ソードアート・オンライン 〜瑠璃色の痕跡〜   作:☆さくらもち♪

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第6話

まだ完全に朝が出ているとも言えない時間にルカの意識は浮上していた。

睡眠時間が限りなく少なくても活動を可能に出来るようになっている為か、寝る時間も短かった。

 

「ん……」

 

ルカの隣にはユウキが寝ており、まだ目を覚ます気配はなかった。

アスナも同様だったため、起こさないよう静かにユウキのて手から抜け出てベッドを出た。

 

「あ……着てない」

 

チラつく自身の髪と普段の視界からフードが外れていた為すぐに直すと部屋を出た。

宿泊部屋である2階を降りると食堂にもなっていた1階には誰もいなかった。

NPCだけは存在しているので実際にはプレイヤーだけだが。

何もやることがない事が久々に出来てしまい、ただぼーっとしているのを数十分以上していると、起き始めたプレイヤーが出てきたのか2階から話し声が聞こえてきていた。

その中にはルカのパーティーメンバーであるユウキやアスナとキリトの声もあった。

 

「あっ、ルカー!」

 

「おはようございます」

 

「おはよー!」

 

花が咲いたように明るい笑顔のユウキに宿屋にいた男性プレイヤーは息を飲む。

SAOのプレイヤーアバターは現実世界の物を再現しているため、美少女であるユウキは現実世界でも美少女なのだ。

 

「……変なの」

 

その笑顔が自身に向けられているのは嬉しく思いながらも、それを他の男性に見られるのが少し不満に感じた。

 

 

 

 

 

第1層ボス攻略当日。

ルカ達は第1層のボス前にて他の攻略メンバーと共に集まっていた。

 

「そういえばルカって片手剣なんだね」

 

「なら俺とルカが前衛に入ったのがいいな」

 

キリトの提案に全員頷くも、ルカは多少思考に入った。

ボスであるコボルド王はディアベル率いる部隊が請け負うため、その他は取り巻きであるセンチネルの処理をしなければならない。

そのセンチネルが鎧を着込んでおり、《鎧通し》と呼ばれる技術を使うか体勢を崩さなければダメージが通らない。

技術的には不可能ではない。

ならば出来る。

 

「自分一人でも構いませんけど」

 

「あれを通すのは至難だぞ?」

 

「不可能ではないですし、無理そうなら辞めます」

 

「ならボクが後衛に入るよ。それなら問題ないでしょ?」

 

「……そうだな。俺とアスナ、ルカとユウキでやろう」

 

センチネルの対応を予め決めて終えると、ちょうど向こうでも準備も終えたのかディアベルが扉前に移動していた。

 

「みんな、準備終わったと踏まえて今からボス攻略を行う!」

 

ディアベルの言葉に一同は緊張と不安を抱えつつも、士気は落ちなかった。

 

「俺から一言。……勝とうぜ!」

 

その力強い一言に皆が頷き、ディアベルは満を持してボスフロアへと繋がる扉を開けた。

重々しく音を立てて開いていくと、巨大な柱がフロアを支えるようにそびえ立っていた。

一番奥には第2層へと繋がるだろう扉があったが、それは固く閉ざされていた。

攻略メンバー全員がまだ姿が見えないボスに警戒しながらフロア中心まで歩くと、入口の扉が閉まっていく。

そして先頭に立っているディアベル達の前には巨大な影。

 

「居たぞ!」

 

大声でかけられた声の瞬間に空から落ちてきたかのように重々しい音と共にやってきた。

《イルファング・ザ・コボルド・ロード》と表示されたコボルドの王。

体力を表すHPバーは4本であり、手に持つ斧とバックラーがあった。

コボルド王を守護するように柱から取り巻きである《ルイン・コボルド・センチネル》も出現し始めていた。

 

「それでは……全員、突撃!!」

 

