貸してくれるだとよ」

「まさに総力戦ってやつだね!」

「今回の博覧会にラステイションの未来がかかっているといっても過言じゃないからな。だから、お前らにも期待しているんだ。しっかり頼むぜ」

「大船に乗ったつもりで任せてよ!ねぇ、ノワール!」

「その船がドロ細工じゃないことを祈るばかりだな」

 

 

……………………

 

 

「はぁ……疲れた」

 

あの後、ノワールはプリンを食べようとしつこく誘ってくるネプテューヌをなんとか振り切り、自室に戻ってきていた。

不意にノックの音が響く。

 

「お客さん?空いてるわよ?」

 

ノックの音がしっかり三回鳴ったことから訪問者がネプテューヌではないことを悟ったノワールは客人を招き入れた。

 

「よう、ノワール」

「アッシュ、どうしたの?」

「世間話でもと思ってな」

 

部屋に入ったアシュレイが近くの壁にもたれかかる。

 

「どうだ?怪我の具合は?」

「そうね、かなり良くなったわ」

「戦闘をするのはいいが、あんまり暴れるなよ。傷が開いて困るのは俺たちだ」

「言われなくてもそれくらいわかってるわよ」

「ならいい。記憶の方はどうだ?」

「そっちは全然ね」

「そうか……」

 

一瞬の空白の後、アシュレイが切り出した。

 

「ところで『ブラックハート』サマ?」

「なにかし……あ……」

 

ノワールがしまったと呟き、それに対してアシュレイはしてやったりといった顔だ。

 

「……いつから気付いていたの?」

「最初からだ。凶暴なモンスターが出る渓谷に一般人が近付くかよ」

「そんなのわからないじゃない」

「ああ。だから確認させてもらった」

「……確認?」

 

アシュレイが自分の左手を指差す。

つられてノワールも自分の左手を見る。

 

「目を凝らしてよく見てみな」

 

そう言われてノワールが自分の左手に顔を近付けて注意深く観察する。

 

「……!……なにこれ……」

「気がついたようだな」

「……いつやったの?」

「蔦だ」

 

ノワールの左手には怪しいところはなかった。

だが怪しい『匂い』はあった。

ノワールの左手には、アシュレイがマーキング用に使っている香水が付着していた。

あの襲ってきた女が逃げる時に巻きつけた蔦に塗っていたのだ。

そしてそれをキスの時に確認した。

 

「……私は変身してる時に名乗ってないわよ」

「俺はラステイションの出身だ。自分の国の女神くらい覚えてる」

「……私をどうするつもり?」

「別にどうもしねぇよ」

「ネプテューヌの仲間じゃないの?」

「シアンの話、ちゃんと聞いてたのか?あいつはまだお前を信用している。知り合いの心の支えをへし折るほど俺は悪人じゃない」

「……そう」

「アヴニールのせいでシェアが落ちてるからって短気を起こすな。お前を頼らなくちゃならない奴らはまだちゃんといる」

「…………」

 

アシュレイが頭を掻きながらドアノブに手を掛ける。

 

「……なっちまったものは、もうどうにもならない……どんなに泣き喚いたって……時間は戻らないんだ」

 

顔だけで振り返る。

 

「大事なのは、これから何をするか……だろ?」

 

ノワールは俯いたままだ。

 

「あいつらにはお前の事を話さないでおいてやるよ。自分がやるべきことを、しっかり考えるんだな」

 

そう言ってアシュレイはノワールの部屋を出ていった。

 

「私が……やるべきこと……」

 

誰もいない部屋でノワールは一人呟いた。

 

「…………」

 

その頃、アシュレイも自分が割り当てられた部屋に帰ってきていた。

 

「けっ……」

 

投げ出すようにベッドに倒れこむ。

 

「何が『これから何をするか』だ……」

 

震えるほど拳を握り込む。

 

「過去に振り回されてるのは……俺の方だってのによ」

 

鏡に映る灰色の髪の少女を見ながら、アシュレイは眠りについた。

 





はい、アッシュ君の意味深な台詞で幕となった第5話でした。
真意が明かされるのはもう少し先の話。
どうしてオリジナルの主人公って家事スキルが高くなる傾向があるんでしょうね。特に料理。
オリキャラにおいてチート、無敵、そして万能が嫌いな私はオリキャラを作る時には必ず弱点、欠点、トラウマなどを用意するようにしています。
弱さがあるからこそ、それを埋めようと強くなる訳で。単純な戦力としての強さだけの話じゃなく。
弱さがあるからこそ、それを支えてくれる仲間が輝くというものです。
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