超次元ゲイムネプテューヌ:リバース・リ・バース   作:ひきがねコート@pixiv名アスラ

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第7話 卑劣な罠

 

「さて、今日もアヴニールの仕事を受けるわよ。準備はいい?」

 

朝、アイエフたちはネプテューヌの部屋に集まっていた。

 

「えぇ、ばっちりよ。ネプテューヌはどう?」

「もちろんわたしもオールオッケーだよ!」

「ノワールさんとねぷねぷ、なんだかとっても仲良しです」

 

あの夜からネプテューヌとノワールの仲は見違えるほど良くなっていた。

 

「べ、別にネプテューヌとなんてなんともないわよ」

「またまた〜、ノワールったら照れちゃってー」

 

ネプテューヌとノワールがそんな漫才をやっていると、部屋にシアンが入ってきた。

 

「おっ!お前ら、ここにいたか!」

「シアン?何の用だ?」

「いきなりで悪いが、またお前らに武器のテストを頼まれてほしいんだ」

「ってことは、パワーアップがおわったってこと!?」

「昨日の今日なのに随分と早いのね」

「あぁ。お前らからのフィードバックを受けたら興奮しちまって、気づいたら朝だったんだ」

「お前なぁ……」

 

なんでもないといった風に言い放つシアンにアシュレイが思わずため息を吐く。

 

「頼むから博覧会の前にぶっ倒れるなよ?」

「わかってるよ。じゃあこれ、アヴニールの仕事のついでていいから頼むよ」

「えぇ、いいわよ」

「じゃあ、頼んだぜ」

 

ネプテューヌがシアンから改良されたらしい武器を預かった。

 

「さて、それじゃあそろそろ行くか」

「気をつけてな」

 

シアンに見送られ、工場を後にする。

しばらく歩き、待ち合わせの場所に到着した。

 

「そんなわけで、またまたアヴニールの仕事を受けることになったねぷ子さん御一行は、街外れにある廃工場にやってきたのでした!」

「そんなこと見ればわかるだろ」

「はぁ……相変わらずあなたは気楽でいいわね」

「記憶喪失だって、人生何事も楽しんだもの勝ちだよ!」

「たまにあなたの脳天気さが羨ましくなるわ……それにしても、こんな廃工場の前に呼び出して、何を考えているのかしら」

 

そんなことを話していると、背後から現れたガナッシュがネプテューヌたちと合流する。

 

「お久しぶりですみなさん。今日もお仕事の内容の説明で来ました」

「おっひさー!お仕事いつも大変だね、休みとかないんでしょー?」

「そんなに忙しそうに見えますか?ここのところ、週半分は休日なんですけどねぇ」

「一週間の半分が休みなんて羨ましいです」

「……あらかた、ほとんどの施設がフルオートメーションでやることがないのが本音だろ?」

「えぇ。おかげで楽をさせてもらっています。さて、本題の説明に参りましょうか」

 

ガナッシュがネプテューヌたちの前に出て、廃工場を背に立った。

 

「この施設なんですが、見た目以上に年数が経ってまして、実はもう廃棄された施設なんです……」

「それで、そのいらなくなった施設で何をすればいいわけ?」

「実は施設を引き上げる際に、必要な資材の一部が取り残されたままになっているんです。今回はその資材の回収をお願いしたいのです」

「それだけ?なんだ、今回は簡単そうだね」

 

ネプテューヌはそう言ったが、もちろんそんな簡単な仕事ではなく、ガナッシュの話は続く。

 

「しかし、困ったことにいつの間にかモンスターが棲みついてしまい、回収が困難になってしまったんです」

「なるほど。だからそこでわたしたちが必要になったってわけね。それで、その回収しなきゃいけない資材ってのはなんなの?話を聞く限り、かなり重要なものみたいだけど?」

「とある鉱石……そうですね、我が社では“ラステライト”と呼んでいる鉱石です。」

 

どうやらそのラステライトなる鉱石が今回回収する資材のようだ。

 

「たった1グラムでゲーム機を1万年も動かせる常軌を逸したエネルギーを秘めた鉱石なのですが、最近はモンスターの増加も影響して採掘量が下がってきていまして、我が社では少しでも数を揃えたいと考えているんです」

「……ねぇ、ラステイションにそんな凄い鉱石あったかしら?」

「俺は初めて聞いた」

「私も初耳ね……」

「わたしも。そんな凄い鉱石があるなら、わたしが知らないはずがないんだけど……」

「それは当然です」

 

3人の会話にガナッシュが割り込む。

 

