「よし、ここで決着を着ける!エンジンが潰れても良い!!全開にして敵フラッグの後ろに回り込め!!」
ポイントPd-2──試合場の最北端にある朽ち果てたアパートが乱立する地点に着くと真霧はそう指示をし、アパート後の公園やら小さな倉庫やらの影を使い、まほの乗るティーガーⅠに肉薄し、敵に一発の砲弾を叩き込む。─が、ティーガーⅠの100mmものある前面装甲に弾かれて明後日の方向に飛んでいく。
「クソッ!…次弾装填いs」
「隊長!!」
次弾装填を指示しようとするがティーガーⅠの主砲がお返しだと言わんばかりに砲弾を放ってきた。急旋回で何とか砲弾の直撃は免れたが真横にあったアパートの壁に命中し、瓦礫が宙を舞った。そして、その瓦礫の破片が真霧に当たり、真霧の仮面を吹き飛ばした。
「…真…霧…?」
「生きていたのか!!真霧!!」
敵フラッグから不意にその声が聞こえた。内心しまった。そう思いながらも敵に向け叫んだ。
「─ん─知らん、名だ!私は…私は島田だッ!!」
その叫びを向け、真霧はキューポラから車内に戻り、砲手から席を変わる。
「これで…」
「これで終わりだァ!!西住ィ!!」
エンジンが燃え尽きそうな勢いのまま車体を傾かせ、キャタピラーや転輪が吹き飛ぶがお構い無しにティーガーⅠの後部に見事なドリフトをかませつつ滑り込ませる。
「撃てッ!!」「撃てッ!!」
瞬間、ティーガーⅠからシュポという音と共に白旗が出された。そして、そのすぐ後、チトも後部にあるエンジンが爆発、こちらも白旗を上げた。
────────ピーー!!
『黒森峰学園フラッグ車、走行不能。よって、鈴創学園の勝利!』
その高らかな笛の音によって今日、鈴創学園戦車隊は王者黒森峰を練習大会とはいえ下したのだった。
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「真霧君、よく勝ってくれたね」
大会が終わり、撤収にかかっているとデュランダルが現れてそう言ってくれた。
「ああ、勿論だ。西住を叩き潰すのは島田の俺の仕事だからな」
「真霧!!」
「黒森峰の…」
そこに姉であるまほが現れ、真霧は仮面を無くして素顔でまほに向き直した。
「…何の用?まほ姉さん」
「ま、真霧!戻ってきてくれ!!お前は、私の…「弟だね」」
まほの言葉を手で制し、口を開く。
「…だけど、俺は勝利という名の悪魔に魂を売った西住の名に戻る気はないよ」
「ま…き、り…」
真霧の言葉にまほが膝を落とした。
「俺はさ、島田に変わって本当の自分が見つけられた気がするんだ。だから、戻らない」
そう言い切り、膝を落としているまほへ手を伸ばした。
「だけど、俺がまほ姉さん達の弟なのは変わりないからね」
そう言ってまほの腕を引き、立たせると後ろから急に名前を呼ばれた。
「真霧」
ハッとして振り返ると絹代が西住流家元、西住しほが立っていた。
「何の用です。お母様」
「あら、まだ私を母と呼んでくれるのね」
「…あなたはくさっても私の母に違い無いでしょう」
視線をそらし、そう吐き捨てる。
「…どうせ、今の今まで千代お母様からでも聞いてたんでしょう?同期のあなた達の事ですから」
「まぁ、そうね。真霧、あなたはあなたの生きたい道を行きなさい。そのためにチヨキチに養子の許可を出したんですから」
「お母様がやりそうな事は理解してますよ。…でも、五年前のあの演習、忘れはしませんよ」
そう言ってしほを睨む。
「…真霧はわからなかったのかも知れませんがあの時、あの部屋の横には西住流の上、重鎮達が多数来ていたのよ。だからああ言うしか無かったの。…ごめんなさいね、真霧」
そう言ってしほが頭を下げてきた。いきなりの事に混乱してしまった。
「え、演技?あれが…演技だって?嘘だッ!!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!!なら、何で…あの後お母様から何も…言われ、無かった!!なら、わかるの!?門下生からのあの視線が!!あの冷たい、あの視線がさぁ!!」
それを聞いた後、自然に自分の頭を掴み、叫んでいた。
「すまなかった…真霧」
横から急にまほに抱き締められた。
「姉さん!!姉さんもわかっていた筈でしょう!あの皆からの視線が!!僕は…僕はあの視線が…怖かっ、たんだ…」
「真霧!!」
「ま、ほ…姉、さん…」
真霧は正気に戻るとまほに抱き締められ、声を殺しながらも涙を流すのだった。