ディアベルの号令と共に各々が決められたポジションと役割をこなす。

ルカもユウキと共に始めようとすると、センチネルの鎧を観察する。

 

(頭は、兜。身体的にも狙うのは兜と鎧の間)

 

完全な防具に見えたとしても、動きやすさの故に生じる隙間。

基本的な鎧は首回りは必ずと言っていいほど隙間があるため、そこを狙うことに決めた。

 

「ルカ?」

 

「ん……もう行ける」

 

ルカに殴りかかってきたセンチネルは一瞬にしてその原型を留めれずに破片へと砕け散っていく。

的確に、しかし確実にルカの《鎧通し》はセンチネルを即死させていた。

そんな光景を見ていたユウキはルカの動きに魅入られていた。

無駄のない必要最低限の動きだけで舞うように倒していくその姿に。

 

「ユウキさん」

 

「あっ!」

 

ルカに呼ばれるまでずっと見ていたのかと、恥ずかしくなりながらも、ユウキは自分の役目を全うすべくセンチネルに対応する。

そしてルカの動きを見ていてやり方のようなものが理解出来た感覚があった。

 

(ルカみたいに……鎧と鎧の間……)

 

ずっとルカが狙っているのは首。

そこを剣を横に水平にして突いている。

それを真似るように向かってくるセンチネルにやってみた。

 

「えいっ!」

 

声と共にセンチネルの首にはユウキの剣が刺さっていた。

そして一瞬にしてセンチネルの体力が無くなっていく。

 

「……やった!」

 

自分にも出来た事が嬉しかったのか、ユウキはどんどんセンチネルに目掛けて《鎧通し》を連発していく。

そんな中、コボルド王が突如として雄叫びを上げた。

ルカがカーソルを合わせてみると4本あったHPバーが残り1本にまで減っていた。

ベータテストの時にはコボルド王が残り1本になると持っている武器を投げ捨てて《タルワール》と呼ばれる曲刀を取り出す。

だが、全員が驚愕する。

 

(一緒なわけがない。タルワールじゃないんだから)

 

コボルド王が取り出したのはタルワールではなく。

《野太刀》という武器だった。

 

「俺が出る!」

 

ディアベルは走り出し、コボルド王に単独突撃していた。

武器も情報が変わっている事に気づいているのだろうが、それでも止まりはしなかった。

 

「ユウキさん」

 

「なに?」

 

「ここ任した」

 

それだけ告げるとユウキ達の視界からルカの姿が消えた。

一瞬にしてディアベルの隣にまで移動したルカは、スキルを発動させる。

 

(スキル発動……硬直……0.7)

 

コボルド王は野太刀を取り出してすぐさまスキルの構えを取っていた。

刀スキルでありながら、抜刀のように構えるスキルをルカは頭で検索する。

 

(旋車)

 

すぐさま何のスキルを発動させれば良いかを選び取ると、そのスキルを発動させるためのモーションを取った。

《ソニックリープ》を発動させてコボルド王の《旋車》と相殺した。

 

「……っぅ」

 

相殺出来ただけ良いものだろう。

ルカの片手剣は耐久値が無くなり、霧散していく。

さらに筋力が圧倒的に負けている状況での相殺によりルカの右腕は一時的に使えなくなっていた。

 

「君は……あの会議の時に」

 

「死なれると困るので」

 

「しかし……」

 

「無理やりじゃなくもっと正当な方法で貰える方法もありますが。あなたは戦う人じゃない、司令塔だ」

 

ルカの言葉が正しいと感じたのかディアベルは道を引き返す。

同様にルカもユウキ達から一瞬で離れたようにその場から抜けた。

 

「……感覚、ない」

 

右腕に対する負荷がかかりすぎたことを理解すると、ストレージから剣を取り出す。

左手に持つと近寄ってきていたセンチネルを斬り飛ばす。

 

「もうすぐ、終わる」

 

