RIDDLE JOKER ハーレムルート   作:恋熊

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Chapter 4-2

 

 

「デート?」

 

俺は思わず間の抜けた声を出す。

 

『うん、そう。デート』

 

電話の向こうの三司さんの声は落ち着いている。

 

『今週末、デートしない?どうせ暇でしょ?』

 

俺が暇だろうと思われるのは少し屈辱だが全くもってその通りなので言い返せない。

 

「悪いが俺にだって予定くらいある」

『えっ⁉︎嘘っ⁉︎』

「ランニングに腕立て伏せ腹筋背筋スクワット匍匐前進バーベル上げその他トレーニングで暇を潰す」

『どこの脳筋よっ⁉︎というかそれつまり予定ないじゃないっ!』

 

俺の軽口に三司さんが反応してくれるのが楽しい。

 

とはいえ、ふざけ過ぎてもいけないだろう。

 

俺は真剣に答える。

 

「仕方ないな。そこまで言うならデートしてやろう」

『なんで上から目線なのよ・・・』

 

三司さんが疲れた声を上げる。

 

『でもありがとう。嬉しい』

「・・・」

 

素直に礼を言われるとこそばゆい。

そこに恋愛感情がないとわかっていても。

 

おそらく、三司さんの目的は外出することにあるんだろう。

買い物であれ、娯楽であれ、本当なら1人で行きたいはずだ。

しかし、星幽祭で摘発できたとはいえ、三司さんを狙う連中がもういないとも限らない。

 

だからこそ俺に声を掛けたんだろう。

俺は三司さんを守る任務があるからな。

俺としても、三司さん1人に出掛けられるよりは、俺に頼って貰った方がありがたい。

 

だからこそ俺は三司さんの提案に乗った。

 

ということで、今週末は三司さんとデートだ。

 

 

…………………

 

「・・・デート?」

 

七海が素っ頓狂な声を上げる。

俺はそんな変な事を言ったのだろうか。

 

「ああ、デートだ」

「・・・誰が?」

「俺が」

「・・・誰と?」

「三司さんと」

 

三司さんとデートする。

それはいいとして、俺と2人で行動するからといって三司さんの身の安全が完全に確保できるというわけじゃない。

 

だから俺は七海に事情を伝える事にした。

万が一の場合を考えて。

 

「ど、どういうこと⁉︎それってお兄ちゃんから誘ったの⁉︎」

 

いつになく取り乱す七海。

こんなに取り乱すなんて何か心配事でもあるのか?

 

「いや、三司さんに誘われたんだ」

「それで了承したの?」

「当たり前だろ」

 

1人で行かせて襲われでもしたら大変なんだ。

三司さんも俺をボディーガードのつもりで誘ったんだから。

 

 

…………………

 

〈Another View〉

 

七海「(ま、まままままさかっ!)」

七海「(お兄ちゃん、三司さんのことが好きなのっ⁉︎)」

七海「(誘いに乗ったってことは少なくともお兄ちゃんも満更じゃないってことだよねっ⁉︎)」

七海「(デート・・・お兄ちゃんと三司さんがデート・・・うぅ・・・嫌だよぉ・・・!)」

七海「(最近抑えられないとは思ってたけど、他の女の人との話を聞くのがこんなに耐えられないなんて・・・!)」

七海「(このまま行くと、三司さんにお兄ちゃんが取られちゃう・・・!)」

七海「(なんとかしなきゃ・・・)」

 

…………………

 

「・・・行く」

 

ボソッと七海が呟く。

 

「え?」

「私も行くっ!」

 

七海の様子は真剣だ。

 

「三司さんが出掛けるなら、護衛が必要でしょ?」

 

七海は俺の元々考えていた事を言う。

 

「だったら、遠くから見てるよりも三司さんと一緒にいた方が護衛として動きやすいし、私は三司さんと同じ女性だから一緒に動ける範囲も広いでしょ?」

 

確かに三司さんは女性で俺は男だ。

三司さんと一緒に行けない様な場所も多い。

 

「だから!私も一緒に付いて行く!」

 

まるで言い訳でもしているかの様にまくし立てた早い口調だったが、七海の話も最もだ。

 