「その鉱石とはここ数年で発見され、我が社が採掘を独占しているんです。その存在も、社のため公にはしていません」

「ねえねえ、そんなにすごい鉱石ならさ、お仕事が終わった後にちょっとだけくれないかな?」

「こら、ネプ子。何馬鹿言ってるのよ」

「だってあいちゃん。1グラムで1万年もゲーム機を動かせるんだよ。携帯ゲーム機に使えば、いつでもどこでも電池の残量を気にせず遊べるんだよ!ACアダプターの呪縛からの解放だよ!」

 

どうやらネプテューヌはそのラステライトが欲しいようだ。

そんな凄い鉱石を分けてもらえるわけはない。

 

「欲しいのでしたら分けて差し上げますよ」

 

だがガナッシュの口から発せられた言葉はアシュレイたちの予想を裏切った。

 

「ほんと!?」

「はい。前回のあなた方の働きにより、当初のスケジュール通り工事に着工できましし、この鉱石のことを秘密にするという約束さえしていただけるのでしたら差し上げましょう」

「わーい!アヴニールってあんまりいい印象なかったけど、ガナッシュのおかげで株が上昇中だよ!」

「それは嬉しいですね……さて、時間ももったいないですし、さっそくお願いします」

「うん、大船に乗ったつもりでこのねぷ子さんに任せなさーい!」

「今にも沈みそうな大船ね……さ、行きましょ」

 

アイエフの声にネプテューヌたちは廃工場の入り口へと足を向ける。

途中、アシュレイがノワールに話しかけた。

 

「……ノワール、これは……」

「……そうね、かなり怪しいわ」

「どうする?」

「……とりあえず様子見ね。下手に動いてシアンたちのことがバレるとまずいわ」

「……わかった」

 

ネプテューヌたちはとうとう廃工場へと足を踏み入れる。

廃工場を見渡していると、不意に背後の扉が轟音をたてて閉まった。

 

「なにっ!?」

「っ……やられた!」

「なんでいきなり入り口が閉じちゃうの!ちょっとガナッシュ!変な冗談やめてくれる!?」

「いやぁ、すいません。手違いで閉まっちゃいました……と言うのではなく、単純にこちらの都合です」

 

扉の向こうのガナッシュが本性を表した。

 

「あなたたちには、この中でモンスターたちの餌食になっていただきます」

「そ、それは一体どういうことです!?」

「ちょっと!なんで!どうしてさ!そんなことするんじゃ、取ってきてあげないよ!」

「……この状況でどうしてそう間の抜けた発想に繋がるんでしょうねぇ」

「……ラステライトなんてものはこの世には存在しない作り話……だろ?」

「そのとおりです」

 

次にガナッシュが言わんとした言葉をアシュレイが先に言う。

 

「あなたの目的は何!?」

「あなたたちがパッセとかいう町工場の協力者であることはわかっています。大方、我が社の仕事を受けることで博覧会の出展物に探りを入れ、あわよくば妨害するのが目的だったのでしょう?」

「あいちゃん、全部バレバレだよ!?」

「まさか……バレているなんて……」

「我が社の勝利は間違いありませんが、何があるかわかりませんからね。障害となりうる芽は早いうちに摘みとっておきたいわけですよ。それでは、時間が惜しいので私はここで」

 

そう言うとガナッシュの足音が扉から遠ざかっていった。

 

「待ちなさい!ガナッシュ!」

「チッ……」

 

アシュレイが乱暴に扉を蹴りつける。

もちろんそれしきでは扉はビクともしない。

 

「これはもうダメね。ご丁寧にしっかりとロックされてるわ」

「そうだ!ねぇアッシュ。この扉、アッシュの魔法で溶かせないかな?」

「……この扉は耐熱合金で作られてるみたいだけど……いけそう?」

「……ものは試しだ」

 

アシュレイの手の平に魔法陣が出現。

バーナーのように火炎が噴射される。

 

「……厳しいみたいね」

 

だが扉を赤く染めるだけで溶かすまでは至らない。

 

「……これ以上は時間の無駄だな」

「えー、もうちょっと続けようよ!……そうだ!変身したらいけるんじゃない?」

「……それで無理なら諦めろ」

 

そういってアシュレイの足下から黒い炎がゆっくりと吹き上がる……が。

 

「っ!?ゲホッ!ゲホッ!……う……ぐ……」

「アッシュ!?」

 

炎が包む前に突然アシュレイが大きく咳き込み、その場に膝をつく。

炎も同時に消え失せた。

 

「アッシュさん、大丈夫ですか!?」

「いったい何が起きたの!?」

「わからん……くそ……頭が痛い……全身が、焼けてるみたいだ……!」

「うわわわわ!アッシュも大変だけどこっちも大変なことにー!?」

 

