どうしても書いてみたかった妄想の産物
注意:文豪ストレイドッグスのキャラは出てきません。
pixivに同じ作品を投稿しております。
―――『ヨコハマ』
モダンなビルとノスタルジックな建物が混在する港湾都市
現在は先の大戦終結より連合軍系列の各国軍閥が流入し、治外法権を振りかざして自治区を築き上げたため、戦時中とは比較にならないほど無法地帯となっている。
そのため、マフィアなどの様々な闇組織や海外非合法資本が存在し、街の政治・経済のあらゆる場所に根を張っている。
街には常識では考えられない現象を起こす特殊な力『異能力』を持つ者達が様々な組織に存在し、勢力争いを繰り広げている。
これは、ある異能力を持つ少年が、街に訪れたことにより始まる物語である。
~~~英霊ストレイドッグス~~~
◆
―――なんで、こんなことになったんだっけ・・・
???「いいかい、立香君? 僕たちのことは心配しなくていい。だけど、君だけは、すまない僕の力不足のせいで君自身の力で何とかするしかない。ここを出たらできるだけ遠くに逃げるんだ。」
立香「でも、院長!!」
???「君だったら心配ない。どこに行こうと君を助けてくれる人は必ずいる。」
・・・・・・・・・・・・
立香「・・・・・・ん」
・・・あれ?・・・俺・・何してたんだっけ・・
・・・ああ、そうだ・・施設を出てから・・・変な黒い服の人たちからずっと逃げてきて・・・雨が降ってきたから・・橋の下で休んでたんだった・・・
立香「・・・腹・・・減ったな・・・」
もう何日も前からろくなもの食べてない。ここは場所もわからない、河川敷の下だ。こんなベタな場所に隠れていたらさすがに見つかってしまうかもしれない。
・・・なんで、こんなことに・・・数日前まで孤児院で平和に暮らしてたのに・・・
さすがにもう歩く気力がなくなってきた・・・
体の限界を感じ、俺は再び目を閉じようとした、その時・・
???「君、大丈夫かい?」
―――声が聞こえた。
閉じていた眼をゆっくりと開ける。
そこには、黒のシーツに身を包んだ。白髪の男性が立っていた。整った顔立ちに人懐っこい笑顔を浮かべている。
立香「・・・・・・・・」
俺は衰弱していることもあり、その突然の質問には答えることはできなかった。
いや、そもそもこの服装を見ると追ってきたやつらの仲間かもしれない。だとしたら逃げなくては・・
立香「・・・・う!」
体を動かそうとするがうまく動かない。
???「・・・・・」
まずい、このままだと連れていかれて・・・
???「逃げようとしなくても、私は君を捕まえようとしていた連中ではないよ?」
立香「・・・・・え?」
心を読み取られたかのような言葉に俺は思わず顔を上げる。そこには先ほどと変わらず余裕のある笑みが浮かべられていた。
立香「・・な・・んで?」
???「君がただの家出少年で、ここで眠っていただけなら、僕の姿をみていきなり逃げようとはしないさ。しかもそんなボロボロの姿でね。」
立香「・・・あ・・・う・・」
いきなり自分の状況を言い当てられてしまって俺は困惑する。そしていまだに目の前の人物が敵なのか味方なのかを測りかねていた。しかし・・・・
ぐううううううううぅぅぅ
そんな緊張感の中でも空腹の虫が大声で鳴いてしまうのだった。
???「その前に、腹ごしらえが必要なようだね。いいだろう、私も大人だ。困ってる少年のためにご飯ぐらいはおごってあげよう。」
立香「!? い、いいんですか?」
罠かもしれない危険な状況ではあるが、目の前の誘惑にあらがえるレベルの空腹ではなかった。
???「ああ、もちろんだとも! こう見えて結構稼いでる身でね。食事の一つや二つぐらいは・・・・・ん?」
しかし、さっきまでの余裕の笑みが消え、ポケットの中を何度もまさぐり始める。
???「・・・あら・・・え~~っと・・・」
立香「・・・どうかしたんですか?」
嫌な予感がして俺は尋ねてみる。
???「・・・コホン・・いやね、さっき街で美しい女性を見かけたんだよ。」
立香「・・・・はあ」
???「それで私は声をかけたのさ。近くの茶店に誘って、お茶をして、いい雰囲気にはなったんだけど、振られちゃってね。」
立香「・・・・・・・・」
???「・・・で、気が付いたらサイフをすられていたみたいだね。いやあ、全く世知辛い世の中だよ。」