そもそも七海には後方支援をお願いしようかと思っていたが、一緒に来てもらった方がいいかもしれない。

 

「じゃあ、よろしく頼む」

「うんっ!」

 

気合いを入れる様に七海は大声を上げる。

 

…………………

 

来たる週末。

 

「何っ⁉︎デートだとっ⁉︎」

「ああ、三司さんとな」

 

俺はいつも通り、二条院さんと朝からランニングをしていた。

 

そんな中、他愛ない話の1つとしてデートの件を話した。

 

「デート、デートかぁ・・・」

「?」

 

二条院さんはどこかしょんぼりしている。

そんな様子の彼女も可愛いが、何か問題でもあったのだろうか。

 

しかししばらくして切り替えたのか、キリッとした表情でこちらを見る。

 

「私とて女の端くれだから気持ちはわかる。男女の仲をとやかく言うつもりはない」

 

何の話だろうか。

 

「しかし君達は学生だ。デートに行くからといって、そ、それ以上のやましい行為は看過できないぞっ」

「するかっ!」

 

何を言ってるんだこのムッツリスケベは。

 

「本当か?み、未成年がホテルを利用するのはまずいとーーーー」

「ただのデートでどこまで妄想するんだ⁉︎普通は二条院さんが考える様なエロい事はしない!」

「ちっ!違う!わ、私は断じて、エロい事など、考えていない!」

 

嘘だ。

絶対嘘だ。

 

「大体、七海も一緒に行くんだからーーーー」

「何ぃっ⁉︎いきなり3人で、だと⁉︎そういうのは流石に早すぎる!いやいや!時期の問題じゃなくてーーー」

「話を聞け!」

 

二条院さんの頭の中はそんな事しかないのか?

正直ランニング以上に疲れるんだが。

 

もう、様子を見てもらった方が早いんじゃないだろうか?

 

「・・・・・」

 

俺は天啓を得たかの様に目を見開く。

 

「二条院さん」

「な、なんだ?」

「もう、この際俺達のデートに一緒に来ないか?」

「なっっっ⁉︎」

 

二条院さんには話だけするから、変に彼女が妄想してしまう。

だったら実際にその場に立ち会ってもらえば彼女の誤解も解けるだろう。

 

それに、このデートの目的は三司さんの買い物、かつ三司さんの護衛だ。

三司さんを襲わせない為には、なるべく人と多く行動させた方がいい。

その為に人数が増えるのは得策と言える。

 

知らない人ならいざ知らず、信頼の置ける人物であれば何人でも欲しいくらいだ。

 

だから二条院さんがこのデートに参加してくれるのは俺にとっては好都合なのだ。

 

問題は、二条院さんの返事だが・・・。

 

「そ、そんな!3人でさえ多いのに4人なんて・・・!在原君はなんて事を言っているんだ!」

「・・・・」

 

このムッツリの誤解を解くのにしばらく時間がかかった。

 

…………………

 

ランニングを終え部屋に戻り、簡単に身支度を整えてからロビーに降りる。

 

七海も二条院さんも支度に準備がかかるだろうから、1度ロビーに集合してから三司さんの部屋へ向かう事になっている。

 

「・・・暇だ」

 

女の子の準備というものは時間がかかる。

 

まだ約束の時間になっているわけではないが、二条院さんが準備に戻ってから早20分は経っている。

 

ロビーに集合と言った手前、2人が来る時間もわからないから下手に離れるわけにはいかない。

 

そんなわけで俺は今とても暇を持て余している。

 

「あれ?」

 

ふと声が聞こえる。

振り返るとそこには茉優先輩がいた。

 

「どうしたの?こんなところで」

「俺はデートの待ち合わせです。先輩こそどうしてこんなところに?」

 

今はまだ午前8時頃。

授業のある日ならいざ知らず、休日に外へ出掛けて遊ぶには微妙な時間だ。

 

「ちょっと早く起き過ぎちゃってね〜。暇だし研究でもしようーーーーデート?」

「へぇ。茉優先輩は勉強熱心ですね」

 

ガシッ。

 