ネプテューヌの言葉に全員が顔を上げる。

すると大量のモンスターがこちらに押し寄せてきているのが確認できた。

 

「くそっ……!こんな時に限って……」

「アッシュさん!動いちゃダメです!」

「コンパ!アッシュをお願い!ネプ子!ノワール!ここはわたしたちでなんとかするわよ!」

「了解!」

「言われなくてもそのつもりよ!」

 

アイエフの指示にネプテューヌとノワールが動いた。

 

 

……………………

 

 

「やぁ!」

 

ネプテューヌがモンスターにトドメを刺す。

数は確実に減っているが、如何せん物量が半端じゃない。

ネプテューヌたちはいつ終わるとも知れない戦いを続けていた。

 

「もうっ!数が多すぎるの……っよ!」

 

突進してきた敵をすれ違いざまにカタールで切り裂き、飛びかかってきたもう一体をハイキックで迎撃する。

 

「アヴニールが……モンスターを集めた線は!?」

「たった数日でこの数を集めるのは……っ無理があるわ!」

 

ノワールとアイエフが背中合わせになり、群がるモンスターを確実に減らしていく。

 

「もーう!倒しても倒しても切りが無いよー!無限リポップはんたーい!」

 

疲れで動きが鈍ったネプテューヌにモンスターが攻撃を仕掛けた。

ネプテューヌはそれに反応できない。

 

「やば……」

 

攻撃が当たる直前に魔法陣が展開し、攻撃を受け止める。

直後、ネプテューヌの後方から飛んできたナイフが攻撃を仕掛けてきたモンスターに突き刺さった。

 

「まったく……ハァ……世話が焼ける……!」

「アッシュ!?もう大丈夫なの!?」

「俺だけ休んでるわけには……っ……いかないだろ……」

 

そうは言ったが、アシュレイは今だ息も絶え絶え。

足元はふらつき、剣すらまともに構えられない。

 

「アッシュ……」

「ネプ公……みんなに伝えて欲しいことがある」

「伝えて欲しいこと?」

 

一方、アイエフとノワールは群がるモンスターを粗方倒し終え、再び別れてモンスターを処理していた。

 

「あいちゃーん!ノワールー!」

「……ネプテューヌ?」

 

そこにネプテューヌの声が響く。

 

「もしかしてなんだけど、こんなにモンスターの数が多いのって、近くにエネミーディスクがあるからじゃないかなー!?」

「っ!そうか!エネミーディスクよ!」

「なによ、そのエネミーディスクって!」

 

敵を切りつけながらノワールが質問を投げかけた。

 

「モンスターの発生原因よ!見つけたら破壊して!」

「ディスク……もしかしてあれのこと!?」

 

ノワールの視線の先には、廃工場に似つかわしくないディスクが壁に設置されていた。

 

「それよ!……これ使って!」

 

そういってアイエフが地面に落ちていたアシュレイのナイフをノワールに向けて蹴り飛ばす。

ノワールはそれを受け取り、すぐさまディスクに向かって全力で投げた。

ナイフはまっすぐに目標に向かって飛んでいき、ディスクに命中。

ディスクの破壊に成功した。

 

「やった!」

「これでもうモンスターが増えることはない筈よ!」

「そうと決まれば頑張っちゃうよー!」

「これだけ広い工場……どこかに出口がある筈だ……邪魔な敵だけ蹴散らして進め!」

 

エネミーディスクを破壊し、モンスターの供給がなくなったため、ネプテューヌ達は破竹の勢いで廃工場内を突き進む。

 

「……おかしい」

「アッシュ?どうしたの?」

 

モンスターを倒しながら進む中、違和感を口にしたアシュレイにネプテューヌが振り向かずに応える。

 

「ディスクの先に進んでいるのに敵の数がそれほど減っていない……」

「そうなの?」

「……お前に言っても無駄だった」

 

あの数のモンスターが押し寄せてきたのにも関わらず、波はあるが相変わらずモンスターは立ち塞がる。

そのことをアシュレイが疑問に思っていると、先行していたノワールが声を上げた。

 

「ねぇ!ちょっと来てくれない?」

「ノワールから呼ぶなんて珍しいね。どうかしたの?」

 

四人がノワールの方へ近づく。

敵の姿はない。

どうやら敵は打ち止めとなったようだ。

 

「これ、さっきのディスクと同じ物じゃないかしら?」

 

そういってノワールが指をさした先には、たしかにエネミーディスクが備え付けられていた。

 