立香「・・・・・・・」
???「・・・・君、お金持ってないよね?」
立香「いや!? 持ってるわけないでしょう!!?」
体は疲れ切っているはずなのに目の前の人物のさっきとは打って変わってのあまりの間抜けっぷりに大声で突っ込んでしまう。
???「ふむ・・・弱ったな」
立香「・・・はあ」
緊張感のない状況にため息を漏らす。食事にありつけなくて残念だが、目の前の人物への警戒心はいくらか和らいでいた。しかし、状況が最悪なのは変わらない、いい加減ここを離れないと・・・
???「見かけないと思ったら・・・仕事をさぼってこんなところでなにをしているんだね?」
河川敷の上から落ち着いた男性の声がした。
???「ん? おお!! エミヤ君じゃないか!! ご苦労様!」
見上げると肌が少し焼けた、銀髪をオールバックにした男性が立っていた。こちらもスーツを身に着けている。
エミヤ「苦労は今君にかけられている。情報は集まったのかね?」
エミヤと呼ばれる男性が不機嫌そうに質問する。どうやら二人は仕事関係の知り合いのようだ。
???「ちょうどよかった!! 君、彼は私の同僚なんだ。ご飯は彼におごってもらおう。」
エミヤ「話を聞きたまえ。」
相手のツッコミにも無反応で目の前の男性は再び俺に向き直った。
???「君、名前は?」
立香「・・え?・・あ・・・藤丸・・・・藤丸・・立香です。」
???「ついてきたまえ、立香君。エミヤ君がなんでも好きなだけ食べさせてくれるよ。」
エミヤ「勝手に私の財布で太っ腹にならないでくれ、マーリン。」
立香「・・・マーリン?」
???「ああ、私の名前だよ。」
マーリン「初めまして、私はマーリン。武装探偵社の社員だ。」
◆
―――武装探偵社
軍や警察に頼れない危険な依頼解決を専門にする探偵社。社員の多くが異能力を有する『異能力者』であるため『異能力集団』とも呼ばれている。
曰く「昼の世界と夜の世界、その間を取り仕切る薄暮の武装集団」
孤児院で育った自分でも知っている。その二人がなんの偶然か俺の目の前に座っている。
・・・でも、それはともかく
立香「はあ~~~!!! 助かったあああ!!! 一度にこんなに食ったの初めてだ!!」
結局、あれからエミヤさんは呆れつつも店に連れてってくれてご飯をおごってくれた。
申し訳ないとは思っていたが、餓死寸前の腹に遠慮なんて言葉は消え失せてしまいありったけの料理を注文して食べつくしていた。
エミヤ「私もこんな食いっぷりを見たのは初めてだ。とにかく用が済んだなら私たちは失礼するよ。仕事中なのでね。」
席を立とうとするエミヤさんをマーリンさんが制止する。
マーリン「まあまあ、エミヤ君。せっかくなんで彼の事情を聞いてあげよう。」
エミヤ「我々の仕事は恵まれぬ子供たちに慈悲を与えることではない。」
マーリン「またまたあ♪ 君の悪い癖だよ? 気になって仕方のないくせに。」
エミヤ「・・・・・・」
エミヤさんが不機嫌そうにマーリンさんをにらみつける。
立香「あ、あの・・・ご迷惑でしたら・・俺はここで御暇します・・」
マーリン「ああ、いいよいいよ。彼はこう見えて探偵社一のお人よしなんだ。でも仕事にはまじめだからこういうことには融通が利かない。できる限りでいいから君の事情を話してくれないか。」
俺はエミヤさんの方をチラリとみると呆れたようにうなずいていた。俺は少し迷ったが事情を話すことにする。探偵社というのであればひょっとして何かしらの助けになってくれるのかもしれない。
立香「実を言うと・・・俺にも何が何だか分からないんです。俺は身寄りの無い子供で、ここから離れたところにある孤児院で育ちました。院長や同じ孤児のみんなは俺にとてもよくしてくれて・・・本当につつましく、平凡な暮らしをしていただけなんです。」
俺の脳裏には孤児院での日々が浮かぶ。もうあのころには戻れないのだろうか。
立香「でも突然黒服の集団が押し駆けてきて・・・院長が何故か俺だけを逃がしたんです。それまで見たことがなかった非常口を使って・・・」
なぜ自分はあの時、逃げてきてしまったんだろう。かなわないと分かっていてもこれでは世話になったみんなを見捨てたも同然だ。
立香「あ、あの!! 探偵社さん! 俺の孤児院のみんなを助けてくれませんか!? 院長は大丈夫だとは言っていたたけど・・・」
バン!!
