ソードアート・オンライン 〜瑠璃色の痕跡〜   作:☆さくらもち♪

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第8話

アインクラッド第55層、ギルド《血盟騎士団》本部。

鉄の都とも称される場所にあるSAO最強ギルドにてとある会議が為されていた。

 

「正体不明のプレイヤー《幻想者》の捕獲作戦の会議を今から始めます」

 

会議の進行を進めるのは《血盟騎士団》の副団長を務めるアスナ。

《閃光》という異名を持つSAOプレイヤーの中でも強者として君臨していた。

 

「今回集まっていただいた皆さんの中には《幻想者》を知らない人もいると思います。そのため軽くですが説明をしていきます」

 

 

「《幻想者》とは正式なプレイヤーネームが一切不明な事から名付けられた名前です。事実、攻略組でもその姿を見つけるどころか気配すらありません」

 

 

「ですが、幻想者が出始めてからレッドギルド《笑う棺桶》の活動を聞くことが無くなりました」

 

「今回の作戦会議ではそれが偶然ではないから故にですか?」

 

気になったのだろう。

疑問に思ったプレイヤーの一人がアスナに質問をし、頷かれた。

 

「はい。攻略組が預かり知らぬ内に階層攻略が進んでいる時期が幻想者の出現と重なります」

 

「確かに……」

 

「ソロでの階層突破が可能である実力があれば《笑う棺桶》の単独討滅も可能である、と団長と私が判断をしました」

 

「それなら何故、皆を集めたんです?放っておけばいいのでは?」

 

「それも考えました。しかし、逆にこう考えられます。《幻想者》がもし、我々攻略組に敵対した際に対抗出来るのかと」

 

今回アスナがこの作戦会議を開いた大きな理由こそがそれだった。

ソロでの攻略は大いに結構。

しかしそれがプレイヤーに向いた瞬間に抵抗出来ないとなれば話は別だった。

最凶ギルド《笑う棺桶》はSAO唯一のレッドプレイヤーのギルド。

それを単独で討滅したということは攻略組よりも圧倒的な強者だった。

 

「……なぁ、アスナ」

 

「はい」

 

ずっと静かに聞いていた黒づくめの青年が口を開く。

 

「ラフコフを単独で潰した相手をどうやって捕獲するつもりなんだ?」

 

「それは……」

 

「対人戦を得意としていた《笑う棺桶》を独りで潰すぐらいだ。《幻想者》はそれ以上の技量がある」

 

「分かっています!」

 

「危険性はある。だが確実に勝算がないとこっちが全滅するぞ」

 

《黒の剣士》、《ビーター》と言われる事もあったソロプレイヤーであるキリトはそう判断した。

相手の手の内が一切合切不明であり、戦闘能力が分からない以上は全滅の可能性も視野に入れるべきだと。

 

「おや?まだやってるのカ」

 

そんな作戦会議の中、呑気な声が聞こえた。

 

「アルゴさん」

 

《鼠》と言われるSAO屈指の情報屋アルゴ。

SAOの殆どのプレイヤーから慕われ信頼や信用を勝ち取るやり手のプレイヤーだった。

 

「何しに来たんだ?」

 

「キー坊やアーちゃんに耳寄りな情報だゾ」

 

「……金取るだろ」

 

「今回は無しダ。オレっちからも頼みたい内容でナ」

 

最高峰の情報屋ならば手足になるプレイヤーは多い。

そんなアルゴが頼む内容が気になっていた。

 

「《幻想者》の居場所が分かったゾ」

 

「なっ……」

 

その情報はこの場にいるプレイヤー全員が欲していたもの。

 

「既にユーちゃんは聞いて先に向かったゾ」

 

「どこ!?」

 

「最前線の第73層の迷宮区ダ」

 

それを聞いた瞬間にアスナは会議を中止して転移結晶で向かった。

キリトも続いて転移する。

アスナにとってユウキは妹のような存在だった。

仲の良い親友でありながらも、姉のように接してくるユウキ。

その本人は攻略をしていない73層におり、危険しかないからこそ急ぐ必要があった。

 

「ユウキ……!」

 

儚く散りゆくのか。

それは彼女には分からない。

 

 

 

 

 

迷宮区に湧き続けるモンスターを出現した瞬間に倒すその姿。

無機質にただ作業で潰すのはまるで機械のようだろう。

半透明の刀剣がモンスターを狩り続け、消滅させていく。

 