いきなり肩を掴まれる。

 

「デッ!デデデッ!デートってどういう事っ⁉︎」

「どうも何も、これから三司さんとデートするんです」

「ーーーーッ⁉︎」

 

茉優先輩はまるで信じられないものを見る様な目でこちらを見る。

 

「あ、あのっ、触るもの皆傷付ける、みたいな感じだった暁くんが・・・デート⁉︎」

「おいやめろ」

 

背中がむず痒い。

 

「し、しかも三司さんとって・・・暁くん、いつの間に三司さんとそんな関係になってたの⁉︎」

「いや、別に俺達は付き合ってないが」

「付き合ってないのにデート⁉︎最近の若者は進んでるなぁ。・・・それにひきかえ、私は歳ばっかり食っちゃって、そのくせ浮いた話の1つもなくて・・・うぅ・・・言ってて悲しくなってきた・・・」

 

寂しそうに虚空を見つめる茉優先輩。

なんか可哀想だな。

 

「別にデートと言ったが、そんなのはただの名目で、実際には買い物するだけだぞ?」

「へ?」

「今から七海と二条院さんも一緒に行く事になってるし」

 

ポカンと口を開ける茉優先輩。

 

「・・・それって、三司さんには了解を取ったの?」

 

なぜそんな事を聞くのだろう。

 

「聞いてはいないが、どうせ誰か付き添いで買い物したいってだけの話なんだ。大勢で言っても問題はない」

 

むしろ俺としては大勢で行った方が好都合なくらいだ。

 

俺の返答を聞いた茉優先輩はなぜか変な顔をしている。

俺は何か変な事を言っただろうか。

 

「暁くん。そのデート、私もついて行っていい?」

 

茉優先輩は苦笑いでそんな事を聞いてくる。

 

「ああ、構わない」

 

1人でも多い方が俺としては嬉しい。

 

茉優先輩の申し出は嬉しい限りだ。

 

「三司さんは暴れる様なタイプじゃないとは思うけど、せめて私だけでもフォロー入れられる様にしなくちゃね・・・」

 

茉優先輩が何か呟くが、俺には聞こえなかった。

 

 

…………………

 

〈Another View〉

 

「うぅ・・・緊張する・・・・・」

 

もうすぐ約束の時間だ。

 

いつもの休日ならダラダラして猫の動画見て過ごすか、ダラダラしたいな〜って思いながら取材対応に出かけるかなんだけど、今日に限ってはダラダラしたいとかそんなことを考える余裕はない。

 

「服・・・これでいいわよね・・・・」

 

今日は在原君とのデートの日だ。

 

今もギリギリまで服を選んでて危うく間に合わないところだった。

いや、集合は私の部屋にしてあるから間に合わないことはないんだけど。

 

「ちゃんと可愛い・・・よね?」

 

何度も見直す。

自分なりに気合いの入った格好をしてるつもりだけど、ちゃんと可愛いとか綺麗とか言ってもらえるだろうか。

 

・・・あの男がそんな気の利いた言葉をくれる姿が想像できない。

 

でも、何かしらコメントをくれれば嬉しい。

 

「ふふっ」

 

まだ始まってもいないのに、これからのデートのことを考えるだけで楽しい。

 

それくらい、私は彼のことを好きになってしまっている。

 

「惚れた方の負け、とはよく言ったものだ・・・」

 

在原君にどんな扱いをされても、今の私はきっと嬉しいから。

 

「うぅ・・・」

 

そろそろ在原君が来るはずだ。

 

ちなみに今日はパッドはしていない。

 

折角のデートだから、私のありのままの姿で彼と楽しみたい、というのもある。

 

ただそれ以上に、デートに盛って行くとデリカシーのないことを言われそうで、癪なのでやめた。

パッドなしでも言われそうな気がするけど。

 

パッドを盛って『見栄を張る女』みたいに思われるのはなんだか嫌だ。

 

・・・既に思われてる気もするけど。

 

とにかく、私は素の自分で勝負するって決めた。

素の自分で、ありのままの自分でデートして、在原君を惚れさせてみせるっ!

