「「「…………っ」」」
『『『『『お帰りなさいませ魔王様!!』』』』』
「ようこそ、まおうの魔王城に」
ヤンデレラ城に酷似した城。
中に入ると、ホテルのフロントみたいな内装でお出迎えされた。
「すっげえー……魔王ってこんなんなのか……」
「魔王の定義は定かでは無いよ。魔法の王を魔王と呼べば、魔剣の王もいる。魔王はたくさんいるんだ、まおうの場合は……」
「魔族の王、といったところか?」
先輩が継ぐ。
なるほど、『魔』って名前に付いてるものの王であれば誰でも魔王になれるのか。
「その通りなんだよ。まおうは魔王。戦う力は無いけれど、魔族を従え、知恵と工夫で生きてきた王さ」
「深いなあ……」
「【暁の天剣】に討伐されたのは『魔力』の王だったね。魔王の中で一番魔力を持ってて、魔物を生み出せたり、魔剣を作ったりできたんだけど……どれもが魔力頼りだから、本職には遠く及ばない。でも良い魔王だったよ」
「悲しく無いんですか?同業者が殺されて」
「魔王と勇者は表裏一体。魔王という生き物は、勇者に殺されてなんぼなんだよ。それに、殺される覚悟もなしに王なんてやれないんだよ」
「深いなぁ……!」
まおうはてくてくと歩くと、重厚な扉の前に立った。
「さて、応接室で情報交換といこうか。向こうの世界がどんなのか、気になるんだよ」
まおうが手を触れた瞬間、俺の背よりも高い扉が簡単に開いた。
◇
暇だ。
先輩が主に喋っているのだが、その間俺たちがとんでもなく暇なのだ。
「先輩、あっち向いてホイやりましょーよ」
「もうソレ5回目だから。割り箸、しりとり、あっち向いてホイのループ5回目だから」
「ふふふ。異世界には面白い遊びがあるね。遊びならコッチにもあるんだよ。一度休憩を挟むかい?」
「あぁ、そうだな。いい情報をもらった。少し休憩にしよう」
「「やったー」」
そうだね、と言いながら大きな板を抱えるまおう。
外見が子供なだけに運びづらそうだったので持ってあげると微笑まれた。
手伝いする子供を見守る母親かよ。
「ありがとう。これはね、コッチの戦略ゲームだよ。聴いた限りだとそっちの世界のチェスに似てるかもね」
魔王が板を開く。
白と黒のチェック模様で、コマもチェスみたいだ。
「はい説明書」
「ありがとうございます……え、進化とかできんの」
「その場合はこの最弱のコマを……」
「ルール覚えたー!」
「えはっや」
その先も、遥がたまたま持って来ていたUZOで遊んだりして。
時間は、あっという間に過ぎて行った。
俺たちは最初に来た場所……魔法陣が繋がった場所に来ていた。
リュックに詰まった草やら何やらで先輩が青臭いのは……気のせいにしておこう。
「ちゃんと帰れるかい?」
「はい。多分……」
「私は帰れなくても構わないが……」
「スニーカーズが食べたい気分です」
「ハルカがな。わがままですまん」
「欲望に忠実なのはいいことなんだよ」
やっぱり丸を綺麗に書くのは難しいな……とは言えど、形にはなった。
魔法陣の中心に手を触れる。俺たちのいた穂織を思い浮かべながら。
魔法陣から淡い光が漏れる。
これは、多分……。
「繋がったみたいです」
「それは良かったんだよ。気をつけて帰るんだよ?」
「ああ。次に来るときは、またこちらの世界の物を持って来よう」
「嬉しいんだよ。この……ウゾ?も貰ってしまったし、なにかお礼がしたいんだけど……」
「最初に会った時の食事代として受け取ってくれ。……といってもまだ足りないだろうから他のを持ってくる。気にする事はない」
ご飯食べたから魔力はたくさんある。
トークの間、魔法陣を繋げ続けることなど造作もないやい。
「……ありがとう」
「また何かあったら頼む。……魔王様?」
「うん。それじゃ……」
「ああ。しばらくお別れだ」
先輩が魔法陣に乗る。
さぁて、転移転移。
「行きます」
「頼む。飛ばしてくれ!」
笑顔で手を振るまおうを最後に、俺の、俺たちの意識は光に包まれた。
なお、先輩は最後まで猫耳だった。
◇
「耳がない!耳が無いぞお!」
「えー!部長可愛かったのにー!」
「周りの視線は集まるし感覚は鋭敏になるしで大変だったんだぞ!」
あの尻尾、確かに椅子とか座りずらそうだったなぁ……。
ともあれ、ちゃんと部室に来れた。
辺りはもう暗くなり始めており、既に窓から見える空の半分が暗闇に包まれていた。
「ふむ……異世界との時間の誤差があるのか?あっちではまだ夕方になり始めていた頃だが」
「転移のショックで気絶して、今気がついたって可能性もありますよ!」
「なるほど。……謎は深まるばかりだ」
そんな謎深まらなくて良いです。異世界ってのはそんな深く考えるもんじゃないんだよ。
「まぁ、ちゃんと帰れたことだし、今日の部活はこれまで」
「「お疲れ様でした!」」
「解散!」
大きく伸びをする。
なんだかどっと疲れた……。
「先輩、先輩!帰りにサーティートゥー行きましょうよ」
「高えし遠い。あとお前スニーカーズ食べたいんじゃ無かったのか」
「サーティートゥー食べてからなんです!」
「太るぞ」
「魔術使えば消費されますもーん」
そんなどうでもいい会話をしながら、俺たちは帰路につく。
先輩と別れ、遥におごらされ。
入部したばかりだけど、はちゃめちゃな事があったなぁ……。
異世界に行くなんて、おとぎ話でもあるまいに。
「ただいまー」
明日もまた、なにかが起こるのだろう。少し楽しみかもしれない。
靴を脱ぎ、リビングの扉を開ける。
そしたら、視界が青に染まって。
「僕は悪いスライムじゃないよ!」
「は」
To Be Continued…→