「996……997……998……」

 

倒した敵の数だけを数えていると、《索敵》にモンスター以外が引っかかる。

プレイヤーに反応するそれは、迷宮区を走っているのか移動が異様に早い。

 

「ん……誰……?」

 

一体誰が走り回っているのだろうと思いながらも、興味を無くしてまた狩りを続けた。

《幻想者》と呼ばれし、正体不明のプレイヤー。

その正体はまだ子供の背丈だろう。

だが、世界に何も興味がないのだろう。

宝石のような虹色には何も映らない。

ボーッと出現しては消えていくモンスターを見ているだけだった。

だが。

それも数分で終わった。

 

「はぁ……はぁ……見つ、けたよ……」

 

「ん……」

 

息が切れており、荒い呼吸ながらも、子供をしっかりと見つめる。

《絶剣》と言われた少女。

そんな彼女がずっと欲していたのは。

ただ一人の少年だった。

 

「ルカ」

 

「見つかっ……ちゃった」

 

「ボクね。君の事、好きなんだ」

 

「うん」

 

「だから……その……。一緒に居て、くださ……ぃ……」

 

「僕は。好きなのか分からない」

 

悲しそうに。

ごめんね、と言った。

 

「ううん。それでもいい。ボクが教えてあげる」

 

「……分かった」

 

《幻想者》はそう言うと、ユウキに抱きついて転移結晶を掲げた。

転移先を呟くと、結晶から溢れる光によって2人の姿は迷宮区から消えた。

2人が転移したのは第48層。

のどかな景色が広がり、水車が存在する平和な階層の一つだった。

彼がユウキの手を引きながら、案内した先には一軒家があった。

 

「ここ、お家」

 

「ルカの?」

 

ユウキがそう聞くと頷く。

鍵を開けて中に入ると、キッチンとテーブルがあり、奥の扉には寝室やお風呂やトイレなどに繋がっている。

 

「僕は、ルカ」

 

「知ってるよ」

 

「SAOが始まる10年前。僕は孤児だった」

 

ルカが話をしながら、姿を隠すために使っていたローブを外して本来の姿をユウキに見せた。

 

「この髪も、この眼も。全て実験の結果」

 

 

「開発されたばかりの薬物の実験。それは全て研究所に引き取られた孤児に投薬された」

 

 

「結果、僕以外の子は全員死んだ。僕だけは薬物の耐性が強かったのか、全然死ねないの」

 

 

「でも、ずっと覚えてる。そこは、ずっと冷たい。子供は別々の部屋。だから誰もいない。お人形のようにいるしか出来ない」

 

日本どころか、世界の闇の1つ。

ルカが実際に居た場所はそんなところだった。

自分の周りはどんどん死んでいき、実験体が少なくなれば、また補充されていく。

最終的にはルカ以外の子供は投薬実験に耐えれずに全員死んでいた。

そんな場所にずっと居たからか、死への恐怖は一切なく。

むしろ、ルカは死にたがりだった。

 

「僕はもう成長出来ないの。薬で止まっちゃったから。なのに僕よりも大きい人に勝つ事は簡単だった」

 

「ルカ」

 

「寂しい。誰も居ないの。ずっと」

 

ルカ自身は自覚出来ないのだろう。

無意識に涙を流していた。

そんな彼をユウキは優しく抱きしめた。

 

「ボクがずっと一緒に居てあげる」

 

「……うん」

 

「君を探すの、苦労したんだよ?ずっと君を追いかけるために強くなって、色んなとこ回ったんだ」

 

「ん……」

 

「こうやって捕まえるまでに、1年ぐらいかかっちゃった」

 

ぎゅうっと離さないようにユウキは抱きしめて捕まえた。

 

「ねぇ、ルカ」

 

「ん……?」

 

「《笑う棺桶》はルカが潰したの?」

 

そのユウキの問いにルカは静かに頷いた。

完膚なきまでに殲滅したからこそ確かに言えた。

 

「そっか……」

 

数分以上そのままの体勢でいると、ユウキに少し重みがかかった。

 

「おやすみ、ルカ」

 

ルカを抱き上げるとユウキは奥の寝室に寝かせた。

そのままユウキも一緒にベッドに入ると、寝付いたルカを抱きしめながら眠りについた。

 

 

 

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