 

無意識の内に私はガッツポーズをしていた。

 

コンコン。

 

不意にノックの音が聞こえる。

 

在原君だ。

 

「はーい。今開けるわ」

 

ドキドキと鳴る心臓を抑えて私はノックに返事を返す。

声が裏返ったりしてなかったかしら。

 

ドアの前に立つ。

 

うぅ・・・。緊張する・・・・。

 

私は心を落ち着かせる為に深呼吸する。

 

そして、心を決めてドアを開ける。

 

「いらっしゃーーーーー」

 

目の前には在原君がいた。

それはいい。

 

デートしようと誘ったのは私なんだから。

 

しかし。

しかしよ。

 

まさか、他の皆までいるなんて、どうやったら想像できるの・・・・⁉︎

 

…………………

 

目の前の三司さんがドアの前で固まっているからか、どことなく気まずい。

 

いや、本当に気まずい理由はわかっている。

 

三司さんの格好だ。

 

女の子らしい、オシャレな可愛らしい格好をしている。

おそらく相当選んだだろう。

外面を保つためと考えても不足なくらい、三司さんの格好はオシャレだった。

 

それはいい。

良くはないけど、置いておいて大丈夫だ。

 

問題はその胸だ。

 

普段外を歩いてる時より数段小さい。

 

つまり、今日は盛っていないのだ。

よりによってなぜ今日・・・。

 

俺は外を歩くつもりだろうから大丈夫だろうと思っていた。

 

しかし、実際には今日の三司さんはまな板である。

 

しかも七海達の前で。

 

三司さんは顔を赤くして口をパクパクさせて若干涙目だ。

 

これはまずい。

 

この状況をなんとか打開せねば。

そんな風に思っていたところ、最初に口を開いたのは俺ではなかった。

 

「あやせ先輩の胸が凹んだ!」

 

・・・七海よ。

俺が言えたことじゃないがその言葉はどうかと思うぞ。

 

「この兄あればこの妹ありか!」

 

三司さんがキレた。

 

ついでに俺もdisられた事については喜んで飲み込もう。

散々酷いことしてるからな。

 

「凹んだんじゃないわよ元々ないのよ!」

 

というか三司さん。

余計なことまで叫んでますよ。

 

「そうよどうせ私はパッドよ!盛ってるのよ!偽乳なのよぉ!」

 

・・・なんか三司さん、若干壊れちゃってない?

 

「三司さん・・・流石にもう」

「何よ!乳があるのがそんなに偉いの⁉︎乳がない女は人権すらないっていうの⁉︎」

「三司さん?三司さーん⁉︎」

 

 

 

「乳部タイラーとか言った奴はぶっ殺してやるーーーーーーッ!」

 

三司さんが落ち着いたのはそれからしばらくしてからだった。

 

 

…………………

 

〈Another View〉

 

「やっぱり、暁君の勘違いだったんだ・・・」

 

式部先輩が苦笑いしながら私の背中をさすってくれる。

 

悔しいけど、こうしてもらえると落ち着いてしまう。

 

「少しは落ち着いた?」

 

式部先輩が優しく訊いてくる。

 

「はい・・・ありがとうございます」

 

予想だにしない事態と、秘密がバレてしまった事に動揺してしまったけど、気持ちはなんとか持ち直した。

 

「それにしてもあの男・・・なんなのよ・・・!いつもいつも・・・デリカシーないとは思っていたけどここまで酷いとは思わなかったわ・・・!絶対にぶっ殺してやる・・・!」

「あ、あやせ先輩、まだ落ち着いてないみたいですよ・・・?」

「あ、これは素です」

 

七海さんが怯えてしまったので弁明する。

ちなみに今、在原君には部屋から出て行ってもらっている。

 

こうでもしないと、今すぐ殺しそうだから。

 

「素・・・ってことは、いつもは偽ってたって事ですか?・・・その胸みたいに」

 

本当・・・!

この兄妹は余計なことしか言わないわね・・・!

