ソードアート・オンライン 〜瑠璃色の痕跡〜 作:☆さくらもち♪
ソードアート・オンラインでは安全圏内と言われる街を中心にフィールドが広がっており、フィールドに出たプレイヤーはあらゆるダメージを負うようになる。
モンスターからのダメージや、プレイヤーからのダメージなど様々だが。
ルカとユウキの2人も戦い方を教えるためにはフィールドに出なければならないので草原地帯に生息する青い猪である《フレンジー・ボア》を倒していた。
「えいっ!」
可愛らしい声が聞こえると青猪は原型を留めれずにデータ状の破片へと爆散していく。
ルカが予想外だと思った点が、ユウキは会話などからこういったRPG系ゲームをあまりやり込んでいないという点から初心者同然の実力だろうと踏んでいた。
だが実際に片手直剣を握らせて多少動きを教えただけで瞬く間に無駄のない最適な戦い方へとなっていた。
「才能……か。それも天性の」
ルカもその腕は認めざるおえない。
あれほどまでの戦いに対する天才性は世界にもそうはいない。
それでいて観察眼にも優れているところも分かっていた。
ユウキが倒していく青猪はどれも一瞬で倒されていた。
力技というよりも技術故になせる倒し方。
無駄な傷はなく、剣で突いたのだろう刺突の傷だけで青猪のHPを全て削り切っていた。
「ん……」
「よしっ……どうかな?」
「いいとは思います。初めてですよね?」
「そうだよ?」
初めてとは思えないが、声色や仕草などからも本当にそうなのだろうと分かる。
SAOをやる上で
信号や刺激のやりとりもスムーズになる。
ユウキはその中でもかなり強い適性があると言えるほどの素質があった。
「えへへ、ありがとう!」
「いえ……元々センスがあったのだと思いますよ」
「それでも教えてくれたのは君だけだったからね。助かったよ」
リアルでもこんな子ならと思いながら、時間を見るとそこそこにいい時刻になっていた。
1度街に戻ろうかと考えていると、どこからか鐘の音が鳴り響いた。
その音はユウキも聞こえていたらしく、不思議そうにしていた。
そんな中ルカはなんとも言えない表情ではあったが。
「ユウキさん。自分はここまでみたいです」
「えっ?」
ルカは知っていた。
この先に起きることを。
史上最悪のデスゲームが始動するのを。
転移の光が始まり、収まっていくとユウキとは離れた位置に移動されたらしく、ルカが周りを見ると最初期の街である《始まりの街》の中心へと立っていた。
続々と他のプレイヤーも転移されて行っていた。
突然転移され、街に戻されたプレイヤー達は困惑や不安などを抱える。
その時に1人のプレイヤーが夕焼け空を指さした。
「おい!あそこになんかあるぞ!」
その指の先には夕焼け色とは違う血のような色。
《system announcement》と書かれていたその赤いパネルは小さな1つから群がるように空を蝕んでゆく。
やがて空一面が真っ赤になり、隙間があるのかのようにどろりとした赤い雫が垂れていた。
その雫はどんどん大きくなり、ひとつの人型へと変わる。
真っ赤なフードを被った巨大なプレイヤーへと。
しかしその顔は見ることが出来なかった。
「ようこそ、私の世界へ」
この騒然とした空間の中では似合わない台詞。
「私の名前は《茅場晶彦》。この世界でのゲームマスターでもある」
「さてお気づきの方もいるだろう。システムメニューからログアウトボタンが消滅していることに。だが、これは不具合などではない」
「繰り返そう。これは不具合などではなく、ソードアート・オンライン本来の仕様である」
「君たちは今後、自発的なログアウトは不可能だろう。現在現実世界では、ナーヴギアを取り外さないようにと報道などにより喚起がされている。しかし、残念なことに耳を傾けなかった者により凡そ300人余りがこの世界及び現実世界からも永久的に退場している。だが、もしも外部の人間や第三者により強制的に外そうとした瞬間に、ナーヴギアに搭載されている電子パルスによって君らの脳を焼却することだろう」
こんな狂った事を告げられても、ルカは何一つ動じなかった。
元より彼は開発側の人間であり、元より普通とはかけ離れた人外のような人間の失敗作。
彼自身が異常だと認識出来る内容ではないということだった。
「しかし、ただ閉じ込めた訳では無い。この世界の最頂点である第100層にて君らを待つ最終ボスを撃破する事により、ソードアート・オンラインはゲームクリアされ、現実世界への帰投が成される」
「君らは疑問に思ったことだろう。何故、茅場晶彦はこの様な事をしたのか。と」
「私の目的は既に達成されている。この世界を作り上げ、君達を招き入れた時点で」
「それでは、ささやかながらも私からのプレゼントを贈りたい。確認してくれたまえ」
ルカはメニューからプレゼントの中に入っているアイテムを確認する。
《手鏡》と表示されたそれをまだ取り出しはしない。
「これにて、ソードアート・オンライン正式リリース及びチュートリアルを終える。健闘を祈ろう」
その最後を告げられるとルカはすぐに準備を始めた。
手鏡による効果を知っていているためにその前準備だった。
人前に顔を晒すのを嫌う彼はストレージの中から身体をも隠せるローブを着込んだ。
その状態で手鏡を取り出すと、鏡から眩い光が溢れ出し、ルカを覆う。
光が治まると、鏡に映るのは一目見れば誰しもが羨む美貌。
そして何よりも白銀色の髪と宝石が嵌め込まれたかのような虹色が鏡の彼を見つめていた。