ソードアート・オンライン 〜瑠璃色の痕跡〜   作:☆さくらもち♪

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第9話

兄様、兄様と。

雛鳥の如くついてきていた少年のたった1人の家族。

愛らしい外見と人見知りがありながらも優しい性格の持ち主。

 

いつからだったのだろう。

 

彼女の姿はいつの間にか消えてしまっていた。

兄様と開いていた可愛らしい声。

兄様と慕われていた少年が当主になった日から。

 

兄様と呼ぶ声はなくなってしまっていた。

 

 

 

 

ルカが眠りから覚めると酷く懐かしい夢を見ていた。

兄様と呼んでいた彼の義理の妹。

血は繋がっていなかったが、本当の兄妹のように仲が良かった。

 

「はぁ……」

 

元々は孤児同士だった2人だった。

実験体として生き残れていたのはなにもルカだけではない。

彼の義妹も辛うじて耐えれていた。

実験内容は多少なりとも変わるも2人して手に入れてしまったのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

寿命には影響が少なかった代償だろう。

己よりも肉体的強者を圧倒し、人間の脳では不可能といえる演算能力。

幼い子供が手に入れるには過ぎた力だった。

ルカにとってはSAOの世界というのは最大限発揮出来る世界ともいえる。

電気信号によってSAOのアバターを操作するが、元々の人間の脳にはリミッターがある。

それのリミッターをルカは取り払われている状態のため、人外じみた動きが平然と行える。

身体自体も実験により強化されているため、その動きに対する反動も耐えていけた。

 

「心配……」

 

早くSAOをクリアしたい。

そんな気持ちがルカの中にあった。

唯一の家族を失いたくはなかったのだ。

 

「ルカー?」

 

そしてルカの相手も紹介したい。

その2つだけがSAOから抜け出したい目的となった。

 

 

 

 

 

 

 

ルカの最愛のお相手であるユウキは悩み続けていた。

SAOには結婚システムがあり、自分とルカも……と思っていた。

だがルカの抱えているものを取り除き、お互い歩んでいかなければ拒絶されてしまうだろうと不安にもなっていた。

 

「どうしよう……」

 

ルカに対する愛情は消えるどころか日に日に燃え上がり続けているほど。

重い愛情と言われるものだが、愛情に飢えていたルカにとってはあまり気にしていなかった。

 

「うぅ〜……」

 

しかしユウキも大好きな相手だろうと拒絶された時はとても悲しくなってしまう。

ルカの事を知りたいと思いながらも臆病な一面があった。

 

「……どうしたの?」

 

唸り続ける恋人に疑問を持ちながらも何かあったのかと聞いていた。

 

「ルカぁ〜……」

 

「わわ……」

 

隣に座った瞬間に抱きつかれたルカはそのまま後ろに倒れ込む。

幸いにもベッドの上だった為に痛みなどはなかった。

 

「ボク……ボクねぇ〜……」

 

いつもよりネガティブになっている珍しいユウキが見れて優越感を抱く。

 

「結婚したいけどルカが断らないかって不安なんだよ……」

 

「結婚……かぁ」

 

SAOの結婚がそのままリアルにまで持ち込まれることはないものの、夢がある言葉であった。

 

「ボクって独占欲強いし……自分でも自覚するぐらい重いし……」

 

「別に……それは良いけど」

 

ルカからすればユウキ以外に興味を抱いた異性がいなかった。

アスナやアルゴといった彼女達はあくまでも知り合いや友人。

異性として意識をしていないのが現状だった。

 

「ユウキの事、好き、だよ」

 

唐突にユウキの耳元で囁かれた愛の言葉に頭の中がパニックになったユウキはそのままルカの上に跨ったままキスをする。

 

「ちょ……ユウキっ……んっ……」

 

「ねぇ……ルカ……」

 

「はぁ……な、なに……」

 

「しても……いい?」

 

それが何を指しているのか。

それぐらい今の状況とユウキの火照った身体で察してしまった。

 

「……ダメって言ったら?」

 

「……諦める、よ」

 

何かを焦るユウキの様子に変だと感じていると僅かだがアルコールの匂いがあった。

ユウキのステータスを見てみれば《酒酔い》と表示されており、それによって普段抑圧されていた部分が出できていた。

ルカをこうやって襲うのも、行為をしたいというのも全てユウキの内側にあるもの。

 

「……おいで、ユウキ」

 

両手を広げてユウキを迎え入れるとぎゅうっと抱きしめる。

不安にさせてしまったのは自分自身にもあるだろうとルカは思い、しっかりと行動で示した。

 

「不安に、なった?」

 

聞けばユウキが小さく頷く。

盲目的になりすぎて周りが見えていなかったのだろう。

ルカを好いているプレイヤーなど極わずか。

そもそも存在を知るものが少ないために不安になる要素がないだろうと野放しにしていたのだ。

 

「ごめん、ね」

 

ユウキの耳元で好き好きと言いまくっているとさすがのユウキも恥ずかしさで顔が真っ赤になってきていた。

 

「あぅあぅ……」

 

「今日、寒いから。一緒に寝よう、ね」

 

「うん……」

ルカが抱くことのない感情がユウキによってもたらされたものだと考えるならば。

自分はそれを教えてくれた少女にお返ししよう。

そう考えていた。

 

 




遅くなり申し訳ないです。
小説を書く意欲がなくなり、これ以降は完全に気まぐれで上げていくと思います。
投稿を止めるわけではないですが、次に上がるのはいつになるのか分かりません。
それでも良ければ気長にお待ちください。

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