スーパーロボット大戦MAX (一時更新停止中) 作:クリスヴェクター
第零話「蒼の拳士、紅の狩人」
──────。
″表″、″裏″。
″良″、″悪″。
″陰″、″陽″。
“平和”、“戦争”
正反対のものが揃うことで、成り立つ関係。
もしかしたら、一方だけでも成り立つ関係。
───しかし、それが行き過ぎてしまったら?
日が暮れ夜が更け始めた頃、事は起きた。
北アメリカはコロラド州。
乾燥した気候と赤茶をした高原と崖しかない大地を、一機の
機体は闇に紛れる様な暗い青色をし、所々に赤いラインが走ってある。両腕にはそれぞれ大型のパイルバンカー、六連装のガトリング砲。そして両肩はコンテナを取り付けたように長くハッチが付けられた重武装。
″ゲシュペンストMk-Ⅲ″
そう呼ばれるPTの目前に一つの建造物が迫って来ていた。近付くにつれ細部が見えてくるのと同時に、その前に立ちはだかる者も明らかになる。
「………………」
コクピットで操縦悍を握る男は減速することなく、ペダルを踏み加速する。男に表情はなく、その視線は目の前に立つ者だけに注がれていた。獲物に狙いを着けた鷹の様に
呼応してMk-Ⅲもツインアイを光らせ突撃する。
「来たか、腐った連邦の亡霊が」
迫るそれを迎え撃つロボットー俗に
敵意を放つアクセルが操る蒼と白の特機 、″ソウルゲイン″ が
『お前たちは……望まれない世界を作る』
サウンドオンリーの通信機から発する男の声に、アクセルは不適な笑みを浮かべながら切り返す。
「ふん。だが、俺はこの世界と決別する。この敗北の先にある勝利を得るためにな!」
「…………勝利…敗北……そこに意味はない…。破壊されるか、創り出されるか……。創造の破壊…破壊の創造…お前は方舟と共に朽ちろ…」
意図も意味も読めない言葉を繰り返す男にアクセルは噛み合わない会話を断ち切る。
「ならば、後顧の憂いは断たせてもらう。貴様の存在こそが一番の脅威なんでなぁ、これがな!」
ソウルゲインが地を蹴り、Mk-Ⅲがさらに加速する。
二機は瞬く間にぶつかり、彼らを中心に足場になった大地が削られ吹き飛ぶ。互いに両手を掴み合い、力押しに持ち込む。腕部の機構が軋みを上げるがポジションで有利なソウルゲインが上から押さえ付けに掛かる。
「舐めるなぁ、パワーならこちらが上だ!」
「押せよ...Mk-Ⅲィ!」
Mk-Ⅲのブースターが唸りを上げ噴射炎を吹き、ソウルゲインを逆に押し返す。咄嗟の出来事にアクセルは目を丸くするが、瞬時に思考を切り替えた。
「この質量差でだと? ならばぁ!」
火器管制が反応し、手の甲のクリスタル部にエネルギーが集中する。狙いは着ける必要はない。目の前の敵にぶつければ良いのだから。
「青龍鱗!」
青いエネルギーはビームとなりMk-Ⅲの右腕に喰らい付く。それによりバンカーの炸薬がビームの余波で暴発し、腕が半ばから消し飛ぶ。
「ぐおぉっ!?」
「まずは右腕一本頂いたぞ!」
爆発を盾に一定の距離を取るソウルゲイン。モニターに膝を突く相手にアクセルの表情から笑みが零れる。だが、煙が晴れた時その笑みが凍りつく。
大量のオイルを垂れ流す破壊された右腕から、突如として幾本もの″蔓″が飛び出してきたのだ。その蔓は伸び、互いに絡み合い融合し、やがて元の腕を完全に復元する。さらに変化は止まらず、
腕から肩へ、頭部へ、全体へ。そして青から紅へ。
直線的だったフォルムは、所々歪み捻じれ、重なり合い肥大し、禍々しいものへと変わる。
「───ッハハ、ッアッハハハハッ、フハハッハッハッハッハ!!!」
男は笑う。 ただ笑う。狂気的に叫びにも似た声で笑い続ける。 その変貌に、その様にアクセルは悪寒を感じ思わず後ずさる。
全長が100mを超えたところで変貌は止まった。が、そこに立っていたのは、ゲシュペンストMk-Ⅲともましてや特機とも程遠い存在だった。
その姿を例えるなら、
─────“化物”
異形にアクセルは忌々しく吐き捨て、巨大化した“Mk-Ⅲだったもの”を睨む。
「それが...そんなものが、貴様が手にした力か! 狼と言うよりは外道に過ぎるぞ...“ベーオウルフ”!!」
