一年前に結成した万術部が廃部ギリギリな件。   作:翠晶 秋

2 / 21
番外編
万術部とボッキー


 

「ボッキーゲームしましょう!」

 

部室で本を読んでいると、急に遥がお菓子を持ち出した。

 

「ボッキーゲーム?なんだそれは」

「部長、今日は何日だかわかりますか?」

「ええと、11月の11日……それがなにか?」

「これです!」

 

先輩はボッキーの日を知らないのか。

遥はボッキーを4本取り出し、机に並べてみせる。

 

「どうぞ!」

「ん?……んん?」

「先輩、語呂合わせですよ」

「……あぁ!なるほど、このお菓子が4本ならぶのが『1111』、つまり11月11日に見えるわけか!」

「せいか〜い!部長、頭の回転が早いですね!」

「……いや待て。それなら棒状のお菓子ならなんでも良いのでは……」

 

それは暗黙の了解だよな。

 

「それでぇ、ボッキーゲームはですね!このお菓子───ボッキーを、口に咥えるんです。それで……部長、この端っこ咥えてください」

「あむ……ほ、ほうは?」

「はい!それで……あーむ!」

 

あら。

あらあらあら。

 

「!?」

ほえへ(これで)ほっひーをおらはいほうひ(ボッキーを折らないように)……」

「ふぁ!?」

 

サクサク。

あら〜。

 

先輩がどうしたらいいか理解しようとする間にも、遥はボッキーを食べ進めて行く。

そして、唇が触れるか触れないかといったところでボッキーを折った。

 

「んぐ……これがボッキーゲームです!スリランカでしょう?」

「多分スリリングって言いたいんだよな?」

 

それにしても……これは酷い。

遥ってビッチだったのか?完全にギャルやチャラ男の遊びじやないか。

 

「いやー、よく小学生の頃にやったんですよー。懐かしいですね」

 

ちげえやこれ。

脳の構造が小学生から成長してないだけだ。

 

「次は私と先輩ですね!」

「え、俺もやんの?」

「当たり前じゃないですかっ!同じ部室の仲間じゃないですかぁ」

 

……絵面がご法度な感じなんだが。

 

「はーい行きますよー……そりゃあ!」

「んむぐっ!?」

 

高速で飛来したボッキー。

一瞬息が詰まった。

すかさずボッキーに喰らいつく遥。

………………。

 

「サクサクサクサク」

「!?」

 

早ぇ!?

こいつ食いしん坊かよ!

 

さっきちょっとでも『こいつよく見ると可愛い顔してんだな』とか思った俺がブァカだった!

 

唇に伝わる振動。

近くなる遥の顔と香り。

 

それを感じた俺は───。

 

「墳ッ」

 

させるわけにはいかないと、めっちゃ頑張って折った。

 

「あぁぁぁ!?勿体ない!!」

「ははは、お子様には俺の気持ちがわからんのだよ」

「なるほど、ようやく意図がわかった……つまりはチキンレースだな?」

「あぁ〜。確かに言われればそうかもしれないですね。よく気づきましたね」

「ちきんれーす?」

 

首を傾げる遥だが、すぐに気をとりなおした。

その手には一本のボッキーが握られている。

……まぁ、

流れ的にはそうなるよな。

 

「最後は、部長と先輩ですね!」

「……やっぱりそうなるのか。……よ、よし。覚悟を決めたぞ」

 

互いにボッキーを加える。

先輩はボッキーを加えた口を突き出したまま目を閉じた。

先輩は遥とは違って綺麗なタイプだ……。

ふんわりとした優しい香りが漂う。

 

「よーい……スタート!!」

 

しかし、気恥ずかしいことこの上なし。

遥は子供だから特に気にしなかったが、先輩は大人だ!

 

早めに終わらせる。

遥ほどとはいかないが、サクサクと食べ進めていく。

 

「……おおっと?先輩が食べ進めていくぅ!」

 

うるせえなあいつ!

 

少しすつ先輩の顔が近くなる。

あと2進みすれば本当にぎりぎりだ。

さくりと、また一つボッキーが短くなった。

これで俺がもう1サクすれば───

 

「……んむ!!」

「!?」

 

せ、先輩が1サクした!?

このままでは唇がくっついてしま……させるかァ!?

 

「墳ッッッ!!」

 

自制心と反射神経を酷使してボッキーを噛み砕く。

俺の舌を犠牲に、強い衝撃を与えられたボッキーは砕けて散った。

 

「ああああああ!痛い!!今のは痛い!!」

「……ん?もう終わったのか?」

 

クッソォ、俺の苦労と葛藤も知らないで!

 

万術部のボッキーの日はそんな風に過ぎた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。