ソードアート・オンライン 〜瑠璃色の痕跡〜   作:☆さくらもち♪

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久々の投稿です。
不定期更新なのであしからず。


第7話

どこからか、戦闘の音が聞こえた。

ルカがいる第35層に存在する《迷いの森》は知る人は知る危険地帯の1つ。

専用の地図か、完全踏破済みのマップを持っていなければ何もなしで抜け出すのが至難とも言われる。

当然ルカは完全踏破をしているので迷うことはないが、欲しい素材があって来ていた。

 

「ん……あっち?」

 

戦闘をしているのであれば基本的に横取りなどをするのはよろしくない。

人に押し付ける行為も。

だが観察ならば構わないためにルカはその現場を見に行った。

 

「……!………!」

 

戦闘の音や、プレイヤーの声からも1人で戦っているのだろうと予想しながら見に行く。

 

「ひっ……!」

 

カーソルを合わせれば瀕死ライン。

その周りには迷いの森で最強クラスとも言える猿人モンスター《ドランクエイプ》が群れで襲っていた。

 

「助け……入ったのがいいかな」

 

このまま見捨てればルカにも火の粉がやってくることもない。

だが助けれるのなら。

瞬く内にドランクエイプはその動きを止めたかと思えば破片状へと砕けていく。

 

「ん……」

 

ルカが剣を振り終えると襲われていたプレイヤーへと近づいた。

 

「ひっぐ……」

 

顔を下にして泣いており、遠目からでは分かりにくかったものの、少女と言える年齢のようで。

その子の近くに落ちていた白く輝く羽根を見て。

間に合わなかったのだと、ルカは悟った。

 

「……《ビーストテイマー》……か」

 

SAOの中でも最も少ない職。

本来であれば敵であるモンスターを従える。

その条件も難しく、該当モンスターを一定以上倒していると不可能というもの。

レベリングをするために倒していると必然となることは出来ない希少職だった。

 

「……蘇生、出来るかもしれないです」

 

「ほんと……ですか……」

 

少女にとって死んでしまったペットは心強い相方のような存在だったのかもしれない。

出なれければこれほどまで涙を流す事も無いだろうから。

 

「第47層に蘇生アイテムがあります」

 

「47……」

 

希望を見つけたと思ったのだろう。

だが少女のレベルは35層の安全マージンをギリギリ満たしている。

この階層に来るまでにもかなり苦労をした。

だからこそ47層に行くまでどれだけかかるのかと。

 

「……手伝いますよ」

 

「い、いえ!情報だけでも……有難いので……」

 

「蘇生出来るのは死んでから3日間だけです」

 

「それ、は……」

 

「……女性に興味はないので」

 

助けてもらったとはいえ、ルカと少女は初めて見る相手。

ルカとしてはどちらでも良く、身体目的ではないが信じてもらえるとは思っていない。

人見知りではありながらも、人嫌い。

少女の事を助けたのも見殺しにする必要がなかったからに過ぎなかった。

 

「どうして……ですか?。私を助けたのも、手伝ってくれるのも。初対面なのに……」

 

「……義理の妹に少し似てた、からです。それ以上はないので」

 

ルカのたった1人の家族。

義理だとしてもルカを受け入れてくれた妹。

何かが似ている程度だったが、それだけでも少女を助ける気になっていた。

 

「くすっ……分かりました。手伝ってくれませんか?」

 

「……いいですよ」

 

少女の名前は《シリカ》と教えられた。

ルカも自分の名前を言うとシリカにトレードで大量のアイテムと武具を渡す。

その殆どが女性専用だったためにルカ自身が使うことも出来ずストレージを圧迫していたのでちょうど良かったのかもしれない。

 

「自分にはいらないのであげます」

 

渡した武具やアイテムを全て通貨であるコルに換算すればかなりの金額に膨れ上がる。

だがそれを気にすることもなく渡していた。

 

「あの……ルカさんって《攻略組》なんですか?」

 

「……攻略組には属していないです。ソロ専門なので」

 

「そうなんですか?」

 

「……どうしても攻略組は慣れないです。人が多いので」

 

「なるほどです」

 

転移結晶を惜しげも無く使って第35層の主街区へと移動すると宿屋に向かった。

シリカが推すらしく、宿屋にしてはそこそこ多くのプレイヤーが食事をしていた。

 

「宿代まで……ありがとうございます!」

 

「余ってるから良いです」

 

ルカ達が宿泊しようと手続きをしようとすると後ろから話しかけられる。

 

「ちょっと」

 

ルカが振り向くと赤い髪が特徴的な長身の女性。

だがその言葉の節々に敵意を感じていた。

 

「ろ、ロザリアさん……」

 

