ガタッ。
ここは……教室?
居眠りをしていたのか?教会にいたのに?夢?
もう夕方じゃないか。
「んはぁっ!?」
「…………」
どうやら違うみたいだ。
同じ教室で遥が飛び起きたのを……そしてその鼻にティッシュが詰まってるのをみると、どうやら昨晩のは夢では無いらしい。
ってことは、先輩は……。
「おはよう諸君」
「先輩!大丈夫だったんですか!」
「大丈夫、とは?」
「え、だって、昨日、あれ……」
怪しげな男が、先輩に、それで、女が、俺に……。
記憶は思い出せば思い出そうとするほど曖昧になり、ほつれて、ほどけて、何も無くなっていく。
「……なにか、悪い夢でも見ていたんじゃないか」
「そう、なんですかね……そうだ、【降霊術】」
「【降霊術】?」
「女が、俺に与えたんです。コピーがなんかって言って……」
「なんですか、なんですかソレかっこいい!」
先輩は夕日を浴びながらこちらに近づき、俺の額に手を当てた。
「少々手荒だが……我慢してくれ」
轟、と先輩の周りの空気が渦巻く。
俺の体から何かが引っこ抜かれるような感覚、そしてそれは先輩の方へ。
先輩は瞑目したまま引っこ抜かれたそれを受け入れると、カッと目を見開いた。
「なるほど……これは……素晴らしい術だ……」
先輩は右手を払う。
すると、教室の窓際に知らない女の子が現れた。
きょろきょろと辺りを見渡したり、目を擦ったり、現場が理解できていない様子だ。
「彼女は過去、ここで何者かに襲われて死んでしまったらしい」
「「!?」」
「【降霊術】……その名の通り霊を顕現させる術らしい。まだまだできることはありそうだが……顕現させた霊の、生前一時間の様子も見ることができるようだな」
「お、俺にそんな術が……!?」
あの女は一体何者……?
っていうか、この力はコピーって言ってたから、【降霊術】のコピー元があるはずなんだ。
誰だか知らないけど、この力で何をさせようってんだ。
だって、与える側にはなんのメリットもない。
正義のヒーロー面してるんならあり得なくもないけど、どう見てもそんな感じはしなかった。
「さて、と」
「あ、本題ですか?説明するだけなら、霊を呼ばなくても良かったですもんね!」
「まぁ……実験的な意味も兼ねていたが、もう一つ理由があるのは確かだな。遥、5ポイント」
「やった!」
何に使えるかわからないポイントが遥に与えられつつ、先輩は改めて霊を見やる。
霊は夕日を眺めていた。
見惚れている……のとは違う。悲しんでいる……?
「まずは、哀れな霊を救うとしようか」
「……。どうやって?」
「簡単なことさ。霊を呼び起こすのが【降霊術】なら、その術にも起源───『何のために作られた術か』という理由があるはずだ。それを突き止めるために、まずは彼女を救わせてもらおう。やり方は簡単さ」
先輩は霊に近づく。
本やドラマではすり抜けるはずの先輩のその手は、たしかに霊の肩へ置かれた。
霊の肩がびくりと震える。
「こんにちは。私は万術部の部長、黒退という」
その間、遥は会話に混ぜてもらえなくて少しむくれていた。