「...お前たちは、純粋な生物になり得ん。俺がァ...そう! 俺こそがッ!!」
言い終わる間もなく、鬼面の様な胸部カバーが開き黄色いコアが露出する。そのコアが光り一拍置いた瞬間、轟音と共に大出力の光線が発射される。
「っ...! 当たってはやれん!」
モニター一面が白一色に染まっていく中、間一髪でアクセルは回避する。しかし、その威力は凄まじく、脇腹の装甲に掠っただけでソウルゲインを弾き飛ばし、背後にあった搬入口が見る間に溶解し、爆散する。
「クッ、搬入口が!」
背後で再び振り返った先には、既にベーオウルフはチャージをし始め、再びコアに粒子が集まりだしていた。平外見は静を保っているものの、アクセルには十分過ぎるインパクトを与えいたのだ。
「あのまま奴が力を得れば俺たちにとって脅威...いや、それ以上に成りかねん。今ここで奴を倒すしかない...!」
モニターに表示されたタイマーは、刻一刻と残り時間を刻む。その時間は余りにも少なかった。
「残り時間は127秒...やれるか、俺に?」
約2分の決着。どちらにしろ退路は既になくなっている。あるのは前進のみ。アクセルは覚悟を固める。
「認証コードOK、起爆時間セット。タイムラグは...わずか5秒。......ただの博打だなぁ、コイツは」
見ればちょうどチャージが終わったらしく、コアが赤く輝きだす。
「さぁ、
「...、静寂を乱す者...修正スル!」
男は歪んだ笑みを浮かべトリガーを弾く。
その僅かな瞬間、エネルギーが収束し放出するまでの隙間を狙い、アクセルは勝負に出た。
「よく狙え、ベーオウルフ!」
Time limit:
──126,51s。
ソウルゲインが跳躍し、その下を大出力の光線が焼き付くす。ベーオウルフは空に舞い上がった獲物を追い放出したままの光線を強引に射線を上げる。目下が再び赤く染まる中、臆することなくアクセルは一直線に加速する。
「奈落へ落ちろぉぉぉッ!」
下から迫る光線を紙一重で掻い潜り、ソウルゲインはがら空きになった懐に組み付きブースターの出力を上げる。
「グォォ!?」
先程破壊され瓦礫となった搬入口を突き破り、地下格納庫にベーオウルフは叩き落とされる。
「ぐっ......? 何も、ナイ、だと...。静寂を乱す方舟は、ドコに!」
よろめきながら立ち上がったベーオウルフは、対象がない事に気付き動揺する。そんな彼にアクセルの声が飛んでくる。
「転移したのさ」
「転、移だト......?」
「そうだ」
「!!」
我に返り、声のする方に見上げれば、大きく空いた穴の縁でソウルゲインが見下ろしていた。
その姿は背後に映る月と重なり、罪人に天罰を下す審判者 、はたまた魂を狩りに来た死神であった。
そして彼は告げる。
「そして俺も行く、新たなフロンティアに。......だが、貴様のような化け物を野放しにするわけにもいかん!」
両拳を合わせた瞬間全てのクリスタルのパーツが輝き、全身から蒼炎の様にエネルギーが溢れ出す。
──090,57s。
「ここで潰えるんだな、これがなっ!」
「っ……!」
跳躍と同時に青龍鱗の連射を浴びせ、着弾で爆風が広がりその中にソウルゲインは突撃する。
煙が立つ中で幾つもの打撃音が響き、火花が散り、そこからベーオウルフが蹴り飛ばされ空中に高く吹き飛ぶ。男が顔を上げた時には目の前に爆風を突き破ったソウルゲインが大きく映し出されていた。
「はあッ! でぇいいッ!」
態勢の崩れたところを、縦横無尽に殴り、蹴り、削り、潰し、弾き飛ばす。怒涛の攻撃が加速し、更に激しさと破壊が増す。
「うおおおッ!!」
「ッッ!?」
膝蹴りをもろに受け、仰け反ったベーオウルフの顔面にエネルギーを纏ったソウルゲインの拳がめり込む。
「...ッッ、全弾モッテイケェッ!!」
しかし、ベーオウルフと言えど攻撃を受けるばかりではない。 吹き飛ばされながらも地面を削り飛ばし踏みとどまり、接近するソウルゲインに向けて両肩から大量のベアリング弾を浴びせる。一発一発が相当な威力を持つ特殊弾がソウルゲインの頭部に、肩に、体中に突き刺さる。
「っ…...リミット解除。コード...