「……あら、シリカじゃない。生きていたの?見たとこ、あの小鳥はいないようだけど」

 

「ピナは死にました……!ですがすぐに生き返らせてみせます」

 

「ふーん……?」

 

ビーストテイマーのペット蘇生アイテムは第47層。

シリカと一時期パーティーを組んでいたロザリアはシリカのレベルも知っていた。

 

「あんたがこの子に垂らしこまれた口?」

 

「……ご自由に想像していただいてどうぞ」

 

相手にするほどでもないと判断すると心底どうでもいい声色で返答した。

 

「見た感じ、強くは無さそうだけど?」

 

「……はぁ」

 

「あんたとシリカで47層なんて行けるのかしら」

 

「……対して強くもないので」

 

一々口を出してくるロザリアが面倒になり、ルカはすぐに部屋を取ると2階へと上がっていく。

シリカも同じく上がっていった。

 

「ごめんなさい」

 

「大丈夫です」

 

「私、あの人のパーティーに居たんです」

 

「……続きは部屋で」

 

「はい……」

 

プライベート設定が出来る個室ではないため盗み聞きをされる危険性を考えてすぐさま取った部屋へと入る。

一瞬シリカを入れることを躊躇ったが、すぐに部屋移動してもらえばいいと考えた。

ルカとシリカが部屋に入ると扉を閉めてプライベート設定をする。

《聞き耳》というスキルが高いとこの設定は意味ないがないよりマシだった。

 

「さっきの人、パーティーだったんですね」

 

「はい……」

 

「……と、なると何か問題があって抜けた又は追い出された?」

 

「いえ……私が抜けたんです。迷いの森なんて私一人でも突破出来ると」

 

「なるほど……ね」

 

第35層の敵を相手するのにギリギリなレベルで踏破しようとするなど無謀に等しい。

シリカのレベルもある程度予想ついているルカはそう思いながらも口にはしない。

パーティーによってはメンバー内での問題など日頃からされている。

特に口出しするほどでもないだろうと気にはしていなかった。

 

「一応渡した物で47層の敵は相手出来ると思います。レベリングも兼ねて貴女に倒してもらいますが……いいですか?」

 

「は、はい!」

 

「出来るだけ倒すのは手助けしません。パーティーも自分にも入ってしまうので組みません」

 

「分かりました」

 

「危険になったら助けます。なので安心して倒していってください」

 

第47層のモンスターは数種類しかおらず、その中でも2種類ほどしか敵対していない。

今回の蘇生アイテムの道のりには1種類しかいないため、慣れていけば簡単に倒せる相手だった。

安全マージンを超えていなくても渡した武具て充分カバー出来る範囲だと思考していると、閉めた扉から気配を感じていた。

 

「ルカさん?」

 

剣を引き抜くとスキルを発動させて扉に思いっきり当てた。

爆音とも言える音が響き、扉を開けると大慌てで下へ降りていくプレイヤーを見つけた。

 

「……情けない」

 

破壊不可オブジェクト設定であるため、扉には傷一つついていないが、あれば扉は壊れていただろう。

 

「盗み聞きされてたみたいです」

 

「えっ?でも《聞き耳》でも聞けないんじゃあ……」

 

「一応上げておけば宿屋ぐらいなら盗聴出来ます」

 

「じゃあさっきの会話……」

 

「来たばかりだったので殆ど聞かれてないと思います」

 

「良かった……」

 

表情に出るほどホッとした顔で安心しているシリカの危機感に不安を感じるも、気にしないようにした。

 

「じゃあ自分は出ますね」

 

ルカが部屋を出ようとすると、着ているローブを掴まれていた。

既視感を覚えるも、気の所為かと忘れた。

 

「あの……一緒に寝てくれませんか……?」

 

「……自分、男ですよ」

 

「は、はい。それでも……」

 

さすがに男女が同じベッドで寝るのはよろしくない。

ルカとてそういった気持ちが湧くわけではないが、常識的には醜聞になるだろう。

だがシリカの不安を考えて仕方なく一緒の部屋に居ることにした。

 

「はぁ……ベッドまでは一緒に居ません。椅子にでも寝るのでそれでいいですか?」

 

「椅子で……」

 

「僕が疚しい気持ちを抱く可能性を考えないのですか?」

 

「わ、分かりました……」

 

何故かシュンとしているシリカだが、さすがに一緒の寝床になりたいわけでもないだろうと思っていた。

椅子に座ってテーブルに腕を乗せて枕にすると目を閉じた。

シリカが完全に寝たのを確認してからルカも意識を落とした。

 

 

 

 

 

ルカが目を覚ますと、外から明るい光が差し込んでいた。

時刻を見れば朝の9時。

ベッドを見るとシリカはまだ寝ているようで起きる気配はまだなかった。

 

