スペインからの帰国子女   作:かるな

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めっちゃ久々です!



第十四話

 僕たち海洋学園は今、再び東京に来ている。

 

 以前来た帝国学園の近くではないが、それでも周りの景色は全く変わらない。

 

 流石東京と言うべきだろうか。そして僕はまた、この東京の地で迷子になっていた・・・・・・

 

 

「ここ・・・どこ?」

 

 

 辺りを見回してもビル・ビル・ビル!もはや方向感覚などすでに無くなっていた。そしてこういう時に限って携帯のバッテリーが切れている。近くの地図を見ても全く分からない。もはや手詰まりだ・・・

 

 

「どうしよう・・・これじゃあまた監督とセツナさんに怒られる・・・」

 

 

 以前も同じように迷子になり二人にこってりと怒られているため、想像しただけで寒気がしてしまう。

 

 今回は自由時間があるということもあり、一人でゆっくりと色々なお店を回りたかったのだが、前科があるためお守を付けられそうだったのだ。

 

 何とか皆を説得して自由を手に入れたのだが、この有様である。

 

 しかし不幸中の幸いと言うべきか今は自由時間。集合時間までに戻ってこれればセーフである。こういう時は一旦落ち着くべきだ。そう考えた僕は、その場で大きく深呼吸を始めた。

 

 

「あのー、どうかしましたか?」

 

 

 心を落ち着かせたところで、急に後ろから声を掛けられた。

 

 振り向くと、そこには見たことあるようなジャージを着たマネージャーらしき人が二人立っていた。

 

 一人はセミロングで栗色の髪色。もう一人はロングでピンク色の髪色の女の子たちだ。先程声を掛けてくれたのは恐らく栗色の子だろう。

 

 

「見たところこの辺の学校の生徒ではないみたいですね」

 

「実は部活の合宿で来てて、道に迷っちゃったんだ・・・」

 

 

 女の子たちの前ということあってあまり情けない姿は見せたくなかったのだが、早歩きで移動する東京の人に話しかける勇気は僕にはない。

 

 そのため今はこの二人の女の子が唯一の頼みの綱である。

 

 

「形態の電源も切れちゃってて、道が調べられないんだ。もし良かったら道順を教えてもらえると助かります・・・」

 

「流石に慣れない土地では道順を覚えただけでは難しいと思いますが・・・」

 

 

 今度はピンクの子がそう答えた。確かにそうだ。知らない土地、しかも東京のように建物が多く、目印となるようなものも見つけにくい場所では自殺行為とも言える。

 

 

「じゃあこうしましょう!私はこの人を目的地まで届けるので、杏奈ちゃんは先に戻っていてください!」

 

「そしたら私も一緒に行った方が・・・」

 

「荷物持ちながらじゃ大変だと思うし、皆の練習の手伝いもあるから、私一人で大丈夫だよ」

 

「そこまで言うなら・・・」

 

 

 杏奈さんと思われる人物は渋々といった様子だったが納得したらしく、自らの目的地へと向かった。

 

 

「じゃあ早速行きましょう!それはそうと・・・貴方の名前を教えてもらってもいいですか?」

 

 

 そう言えばまだ名乗っていなかった。僕も彼女の名前を知らないが、やはりここは助けてもらっている僕から名乗るべきだろう。

 

 

「僕は神矢ユーリって言います。中学2年生です」

 

「私は大谷つくしです!中学3年生なの。よろしくね!」

 

 

 笑顔で自己紹介をするつくしさん。いつも僕が見ている女の子の笑顔とはだいぶ違うので何だか少し緊張してしまう。

 

 

「目的地を教えてもらってもいいですか?」

 

「はい!えっと、このホテル何ですけど・・・」

 

 

 こうして僕は、つくしさんというガイドさんと共に、ちょくちょく東京観光をしながら集合場所へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、ここです!助かった~・・・」

 

「それでは私はこれで!あ、これ私のメールアドレスです!もしまた東京に来て困ったことがあったら、遠慮なく頼ってくださいね!」

 

「ホントにありがとうございます・・・!」

 

 

 僕のためにわざわざ時間を割いてくれたつくしさんにひたすら頭を下げて、感謝の意を伝える。

 

 つくしさんと別れた僕は、皆に悟られないように何食わぬ顔でホテルへ入ろうとした・・・その時だった。

 

 

「自由時間中に他校の女子とデートなんて、随分気が緩んでるのね・・・神矢?」

 

 

 不意に掛けられた声に条件反射で寒気を感じてしまった。相手は勿論セツナさん。どうやら見られていたらしい。というか一つ納得できない言葉が・・・

 

 

「デートじゃないって!道に迷ってたところを助けてもらって・・・・・・あっ・・・」

 

「ふ~ん・・・やっぱりそういうことだったのね」

 

 

 腕を組んで僕の方を見るセツナさん。僕はまるで蛇に睨まれた蛙だ。少しずつ僕との距離を縮めてくる彼女だが、僕は逃げることが出来ずにいた。

 

 

「アンタ言ったわよね?今回は大丈夫だからお守はいらないって。言ったわよね?」

 

「・・・はい」

 

 

