「ユーリ君には後半の頭から出てもらいます」
ハーフタイムに入って全員が集められた直後、霧菜先生から交代を宣言された。
前半はずっとグラウンドの周りを走っていたためアップは完璧である。
「僕のポジションは何処ですか?」
「そうね・・・まずはOMF(オフェンシブミッドフィールダー)をやってもらいましょう。連携がまだ取れないと思うけど、そこは気にしないで。今日の試合はあくまで練習。ミスしたって全然いいわ。じゃあ皆・・・・・・前半あれだけやられたんだから、このままじゃいけないわよね?」
『はいっ!』
ハーフタイムが終了し、各チームの選手が指定のポジションへと着く。その途中、相手の大海原中の選手が一人、僕の方へと走ってきた。
「おーい!」
「えーっと・・・誰ですか?」
その人はピンク色の髪の毛をしており、色黒で額にゴーグルを付けていた。
「おう!俺は綱海条介っつんだ!さっきは悪かったな、あのシュート俺なんだわ。流石にディフェンスラインから狙うと入んねぇなぁあっはっは!」
そう言いながら僕の背中をバンバンと叩く。結構強く叩かれた感じがしたけど、不思議と悪い気はしなかった。
自分は大丈夫だと伝えると、綱海さんはお互いの健闘を祈ってフィールドに戻っていった。
「神矢、ちょっといい?」
「どうしたの銀条さん?」
僕も自分のポジションに着こうとすると、銀条さんに引き留められた。
「アンタこのチームの事多分知らされてないだろうから先に言っとくけど、シュートは基本10番のおにい・・・アイツが打ってるの。チームの中じゃ一番サッカー歴長いし、信頼出来るわよ。それと11番のアイツには足元にパスを出すこと。それ以外はあんまり気にしなくていいわ。細かいことは追々覚えなさい」
「うん、了解。銀条さんにもどんどんパス出すから、よろしくね」
「初っ端から一人でドリブルされるよりはいいけどアンタ、アタシ来る途中散々走らされたお陰で結構きついのよ。ま、いいわ。早く行くわよ」
銀条さんにも背中を叩かれる。これが沖縄の気合の入れ方なのだろうか。僕も急いで位置に着く。
ピーー!!
笛の音と共にこちらのボールで試合が始まる。すぐにFWの11番からパスを出され、それをトラップしてからボールを受け取る。
顔を上げると敵味方共にまだ動きは無い。どうやら僕の出方を伺っているようだった。
「じゃあまずは・・・」
左サイドの銀条さんの方を見ると彼女もこちらに気づいたみたいで、軽く頷いてくれる。
「銀条さん!」
朝の彼女の走りを考え、少しだけ前にパスを出す。
出したのだが・・・・・・。
「え?ちょっ・・!」
丁度取れる位置に出したはずのパスに、銀条さんは慌てて飛びつこうとした。
けど、走ったはずの彼女はそのパスに追いつかなかった。
笛の音が鳴って大海原中のスローインが指示される。相手がボールを準備する間に、僕は銀条さんの元へ駆けつける。
「ごめん銀条さん、もう少し手前だっわぷっ・・・!」
全部言い終わる前に彼女に片手で頬を挟まれる。
「アタシの話聞いてなかったの?」
「ご、ごめん!普通に出したつもりだったんだけど・・・」
僕が必死に謝るとパッと手を放してくれた。
「最初だしいいわよ。タイミングとかはそのうち分かるようになるわ。まずはしっかりボール取り返しなさい!(さっきのパス、ボールがほとんど見えなかった・・・まさか、ね・・・)」
銀条さんはそう言うと僕の胸に拳を軽く当ててきた。
「音村!」
相手のスローインから試合が再開され、大海原中のキャプテンである音村さんという人にボールが渡る。
音村さんはプレスに来たうちDFを一人かわすと、パス相手を見つけるべく顔を上げた。
「今だ!」
僕はその瞬間を見逃さず、後方から身体を入れるように距離を詰めた。
「っ!?」
音村さんが怯んだ瞬間にボールを奪い、身体の向きを反転させる。
これで僕がボールを持った状態で一対一に持ち込めた。
「君とやるのは初めてだ。君のリズム、感じさせてもらおう」
「悪いんですけど、僕音楽苦手なのでやめておいた方がいいですよっと!」
左へ行くと見せかけて、初動より速度を上げて右へ駆け抜けた。
「チェンジオブペースか・・・やっかいだね。でも、全体のリズムを捉えることはそう難しくはない」
抜き去る直前、音村さんはニヤリと笑っていた。
そのままドリブルで持ち込もうと考えたけど、銀条さんの言葉を思い出してパスコースを探した。
すると、丁度ハーフタイムで銀条さんから教えてもらった、11番の人が相手の最終ラインのDFのマークを振り切ったところだった。
「よし!」
今度は11番の足元へパスを出す。パスが足元ということもあり、さっきの様にスルーすることもなく11番の足元にすっぽりと収まった。
「リターン!」
パスを受けた11番が相手を背負いながらパスコースを探している内に、僕は右側にズレながら上がっていく。
「っ?!任せたよ!」
ポストプレーをしていた11番は何故か少し驚いていたけど、直ぐに僕の方へリターンパスを出してくれた。
僕が走り込んでいる位置はハーフラインとペナルティエリアの間ぐらい。キーパーは前に出ておらず、このままシュートという訳にはいかない。
「だったら、ここしかないよねっ...!」
僕は前方に向かってボールを蹴った。
「あそこからシュート!?神矢のやつ何考えて......違う、これは...!」
僕が放ったシュート性の'パス'は、左サイドから中へ走り込んできていた10番の子がしっかりと合わせ、ゴールネットを揺らした。
試合はまだまだ続きます!