 

「ひっ!」

 

七海さんが私の形相に怯えて二条院さんの後ろに隠れる。

 

「七海君。そういう人の言われて嫌なことを言うのはどうかと思うぞ」

「ご、ごめんなさい・・・」

 

二条院さんが私の方を擁護してくれ、七海さんが私に謝ってくれる。

 

まぁ、私もちょっと大人気なかったかもしれない。

 

「パッドで盛って周りにバレない様に振舞っていたんだ。そんなことをするなんて相当じゃないか!」

「ん?」

 

なんか風向きが変わった様な。

 

「三司さんみたいな人がそこまでするんだ。きっと私達には打ち明けられない様な酷い仕打ちを、胸関連で受けてきたに違いない・・・!」

「うぐっ・・・」

 

二条院さんが壮大な勘違いをしている。

 

「きっとトラウマなんだ・・・!そこをいじるのは友としてあってはならないことだ!」

「・・・っ!」

 

二条院さんの優しい心遣いと変な気の使い方と勘違いがすごく辛い。

合ってる様な間違ってる様な、って感じで、罪悪感とピンポイントで触れて欲しくないところを抉ってくる感じが、余計痛い。

 

「二条院さん、その言い方だと多分余計傷付くよ」

 

式部先輩が苦笑いしている。

 

「こっ、これはすまない!三司さんからすれば触れて欲しくないことだったろうに!」

 

親切に謝ってくれるところが余計心が痛む。

 

「わ、私は大丈夫だから・・・あはは・・・」

 

思わず苦笑いしてしまう。

 

触れて欲しくないとわかってるならもう触れないで欲しい。

 

「それで・・・今日、本当は2人きりでデートする予定だったんだよね?」

 

式部先輩が私に尋ねる。

それに私はコクリと頷く。

 

私は、今の関係を進めようと勇気を振り絞って誘ったデート。

 

・・・それをあの男は、あろうことか他の女の子を連れて来やがった。

 

「ハーレムでも作る気なのかしらあの男は・・・!」

 

考えたら更に腹が立って来た。

 

「あ〜、その件に関しては暁君、単に勘違いしてるみたいだよ?」

「へ?」

 

式部先輩が在原君のフォローを入れる。

 

「そういえば、在原君はデートという名目のただの買い物だと思っていたみたいだぞ」

 

二条院さんが付け足す。

 

その言葉に、私はワナワナと震え出す。

 

「私が!緊張と戦って!頑張って!誘ったのに!本当!何なのよ!あの鈍感男!本当に!もう!」

 

腹が立ってしょうがない。

あいつにとっては、私はその程度の相手だったってことだろう。

 

その事実が悔しくて、肩透かしを食らったのが恥ずかしくて、もうなんとも言えない気持ちだ。

 

「・・・あの」

 

七海さんがおずおずと私に声をかける。

 

「三司さんってやっぱり、お兄ちゃんが好き・・・なんですよね?」

「・・・」

 

場がなんとも言えない気不味い雰囲気になる。

 

ここで誤魔化してもいいのだけれど、納得できる返答があるかと言われると、自信がない。

それに、この場には七海さんだけではなく式部先輩も二条院さんもいる。

誤魔化してもバレる確率の方が高いだろう。

 

・・・それ以前に、私は自分の気持ちに嘘は吐きたくないのだ。

 

七海さんは真剣に質問しているのに、ここで私が言葉を濁したら、その気持ちは、在原君への気持ちはやましいものであると言っている様なものだ。

 

それだけはしたくない。

 

「そうよ」

 

気が付けば、私は言葉を紡いでいた。

 

「私、三司あやせは、在原暁君の事が好き」

 

真剣に、七海さんの顔を見て。

 

「・・・これは、私達は聞いていて良かったのでしょうか?」

「さぁ・・・?でも、三司さんは喋っちゃったし、たまたま耳に入ったのは私達のせいじゃないってことで」

「いやでも、例え偶然でも聞いてしまったのであれば、ちゃんと誠意ある態度を示した方がいいと思うのですが・・・」

「ここで言う誠意って何だろう・・・。私達も、好きな人をバラすとか?」

「な!ななななな!」

 

式部先輩と二条院さんがアホみたいなやりとりをしている。

 