 僕はその後、集合時間ぎりぎりまでセツナさんのお説教を聞き続けるのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自由行動を終えた僕たちは借りたグラウンドで早速練習を始めた。今回の合宿の目的はまだ伝えられていないけど、それでも僕たちは一生懸命練習をするだけだ。

 

 しかし翌日に練習試合を予定してあるため、練習自体はいつもよりハードではなく、ボールを使った練習を中心に行った。

 

 

「そう言えば神矢先輩。監督の服装が行きと違うんすけど、何かあったんすかね?」

 

「初めて見る格好だよね・・・」

 

 

 練習をこなしながら沙漠君が監督の方を見てそう言うので、僕も横目で確認する。

 

 確かに行きよりも服装が華やかになっている気がする。沖縄の洋服店は結構見て回ったつもりの僕だけど、ああいった服は見たことが無い。

 

 

「あれは監督の趣味なんだ。毎回遠征や合宿をやるたび、空いた時間で服やアクセサリーを買ってるんだよね」

 

「監督もまだまだ乙女ってことっすかねぇ」

 

「そういえば霧野先生っていくつなんだろ?」

 

 

 そんな話をしながら、僕たちは今日の練習を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では皆さん、今日の対戦相手と試合中の課題を連絡します♪」

 

 

 ホテルを出発する前にロビーへと集められた僕たちは、ようやく本日の対戦相手の学校と、課題を教えてくれた。

 

 

「まずは対戦校ですが・・・木戸川清修です。豪炎寺修也君が強化委員として加わったチームですね。他にも有名な選手だと、武方三兄弟ですね。一昨年は準優勝、去年はベスト4の強豪チームです。ですが、問題ないですね♪」

 

『(どこらへんが問題ないんだ・・・)』

 

 

 笑顔を保つ霧野先生だが皆の顔は暗い。もう見慣れた光景だけど、やはりこの表情の差は面白い。

 

 ざわめき始めた皆を静かにさせるために手を叩く霧野先生。皆が静まったところで、霧野先生は今回の課題について話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木戸川清修グラウンドへと到着した僕たちは、荷物を整理してからウォーミングアップを開始する。

 

 僕たちはグラウンドの半分を借り、もう半分は向こうのチームが使用している。

 

 

「木戸川、すげぇ連携だよなぁ」

 

「・・・・だから何でお前は神矢以外にそんなに軽いんだよ。・・・豪炎寺さんが入ってから、連携に力を入れるようになったらしいぞ。元々高かった攻撃と、弱点だった守備が連携によって強化されてる」

 

「玲夢マジでよく知ってんなぁ」

 

「・・・お前ホントやだ」

 

 

 もうそろそろ試合開始のため、アップを切り上げて支度をする。

 

 両チームともにグラウンドに整列し、挨拶をしてからポジションに着いた。

 

 そして笛の音と共に木戸川清修との練習試合が始まった。スタートは木戸川清修ボール。3トップの武方さん兄弟が駆け上がる。その三人をフォローするように全体のラインが上がる。

 

 

「まずは神矢!お前の力を見せてもらうぞ、みたいな!」

 

 

 帝国戦の影響で僕は随分有名になってしまったのかもしれない。海洋学園のFW陣をあっという間に抜き去ると、そのままの勢いで僕に勝負を挑んできた。

 

 3対1じゃ流石に分が悪いけどそれでもやれることはある。武方三兄弟の長男が真ん中でボールを持っているので、彼から少し距離を取る。

 

 すると、やはりそのまま突っ込むつもりはないのか、左にいる次男にパスを出そうとする。

 

 その瞬間に僕はインターセプトをしようと動き出したけど、パスの速度が明らかに早い。

 

 

「残念だったな」

 

 

 パスの方向を見ると、案の定次男がそのパスをスルーしてその先に走りこんでいた豪炎寺さんにパスが渡った。

 

 

「玲夢君!頼んだ!」

 

「・・・監督の指示とは言え、この戦法は流石にめんどくさい」

 

 

 すぐ後ろにいる玲夢君は、僕と同じように豪炎寺さんと少し距離を開けて守備を行った。

 

 やはり強化委員だけあって周りは見えているようだった。玲夢君の守備範囲を素早く察知し、前方へのパスは通らないと判断した豪炎寺さんは、後ろから駆け上がっていた仲間へとパスをする。

 

 そのリターンをロブパスで受け取った豪炎寺さんは、玲夢君を抜き去った。

 

 そのまま一気にゴール前まで行くかと思ったが・・・

 

 

「・・・っ!そんな!」

 

 

 玲夢君のカバーに入ろうとした暁君が距離を詰める前に、豪炎寺さんは、シュート態勢に入っていた。

 

 

「ファイアトルネード!!」

 

 

 虚をつかれたGKの銑十郎君はシュートに反応できずにゴールを許してしまった。これが豪炎寺さんなのかと、海洋イレブンはさらに警戒を強めたのだった。

 

 

「様子見にしては随分緩かったな」

 

「・・・。」

 

 

 自陣へ戻る最中の豪炎寺さんにそう言われた僕は、少しムッとしてしまった。そして今日のこの試合を境に、僕の名前が全国に知れ渡ることとなる。

 

 




アレスの天秤を再構築して一から放送し直すのとかどうでえしょう?

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