「……嘘でしょ。同じ場所に二枚もあるなんて……」

「はうぅ……どうりでモンスターさんが減らないわけですね……」

「放置は出来ないな……今すぐ破壊……」

 

そこまで言ったところで突然ディスクが光りだしてしまった。

光は拡散し、モンスターとなる。

 

「くっ……一歩遅かったわね……」

「出てきたんだったら倒すだけだよ!」

「……俺も……戦う」

 

アシュレイが四人の前に出て剣を構えた。

 

「アッシュ!?いいから無理しないで下がりなさい!」

「体は動く。武器も持てる。なら戦うしかないだろ……」

 

そうは言うがアシュレイの顔は青く、まだまだ本調子とはいかない。

 

「……わかったわよ。ただし、わたしたちが下がれって言ったら大人しく下がるのよ。わかった?」

「どうだかな……行くぞ」

 

アシュレイがモンスターに向かって走る。

攻撃を飛んで回避し、着地ざまに振り下ろした剣がモンスターを切り裂いた。

 

「っ……ぐ……!?」

 

右手に回り込んだ敵の一撃を咄嗟に防ぐが、踏ん張りが効かず、よろめいてしまう。

そこに別の敵からの追撃。

 

「せやぁ!」

「はぁ!」

 

だがそれはネプテューヌとノワールの連携攻撃によって妨げられた。

 

「アッシュさん、無理しちゃ駄目です!」

「コンパの言うとおりよ」

「……ネプ公、ノワール。頼みたいことがある」

「……なによ」

「今すぐエネミーディスクを破壊してほしい」

「今すぐ?」

 

ノワールの言葉にアシュレイが無言で頷く。

 

「エネミーディスクを破壊した時、体から気だるさが抜けていく感覚があった。アレを破壊すれば……」

「オッケー!行くよノワール!」

「わかってるわよ!」

 

二人がエネミーディスクへと走り、そうはさせまいと襲いかかるモンスターにアイエフたち三人が立ち塞がった。

 

「通すわけないでしょ!カオスエッジ!」

 

アイエフが勢いのまま飛び込んできた敵を蹴り上げ、カタールの刃を頭上から叩き落とす。

 

「やー!」

 

コンパも抱えた巨大注射器をモンスターに振り下ろす。

針が突き刺さる勢いでピストンが作動し、中の薬品が打ち込まれた。

 

「どけどけー!ネプ子様のお通りだー!」

 

ネプテューヌが手にした剣を振り回しながらディスクに向かって一直線に駆け抜ける。

 

「くっ……敵の数が多すぎて近づけない……!」

 

だがディスクからは今だモンスターを吹き出し続けており、ディスクまで10メートルのところで二の足を踏んでしまう。

 

「ノワール!」

 

ネプテューヌが手元で剣の峰と刃をひっくり返し、頭の上で構える。

次に取るべき行動を素早く察知したノワールが跳んだ。

 

「いっけー!」

 

ノワールの足がネプテューヌの剣の峰に触れた瞬間に剣が真っ直ぐ振り下ろされ、投石機の要領でノワールが打ち出される。

 

「はぁぁぁああ!」

 

そしてその勢いのまま繰り出されたノワールの一撃がディスクを粉々に打ち砕いた。

 

「やったー!……けど喜んでる場合じゃないー!?」

 

ディスクの破壊には成功したが、モンスターそのものが消えることはない。

現在ネプテューヌとノワールはそれぞれ大量の敵に囲まれている状態だ。

 

「ノワール!伏せろ!」

 

反射的にノワールがその場にしゃがみ込む。

直後、轟音が響く。

 

「……これで借りは返したぞ」

 

そこには黒い炎の残滓を引き連れたアシュレイが、ネプテューヌを小脇に抱えて立っていた。

 

「いやー助かったよ。ありがとアッシュ!」

「はいはい……」

 

呆れた顔をしながらネプテューヌを下ろし、再び敵を見据える。

 

「さて、こっちの借りもしっかり返させてもらう」

 

アシュレイが走った。

 

「おらおら!」

 

手にした剣で最寄りの敵を切り捨てて行く。

 

「フォーム・ツヴァイ!」

 

突きの動きと同時に剣を薙刀に変形させ、モンスターの胴体を貫く。

 

「ぬぁぁぁああ!」

 

そのまま薙刀をハンマー投げのように振り回し、多数の敵を巻き込み一塊にする。

 

「……しゃあ!」

 

その塊を空中にかち上げる。

 

「ボルケイノ・インパクト!」

 

頭上に開いた魔法陣から火炎弾を打ち出し、塊を爆散させた。

 

「……さて、次はどいつだ?」

 

