一年前に結成した万術部が廃部ギリギリな件。   作:翠晶 秋

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万術部とクリスマス

 

「諸君。今日はクリスマスだが」

 

その言葉は先輩から放たれた。

遥が妙にそわそわしていると思ったら……なるほど、今日はクリスマスだっけか。

 

「諸君はなにか予定はあるか?」

「ありません!」

「まぁウチもないですね」

 

「今日のクリスマスを部室で祝おうと思う」

「おーっ!」

「そんなことしていいんですか?」

「そういえばカケルくんは知らないのだったな。毎年クリスマスは部室を遅くまで借りている。先生から許可も出ているぞ。もちろん……」

 

ごそごそとなにかを取り出す先輩。

 

「コレの持ち込みもな」

 

どぉんと机に置かれたのは、タンケッキーのクリスマス仕様の箱。

遥が「おひょぉ!」と歓声を上げた。

 

「我々にしか許されない特権だな」

「万術部に入ってよかったですぅ!!」

 

変なところで権限持ってるんだな、万術部。

 

「じゃあ、こたつでも作りましょうか?」

「こたっ……先輩、それはどういう意味ですか!」

 

え、何その反応。

先輩も目を丸くしている。

 

「え、隅にあるこの机ってこたつの机ですよね。先に毛布や布団を敷いてから板を乗っければ作れるやつ……」

「こ、この部活にそんな素晴らしいものが……」

「先輩も知らなかったんですか!?部長なのに!?」

 

深刻な顔でうなづく先輩。

……案外アホだな、この人。

 

「とりあえずは、夜の七時辺りにクリスマスを祝おうか。各自、クリスマスの準備をしてくること」

「はい!」「わかりました」

「私は今から部屋の飾り付けをする!解散!」

 

みんなが散り散りになっていく。

……クリスマスを祝うなんて、しばらくやってなかったなぁ。

楽しくなりそうだ。

 

 

 

 

そして夜である。

 

「先輩、飾り付けおわりまし……たか……」

「あうあ〜…………」

 

先輩がこたつでふやけている……。

遥がハァハァしながら写真を撮っている……。

 

「ただひたすらにカオスなんだなぁ……」

 

飾り付けはとてもよく出来てる。

レースとか、赤を基調にしたカーテンまで。クリスマスツリーなんてどこからだしたんだろう。

手をパンパンと鳴らす。起きた。

 

「おはようカケルくん」

「おはようございます。もう七時ですよ」

「朝のか?」

「夜です」

「夜か」

 

俺もこたつに足を突っ込む。足が臭いとかいう展開にはならない。

と、遥が俺の持ってきた箱に気がついた。

 

「先輩コレなんですか?」

「聞いて喜べ、ケーキだ」

「「ケーキ!?」」

「ホールケーキだ」

「「ホールケーキ!?」」

「料理アプリで検索して作った原価500円のホールケーキだ」

「「料理アプリで検索して作った原価500円のホールケーキ!?」」

 

箱は適当なやつをケーキ屋で買った。

『ケーキ作ったんですけど箱担体で買えますか?』って聞いたら苦笑しながら売ってくれた。

卵と砂糖はウチの使ったし、俺の財布はまだ暖かい。

 

「……あっ。そうですそうです、そうでした!私はシャンペンを買ってきましたよ!ジュースのやつ!」

「へぇ、高かったろうに」

「実はクリスマスセールで三本セットで700円です!」

「一本タダ同然じゃないか、それ」

「そうなんですよ部長!得しました!」

 

煌びやかな袋を抱えてキャッキャしている遥。

微笑ましく思っていると、先輩がニヤリと笑った。

 

「なら、私だけ何もしていないみたいで嫌なのでね……虎の子を出そうじゃないか」

「部長はタンケッキー買ったじゃないですか!」

「これ一千円くらいするやつですよ」

「まぁまぁ……芸がないようだが、私はまた鶏を買ってきた」

「「鶏?」」

「ふふふ……抽選券で当たったので実質タダだ」

 

タンケッキーの横に、先輩が皿を置いた。

 

「……ッ!!」

「まさか、これって……!」

 

てりてりと茶色の肌!

骨に取り付けられた赤いリボン!

 

「「ししっしし、七面鳥!?」」

「今日は豪勢になってしまったな!」

 

七面鳥ですって奥さん。

豪運かよ先輩。

 

「……しょ、食卓も賑わった事ですし、クリスマスを祝いましょうか」

「なんだか……贅沢なクリスマスです!」

「では挨拶は私が……年に一度の、顔も知らない他人の誕生日を祝って!」

「「「乾杯!!」」」

 

 

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