ラブライブリスタートシリーズ エンジェルパーティータイム 作:しゅみタロス
鍋パーティーから数日後
ジュンヤの自宅にて
カタカタカタカタカタカタカタカタ
集「今回も良い素材を用意してくれたな、巧に感謝しないとな」
一人、機材の置かれた部屋で手慣れた手つきで動画の編集作業を行う集は机に置かれたチョコバーを口に咥えて複数のカメラの映像を繋ぎ合わせていく。
集「曲名はアウト・エデン、あいつらしい曲名だな。それならもっとセンスを中二にしても良いだろう、腕の見せ所だな」
編集作業のその一方では……
ジュンヤ達のいる一階のリビング
ジュンヤ「♪~」
曜「ズーーーーーン」
明らかな空気感の違い、その場に居合わせた果南とアラタ、仁乃介、ルビィはただ空気に馴染もうと必死だった。
ジュンヤ「まあまあ、元気出しなよ。気持ちは分かるけどこれは二人の問題だからね」
優しげだが少し舞い上がってるジュンヤはメンバーの前に紅茶とラスクを用意した。
果南「あの時の会話、全部聞いてたんだね」
曜「私、どうしたらいいんだろう。どう考えても陸君が否定しちゃうのは間違いだよ……」
アラタ「困ったな、当の本人があの性格だから余計じれったいっていうか……」
ジュンヤ「さっきからこの話題でルビィちゃんが石になってるからそろそろやめようか」
ルビィ「ピギピギピギピギピギピギピギ」
空気を読んだジュンヤのおかげで無事に戻りました。
その後、集は3本の動画の編集を終え、梨子とゲームを楽しんでいた。
集 ガキンガキン「やはり動きを変えてきたか」
梨子 ガキンガキン「負けないんだから!!」
アーケード版ゲキトツロボッツによるランキングバトルに挑む二人は素早い手つきでコントローラーを連打する。だが梨子は集を甘く見ていた。
集「見事と言いたいが、その攻撃パターンはすでに読んだ!!」
コントローラーを変則的に操り、梨子の読めない攻撃パターンを繰り出す。
梨子「嘘……対応されてる!!」
まるで操作パターンを切り崩すような戦術で立て直せないままゲームエンドに持っていかれた。
愕然とする梨子はリプレイを見ると完全に詰んでいたのは自分だったと自覚する。
集「なぜ勝てないか教えてあげよう、人は慣れない事を無理にやろうとすると自分のスキルを無暗に圧迫するからだ。そもそも君はゲームジャンルにスキルが当てはまってない、スクールアイドルやピアノが本来のスキルだ、ゲームスキルを満たしている僕に勝つのは叶わぬ妄想だと思ってくれ」
その言葉に梨子は本来の自分が何なのかを思い出したが飲み込むことが出来なかった。あの時犯した失敗と失ってしまった自分のやりたい事を……
梨子「ごめん、私はもう、戻れない……」
そう一言言い残して鞄を持って梨子はゲーセンから走り去っていった。
集は彼女に何か裏を感じつつ、自販機で買ったドクペのプルタブを開けた。
一方帰った梨子は部屋の中でただ泣く事しか出来なかった。
梨子「諦めたはずなのに、なんで蒸し返してきたんだろう。忘れたかったのに、どうして、怖い、怖いよ……」
かつての自分を思い出し、ただ怯える事しか出来なかった。
その頃集は自宅でPCを開き、あるワードを検索する。
集「桜内梨子 ピアノ」
すると集はある事件の記事を目にした。
集「音ノ木坂女生徒暴力事件?」
そこには集が知らなかった、梨子の過去が書き綴られていた。
梨子はかつてピアノコンクールに出場し、優勝しているがそれを妬んだピア二ストの音ノ木坂の生徒に暴力を受けた。
プロ入りも有望だったために梨子の背負った苦しみは計り知れず、ピアノをやめる大きな要因にもなっている事を知った。
集「これが足枷か」
集はドクペの缶を開けて呟いた。
集「相乗りも悪くないかな、彼女を蝕む悪魔とね」
そして集が動き出す事になった。
