近頃、ダンジョンでは竜咳が流行っているそうです。 作:ハムウィック
見事、獅子猿を完膚無きまでにギッタギタにした狼!
這々の体で逃げ出した猿はとりあえず放置。芳しい花の香りを辿り、変若水の流れ込む獅子猿の洞を探索し始めたのだった。
■ 第2話! 足元はよいか!鉤縄があれば大丈夫でニンニン
獅子猿の洞は、奥へ奥へと続いていた。
進むにつれて暗さは増し、糞尿や屍肉の腐敗した悪臭が立ち込めていたが、そこはシリーズ最優と名高き熟達の忍び。いとかぐわしき香花の匂いを見失うことはなく、段差に引っかかることもなく、確かな歩みで痕跡を辿っていた。
洞道の脇にはいくつか部屋らしきものがあり、刀や兜、形代、風魔手裏剣といった、返り討ちにされたであろう人間共の形見が山積みにされている。獅子猿は、どうやらその永い生を持て余し、いそいそと洞の改築に勤しんでいたようだ。
(獅子猿め、畜生の分際で、人間の猿真似か。菩薩谷の子猿共が小癪にも石火矢(銃)を扱っていたこともある。妙なこともあるものよ)
道中の銭袋を回収しながら探索していると、一際大きな部屋にでた。風向きの変化を感じたため、足元をみると、吹き抜けのように大きな洞穴が真下に向かって続き、変若水が流れこんでいる。
空気の質がまるっきり変化しており、先とは異なる洞のようだ。
その洞穴を挟んだ向こう側には、一際大きな銭袋が3つほどおちている。
(まぁ、猿共が多少賢くなろうと、使命に何の支障もない。為すべきことを為すまでだ。)
穴の向こう側の銭袋を回収すべく、鉤縄を繰り出し空中へ躍り出た狼。
真下には、底の見えない穴が口を開けている。
ふと、頭上に気配を感じた狼が見上げると、
(む、不覚ーーー)
そこには何かを大きく振りかぶる獅子猿の姿が。
狼は懐かしい悪臭に包まれながら穴へ叩き落とされーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ーーーをとった。)
生暖かい悪臭を放ちながら、せせらぎの音で意識が目覚めた狼。
既に瀕死の状態であり、指一本動かすことすらままならない。
明滅する視界の中、鬼仏の影を見出した。
狼は道中の辛酸と、苦しげな仏師殿の表情を天秤にかけー
ーーーーーーーーーー回生ーーーーーーーーーーー
奥歯に仕込んだ薬を噛み砕き、最低限の負荷で即死しつつ、即座に回生。
スライディングで鬼仏に飛び込み、鬼仏見出しを遂行。
なんとかこのエリアでのセーブに成功する。
危機を脱し、眉間の皺をほぐしながらふと辺りを見渡すと、全く見覚えのない風景が広がっていた。先ほどまで洞の中にいたというのに、辺りは木が鬱蒼と生い茂っている。木の葉の合間より、かすかに木漏れ日が見えることから、既に洞の外に出てしまっているのかもしれない。植生も葦名のものではない、見たこともないものばかり。
(どこだ、ここは…あれから、大分流されてしまったようだ。先の洞窟の奥に、このような森が広がっていようとは。香花の匂いも見失ってしまった。ひとまず、辺りを探索するべし)
先ほど倒れていた場所にあった水流から、微かに変若水の香りがした。よく分からないことは大抵変若水のせい。従って、水流を辿っていけば、何らかの手がかりが掴めるだろう。狼はそう考えた。
しばらく歩いていると、森の先にある池から女性達の声が聞こえた。
(近辺の集落の女衆か。何か手がかりを得られればよいが…)
熟達の隠キャたる狼からすれば、川や池でキャッキャしてる女性ほど近づき難いものはない。悟らぬ陽キャに祟りなし。決してバレぬよう祈りながら、月隠れの飴をなめなめして気配を消す。木の陰に隠れ、耳に手を当て盗聴を開始した。
「(…ねぇティオネ。なんか臭くない?)」
「(…確かに。あんまり言いたくないけど、ガレスが出た後のトイレみたいな臭いがするわ…)」
「(だよねぇ。たぶん、あそこのほとりの木が怪しいと思う)」
「のぞき?殺すわ。」
狼は難なく鉤縄で離脱しようとしたが、相手は人外たる第一級冒険者。膂力は赤鬼を優に凌駕し、速度は色鯉を遥かに上回る。ティオネの拳は盾にしようとしていた木の幹を抵抗なく破砕し、驚愕で目を見開いた狼の顔面に迫る。
ここでクイズです。狼は熟達の忍びですが、犬に何度か噛まれれば死に、プロレスラーにバックドロップを仕掛けられれば即死します。即ち、衝撃への耐久性に関しては、狼は常人の域を逸脱しておりません。そんな狼に対して、ギャグ補正が付与されつつも、恩恵を受けた前提でのマヂ殴りがぶちまけられたら、狼はどうなってしまうの?
「ま、待ってくれえい!
ーーーーーーーーーー死ーーーーーーーーーーーー
よかったね狼ちゃん!友達ができたょ!
竜咳が蔓延するほど時間がたってしまい申し訳ありませんでした。拙いものですが、取り急ぎご提出まで。