その時、店の扉が乱暴に開かれた。
立香「・・・・・え?」
そこに入ってきたのは、見覚えのある黒服の集団だった。手には銃が握られている。
とっさに探偵社の2人の方を向くと、エミヤさんは冷静に呆れた顔をため息をついた。
エミヤ「はあ・・・マーリン、この状況もわかっていたのかね?」
マーリン「さあ? 何のことだろうね♪」
マーリンさんにも余裕の笑みが浮かぶ。しかし、その時・・・
???「撃て」
少しの間と共に一斉に拳銃が放たれる。
エミヤ「・・ちっ!」
瞬時にエミヤさんが机を倒して俺をその陰に隠れさせる。
店には銃声と客の悲鳴が響き渡った。
黒服の男「モ、モードレッドさん・・本当に発砲してもよろしかったのですか?命令は生け捕りで・・・」
モードレッド「わーってるよ! 安心しろ、獲物は生きてる。ムカつくやつらが隣にいたから挨拶しただけだ。」
モードレッドと呼ばれた金髪のスーツ姿の小柄な男?女?が前に出る。どうやらあの人が黒服の集団のリーダーのようだ。
エミヤ「やれやれ、君の組織ではあいさつ代わりに銃を連射するのかね? それでは敵をつくる一方だぞ。」
エミヤさんが机から顔を出して語り掛ける。どうやら相手に心当たりがあるようだ。
モードレッド「お前らとおしゃべりする気はねえ、武装探偵社。黙ってそこのガキを引き渡しな。」
そこのガキとは俺のことだろう。しかも生け捕りと言っていた。だけど未だにこんなマフィアみたいな組織に俺が狙われる理由がわからない。
エミヤ「それは了承できないな。我々もマフィアに妙な動きがあったのでそれを調査していたところだ。この無抵抗な少年に何があるというのだ?」
相手は舌打ちをして前に進み出る。
モードレッド「おしゃべりする気はねえっつったろ? だけどまあ、確かに無抵抗のガキをさらうのは俺にとっても面白くない仕事だ。せっかくだ、遊び相手になってくれるか? 武装探偵社!!」
モードレッドが銃を抜き、エミヤに向かって放つ。
エミヤ「・・くっ!」
再び、机の影に隠れる。
エミヤ「マーリン、私が時間を稼ぐ。隙を見て少年を連れて逃げるんだ。」
立香「そ、そんな!? 無茶ですよ!? 武器もない状況で一人で戦うなんて!」
エミヤ「安心したまえ、武器ならある。」
するとエミヤさんの手元にわずかな光が帯びる。
エミヤ「・・・無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)!!」
すると手の中には一丁の拳銃が生成された。
立香「こ、これは・・」
マーリン「異能力だよ。エミヤ君の能力はあらゆる武器を一瞬で生成することができる。」
瞬時に身を乗り出し、モードレッドに向けて発砲した。
ダァン!!!
