ソードアート・オンライン 〜瑠璃色の痕跡〜 作:☆さくらもち♪
デスゲームとなったソードアート・オンラインが始まって1ヶ月ほど。
手鏡を使ってからルカは容姿を隠せるローブを着ていた。
《隠蔽》と呼ばれる隠密行動に影響するスキルにも多少ながらボーナスが上乗せされたりと使い勝手がよかった為に、ローブが脱がれたことは無い。
1ヶ月もあれば迷宮区と呼ばれるフロアダンジョンもさすがに見つかるが、第1層のフロアボスは未だに討伐はされていなかった。
プレイヤーキャラクターが死亡すれば現実世界での自分自身も死ぬと分かり、迷宮区の攻略自体もあまり進まないというのが現状と言えた。
そんな中ルカは朝昼晩と迷宮区に篭る日々。
暇があればモンスターを倒してレベルを上げているためにルカのレベルは第1層ではもう上がることは無いだろうほどに限界が来ている《Lv18》。
ルカが迷宮区の入口近くで休憩を取ろうとすると、その入口近くで人が倒れているのを見つける。
《索敵》スキルでモンスターやプレイヤーがいないかくまなく探すも見つかりはしなかった。
「死にたがり」
倒れているプレイヤーにカーソルを合わせると残存HPはレッドゾーンに入っていた。
死にたがりなのかと思いながら、プレイヤーを抱き上げた。
身体の感触から女性なのだと分かった為、安全な場所に寝かせた。
「ん……ふぁ……」
本来は休憩するためだったために睡魔がやってきていた。
最後に寝たのはいつだったかと思いながらルカは目を閉じて意識を落とした。
眠っていたルカが違和感に気づいたのは夕刻ほど。
目を開けると女性プレイヤーは既に起きていたようで、ぼーっとしながら空を見ていた。
時折飛んでくる視線が違和感と感じたのだろう。
「はぁ……」
「死ねなかった気分はどうですか」
寝ていると思っていたのだろう。
ルカが声をかけた瞬間、見てわかるほどに身体が驚いていた。
「あ、あなた……助けたの?私を」
「他人に興味はありませんが、迷宮前で倒れられて死なれたら気分が悪くなりますので」
ルカの言い分に反論出来なかったのか女性はすぐに黙ってしまった。
居心地が悪かったのか、女性はすぐにルカに謝罪をした。
「この環境に耐えれる人なんて少ないですし、いっそ死んだのが良いんじゃないかという考えはありだとは思います」
「そう……」
「ですが……ここが仮想世界とは考えずに、1つの自分が生きる世界だと思っている方がよっぽと気楽だとは考えます。貴女は
独り言のように呟いたつもりのルカの言葉は意外にも女性には受け入れられたようだった。
「君は……何かやりたいことがあるの?」
「……目標を立てるのは苦手なので。やりたいことなんて特にないです」
「そう……分かったわ。貴方の言ったように私が私でいるためにこの世界で生きていく。死にたがりなんてもうしないわ」
そう言い放った女性の目は強い意志が秘められていた。
「貴方の名前、聞いてもいい?」
「知ったところで意味はないと思いますが」
「今後会ったらって考えないのね?」
「言った様に他人に興味はありませんから。名前も教える必要性を感じないだけです」
人嫌いなのに自分に説教する辺り元は優しいのだなと女性は思った。
「私は《アスナ》よ」
「教えてとは言ってないのですけど……はぁ……《ルカ》です。これでいいですか」
ツンツンしている所が昔の自分に重なったのか、アスナは弟が出来たような感覚になっていた。
そしてふと思い当たる。
自分よりは確実に年下だろうルカは独りでこのSAOに来たのだろうかと。
「ねぇ、ルカ君」
「……何でしょうか」
「親御さんとか……誰かと一緒にSAOを始めたりした……のかしら」
「それこそ貴女には関係ないでしょう」
一瞬にして冷たい声色になったルカに地雷を踏み抜いてしまったのだとアスナは後悔しながら謝罪をする。
あまりにも知り合って間近なのにも関わらずプライバシーを聞かれれば不快に思われるだろう。
「そのうち第1層のボス攻略会議が行われるそうです。貴女が決めた目標の第一歩として参加してきてはどうですか」
ルカはそれだけ言うと立ち上がって主街区の方へと歩いて行った。
ルカなりに彼女へヒントを与えたつもりだった。
アスナが言うように元々優しい性分だが人は嫌いという矛盾した部分がある。
「私も頑張らなきゃ」
またルカと再会出来るように、アスナは気合いを入れて愛用の細剣を持って迷宮区へと入っていく。