「別にそんなことしなくていいですよ。ここにきてる時点で、全員半ば確信犯だと思いますし」

「あはは。三司さんって中々な性格してるね〜」

 

式部先輩が苦笑いする。

 

いくら在原君から誘われたからって、私と在原君がデートするってところにわざわざ来たってことは、私と在原君の仲を邪魔しようとしてたってワケで。

 

「私が誘われた時には他の2人が参加する事は決まってたんだよね〜。あはは」

 

式部先輩が力無く笑う。

 

「そんなこと言って、先輩が1番在原君のこと好きなんじゃないですか?研究室によく呼んでるみたいですし」

「・・・・」

 

式部先輩が目をそらす。

 

やっぱりか。

 

こんにゃろう。

 

「・・・そんな駆け引きみたいなことしてても仕方ないよね」

 

七海さんが呟く。

 

「私も、お兄ちゃんが好き。家族としてじゃなく、異性として」

 

七海さんが真剣に告げる。

 

 

 

私と二条院さんは若干顔が引き攣る。

 

 

 

「あ!義理!義理の家族ですから!暁くんと私はお義父さんに養子として引き取られたんです!」

 

七海さんが補足してくれる。

 

どうやら血が繋がっていないらしい。

 

似ていないからそうじゃないかとは思っていたけれど、いきなりの家族の事恋愛的な好き発言に面食らってしまった。

 

「式部先輩は動じてなかったですが、知っていたんですか?」

 

二条院さんが式部先輩に尋ねる。

 

「そりゃ、昔は妹なんていなかったから、血が繋がってないってことはわかってたよ」

「「え?」」

 

式部先輩が意味深な事を言う。

 

 

 

「あれ、暁君と幼馴染だって、言ってなかったっけ?」

 

 

 

「「ぇぇぇぇえええええ⁉︎」」

 

幼馴染⁉︎そっちは完全に初耳なんだけど⁉︎

 

 

「まぁ、あの頃より逞しくなってるなぁとか、キュンと来るところは確かにあるんだけど、私にとって暁君はまだまだ甘えん坊というかーーーー」

 

なんか惚気が始まっちゃったんだけど!

聞いてないよ別に!

 

「わ!私だって!」

 

二条院さんが叫ぶ。

 

 

 

「在原君は私の将軍様なんだから!」

 

 

「「「・・・?」」」

 

いまいち二条院さんの言ってる話にピンと来ない。

 

詳しい話を聞いてみると、どうやら在原君は子供の頃に二条院さんを大人から守ったらしい。

 

七海さんは当時の在原君のイメージと合わないのかピンと来てない様な顔をし、式部先輩はなんか含みを持たせた笑みで「あのことか〜」みたいな顔をしている。

 

「私だけ特別な思い出とか過去とかない・・・」

 

ショックを受ける私に3人が顔を見合わせる。

 

 

「「「パッドバレーーーー」」」

 

 

「あ゛ぁ゛ん゛?」

 

 

「「「いえ、なんでもないです」」」

 

すぐさま視線をそらす3人。

 

やっぱりパッドのことバレたの、最悪だと思う・・・・。

 

「というか、暴露大会みたいになっちゃったけど・・・・」

 

私が周りに視線を送る。

 

 

応えてくれたのは七海さんだ。

 

「あやせ先輩は真剣に暁くんのことが好きだと言ってくれました」

 

だって、私は本当に、本気で在原君のことが好きだから。

 

「だから、私も誠実でいたいって思ったんです」

 

誠実。それは一体どういう意味を指すのか。

 

「黙って気持ちを押し殺して応援しても、抜け駆けしても不誠実だと思ったんです」

 

だから、気持ちを私達にも伝えた。

七海さんは伝える。

 

「例え誰が付き合う事になっても、私は文句ありません。だからーーーー意思表示がしたかったんです」

 

七海さんの言いたいことは、なんとなくわかる気がする。

 

実際、今はギスギスした空気じゃなくて、ライバル同士みたいな爽やかな空気が流れている。

 

そこに、式部先輩が提案する。

 

 

 

「じゃあ、みんなで一斉に告白する?」

 

 

 

「「「は?」」」

 

 

 

 

 


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