翌日 ファミレスでは……
陸「ステージ演習も様になって来たな、この調子なら大丈夫そうだな」
カメラを置き、メロンクリームソーダのアイスを頬張る。
だが千歌は不穏な話を引き出す。
千歌「そう言えば今日の練習、梨子ちゃんが風邪でお休みなんだけど大丈夫かなあ」
陸「何?梨子が風邪って縁起なさすぎるだろ。まあ、本人が作曲で体調崩すのは分かるけど風邪は無いんじゃないか?」
千歌「どうしちゃったんだろう?本当に風邪なのかな?」
すると陸のスマホからラインの通知が来た。集からである。
陸「千歌、ちょっと向かう場所が出来た。行くぞ」
千歌「ちょっと、急にどこ行くの?」
陸「ジュンヤの家だ、千歌が必要だってさ」
何も分からず、戸惑ってる千歌の腕を掴み、ジュンヤの家へと向かうのだった。
ジュンヤの家に着き、リビングの扉の前へやって来たがそこには難しい顔でジュンヤが待っていた。
千歌「何があったの?」
ジュンヤ「梨子ちゃんの件でね、とりあえず余り刺激しないように頼む。凄く不安定な状態だから」
その言葉に千歌は薄々嫌な予感を感じていた。千歌と陸は扉を開けてリビングへと足を踏み入れた。
そこには虚ろな瞳の梨子が集と一緒にいた。
千歌「梨子……ちゃん……」
集「すまない、この通りカウンセリングの真っ最中だ。二人にも聞いてもらうべきだと思ってね」
陸「梨子、何があったんだ?」
梨子「私、最初から必要なかった。求められて無かった。逃げたい……ピアノも、スクールアイドルも……」
千歌「何があったの?」
集「これが大まかな原因だ、この事件のトラウマから現実逃避していたらしいが遂に限界を迎えた」
新聞記事のコピーを見せると千歌は身体を震わせた。
千歌「酷い、こんなの無いよ……」
記事には梨子が生徒から受けた暴力と暴言が綴られていた。梨子は記事を手にして涙ながらに自分の気持ちを千歌に伝えた。
梨子「こんな、私が……音楽を続けていていいのかな?私は嫌われてる、私がもし音楽を続けていたら、皆に迷惑かもしれない、私はただ、千歌ちゃんや皆に私みたいな辛い事に遭わせたくないの……私は……」
集「天才は皆怖いさ」
すると集は梨子に寄り添い語り始めた。
集「持っている才能が故に、周りの凡人とはスケールが合わない。それ故に周りの凡人は自分より優れた人間に悪意を持つのは当然だ。だがそれは言い換えれば才能を持とうとしない弱者のハッタリだ、粋がるだけで勝ったつもりの小物に僕は興味ないね」
集は梨子の頭を撫でて、話を続ける。
集「人間の才能は得体の知れない悪魔だ、だがそれは時として相乗りすればいい方にも悪い方にも転ぶ、まさにジョーカー。またその過程で罪も生まれる。僕の場合の罪は、自分以外の人と関わる事が臆病な事かな。そこで君に問いたい。君の罪が何なのか」
集は梨子に指をさして言った。
集「さあ、お前の罪を数えろ!!」
梨子「私の、罪は……」
記憶を巡らせ、梨子は一つの罪を答えた。
梨子「自分の才能を捨てて、逃げた事……」
集は満足したように梨子を慰めた
集「それがわかればいい。自分の存在に悲観していたら先に進めない、それに……」
集は梨子の前に千歌を誘い伝えた。
集「千歌は君を見捨てない、受け入れてくれる。そうだろう?」
千歌「梨子ちゃん、私は梨子ちゃんが必要だと思う、皆とスクールアイドルをやりたい!!梨子ちゃんは、どうかな?」
梨子「やりたい、千歌ちゃんと皆で!!」
苦しみを乗り越えた梨子は晴れて自分のやりたい事を取り戻した。
その様子を陸と共に眺めつつ、集は陸に伝えた。
集「これからが楽しみだが、陸も早く自分に気が付いた方が良いぞ」
陸「何の話だ?」
集「いや、なんでもない」
しゅみタロス「梨子ちゃんパート終了、次回よりルビィちゃんパートです。どうもありがとうございました。」