私はいわゆる妖怪というやつだ。
名は『犬神』。白金に輝く九つの尾と、青く澄んだ四本の髭を持つ妖怪だ。
一人だけ友達とまでは行かないが知り合いの人間がいるのだが、そいつは私のことをSランクと呼んでくる。私としてはちゃんと犬神と呼んで欲しいのだが...
普段私は果てしなく長いトンネルの奥地から、密かに人間達を眺めている。彼等は様々な表情を見せるので見ていて飽きない。
今日もそんな人間達を眺めていた。ああ、癒される...このままずっと眺めていたい...
...と、いうわけにもいかないらしい。
「出て来なさい。」
私は違和感の感じた方角に向かいそう告げた。するとそこからスキマのような何かが出現し、その中から顔立ちの整った女性がひょっこりと顔を出した
「さすがS級といわれるだけあって気付いていますか。」
「...私のことは犬神と。」
デリカシーの無い女だ。いきなりランクで私のことを呼ぶとは。
「これは申し訳ありません、犬神様、私はとある世界の管理をしております八雲紫という妖怪です。犬神様にはこちらの世界へ来ていただきたいのです。」
なんだ、美しい顔立ちをしていると思ったら妖怪か。まあ、八尾比丘尼やふぶき姫達も顔はいいからな。
ならば出て行ってもらおう。ここは私の聖域だ。
「私は人間以外に興味は無いのです。悪いけど出て行ってください。」
「あら、あちらにも個性あふれる人間は多くいますわよ?こちらの世界よりは。」
私の耳がピクッと動く。
確かに、こちらの世界には人間は大勢いる。しかしそれは大衆というまとまりであって個性的というなればほんの数人程度。
そんな人間達を見てみたい、と思ってしまった。
だがこちらの世界も好きだ。
「...私がそちらへ行っても、再びここに帰ってこれる保障は?」
「私はスキマ妖怪。空間と空間をスキマでつなぐ妖怪。その程度、いともたやすく出来ますよ。」
「なら問題ないな。私を連れて行け。」
彼女は了承し、スキマを私が通れるくらいの大きさまで拡大した。
そのスキマの中はまるで亜空間のように渦が待っていて気味の悪い印象を私に与えた。
だが人を見れるのならそれくらい我慢できる...がこの姿では少々マズイな。
人々に恐怖を与えてしまうかもしれない
「拡大しましたが、入らないので?」
「ああ...ちょっと待ってくださいね...」
私は掌から青い妖気を発生させ、体全体を包み込ませる
そして包み込むのもつかの間、その間に見た目を人間へと変化させるのだ
外見は着物を着た少女だ。自分が言うのもなんだが人間の中でもスタイルはいいと思う。
「おお...ってあなた犬ですよね。」
「気にしたら負けです。行きましょう」
さて...社会見学ならぬ異世界見学に行こうか。
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スキマの中でこの世界について簡易的に説明を受けた。
今から私が行く世界は幻想郷。博麗大結界というものの力で外部を遮断し、独特な文明を築き上げた世界だという。なんでも人と妖が住む世界で、私の世界と違い幻想郷の人々は妖怪を認知できる
「それでは、幻想郷をお楽しみくださいね。」
そう言ってスキマ妖怪は私の前から姿を消した。
彼女は親切にしてくれたのだが、言いたいことが一つだけ。
「...何故森のど真ん中に送ったのですか!?」
その叫びは誰の耳にも届くことなく森の中で反響するだけだった。