Clan of glory 作:おっさん
Clan of glory 3DMMORPG業界にて、当時先駆したあらゆるMMORPGのノウハウを集積し、公開された日本では当時から10年間最大規模のユーザーを獲得したゲームであり、それが今回リニューアルされるゲームである。
クリックゲームとして完成に行き着いたシステム。五つの種族。その種族からなる豊富なスキル。日本のアニメや漫画を意識して作られたキャラクターヴィジュアルや装備。美麗な3Dで表現された自然風景。おどろおどろしい、歯ごたえのあるモンスター。壮大なBGM。豊富なクエスト。攻略の難しいダンジョンの数々。プレイヤー間で行われる大規模なPvP。PK・害プレイヤーとの激しい対決。強大、強力な大型ボスモンスター。
当時海外のBOTによるゲーム内経済の破壊。BOTを使用したり寄生して強化された害プレイヤーからの通常プレイヤーへ、PKや脅迫というハラスメントも多かったが、サービス提供は続き、大規模UPでの仕様変更でユーザー数を激減させながらも老舗ゲームとして未だに細々と存続してきた。そのゲームが突如注目を浴びる事になった。
近年、インターネットを通じた仮想現実世界へライフワークを移す事が激増している。各国で続発するテロ事件。海外の内政問題による治安の悪化。自然環境の悪化や災害への対策。これら問題点を一挙に解決する世界として仮想世界へと向かうユーザーが増えたのだ。
再現される世界も作り物と見分けるのが難しい程で、現実世界で現地へ行かなくても、数名が現地で情報を収集して仮想世界で再現した観光地や大自然を見に赴く事が出来る。アフリカに野生動物の襲撃を恐れる事無くキャンプができる。病気や毒など意識しなくても危険な昆虫や生物に触れる、体を汚す事を気にする事もなく熱帯のジャングルを闊歩できる。怪我や死亡のリスクなく過酷な自然環境のエベレストや広大な砂漠を気楽に散歩できる。テロや犯罪を恐れる事無く、下町や治安の悪い歴史的建造物のある地域へ立ち入れる。公害や海面上昇で沈んだ町をリスクなく旅できる。
これは老若男女を問わず人気を呼ぶに十分であった。このシステムはそれこそ、大きなテーマパークや映画会社といった資金を豊富に持つ企業に独占されてきたが、技術の陳腐化・中小企業の連携と努力により多少の質が落ちこそすれ、世界中の一般ユーザーが気楽にプレイできる環境が広まっていく事になる。
これに一挙に参入したのがアダルト業界と問題の中小のゲーム企業である。既に映画会社が映画の世界を仮想世界で再現していたし、大手ゲーム会社も自社ゲームを次々に発表していったが、提供されるタイトルの数。ログインポイントが限られるという問題が常に存在していた。
また小さい企業ながら人気タイトルを有する会社がタイトルを発表しようにも、単独で運営する事は資金的にも、人的資源の問題からもできず、クラウドファンディングでは限界があり、資金提供を呼びかければ大企業が運営に参加する為に、独自の運営が出来ない事や利益配分で実りが少なくなるという問題も障害として存在している。
そんな中で、有名アニメ。ロボット。SF。ファンタジー。生物災害。ゾンビ。ホラーと有名タイトルが出尽くし、システム的な点からも現状大まかな問題点も洗い出された時、中小ゲーム業界が古くから抱えているタイトルを、中小企業だけで連携して独自色を守りながら次々に発表を始める。
当初はプレイ料金も発生する事から、ユーザー数を抱えたタイトル。金銭的な余裕のあるプレイヤー年齢層の高いゲームが中心であったが、その中で老舗ゲームが仮想現実のゲームとして復活するというニュースが駆け巡る。今では会社そのものは買収され、東南アジアに居を移していたが、当時の開発に携わった人間を幾人か招聘。キャラクター造詣は世界的に受けの良い日本のデザイナーを。最初期の様にコミックを土台としたストーリーで作り上げられたゲーム。
意外にも当時プレイをしていた人間が集まり、CβやOβで想定外の人気を博し、自信をもってClan of glory revival と正式公開される事にいたる。
「うはwwwwっをkwwwww! みwwwwなwwwwぎwwwっwwwてwwwwコター!」
みなぎる内藤という文字が白人男性の頭の上に浮かんでいるのは滑稽であったが、これが仮想現実世界の中で、人が動かすプレイヤーだというのがわかる。そして噴出しが更に表れて彼の発言内容が言葉として表示されてる。所謂チャット機能の名残でON/OFFを選択できるが、彼は特に意識してそれを表示していた。
