「諸君。今日はクリスマスだが」
その言葉は先輩から放たれた。
遥が妙にそわそわしていると思ったら……なるほど、今日はクリスマスだっけか。
「諸君はなにか予定はあるか?」
「ありません!」
「まぁウチもないですね」
「今日のクリスマスを部室で祝おうと思う」
「おーっ!」
「そんなことしていいんですか?」
「そういえばカケルくんは知らないのだったな。毎年クリスマスは部室を遅くまで借りている。先生から許可も出ているぞ。もちろん……」
ごそごそとなにかを取り出す先輩。
「コレの持ち込みもな」
どぉんと机に置かれたのは、タンケッキーのクリスマス仕様の箱。
遥が「おひょぉ!」と歓声を上げた。
「我々にしか許されない特権だな」
「万術部に入ってよかったですぅ!!」
変なところで権限持ってるんだな、万術部。
「じゃあ、こたつでも作りましょうか?」
「こたっ……先輩、それはどういう意味ですか!」
え、何その反応。
先輩も目を丸くしている。
「え、隅にあるこの机ってこたつの机ですよね。先に毛布や布団を敷いてから板を乗っければ作れるやつ……」
「こ、この部活にそんな素晴らしいものが……」
「先輩も知らなかったんですか!?部長なのに!?」
深刻な顔でうなづく先輩。
……案外アホだな、この人。
「とりあえずは、夜の七時辺りにクリスマスを祝おうか。各自、クリスマスの準備をしてくること」
「はい!」「わかりました」
「私は今から部屋の飾り付けをする!解散!」
みんなが散り散りになっていく。
……クリスマスを祝うなんて、しばらくやってなかったなぁ。
楽しくなりそうだ。
◇
そして夜である。
「先輩、飾り付けおわりまし……たか……」
「あうあ〜…………」
先輩がこたつでふやけている……。
遥がハァハァしながら写真を撮っている……。
「ただひたすらにカオスなんだなぁ……」
飾り付けはとてもよく出来てる。
レースとか、赤を基調にしたカーテンまで。クリスマスツリーなんてどこからだしたんだろう。
手をパンパンと鳴らす。起きた。
「おはようカケルくん」
「おはようございます。もう七時ですよ」
「朝のか?」
「夜です」
「夜か」
俺もこたつに足を突っ込む。足が臭いとかいう展開にはならない。
と、遥が俺の持ってきた箱に気がついた。
「先輩コレなんですか?」
「聞いて喜べ、ケーキだ」
「「ケーキ!?」」
「ホールケーキだ」
「「ホールケーキ!?」」
「料理アプリで検索して作った原価500円のホールケーキだ」
「「料理アプリで検索して作った原価500円のホールケーキ!?」」
箱は適当なやつをケーキ屋で買った。
『ケーキ作ったんですけど箱担体で買えますか?』って聞いたら苦笑しながら売ってくれた。
卵と砂糖はウチの使ったし、俺の財布はまだ暖かい。
「……あっ。そうですそうです、そうでした!私はシャンペンを買ってきましたよ!ジュースのやつ!」
「へぇ、高かったろうに」
「実はクリスマスセールで三本セットで700円です!」
「一本タダ同然じゃないか、それ」
「そうなんですよ部長!得しました!」
煌びやかな袋を抱えてキャッキャしている遥。
微笑ましく思っていると、先輩がニヤリと笑った。
「なら、私だけ何もしていないみたいで嫌なのでね……虎の子を出そうじゃないか」
「部長はタンケッキー買ったじゃないですか!」
「これ一千円くらいするやつですよ」
「まぁまぁ……芸がないようだが、私はまた鶏を買ってきた」
「「鶏?」」
「ふふふ……抽選券で当たったので実質タダだ」
タンケッキーの横に、先輩が皿を置いた。
「……ッ!!」
「まさか、これって……!」
てりてりと茶色の肌!
骨に取り付けられた赤いリボン!
「「ししっしし、七面鳥!?」」
「今日は豪勢になってしまったな!」
七面鳥ですって奥さん。
豪運かよ先輩。
「……しょ、食卓も賑わった事ですし、クリスマスを祝いましょうか」
「なんだか……贅沢なクリスマスです!」
「では挨拶は私が……年に一度の、顔も知らない他人の誕生日を祝って!」
「「「乾杯!!」」」