薙刀を剣に戻したそれを担ぎながらアシュレイが呟く。

本調子となったアシュレイにネプテューヌたち四人が加われば、いかに数が多かろうと障害とはなりえなかった。

 

「こいつで最後!」

 

アイエフが残った最後の一体にトドメを刺す。

その敵も他のモンスターと同じように光を散らしながら消えた。

 

「……終わったか……」

「主人公が雑魚敵に負ける道理なんてないっしょ!」

「ま、それもそうね。じゃあ、さっさと脱出しましょ」

「そういえばアッシュ、この壁って溶かせそう?」

「ああ、多分な」

 

そう言ってアシュレイが人差し指の先から細いレーザーのような光を作り、その光を廃工場の壁に押し当てる。

火花を散らす壁に大きな円をえがき、その円を蹴り飛ばす。

円のそのままの形で壁をくり抜くことに成功した。

 

「ようやくこれで外に出られるわね」

「というわけで早速このとおりぬけなんちゃらを通っちゃうよー!」

 

まずネプテューヌが穴を通り抜け、残りの四人も後に続く。

 

「久しぶりの外だー!」

「やっぱり、おひさまの下は暖かくて気持ちいいですねー」

 

実際の時間はそれほど経っていないが、廃工場の中で密度の高い時間を過ごした五人をラステイションの空が出迎えた。

 

「んー……」

「…………」

「二人とも、さっきから黙ってるけど、どうしたの?」

 

日の光にはしゃぐネプテューヌとコンパを尻目にアイエフとアシュレイの二人は浮かない顔をしている。

 

「……うん、今更だけどちょっとガナッシュの狙いが気になって」

「私たちを閉じ込めたこと?」

「えぇ。本当に目的はわたしたちを始末することだけだったのかしら?」

「始末するだけなら、あの廃工場ごと爆破するなりもっと確実な方法があった筈だ」

 

エネミーディスクが二枚もあの廃工場に設置されていたことも不自然だと付け足す。

 

「単なる偶然?それとも……」

「あいちゃんたら心配性だなー。いくらなんでも深読みしすぎじゃないかな」

「お前は浅はかすぎるんだよ」

「無事出られたんだからそれでいいじゃん!今日はもうお仕事なんてやめにして、シアンのところに戻ろーよ!」

 

そのネプテューヌの言葉を聞いた途端、アイエフとアシュレイの顔色が急変した。

 

「マズイわ、シアンも危ない!」

「……あいちゃん、どういうことです?」

「あいつが言っていたことを思い出して。あいつはわたしたちのことだけじゃなくて、シアンやシアンの工場のことも知っていたわ!わたしたちだけじゃなく、シアンも狙われる可能性があるってことよ!」

「なんですと!急いで戻らないと!」

「……舐めやがって!」

 

アシュレイが踵を返し、走り出す。

 

「待って!」

 

それを引き止めたのはノワール。

 

「〜〜っ!なんだよ!?」

「お願い、私も……連れていって!」

「はぁ!?」

「無理は承知よ。でも私は……!」

 

アシュレイが自分の頭を力任せにガリガリと引っ掻く。

そして背負った剣をノワールに投げて渡した。

 

「それもって掴まれ!早く!」

「……ありがとう!」

 

ノワールが剣を背負い、背後からアシュレイの首に腕を回す。

 

「乗り心地は保証しない!舌噛んでも知らねぇからな!」

「わかってるわよ!」

 

それを聞くと、アシュレイの脚が動き出す。

人を背負っているとは思えない速度で二人はラステイションの街へ消えていった。

 

「いっちゃったです……」

「ネプ子も変身して先にいって!わたしたちは後から追いつくから!」

「了解!」

 

ネプテューヌが光に包まれ、変身したネプテューヌが宙に浮き上がる。

 

「いってくるわ。あいちゃんたちも気をつけて!」

 

それだけいってネプテューヌもアシュレイたちの後を追った。

 

「わたしたちも急ぐです!」

「ええ!」

 

アイエフがシアンの工場の方角から煙が上がっているのを発見したのはネプテューヌが見えなくなった直後のことだった。

 





はい、アッシュ君が謎の不調に見舞われる第7話でした。
今回の話は渋の方だとこちらの次回第8話を合わせたものが第7話として投稿されていますが、そのままだとあんまりにも長くて読み辛いだろうという事で二分割して新たにサブタイトルを付けました。
流石に16000字は詰め込み過ぎですね。今の私なら迷わず前後編に分割していたでしょう。
渋の方で既に前後編に分かれている話も、今回同様に新しいサブタイトルを添えて1話とさせて頂く予定です。
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