モードレッド「・・・・・ん?」
しかし、弾は相手には当たっていない。
モードレッド「・・はっ! ヘタクソ!」
エミヤ「・・・・・・・・」
その時、モードレッドの頭上に店の照明が落ちる。それが狙いでわざと外したのだろう。
モードレッド「・・・な~んてな♪」
しかし、照明を軽く躱して再びこちらに向けて発砲する。
エミヤ「・・・!?」
再び机の裏に隠れたエミヤさんの表情は冷静ながらも少し驚いた様子だった。
モードレッド「つまんねえ小細工は俺には通用しねえぞ?」
エミヤ「はあ・・仕方ない」
するとエミヤさんの手から銃が消え、二本の剣が生成される。それができると同時に飛び出した。
モードレッド「おっ! いいねえ、接近戦か?」
あいかわらずモードレッドは余裕の表情である。
そこからはエミヤさんが目にもとまらぬ剣さばきでモードレッドに迫っていった。とても常人ではその動きについていけないだろう。現に周りの部下たちはモードレッドにもあたることを畏れて発砲できないようである。しかし・・
モードレッド「どーしたぁ!? 当たってねえぞ!?」
信じがたいことにそのほとんどをモードレッドは躱し、時にはナイフでさばいている。とても人間業ではない。
エミヤ(・・コイツ、身体強化型の異能力者か? いや、それにしては妙だ。確かに動きはいいが超人的というほどじゃあない。どちらかというと動きを完全に読まれているような・・・)
マーリン「・・・・・・・・よし! では立香君! この間に逃げ道を確保してくれたまえ!」
立香「・・・・・へ!?」
緊迫した状況の中でマーリンさんの呑気な声に一瞬あっけにとられる。
立香「に、逃げ道って・・俺がですか!? いや、それよりもエミヤさんがこのままじゃやばいですよ! あなたも異能力者なんでしょう? 何とか助けに・・」
マーリン「第一に逃げ道確保は私は怖いのでやりたくない。第二に私は異能力者じゃない。」
立香「・・・・・・はああ!!?」
両方の意味で俺は驚きの声を上げる。
マーリン「まあ、詳しい説明は後だ。エミヤ君なら心配ない。彼は戦闘のプロだ。相手に勝つことは難しくても何とか逃げ延びてくるさ。じゃあ敵に気づかれないようにこっそりとね? 大丈夫相手は君の身柄の確保が目的だ。見つかっても殺されはしないさ。出口を見つけたら私もその後に続くよ。」
立香「・・・は、はあ・・・」
言いたいことは山ほどあったがあながち的外れでもない。生き延びるため震える足に力を入れて姿勢を低くして店内を移動する。
幸い厨房近くの席だったため死角を通って厨房裏の出入り口にたどり着いた。
そして敵に見えないように、マーリンさんに合図を送る。その瞬間・・・
モードレッド「・・・!! おい!! てめえら!! 白髪の奴がガキを連れて逃げるぞ!! 厨房裏からだ! おいかけろ!!」
立香「!!?」
マーリンさんが走り出すよりも先にモードレッドが部下に命令する。
マーリン「・・っ!」
するとマーリンさんは見た目よりもはるかに素早い動きであっという間に俺の方に駆け寄ってきた。
黒服の男「!! 追え!! 逃がすな!!」
俺はマーリンさんと共に店の外に駆け出して行った。視界の端ではまだエミヤさんがモードレッドに応戦してくれていた。
◆
立香「はあ・・はあ・・」
マーリン「大丈夫かい? 立香君」
立香「・・・何とか・・・撒けたでしょうか?」
俺はマーリンさんに誘導されて街の中を逃げていった。やはりこういうことには慣れているのか裏路地を利用したり迷いなく進んでいった。
マーリン「・・・いや、一時的なものだよ。すぐにまた尻尾を掴まれて追い詰められるだろう。」
立香「・・じゃあ・・どうすれば・・」
マーリン「落ち着きなさい。そのために今、合流地点に向かっている。」
立香「合流地点?」
マーリン「ああ、もうすぐだよ。ほらいた。」
立香「え?」
マーリンさんが指さした方を見るとそこにはエミヤさんが立っていた。
立香「エミヤさん!!」
エミヤ「やあ、ずいぶん遅かったじゃないか。」
先に逃げた俺たちよりも早くついていた。おそらくマーリンさんの方は俺がいるせいで遅れてしまったのだろう。
立香「よかった・・無事だったんですね。」
マーリン「ほ~ら、だから言ったろう?」
エミヤ「面倒な状況であることに変わりはないがね。すぐに追手が来るぞ。」
マーリン「ああ、立香君ともそれを話していたところだ。すぐに対策を練らないとね。でもその前に、エミヤ君。」
エミヤ「何だ?」
マーリン「なんでもいいから武器を一つ生成してくれないか?」
エミヤ「・・・構わんが」
不思議そうな顔をしながらもエミヤさんは小型のナイフを作り出し、彼に渡した。
マーリン「ありがと、じゃあ立香君? これを持って見てくれ。」
立香「・・え?・・あ・・・はい」
俺もマーリンさんの行動を疑問に思いながらナイフを受け取る。
すると・・・
パアァァン!
