「……あ、こんにちは」
先輩に送られた地図には、ひっそりとした神秘的な結婚式会場があった。
一応結婚式に招かれたということで制服で来たのだが……目の前の綺麗な女性は誰だ?
長い金髪を下ろし、薄い黄色を主調としたドレスを着ている。
「あ、はい、こんにちは……」
「え?急にどうしたんですか?」
「え?」
「いやですから、急に敬語なんてどうしたんですかって」
へぇ?
初対面だよね、この人?
あ、でも、声は聞き覚えあるかも。
「やあカケルくん。時間ピッタリだな」
「あ、先輩」
黒退先輩だ。
黒退先輩は女性と同じような漆黒のドレスで、なんか……女王感がすごい。
「あの先輩、この人は……」
「お?ハルカ、よく似合ってるじゃないか」
「ありがとうございます!」
遥ぁ!?
「え、あ、遥!?」
「ようやく気づいてもらえました!そうですよ、遥です」
「いや、気づかねえよこれは……口調まで変わってるじゃんか!」
「その場の雰囲気でちょっとノっちゃいました」
「……馬子にも衣装ってこの事だったんだなぁ」
詠唱しようとする遥の口を塞ぎつつ、先輩の方を見る。
「花婿と花嫁さんは?」
「あぁ、そうだった、連れてきたんだった。今紹介するよ」
先輩の後ろから二人の男女が出てくる。
男の方は深い緑色の髪に、翡翠色の瞳と白い瞳のオッドアイ。
白いタキシードがめちゃくちゃ似合っているイケメンだ。
女のほうは髪の毛が白い。白髪って事じゃなくて、白い色をした髪なのだろう。
真紅の瞳が美しい。背は大分低い。もしかしたら遥より小さいかも。
やたら自分が着ているドレスを見ているが、なにかあるのだろうか?
「
「名前は
「ゆ、
唯さんめっちゃ喋りづらそうだけど。
しばらくぷるぷるしていた唯さんは急に楽さんに泣きついた。
「アーーーッ!!やっぱり無理なのじゃ!普通の喋り方難しいのじゃああああああ!!」
……のじゃ?
「えー……とっ?」
「『うえでぃんぐどれす』とやらも!憧れはあったが慣れないのじゃ!いつもの和服のほうが落ち着くのじゃぁ!」
あぁ……この人は和服をメインに着てるのか。
いやいつの時代だよ。
「はいはい。頑張ったな、ゆいー」
「む〜〜〜///」
楽さんが唯さんの頭を撫で撫でしている。
仲の良い夫婦だこと。
と、楽さんの後ろに女の人が現れた。
「兄さん、そろそろ式が」
「わかった。それじゃあそろそろ式が始まるから、俺たちはもういくね。式、楽しんでいってよ」
「あ、はい。ご結婚おめでとうございます」
「ございまーす!」
「はは、どうも。それじゃ」
二人が消えていく。
ふうん。あの二人、めっちゃ髪色派手だな。
どっちも地毛っぽいけど……かくいう俺も茶色だし、遥なんか金色だし、まぁ気にすることでもないか。
俺はポケットに手を突っ込み、アクリルキーホルダーを握る。
「で、どうだ?なんかありそうか」
『勇者の匂いがぷんぷんするぷる。ついさっきまで近くにいたぷる』
「黒退先輩か?』
『その人も勇者っぽい匂いだけど、勇者のとは違うぷる。もしかしたらすれ違いになってしまったのかもぷる……』
スライム曰く、ある一定の位まで経験を積んだモンスターは、アクリルキーホルダーみたいに変化することができるらしい。
ぽふんと白煙に包まれたスライムは、デフォルメされた絵の描かれたアクリルキーホルダーになっていた。
今はポケットに入っていて、勇者を捜索している。
『視界が通らないのが難点ぷる』
「しょうがないだろ。結婚式の場にキーホルダー引っ提げて参加するわけにもいかないんだから」
『ぷるぷるぷる……』
アクリルキーホルダー状態になると、握れば意思の疎通ができる。
尚、スライムの言葉は俺以外には届かない。これも魔法かなにかなのか。
とまあ、捜索はほどほどにして、結婚式が進んでいく。
先輩は亡霊が出るって言ってたが、もちろん亡霊は夜に出るのだろう。
何気なく式を眺めていると、新郎新婦がバージンロードを歩き始めた頃だろうか、向こうから声が聞こえた。
黒退先輩と……誰だ?女子高生?
「うむ、良い挨拶だ。君が、話に聴いている空良……でいいかな?」
「は、はい!空良です!」
そら?
どっかで聴いた気がする……。
空良と呼ばれた女は隣の男に何かを伝えようとしていた。
隣の男は腰についていたライオンみたいなアクリルキーホルダーをポケットに移して……。
あ、今なら人の目ないじゃん。
スライムのアクリルキーホルダーを腰に付け、その場で一回転してスライムに辺りを見渡させる。
「どうだ?」とばかりに触れてみると。
『勇者ぷる……』
「はぁ?」
『勇者ぷる───っ!!』
勝手に変化を解き、新郎に襲い掛かろうとしやがった!!
俺が手を伸ばそうとしても、もう遅い。
新郎はスライムに気付かないまま───!!
「……ノート」
さっきの男のポケットから、小さい光が飛び出る。
小さい光は勢いそのままにスライムを押し貫くと、そのまま風に煽られてスライムごとすっ飛んでいった。
なんだ……今の……。
あの男……何者だ?