西住姉妹の弟―西住流の島田―   作:如月 霊

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第二十三話 決勝、その弐

『─ちら─こちら中村隊!すみません!やられました!!』

 

撤退していると無線機から撃破の報が悲痛な声と共に次々に上がってくる。中でも古参の類である中村の部隊がやられたのに仮面の下の顔が強ばるのがわかった。

 

まほ姉さんか…何処までも俺の邪魔をするのかッ!!西住!!

 

「被害報告は纏めろ!各隊の被害知らせッ!!」

 

『伊川隊、ポイントPd-5地点にて敵ティーガーと戦車に入りました!』

 

『早野隊は敵より攻撃を受けましたが返り討ちにしてやりましたよ!』

 

『こちら第二中隊は久保田隊、細見隊、名倉隊、福田隊が撃破されてしまいました!残存は私の隊と浜田隊、玉田隊、池田隊のみです!』

 

それを聞き、無線機に叫ぶ。

 

「ポイントPd-5なら…現時点を持って作戦コードe-45を破棄、早野隊はポイントPd-5に急行して伊川隊と合流!それからポイントPa-3に退却しろ!第二中隊各隊は私の戦車に合流後、ポイントPa-3ポイントにて伊川小隊と中村隊、第二中隊で作戦コードk-58を実行するぞ!各車!敵戦車に注意しろ!」

 

『『『『『『『はッ!!』』』』』』』

 

 

「川北兵長、聞いての通りだ。ポイントPa-3へ急行してくれ」

 

操縦士の川北幸人(かわきた ゆきと)兵長にPa-3への急行を命じた。

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

─ポイントPa-3─

 

 

「さて、黒森峰の奴らはどう出てきてくれるかな?」

 

ポイントPa-3に残存車輌が終結して暫くして、真霧は時計に一瞬目を落とし、そう呟く。そして、敵の主力が通過したのを確認すると無線に手を伸ばす。

 

「…これより、作戦コードk-58、[Electric shock]作戦を開始する。第二中隊は敵主力に突撃しろ。伊川隊は第二中隊を援護!第二中隊が出て敵が混乱したら私の戦車で敵フラッグに一騎討ちを仕掛けるから早野隊と伊川隊、第二中隊で足止めを頼む。…行けッ!!」

 

『『『『『『『はいっ!』』』』』』』

 

『第二中隊、吶喊!!』

 

各車長の声が聞こえてきたすぐ後、第二中隊を率いる絹代の『吶喊』の号令がかかり、第二中隊が敵主力に突撃する。

 

「こちらも行くぞ!!敵フラッグを分断させる!!」

 

そう叫ぶと真霧は裕乃に席を退いてもらい、砲弾を装填すると照準器を覗き込み敵に狙いをつけると引き金を引いた。敵は突然現れた第二中隊のチハに気を取られていたのかティーガーのエンジンに命中し、炎上。白旗が上がった。

 

「殺りいっ!」

 

「ん?」

 

するとそのすぐ横のティーガーⅠも砲塔を此方に向けようとしていた所で急に火柱が上がったと思うと白旗が上がる。

 

『こちら早野隊!ティーガーⅠ一輌撃破!!』

 

どうやら早野隊のようだ。よくやってくれる。

 

「ここより、ポイントPd-2に移動して決着をつける!他の隊は足止めを頼んだ!」

 

真霧はそう言い、戦車の進路をポイントPd-2に向け、走り出した。直ぐ様後ろを窓から覗くとまほのフラッグが他のティーガーⅠを引き連れてこちらに向かってきていた。が、まほの後ろのティガーⅠが急に撃破された。

 

『隊長!後は任せました!!敵は食い止めます!』

 

偲のようだ。粋な事をするな。

 

「ポイントPd-2まで突っ走れ!!」

 

後ろは振り返らん。これまでは決戦の序盤…仲間を背にして真霧は──真の決戦の地に向かう。


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