俺の手に触れた瞬間、ナイフは光となって消えた。
立香「なっ!?」
エミヤ「これは!」
マーリン「・・・やはりか・・・立香君、気づいていなかったかい? おそらくこれが君の異能力だよ。」
立香「・・俺の・・・異能力?」
再び自分の手を見る。そこにはすでにナイフは跡形もなくなっていた。しかし、そんな能力を発動した実感も、自分がそんな能力を持っていることも全く知らなかった。
マーリン「たぶん、異能力を打ち消す力だろう。まだ詳細は分からないけど、触れたものの異能を打ち消すのか、それとも・・・」
エミヤ「・・・そのような力」
マーリン「ああ、ぼくの知る限り過去の記録にはないね・・・記録には。」
立香「・・・俺が・・・・異能力者?」
エミヤ「・・マーリン、なぜ彼にこのような能力があると分かった?」
そうだ、自分の謎の力に気を取られていた。マーリンさんとはさっき会ったばかりだ。なぜそんなことに気づいたのだろう。
マーリン「・・・順を追って話そう。立香君にもわかるようにね。」
マーリン「そもそも、我々の今回の任務は最近マフィアが妙な捜索網を広げていることについて、ことを荒立てない程度に調査することだった。」
マーリン「そして調査した情報の中に君の能力と酷似するものがあった。『異能力を無効化する異能力者』を探しているとね。もちろんその時聞いたのは風の噂程度で誰も信じていないようなものだった。」
マーリン「その調査の中で関係はないけど偶然はいてきた情報があった。数日前、マフィアがある孤児院を襲撃したという噂だ。」
立香「!!」
マーリン「君は新聞を見ている余裕はなかったろうから知らないと思うけど、その孤児院は数日前、謎の神隠しにあっている。」
立香「神隠し?」
マーリン「ああ、なんでも孤児院の住人どころかその建物自体が忽然と消えてしまったんだ。焼き払われたわけでもなく、破壊されたわけでもなく、まるでくりぬいたかのようにきれいさっぱり消えていた。」
立香「!!? そ、そんな!! じゃあみんなは奴らに!!」
マーリン「落ち着きたまえ、マフィアの仕業ならそんな目立つやり方はしない。私が思うに孤児院の人たちは異能力を使って逃れたんだ。」
立香「・・異能力?・・孤児院の人たちが?」
マーリン「そして、興味深いことにマフィアの捜索は孤児院の消滅の日から激化していた。この2つには何らかの関連性があると思っていた。」
マーリン「・・・そうして、今日偶然、君と出会った。」
マーリン「その年で数日前から逃亡生活。マフィアが捜索するほどの何かの存在。異能力を打ち消す異能力の噂・・・それが先程確信に変わったというわけだ。」
最後まで聞き終わって呆然とする俺とため息をつくエミヤさん
エミヤ「マーリン、そこまでわかっていたならもう少し早くいいたまえ、おかげで襲撃を受ける羽目になった。」
マーリン「いやあ、ごめんごめん。確証の無いうちは黙っとこうかな~と思ってね。」
エミヤ「社長の悪い癖が移ってるんじゃないのかね?」
彼らの会話は頭に入らず、孤児院のことに思いを巡らせていた。
立香「!!・・・マ、マーリンさん・・孤児院のみんなが無事逃げられたというのなら・・・何で俺は・・・その中には入っていなかったんでしょうか?」
マーリン「・・・おそらく君の『異能を打ち消す異能』のせいで君だけはその逃亡用の異能力を使って逃がすことができなかったんだろう・・」
立香「・・・・あ」
別れ際の院長の苦悩の表情を思い出す。
マーリン「・・・そして、これは君にとってはつらいことだろうけど・・・孤児院を襲撃した狙いは君自身だ。その特異な能力は君が思っている以上に大きな利益と脅威を生む。院長さんはそれがわかっていて君にも世間にもそのことを隠していたんだろう・・・しかし、とうとうそれがばれてしまった。」
立香「・・・俺の・・せいで・・みんなが・・・」
エミヤ「・・・・・・・・」
マーリン「・・・立香君。心配なのもわかるが、今君がおかされている状況はとても深刻なものだ。君を狙っている連中はそこらのチンピラとは違う。ポートマフィアという組織だ。」
立香「・・・ポート・・マフィア?」
エミヤ「このヨコハマの港を縄張りにするマフィアのことだ。傘下の団体企業は数十を超え、町の至る場所に根を張っている。」
