がんばれアイバー:俺がハンターになった理由   作:姉の犬

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(全略)


Season2: 問題てんこ盛り
06_Ep. for A New Hope


 Aババアってアーティスト、知ってるか? そいつらの代表曲の1つが超印象的でさあ。そのサビで(カネ)(カネ)だと連呼していてな。聴き終わると持たざる者の悲哀をぶつけられたみてーな気持ち悪い不快感が残るんだ。

 と言っても、この話それ自体にたいした意味はない。ただ1つ、俺が言いたいのは――。

 

 北方の「天空闘技場」は、金を呼ぶ!

 

 ○

 

 いやあ、現実は強敵でしたね。

 呆けていた意識を取り戻すのに時間がかかったが、気を持ち直してしまえばどうってことない。

 というか、冷静に考えると下山は必然である。何故かって、俺の命は残り3年ちょっとなのだ。修行ライフが楽しすぎて無意識に問題を先送りにしていたので、こうして――半ば追い出される形であっても――出立できて良かったのかもしれない。

 

 こうなれば、俺は俺の人生を末永く謳歌するため、自慢のネン・ジツでもってキチガイめいた爺さんを爆発四散させるのみである。

 もちろん、そのための手掛かりはある。それは、この世界に来た直後にゴミ山でヤツが言っていた情報だ。「ラサマの遺跡」――俺はその場所を目指すのみである。

 

 となれば、即断即決即行動。俺は街の図書館と公共用パソコンで遺跡について調べ、その情報を得た。百科事典で簡単に。電脳ページ先生で一発で。あの爺さんのこと、遺跡についての情報を得るまでには相当な苦難があると踏んでいたのだが。あまりにも……あっけなさ……すぎる……。

 そうして手にした情報によると、なんと件の遺跡には邪神が眠っているらしい。何かのギャグかと思ったが、念使いだの魔獣だのが跋扈するこの世界を見るに、神の1柱や2柱いてもまあ不思議ではないなと考え直す。

 

 興味深い事実として、実際に邪神とやらの存在を仄めかすかのような事件が頻発したそうだ。遺跡の発掘に携わった者、踏み入った者を筆頭に、関係者が次々と不審な死を遂げているのだとか。そのせいで遺跡の場所は隠匿され、一般に公開されず、現在では完全に封鎖されているらしい。

 ここまで知った俺は肩を落としたが、続く情報に光を見出した。

 現在ラサマの遺跡はとあるNPOが厳重に管理しており、この団体を通して遺跡に立ち入ることが可能なのである。

 当然、タダとはいかず条件があったが、今後の青写真を描くには十分だ。

 

 ついでだから触れておくと、条件は2つ。1つは、遺跡ハンターを含む2名のハンターから推薦を受けること。もう1つが、管理団体への億単位での資金寄付である。

 もちろん入場に際して細かな規則があるんだろうが、そこへ漕ぎ付けるにはこの2つの条件をこなさなければならない。

 

 ハンターの推薦とやらは師匠の知己を当てにするとして――師匠自体は一介のご隠居だが、長生きしてる分そういった交友関係も広いらしい。師匠パネエ――問題は寄付金の方である。何が億単位だ。非営利団体が聞いて呆れるぜ。

 と、愚痴っても始まらない。

 俺は巨額の寄付金を手早く稼ぐ方法はないか、と社会不適合者よろしく邪な思考に耽った――まさにそのときである。偶然か運命か、はたまた爺さんの気まぐれか。俺は通りがかった家電屋の店頭にあるテレビから最適な方法を見つけることになった。

 

 大型の液晶に映し出されるのは、正方形のリングを中央に据えた会場。、周囲の観客による歓声や怒号をコーラスに、リング上でむさ苦しいおっさん2人が殴り合っている。

 店の前の少年に訊ねれば、どうやら天空闘技場とかいう場所の試合を放送してるらしい。試合によってはチケット1枚10万は下らない、という話まで聞けば、ファイトマネーについての想像もつく。

 天空闘技場――絶好のカモである。150階クラスとかいう試合でこの内容。楽勝である。

 闘志を燃やして決意を固める俺の脇で、少年が泡吹いて倒れた。そんなに刺激の強い試合ではないのだが。

 

 満足する成果を得ることができ、さらに夜も更けてきたこともあり、俺はこの日の活動を終えることにした。そして路銀が無いことに気付き、昔日のゴミ山滞在初日以来の野宿をした。

 冬の公園の冷たさに、目から汗が垂れた。

 

 ○

 

 またとない稼ぎ場を見つけた翌日。

 スズメさん達の鳴き声で起床した俺は、コケ子を思い出して郷愁に浸った。しかし、人間にとって爽やかに感じられるスズメさんたちの声も、彼らにとってば縄張り争いの咆哮なわけで。闘わなければ生き残れないのだ。生きねば。

 幸いにも、俺には進むべき道が見えている。天空闘技場、そこで無双して儲けに儲けてやるのだ。

 そうして意気揚々と闘技場の場所を調べた俺だが――。

 

(めっちゃ遠いやんけ。大陸からして違うもん)

 

 鼻水垂らした。癇癪起こして暴れなかっただけ自分を褒めてやりたいくらいの衝撃だった。

 何をそんなに驚いたかって? 分かった、説明しよう。

 いいかい、まず大陸が違うだろ? 陸路はないから、海路か空路で行くことになるだろ? この両方は生身じゃ渡れないだろ? ということは乗り物を利用するわけだ。船とか飛行船とかな。

 

 そこで問題だ。

 この無一文の状態でどうやって乗船するか?