「ん……お風呂」

 

今のうちにお風呂に入ってしまおうと、ルカは風呂場へと向かう。

この辺りの動きも手馴れたもので、ぱぱっと服を脱ぐとシャワーを浴びる。

長い白銀の髪が水で反射されて光り輝いていたが、ルカからは見えていない。

すぐに髪も身体も洗い終わると風呂から出て身体を拭う。

 

「は……ふ……」

 

髪の水分を取りながら服を着るとベッドに座りながら拭っていく。

 

「ん……」

 

長い髪の扱いも長年付き合っていれば慣れるもので、すぐに拭き取るとローブを着る。

ルカが使っているタオルが便利なもので、ドライヤー要らずに髪を乾かせる。

 

「シリカさん」

 

寝ているシリカを起こすべく、声をかけてみるも起きる感じはしない。

 

「シリカさん、朝ですよ」

 

揺さぶりをかけながら声をかけると、ようやく目が覚めてきたのか、身じろぎしながらも目を開けた。

 

「ん~……?」

 

「朝ですよ、起きてください」

 

「ふぁ~い……」

 

身体を起こし、ベッドから出て真っ直ぐに洗面所へと向かったので大丈夫だろうとルカは彼女の準備が終わるまで待つことにした。

1時間ほどすれば、渡した武具を装備した状態でルカの前へとやってきていた。

 

「出来ました!」

 

「ん……じゃあ行きましょう」

 

「はい!」

 

2人が宿屋を後にすると、主街区の中心にある転移門で47層に転移する。

 

「あっ……わぁぁ……!!」

 

視界に広がる花々の畑。

第47層は有名なデートスポットでもあり、カップルが多く来ていた。

 

「ここ凄いですね!」

 

「モンスターも少なくて比較的平和な階層の1つですから。じゃあ行きますよ」

 

ルカが先導しながらも、道中にいるモンスターをシリカが担当して、蘇生アイテムがある最北西端に辿り着く。

 

「ん……?」

 

ルカの《索敵》に何人もプレイヤー反応があり、多少警戒しながらシリカと歩いていた。

 

「シリカさん、あそこの台座です」

 

ルカが示した台座には何もなかった。

だが、シリカが言われて近づくと、1輪の可憐な花が咲いた。

 

「これが……《プネウマの花》」

 

「ここで蘇生はまだ危険なので宿屋に戻ってからにしましょう」

 

「はい!」

 

目的のものが手に入り、帰路を急ぐとルカが急に止まった。

 

「ルカさん?」

 

「……バレてるよ。早く出てきたら?」

 

ルカが1つの木に向かって話しかけると、その蔭から女性が出てくる。

その女性はシリカも知る人物だった。

 

「ロザリアさん!?」

 

「あーら?よく分かったわね、あたしの《隠蔽》を見破るなんて」

 

「丸分かり」

 

「ふーん……ま、いいわ。その様子だとプネウマの花も手に入れたようね?じゃあ……その花、渡してくれる?」

 

「わ、渡しません!」

 

「そっ……じゃあ死んでちょうだい」

 

ロザリアの得物は長槍。

リーチも長く、モンスターとの間合いが取れて安全性が高い人気の武器のひとつだった。

 

「……そこで隠れてる人。この人殺していいの?」

 

いつ攻撃してくるかも分からないロザリアから目を離してルカは1つの木に向かって剣を投擲する。

それに観念したのか出てきたのは黒づくめの青年。

そして《血盟騎士団》と呼ばれる大手ギルドの副団長の姿があった。

 

「殺すのは止めてくれ。牢獄送りにしたい」

 

「……僕がやると殺しちゃうかもだから、そっちがやってくれる」

 

シリカに転移結晶を持たせて、血盟騎士団の副団長に彼女を預けると、木々の中へと潜伏する。

 

「……見世物じゃない」

 

「oh......バレてるとはなぁ……」

 

「僕に見つかったのが運の尽き」

 

「……そうらしいなぁ……」

 

ルカが剣を一薙ぎすると、話していたプレイヤーの頭が飛んだ。

 

「好奇心は猫を殺す。げーむ、おーばー」

 

無機質で濁った瞳は消し飛んだプレイヤーに目もくれず、転移した。

 

 

 

 

 

その後日。

SAO最悪のレッドギルド《笑う棺桶》の壊滅が告げられた。

それを成し遂げたプレイヤーを見たものはおらず、畏怖を込めて《幻想者》と呼ばれた。

 

「弱かった……な」

 

《幻想者》は呟く。

だが、その言葉にこもった静寂を理解出来る者はこの場に1人もおらず。

ただ孤独に座していた。

 

 

 

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