マーリン「狙われたら最後、君の人生には二度と安寧は訪れないだろう。」
立香「・・・・・・・」
頭の中がうまくまとまらない。一気にいろんなことが起きすぎている。そもそも自分は何をすべきなんだ? 異能力があるとはいえそんな組織に太刀打ちは・・
マーリン「・・・だから」
立香「・・?」
マーリン「君自身が決めるんだ。戦うのか、逃げるのかを。」
立香「・・・・・」
俺自身が?・・・でも俺にはどうしようも・・・
しかし、ふと孤児院のみんなの顔を浮かぶ。狙いが俺だったとしたらみんな別のところで平和に暮らしているのだろうか? それとも、俺の存在を隠していた罪で・・・
歯を食いしばり、足に力を入れる
何ができるかわからないけど、ここで立ち止まってはいられない。
気合を入れなおして顔を上げる。
立香「・・・戦います! もう元の生活には戻れないかもしれないけど、孤児院のみんなの無事を確認するまでは、ここでつかまるわけにはいかない!」
俺の言葉を聞いたとき、マーリンさんは優しく微笑んだ。それは何度か浮かべている悪戯っぽい笑みではなかった。
マーリン「よろしい、ならば探偵社として君に力を貸そう。いいかい、エミヤ君?」
エミヤ「いいもなにも、もう巻き込まれてしまっているだろう?・・・・それで、策はあるのか、マーリン?」
マーリン「ああ、もちろんだとも」
そう言ってマーリンさんは妖しく微笑んだ。
◆
街から離れた港湾の倉庫、その中央に双剣を持つ男が一人たたずんでいた。
ギィィィィ
倉庫の錆びた扉を開く音が中に響き渡る。入ってきたものは一人、金髪の髪を後ろで束ねた女性だった。
モードレッド「・・・よう、一人か?・・・って、んなわきゃあねえか。どこに隠した?」
エミヤ「君の方こそ一人のようだが、部下はどうしたのかね?」
モードレッド「今、こっちに向かってる途中だ。まあ、あいつらが来る前に片付くけどな。」
エミヤ「・・・君の異能力は・・数秒先の未来を見ることができる力だ。」
エミヤの急な発言に再び沈黙が流れる。
モードレッド「・・・あ?」
エミヤ「君は私が照明を撃って頭上に落とす作戦を見破った・・・その時は恐ろしく勘のいい敵だと思ったが・・・」
エミヤ「接近戦に持ち込んでみて違和感を感じた。身体が異常に強化されているわけでもないのに、ほとんどの技を受け流した。まるで動きを読んでいるようにね。」
モードレッド「・・・・・・・」
エミヤ「そして、極めつけはマーリン達が脱出するときだ。君はマーリンが脱出経路に走り出す前に部下にそのことを指摘した。」
モードレッド「・・・・・」
エミヤ「ただ勘がいいというだけでは片づけられない・・・・どうかね?」
しばらく鋭い眼でエミヤの方をにらんでいたモードレッドだったがやがてあきらめたように表情を緩める。
モードレッド「・・はっ!いいぜ、めんどくせーから答えてやるよ。正解だ正解!・・・よくわかったじゃねえか?」
エミヤ「看破したのは私ではないよ。相方の方だ。」
モードレッド「マーリンっていう胡散臭え奴のことか。無能力者のくせに頭が切れるってだけで探偵社に入ったってのは嘘じゃねえ見てえだな。」
エミヤ「性格には難ありだがね。」
モードレッド「ふ~~ん・・・で? 俺の能力が分かったからなんだってんだ? どっちにしてもお前の動きは俺には全部筒抜けなんだぜ?」
モードレッドがエミヤに向けて銃を構える。
エミヤ「さてね、だが看破されたことに危機感を持った方がいい。タネが分かれば対策はたてられる。」
モードレッド「・・はっ!! 上等じゃねーかあ!!!!!」
モードレッドがエミヤに向けて発砲する。それを躱してエミヤが再び接近戦に持ち込む。
モードレッド「何度やろうが同じだ!!」
モードレッドの言う通り、先ほどと同じようにモードレッドの剣戟は全て、躱すか受け流された。
しかし、それでもエミヤは攻撃の手を緩めない。次第にモードレッドは後退していき、コンテナ置き場へと追いやられる。
モードレッド「・・お?」
背中がコンテナに着いたときにモードレッドは自分が端に追いやられたことに気づいた。
エミヤの双剣が迫る。回避はできない状況である。
モードレッド「はっ!! くだらねえ!!」
余裕の笑みを漏らしながら、ナイフで片方の剣を弾き飛ばす。
エミヤ「!」
モードレッド「よっ!」
ダアン!!