その彼が広い草原の中で獲物を見つけたとばかりにモンスターへと突撃してく。起伏のある原っぱを駆ける姿は少しギクシャクした動きであるが軽快であり、背中を向けて歩いている中型犬サイズの狼に殴りかかる様は勇者というよりもただの阿呆に見えた。
「いwwwwwwくwwぞwwww」
初期装備の木刀をたたき付けると狼が振り返る。その顔は明らかに敵意(ヘイト)に溢れ、想像以上の速さで反撃に転じ、前足で引っかきにかかる。それを受けてみなぎる内藤が後ろによろけた所を追撃して首筋を狙って噛み付きにかかる。
「どうどうwwww思ったより強いwwwwww」
ハイテンションのまま狼を木刀で殴りながらHPバーを確認し、仕様通りにスキルを使う為脳内でスキル発動を念じる。
「くwwwwwらっwwwwwwwwっうぇwww
ハイスマッシュ!」
元々言葉に出す必要はないが、あえて言葉に出すのがこのプレイヤーのプレイスタイルを表していた。発動したスキルはファイタータイプの職が覚えている初期スキル。打撃系の一撃であり、ゲームでは盾による防御でダメージ軽減がプレイヤーやMOBともに出来るのだが、このスキルは回避・軽減も不能の必中スキルである。威力は通常打撃の1.5倍で、この攻撃でモンスターを倒した場合、オーバーヒットで入手経験値、スキルポイントにボーナスが入る。
そしてみなぎる内藤の予定通り、狼をスキルで攻撃した瞬間「キャイン」という悲鳴を上げながら空中を舞い、地面に倒れふす。モンスターを倒す事に成功したのだ。
「ふぅ。ゲームの操作性は全然違うけど、基本的なシステムは昔のままなのか」
今までのプレイの仕方とは違い、真面目な顔で倒したモンスターが落としたアイテムを拾う。デーナール(金貨)とこのモンスターからは現時点でレアリティの高い毛皮、そして動物の皮がひとつずつ。アイテムはランダムでドロップするが、レアリティの高い素材がドロップするのは珍しい。後半実装される予定の種族がもつアイテムをモンスターから収集するスキルがあり、そのスキルで入手しやすくなるのだが、それがない現状アイテムを入手するのはなかなかに手間がかかるという問題がある。
拾ったものは製作素材として使えるのだが、直ぐに使うものではない。村に戻ったら倉庫にぽいだな。と考えるとその場に座り、体力の回復を図る。
このゲームでは基本的にHPとMPの回復が回復薬と魔法やスキルによる回復。戦闘中や、たったままの状態、座る事等で常時回復する事が出来る。特に座った状態ならその速度は速く、仮にHPが1になっても低Lvの現在なら20秒も掛からずにHPはフル回復するだろう。ただし、HPと違いMPは時間がかかるのが難点である。そんな中一人のヒューマンのキャラクターが走ってくる。
「おめー、バフかけたら速攻で村飛び出すなよw」
走ってきたのはメイジ職のキャラクター。ローブと軽装だが、遠距離から強力な魔法の詠唱が可能であり、また支援系の強化魔法とヒールを使える。前衛と後衛の二人でPTを組んでプレイしていたのだ。
「内藤だからな! すまないな!」
「若くないんだからみなぎってるんじゃねーよ」
呆れてはいるが、昔懐かしいプレイスタイルと話に表情がほころぶ。過疎化の進んだゲームであったが、通信アプリで連絡を取り続けている当時の仲間は多く、当時作ったクランの仲間は半数は一応連絡がいまだに付く状態なのだから不思議なものである。
ゲームが仮想現実で再現される。と聞いてCBOBに応募したものの当選せず、やっとの思いで公開初日のチケットに当選してプレイしているが、仲間内で当選したのはこの二人だけで何とも寂しいものである。
「とりあえず、スキル覚えてきた?」
「おう。バフ魔法のレベルとパッシブスキル取ってきた。
あとお待ちかねのヒールレベルもあがったぞ」
「お、ついにか。まぁでも初期村でて転職してーな」
みなぎる内藤が笑うと立体投影型のタッチパネルを展開する。ファンタジー世界で何とも場違いなものだが、仕方のない所でもある。実際インベントリやウィンドゥを開くのは荷物を袋から出すのは面倒の省略されるものであったり、必要なアイテムを探すのを省略化するのが目的であるし、FAQやGMコールといったシステム面の操作もあるのだから、この点の"雰囲気"はあきらめている。