それでもアクセルは止まらない。誰にも止められない。
コックピット内で小爆発が起き飛び散った破片が頭部に当たり出血し右目に入るが、それを何の事なく大きく見開き、逆に睨み付ける。
──045,73s。
「ソウルゲインよ……。...俺を、俺を勝たせてくれぇぇぇッッ!!!」
弾丸の嵐を抜け、アクセルは渾身の一撃を狙う。ソウルゲインはそれに呼応し、エネルギーを纏い長く鋭利になった肘のブレードを振り上げ
「でぇぃぃぃやっ!!」
袈裟懸けに切り裂く。
「グアァァッ!!」
ベーオウルフの背後にアクセルは着地するが、疲労がピークに達し膝を突いてしまう。振り返ったその顔には反して笑みが浮かんでいた。
──025,37s。
「ベーオウルフ...。俺の...勝ちだ!」
瞬間、彼を囲む四つの装置が円形に陣を描き青白く光り出す。研究所地下に設置された転移装置が作動したのだ。
───ベーオウルフ、今回の賭けは俺が貰っていくぞ
「俺はこの世界と決別すると言った。貴様はそこで吼えていろ...リュケイオスが燃え尽きる、業火の中で!!」
「ッッ、アクセルゥゥ、アルマァッッ!!!」
状況を理解し、ベーオウルフは悪鬼の如き形相でアクセルに迫る。それを持ち前の不適な笑みでアクセルは返す。
「行き掛けの駄賃だ。貰っていくぞ、」
ベーオウルフが握り潰そうと両腕をソウルゲインに伸ばしてくる。
「貴様の首をなぁッ!」
両手を腰だめに、手の中で最大にまで溜め込まれたエネルギーが渦巻く。
「キョウスケッ、ナンブゥゥウッ!!」
それを眼前にまで迫ってきている宿敵に全力でに放つ。
「砕けぇッ!
螺旋を纏った白いビームが突き出したベーオウルフの手を破壊し、剥き出しになったコアに直撃する。
「グハァッ!?」
撃破には至らなかったが、胸部から煙を上げベーオウルフを転移装置から離すことはできた。
同時に転移装置の輝きが増し光がソウルゲインを包むと、一瞬でその場から消え去る。ベーオウルフが慌てて立ち上がった時には、目の前には僅かな光の粒子が名残惜しく残っているだけだった。
──000,00s。
セットされていた自爆装置が作動し、地下ドックの各所で炎が吹き、振動が激しくなる。
「ッッオオオオォォオオッ!!!」
対象を目の前で取り逃し、今まさにその身を業火で焼かれようとしているベーオウルフ、キョウスケ・ナンブはただ叫ぶしか出来なかった。その叫びがえ
そして一度大きく振動した瞬間白く光り大爆発のエネルギーが全てを消し飛ばし、暗かった夜空を赤く染め上げる。
───一つの決着が終わりを告げた。
静寂に戻った世界は繰り返す。
闘争が始まる前の日常を。変化/進歩のない日常を。
しかし……この闘争が未だ始まったばかりだという事に、誰も知ることはなかった。
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