エミヤ「くっ!」
銃弾でもう片方も弾き飛ばす。
モードレッド「あめえんだよ! 回避できなくとも獲物を弾き飛ばす角度をつかめれば、これぐらいなんてことねえ!」
エミヤ「予知があるからといってできる芸当ではないな。やはり君はかなりの手練れだ。」
モードレッド「最後の言葉がお世辞でいいのかよ!? 終わりだ!!」
モードレッドがエミヤの眉間に照準を合わせる。
しかし、その時
ガシッ!
モードレッドは自分の足元に違和感を覚えた。
モードレッド「・・・・あ?」
足元に眼を向けると立香が足にしがみついていた。
モードレッド「て、てめえ!? いつの間に!?」
予知能力があるモードレッドにとって不意打ちを喰らう経験はほとんどなかった。ゆえに目の前の敵を忘れてとっさに振りほどこうとする。
立香「う!」
それに抵抗する立香
モードレッド(こ、こいつ・・・動きが予知できなかった! まさかこいつの能力は触れた者の異能力を無効化することだけじゃなくて、異能力自体が・・・)
エミヤ「いいのかね? よそ見をしていて?」
モードレッド「・・はっ!?」
エミヤの方を見るとすでに右手の剣の生成ができあがっていた。
モードレッド(しまった! このガキに触れられてるから能力が・・・)
エミヤの剣が下段から振り上げられる。
急いでナイフで捌くが反応が遅れたせいで腕を傷つけられた。
モードレッド「がっ!?・・く・・そ・・が!!」
エミヤ「腕を切断する気だったが、さすがの反応だな。しかし・・・」
ガチャン!!
後ろからマーリンがモードレッドの後頭部に銃を突きつけた。
そして、その一瞬の怯みの隙にエミヤがのど元に剣を突きつける。
マーリン「残念ながら、チェックメイトだ。」
モードレッド「・・・ちっ!!!」
反撃は無理と悟ったのか、モードレッドは銃を床に落とす。
モードレッド「てめえ、このガキが触れたものだけじゃなくて、自分に向けられた異能力も無効化できることに気づいてやがったな?」
マーリン「そちらは知らなかったみたいだね? 僕らが店の裏口から脱出を計ったとき、君は僕が逃げようとしたことには気づいたが、立香君の動きには気づかなかった。」
モードレッド「それを確かめるためにガキを先に行かせたのか? ったくなんて野郎だ。」
マーリン「君の敗因はその好戦的すぎる性格だ。もう少し慎重になっていれば我々に勝ち目はなかった。」
モードレッド「うっせえ!!・・・つーかお前らどうする気だ? 俺を殺したとしても、もうすぐ俺の部下がここに押し寄せてくるし、うちの組織の他の奴らもお前らを狙いに来るぞ?」
マーリン「おや? 心配してくれてるのかい?」
モードレッド「んなわきゃねえだろ!!!」
マーリン「それに関しては今日は手を引いてくれないか? だってほら正当防衛だし。」
モードレッド「・・・は?」
マーリン「忘れたかい? 君は店に入った瞬間、何の確認もせずに我々に発砲したろう?」
モードレッド「・・・・あ」
マーリン「これは君たちから仕掛けた我々武装探偵社への襲撃と受け取ることができる。まあ、君が部下を連れて今日のところは引き上げるというのであれば、このことは社長には黙っていてあげてもいいけどね~? 全面戦争は嫌だろう?」
楽し気に意地悪な笑みを浮かべるマーリンにモードレッドは歯ぎしりを立てた。
モードレッド「ぐ・・ぬぬ・・・おい! こいつすっげームカつくぞ!!」
目の前で剣を突きつけているエミヤに怒鳴る。
エミヤ「言ったろう、正確に難ありだと。」
若干ため息をつきながらエミヤが答える。
足元の立香もすごいと思いつつもやや呆れた表情をしている。
マーリン「さあ、どうする?」
やや、マーリンの眼が鋭くなる。
モードレッド「・・ちっ! わーったよ! 覚えてろ、てめえら。」
マーリン「わ~悪人っぽいセリフ。ああ、それと解放した時に妙な気は起こさないほうがいい。我々の仲間が先に到着したからね。」
その時、倉庫のシャッターが開く音がした。そこには3人の人影があった。
モードレッド「・・・ちっ!」
いくら予知能力があっても複数の異能力者相手は分が悪い。モードレッドは解放された瞬間。素早い身のこなしでコンテナを上り、窓から飛び降りた。
それを確認してからマーリンは仲間たちの方を向き礼をいう。
マーリン「やあ、悪いね君たち。おかげさまでもう終わったよ。」
