万術部とボッキー
「ボッキーゲームしましょう!」
部室で本を読んでいると、急に遥がお菓子を持ち出した。
「ボッキーゲーム?なんだそれは」
「部長、今日は何日だかわかりますか?」
「ええと、11月の11日……それがなにか?」
「これです!」
先輩はボッキーの日を知らないのか。
遥はボッキーを4本取り出し、机に並べてみせる。
「どうぞ!」
「ん?……んん?」
「先輩、語呂合わせですよ」
「……あぁ!なるほど、このお菓子が4本ならぶのが『1111』、つまり11月11日に見えるわけか!」
「せいか〜い!部長、頭の回転が早いですね!」
「……いや待て。それなら棒状のお菓子ならなんでも良いのでは……」
それは暗黙の了解だよな。
「それでぇ、ボッキーゲームはですね!このお菓子───ボッキーを、口に咥えるんです。それで……部長、この端っこ咥えてください」
「あむ……ほ、ほうは?」
「はい!それで……あーむ!」
あら。
あらあらあら。
「!?」
「
「ふぁ!?」
サクサク。
あら〜。
先輩がどうしたらいいか理解しようとする間にも、遥はボッキーを食べ進めて行く。
そして、唇が触れるか触れないかといったところでボッキーを折った。
「んぐ……これがボッキーゲームです!スリランカでしょう?」
「多分スリリングって言いたいんだよな?」
それにしても……これは酷い。
遥ってビッチだったのか?完全にギャルやチャラ男の遊びじやないか。
「いやー、よく小学生の頃にやったんですよー。懐かしいですね」
ちげえやこれ。
脳の構造が小学生から成長してないだけだ。
「次は私と先輩ですね!」
「え、俺もやんの?」
「当たり前じゃないですかっ!同じ部室の仲間じゃないですかぁ」
……絵面がご法度な感じなんだが。
「はーい行きますよー……そりゃあ!」
「んむぐっ!?」
高速で飛来したボッキー。
一瞬息が詰まった。
すかさずボッキーに喰らいつく遥。
………………。
「サクサクサクサク」
「!?」
早ぇ!?
こいつ食いしん坊かよ!
さっきちょっとでも『こいつよく見ると可愛い顔してんだな』とか思った俺がブァカだった!
唇に伝わる振動。
近くなる遥の顔と香り。
それを感じた俺は───。
「墳ッ」
させるわけにはいかないと、めっちゃ頑張って折った。
「あぁぁぁ!?勿体ない!!」
「ははは、お子様には俺の気持ちがわからんのだよ」
「なるほど、ようやく意図がわかった……つまりはチキンレースだな?」
「あぁ〜。確かに言われればそうかもしれないですね。よく気づきましたね」
「ちきんれーす?」
首を傾げる遥だが、すぐに気をとりなおした。
その手には一本のボッキーが握られている。
……まぁ、
流れ的にはそうなるよな。
「最後は、部長と先輩ですね!」
「……やっぱりそうなるのか。……よ、よし。覚悟を決めたぞ」
互いにボッキーを加える。
先輩はボッキーを加えた口を突き出したまま目を閉じた。
先輩は遥とは違って綺麗なタイプだ……。
ふんわりとした優しい香りが漂う。
「よーい……スタート!!」
しかし、気恥ずかしいことこの上なし。
遥は子供だから特に気にしなかったが、先輩は大人だ!
早めに終わらせる。
遥ほどとはいかないが、サクサクと食べ進めていく。
「……おおっと?先輩が食べ進めていくぅ!」
うるせえなあいつ!
少しすつ先輩の顔が近くなる。
あと2進みすれば本当にぎりぎりだ。
さくりと、また一つボッキーが短くなった。
これで俺がもう1サクすれば───
「……んむ!!」
「!?」
せ、先輩が1サクした!?
このままでは唇がくっついてしま……させるかァ!?
「墳ッッッ!!」
自制心と反射神経を酷使してボッキーを噛み砕く。
俺の舌を犠牲に、強い衝撃を与えられたボッキーは砕けて散った。
「ああああああ!痛い!!今のは痛い!!」
「……ん?もう終わったのか?」
クッソォ、俺の苦労と葛藤も知らないで!
万術部のボッキーの日はそんな風に過ぎた。