コボルド王が瀕死のために湧いてくるセンチネルも無限湧きに変化していた。

無心でずっとルカが斬っているとセンチネルの出現も止まっていた。

周りを見渡せば、キリトがトドメを刺しており、センチネルも消えていた。

ボスのHPも無くなり、破片へと散っていく。

《Congratulation》とフロア中心に表示され、第1層のボスが討伐された。

 

「勝った……」

 

「勝った。勝ったんだみんな!!」

 

フロア全体に喜びの歓声が響き、お互い噛み締めながら分かち合う。

ずっと一人でセンチネルを処理していたルカは座っていたが。

 

「なんでや!!」

 

そんな雰囲気を壊すように。

一人のプレイヤーの声が大きく響いた。

歓喜の声も止まり、そのプレイヤーへと向いていく。

 

「おかしいやんか!」

 

「キバオウさん、何がおかしいんだい?ボスは倒せたのに」

 

「そこのローブ着とる餓鬼と、トドメとったやつは知っとったんやろうが!?」

 

「……ボスの行動を?」

 

「せや!予め知ってたんならディアベルはんに教えとけば、あん時死にかける事もなかったやろうに!」

 

キバオウの言うことはもっともなのかもしれない。

だがルカは気づいていた。

この男はキリトの取った《ラストアタックボーナス》に。

危機に瀕していたディアベルを救ったルカに。

そしてベータテスターに嫉妬しているのだと。

 

「ただの嫉妬。醜い」

 

「……前から思っとったけどな。クソガキ、大人に舐めた口聞いとんちゃうぞ」

 

「そのクソガキに負けるのは誰」

 

「ベータ上がりが!」

 

会話を続けるのもくだらなくなってきていたルカはもう何も言わなくなったが、笑い声が上がった。

その主はキリトからであり、それと同時にルカも申し訳なさを感じてしまう。

 

「なんや。何が可笑しいんや!?」

 

「いや……下らないなと思ってな……」

 

嘲笑うようにキリトは笑いながらキバオウに向かって言い放った。

 

「俺はベータテスターだぞ?ボスの繰り出してくる攻撃なんて記憶してるに決まってる」

 

「なんやと……」

 

「俺は誰よりも上に登った!ボスの攻撃が分かったのは、他のモンスターで散々相手しまくっていれば覚えるに決まってるだろう?」

 

「そ……そんなん、チートやん。チートや!チーターやろうが!」

 

「ベータテスターでチーターだ!だから《ビーター》だ!」

 

キリトに投げかけられる罵倒、非難、嫉妬。

本来であれば自分自身が受けるものだったであろうそれをキリトが背負う。

そんな役目を自らさせてしまったことに罪悪感を抱いた。

 

「《ビーター》……いい名前だな?俺はこれからビーターだ!これ以降他のベータテスターと比べないでもらうか」

 

キリトはパーティーから抜け出ると第2層へと続く扉を開き、先へと進んでいく。

アスナやユウキは静かに見ていたが、怒りや心配をしているのだろうとルカは見てわかっていた。

 

「ホントに、下らない」

 

ルカも第2層へと上がろうと歩いていると腕を掴まれていた。

掴んできているのはユウキ。

 

「離してください」

 

「……」

 

泣き出しそうな顔をしていながらも、ユウキは縋り付きたいのだろう。

第1層のボス討伐は成されたのにも関わらず雰囲気は最悪で。

その感情をキリト一人で背負っていく。

ルカも見捨てるように行こうとしていたからだろうか。

 

「アスナさん。任せましたよ」

 

「……分かった……わ」

 

ルカは振り払うように。

誰にも抵抗はされなくなり、第2層へ続く先に向かった。

 

「う……ぁ……」

 

「ユウキ……」

 

「なんで……なんでぇ……」

 

抑えられなくなったユウキはアスナに抱きつきながら涙を零す。

後悔と自分の無力さを悔しがるように。

 

 

 

 

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