開いた枠にはクエストが表示されておりクリアまでのステップが表記されている。そのステップが大部分クリアとなっており、もう少しでクリアできそうであるのが見て取れる。このクエストをクリアすると、クリアがトリガーとなり、次のクエストが発生し受注出来る様になる。それは初期村近くにあるダンジョンを攻略するというクエストで、これをクリアすると新たなクエスト発生のトリガーとなる。
最終的な目的は初期村からの旅立ちクエの発生。これを受注出来るようになって初期村を離脱しやすくなるのだ。同時に目的地でクエストをクリアすると、転職の為のクエストを受注出来る様にもなる。
現状二人はまだ始めたばかりで初期職である。初期職というのはLv1~20までの期間の職業であり、20に到達すれば転職クエストを受注出来る様になる。その場所への移動そのものは移動クエストを受けずとも、その気になれば次の村に移動する事も可能である。もっとも、手間もかかり、クエストを攻略していく事でアイテムや経験値が報酬として貰え、移動も低い価格でできるので、クエストをクリアしていくほうが実は手堅く、運営も意識してクエストをこなさせる様に作っている。
二人ともまだ12の初期プレイヤーであるが、操作性の違いはあるが経験則と旧作の知識からCBOBプレイヤーに負けじとかなりの早い進行でゲームを進行している。
「みなぎるは何に転職すんの?」
「ニートwwwww」
「ばっかじゃねーのww」
くだらない返事に笑うが答えるまでもない。名前から予想は付くのだ。だが答えは想定外の内容だった。
「アーチャーだ!」
「ざっけんなwww内藤の名前のくせに何て弓なんだよw」
「盾とか、ヘイトでモブ集めたら危ないじゃないですか!」
「盾の仕事を否定すんな」
昔からあるお決まりの雑談に花を咲かせるが、やはり当時の仲間がまだINできないというのはつまらないものがある。登録制限が解除されるまでの間にせいぜいレベルをあげて装備を集めておいてやろう。ふざけてはいるが、二人が仲間内で託されている仕事は狩場情報の収集から転職までの道筋の開拓。そして効率を追求した狩りを目指す土台作りと、実は多いのだ。
「僧職はどうすんの? やっぱ後衛?」
「の予定。その方が育成補助楽だしな。
そもそもWizとかATKやるにもバフと装備がないと狩りで赤字ばかりで後半死ねる。
大体初心者育成には盾とヒラ。特にバッファーは居た方が有利だしな」
既にプレイした感覚で、モンスターを倒した時入手するデーナールは相当の絞り方で、モンスターを倒して集めた金だけではとてもではないが初期村で販売している装備品を買うのは厳しい。
現状装備品を入手するにあたり、取得ルートは五つしかない。
ひとつは店やプレイヤーの街中で販売しているものを購入。
他にボスモンスターや通常モンスターが時折ドロップするのでそこから入手する。
現物ではなく破片を落とす事があるのでそれを集めて製作する。
ボスやモンスターを倒した時に落とした装備を奪う。持ち逃げする。
死んだ人間がデスペナルティーで落とした装備を奪う。ないし、借りパクする。
後半二つは有害プレイヤーとして広まってしまうので害プレイヤーとしてゲームをプレイする気がないのなら絶対に出来ないプレイスタイルである。
いずれにせよ、前衛職はどうしても金銭的負担が多い為に後衛の方が楽だというのが大抵のゲームでよくあるパターンの一つとなっている。
「ゲームとしては昔の時間かけるタイプだからな。しゃーなし」
みなぎるが笑って立ち上がる。話に夢中でHPが回復しきったのを忘れていたのだ。
「消耗品も相当かかりそうだしな。無駄遣いは控えよう。
それにしても、家ほしいな。実装はいつごろになるんだろうな?」
「さてねぇ。Pvも今の所未開放で出来ない状態だし、クラン創設もまだ出来ないからな。
クラン創設後、Pv解禁前後じゃないか。戦争もあるし」
家を目指すのは難しいが何とかしたいという所である。その為には資金稼ぎを達成する為に最大限の効率と記憶と経験を駆使しなければならない。後は大型ボス討伐でる。
「おっし、狩り再開するか」
「みなぎって死ぬなよ?」
「大丈夫、ダッシュPOT飲んでとんずらするから、遺品はひろってやんよ」
「俺にヘイトが移ってたらいいなw」
ちょっとした雑談だが、二人とも随分昔に戻った気がした。それは二人の頭上にあるチャットの噴出しが特にそう思わせていたのもあるだろう。解雇主義のおっさん達のそんなキャラ作成後のひと時であった。