 3択――1つだけ選びなさい。

 答え1、クールなアイバーは突如乗船のアイデアが閃く。

 答え2、師匠が来て助けてくれる。

 答え3、乗船できない。世界はいつだってこんなはずじゃあないことばかりである。

 正解は察してくれ。

 

 それから必死に考えた。そして結論した。

 ――俺には金はない。でもな、小金を稼ぐことはできる。労働!

 働いて交通費を得る。地道な策である。しかし確実な方法である。

 幸い、例の回復チートアイテムであるイヤマ豆の隠された効果により、腹は常に満たされた心地で栄養状態は良好。十日程度は食事の必要はない。加えて、この近辺は公共水道が整備されていて飲み水にも困らない。

 つまり腰を据えての活動が可能! このプランに弱点はない。勝ったな、行水してくる。

 

 俺は役場の悲劇を繰り返さないよう、身分証明の必要なさそうな日雇いの仕事を探した。街の隅々まで目を皿にして情報を探し、そして見つけた求人元で即不採用を告げられた。面接を開始した時点で、泣きながらの「お引取り下さい、命だけは……」である。

 それが1件だけならまだしも、その後受けた悉くが同じ反応を見せた。中にはその場で金を差し出すやつもいたが、それを受け取るほど腐ってない。不義を働いてはいけないって、ししょーが言ってた。同じ理由と自己防衛の観点から、怪しい仕事もノータッチである。

 

 それにしても、おかしい。師匠の指導のおかげで一般常識は具えているし、軽い練による体力アピールやしっかり合わせた目線のおかげで労働意欲は伝わっているはずだが。原因は自省で探るほかないが、それを浮き彫りにするアプローチは不明である。学生の就活の苦しみが分かったような気がする。

 

 この悪戦苦闘というか戦闘すらできない一方的な敗戦は続いた。

 そして2日後。収集できる求人情報の全てに落ちたところで、問題は解決した。

 

 その日、ハオズ市内の空港にて不採用をくらった俺は公園への帰路につこうとしていた。

 意気消沈して今後のプランを練る中、ふと視線を向けた滑走路の片隅。そこには、一般のそれとは別に用意された飛行船があった。本当に、たまたま目にしただけだった。普通なら、そのまま横目に流して終わっただろう。

 

 しかし、俺に電流走る。

 ――圧倒的閃き!

 それほどの閃光、光が、俺の脳を刺した。

 ――閃く! この土壇場で!

 目的地へ至る画期的奇手っ!

 

(そうだ、ヒッチハイクしよう)

 

 件の飛行船は船体に特別な意匠が施され、乗組員も空港の制服ではないフォーマルな服装。タラップに向かう紳士の身なりも見るだに上品な装いだ。神父だか牧師だかの服――カセ? カソ? なんといったか――にロングコートと丸眼鏡が似合うナイスミドルだった。人と場の雰囲気から、自家用の船であることは確定的に明らかである。

 師匠との組手で鍛えた脚力を遺憾なく発揮して男の傍へ接近した俺は、その後無事に交渉を終えて乗船を果たした。紳士は予定していた行き先を天空闘技場近くの私有地に変更してくれるなど、菩薩もかくやという親切さだった。世の中捨てたもんじゃないな。

 

 気分も良いので一つ言っておこう。3択クイズの答えは1だ。

 

 ○

 

 着いた。粉みかん。

 それなりに日数がかかったが、飛行船は無事に件の私有地へ着陸した。数回の燃料補給もあったので本当に着くのか不安になったりもしたが、これで人心地つける。勿論だが、下船時に手短な謝辞は述べた。

 

 私有地から出て狭い通りに出れば、その上空には天高くまで聳える塔が目に入る。あれこそが目的地である天空闘技場だ。格闘のメッカとか呼ばれているらしいが、俺にとっては中身の詰まった貯金箱である。稼ぐぜぇ、超稼ぐぜぇ。

 話に聞くには、闘技場へ行って選手登録をし、最初の試合で入場者のレベルを判定するまでが最初の流れらしい。つまり初戦は適正の階数を見極める試験ってわけだ。油断はしない方がいいだろう。

 

