~試合当日~
黒森峰との決勝当日、真霧はいつも通りに鈴創戦車隊隊員達を集めていた。唯一違うと言えばこの場には鈴創戦車隊初期メンバーの他に合併された旧知波単学園戦車隊隊員の姿があることだ。
「クルーゼ隊長に対し!敬礼っ!!」
偲がそう言って敬礼をすると他の隊員達も続けて敬礼をしてきた。
「ん、楽にしてくれ」
真霧は答礼し、そう返した。すると他の隊員達が敬礼の手を下げた。一度隊員達を見回して確認すると真霧は話し出した。
「諸君!今日の相手はあの王者黒森峰だ!今までの相手より何倍もの強さを誇って立ちはだかって来るだろう。我々が勝てる確率は、…少ないと言えよう」
真霧はそう言うと区切りをつけ、再び喋り出す。
「だが!!我々は敗者にはならん!!我らは勝者となる為にここにいる!」
「戦車大会優勝常連の王者黒森峰をその王座から引きずり下ろし!我々の狼煙を炊き上げろ!!」
「「「「「はっ!!」」」」」
そう言い切ると隊員達は一斉に敬礼をしてきた。
「うむ。総員、試合開始まで各隊にて作戦、地形の確認をしておけ。解散」
答礼してから連絡事項を伝えると足早に隊長テントに向かって行った。
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鈴創戦車隊テントの大隊長室に入るなり真霧は仮面を外し、ため息を吐くと胸のポケットに入っていた一つの手帳を開いた。
「はぁ…やっと次だな。負けはしない、黒森峰の選手の特徴は掴んでいるんだ」
「やっぱり真霧だったのね」
「!?」
そう呟いていると後ろから声をかけられ、振り向いてしまった。
「─絹代か」
そこには旧知波単学園戦車隊隊長、現鈴創学園戦車隊副隊長の西絹代がたっていた
「ええ、真霧は何であんな真似をしたの?」
絹代は真霧がした自分の生死隠蔽の事を聞いてきた。
「…」
「真霧!!」
さらに問いただしてくる。
「…あの西住の考えが嫌だったからだ」
「え?」
「西住にいた頃にある演習中に仲間の戦車が川に落ちてな。それを助けに行ったら家元は何て言ったと思う?」
「『そんな事ごときで試合を放棄したのか?』だぞ?人命を捨てるそんな流派の家なんかくそくらえだ!!」
真霧の気迫に押され、絹代は言葉が詰まって出てこない。
「だから俺は!この戦車道で腐りきった西住を叩き潰す!!」
勢いに任せ、言い切った。
「…なら、私も協力するよ。真霧」
絹代は黙っていた口を開いた。
「何?」
「私も真霧に協力するって言ってるのよ!」
「いいのか?」
「ええ!」
絹代はハッキリと答えた。
「なら、ついてきてくれよ。絹代」
「もちろん」
そうしてから真霧は机の時計に目をやった。試合開始まで残り十分を切っていた。
「まぁ─アリガト。さて、絹代。試合の時間だ」
「わかった。行きましょうか」
そう言って真霧は手帳を胸のポケットに入れ、仮面をつけると絹代を引き連れ決戦の戦場に向かって行った。