俺はとらえず助かったという安堵感から床に座り込みながらぼんやりとその探偵社員たちを眺めた。
キングプロテア「ええっ!!? もう終わっちゃったんですか!? あ~~、せっかくお休みの日に駆け付けたのに~」
―――キングプロテア 能力名『巨影、生命の海より出ずる(アイラーヴァタ・キングサイズ)』
一人は紫の髪をした小柄な女の子
ナイチンゲール「二人とも、ケガはありませんか? 直ちに処置します。」
―――フローレンス・ナイチンゲール 能力名『我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)』
一人は赤い軍服のようなものを着た女性
燕青「あれ? マーリンの旦那? その少年は誰だい?」
―――燕青 能力名『ドッペルゲンガー』
一人は長い黒髪を結んだ青年
エミヤ「どうするマーリン? 彼はおそらくポートマフィアだけでなくあらゆる組織から狙われることになるだろう。」
―――エミヤ 能力名『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)』
そうだ、この場は切り抜けたけど、俺は一生追われる羽目になる。
マーリン「ふふふ・・・実はもう決めてある。」
―――マーリン 能力名:『千里眼』(本当は無能力)
これからのことに頭を巡らせているとマーリンさんがこちらを向く。
マーリン「藤丸立香君!!!」
立香「!!? は、はい!!!」
いきなり名前を叫ばれて俺は驚きつつも大声で返事をする。
マーリン「これより君は、私たちの仲間になるんだ。」
立香「・・・・へ?」
マーリン「今日から君は、武装探偵社の一員だ。」
立香「・・・・・は?」
エミヤ「・・・やれやれ」
プロテア「?」
ナイチンゲール「・・・」
燕青「・・へえ♪」
立香「はあああぁあああ!!???」
―――これが事の始まり
―――怪奇ひしめくこの街で
―――変人揃いの探偵社で
―――これより始まる怪奇譚
―――これが先触れ、前兆し
―――藤丸立香 能力名『グランドオーダー』
設定資料
〇世界観
世界観自体はそのまま文豪ストレイドッグスの世界を借りて、人物をFGOのキャラクターに置き換えています。
〇登場人物
・藤丸立香
本作の主人公。あまり孤児院時代のトラウマがあったりするとキャラが変わりすぎるので温かい環境で育てられたということにした。
能力名『グランドオーダー』
触れた対象の異能力を無効化する。また触れていなくとも本人には異能力は利かない。コントロールができていないのでこれから成長、変化する可能性有。
・マーリン
武装探偵社員。異能力は持っていないが頭がきれるというだけで探偵社に入った謎の多い男。
能力名『千里眼』(無能力)
本当は頭脳が優れているだけで異能力ではない。物語の最後に異能力と登場人物を並べていくのに、能力名『無し』 ではかっこつかないので仮に付けただけ。
・エミヤ
武装探偵社員。戦闘担当で数少ない常識人であるため苦労人枠。
能力名『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)』
剣製と言っているがこの世界観だと幅が広がらないし、銃社会なので武器ならば何でも生成できるということにした。
・キングプロテア
武装探偵社員。ここでは小柄な女の子。バニヤンとどっちにしようか悩んだがプロテアを書いてみたかったのでこっちにした。
能力:巨影、生命の海より出ずる(アイラーヴァタ・キングサイズ)
キングサイズとはいうもののさすがに巨大化するとチートすぎるので別路線で考えている。
・ナイチンゲール
武装探偵社員。そのまんま回復担当兼武闘派。バーサーカーとかないけど性格はそのまんま。
能力名:我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)
回復系だが詳細は考え中
・燕青
武装探偵社員。隠密担当だが格闘技の達人。
能力名:ドッペルゲンガー
原作そのまんま。他者の外見を投影する能力
・モードレッド
ポートマフィア構成員。武闘派組織の中でも凶暴な実働部隊『黒蜥蜴』所属。
能力名:超直観
数秒先の未来を見ることのできる能力。原作ではスキル『直観』という危険性を本能的に予測するスキル。そのまんまだとあれなので超をつけた