 さて、内容の把握は完璧。問題は、闘技場までの道が分からないってところだ。

 ここら一帯は、経済の要――天空闘技場を中心とした街作りがされているのだから、案内の看板くらいあって然るべきだと思うが、それがない。

 遠くから聞こえる音を頼りに大通りへ出ることができれば解決するのだが。あいにく道が迷路じみた入り組み方をしていて苦労しそうである。指標を闘技場の塔に変えたところで同様だ。ここの行政には地図を掲示するなり区画整理に務めるなりしてほしい。京都を見習え。異世界だから見習えねーけど。

 

 などと思いつつ何か手掛かりがないかと辺りを見回すと、道の脇にぽつんと駐車されたスポーツカーが目に入った。

 いや、正直に、そして厳密にいうとその脇に立つ少女が気になった。というのも、彼女の格好が異様なのだ。

 腰まで伸びた亜麻色の髪、手脚を長手袋とオーバーニーソックスで包み、スポーツタイプのサングラスを着用している点は一般的なファッションの範疇だった。バニーガールがしているようなウサ耳カチューシャも多めに見よう。

 

 が、決定的に異常なのは、袖なしヘソ出しの改造セーラー服を着込み、もうそれベルトだよねとツッコミたくなる丈のスカートを身に付けている点だった。そのスカートともいえない布の奥で、Tフロントにも勝る腰紐オーバーハングな布地極少の下着が自己主張している。

 つまり痴女である。というか、少女だから痴少女である。とても素晴ら――けしからん。おまわりさんこっちです。

 

 ……いかん。こんなに観察したら変態の仲間入りをしてしまう。いや、たしかに大変な変態と言われたことがあるけど、それとは別のベクトルの話なので非常に不味い。

 

 気を取り直して、俺が彼女に興味を持った一番の要素に触れよう。(そう、一番の要素だ。決して外見に惹かれたわけではない。決してな)

 驚くなかれ。たしかに少女は扇情的な服を身に着けていたが、同時にその体にオーラを纏っていたのである。垂れ流しではない。

 そして、指先から延びるそれは文字に成形されて文を成していた。「会場はこちら」と。会場とは言葉のとおり、天空闘技場における入場者のレベル判定を行う場のことだろう。

 

 つまりこれの意味するところは1つ。彼女は闘技場から派遣された「使える」やつを専門とする案内人ということだ。さすがは名高き天空闘技場である、こんな所から登録選手をふるいにかけようとは。

 先方の思惑はどうあれ、楽して会場に行きたいと思っていた俺には渡りに船である。

 俺は一も二もなく飛びついた。

 レッツゴー・アイバー!

 

 ●

 

 寂れた洋館。窓も無く、唯一の扉さえ閉ざされたままの一室に、その男は居た。

 暗中に妖しく煌くのは、燭台の灯によって照らされた金糸の髪。腰布1つ着けたきりの逞しく美しい肉体は完成された彫像を思わせ、端整な相貌と併せて男女を等しく惑わせる色香を放っている。

 館の主たる彼の、その精悍な瞳は分厚い学術書へ向けられていた。

 部屋は男の息遣いさえ霞んで静謐に染まり、時間は緩やかに流れる。絵画から抜け出た様な情景は、まるで清澄なる聖域さながらの。

 

 ふと男は手元の本を閉じ、部屋の書棚へと戻した。

 そうして数秒の後、凪いだ水面に小石を投じるが如くの、されど控えめな音が室内に響く。それは部屋のドアがノックされた事を示し、脳髄まで蕩けさせる程に甘い声色が返れば、その受け手は入室を果たした。

 

「お寛ぎ中に失礼致します。先程、神父から連絡が入りました。どうやら『鍵』と接触したようです」

 

 褐色の肌をした男であった。遠目には優男に映るが、袖にベルトをあしらった白いボレロジャケット―――その下の露出した躰を見れば、その身が強靭且つしなやかに絞られた物であると知れる。

 対面するなり跪き、顔を隠す程の白い長髪を垂らしての報告。その態度には並々ならぬ敬意と熱意が込められていた。館の主を蠱惑的と形容するのであれば、こちらの男は狂信的といえよう。

 

「霊峰から下りたか。それで、動向は」

「天空闘技場を目的としている様ですが、今あの地というのであれば或いは……」

「成程、面白い」

「手出し無用との事でしたので、監視するだけに留めております。如何致しましょう」

 

 伺う男の言葉に、主は少しの思案の後で口を開いた。

 

「一当てしておくとしよう。タイミングは任せる。往けるな?」

 

 下知は為された。承知する男の、漆黒の瞳が静かに燃えた。




NEXT TARGET
 急ぅに忙しくなっちゃってwww

 あたふた旅支度をしてるところに、可愛い子ちゃんが強者を求めて待ち受けていた

 実は天空闘技場からの差し金で、念を使えるやつを案内しにきやがったのさ(多分)

 この()が使うのが念装砲っていうプリティーマシーンでねぇ

 でも3機で主人をサポートしやがったよ

 くそー、こうなったら奴らの主人にブチ込んでやる

 次回『スピィド』でまた会おうぜ
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